魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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宿敵の牙

バルトフェルドがタッシルの街を焼いた次の日

 

「じゃ四時間後だな」

 

威勢良くジープから飛び降りたカガリが言い、キラも降りると続けてエアリスも降りた。

何時もは隣にいるキサカが「気を付けろ」と念を押した。

 

「分かってる。そっちもアル・ジャイリーってのは気の抜けない相手なんだろ?」

 

カガリは少し不安そうにこれから会う交渉相手の名前を告げてキサカに問いかけるが、「問題ない」と返答して前の車に乗っていた同じく“アークエンジェル”の補給品供給の交渉相手に同行するナタルがエアリス達の方を振り向いて「エアリスちゅ…」と言い掛けた所で、ここが街中であることを思い出したのか恥ずかしそうに「ちゃん…」と言い直し誤魔化したのは折角の変装が意味を無くしてしまうからであり、隣にいたトノムラが笑いをこらていていたがエアリスは珍しいモノが見れて笑みを溢した。

 

「た、頼んだぞ…」

 

そう言い残して前を向いてキサカ達が乗るジープが走り出して立ち去った。雑踏の中には残されたカガリと護衛のキラとエアリスが佇んでいる。

タッシルより東にある“バナディーヤ”と呼ばれるこの街は“砂漠の虎”の本拠地であり、砂漠特有の明るい日差しに活気ある市民の声に人々が行き合い賑やかであり、キラはぼうっとその光景をみながら…エアリスに視線が向けられていた。

 

「人がイッパイで楽しそう…。みんなイキイキしてる」

 

街並みの住民に紛れるように目立たないように派手な服装ではないのだがこう、視線を誘導されてしまう“優雅さ”と“可憐さ”が滲み出ており実際に道行く現地住民が視線をチラリと貰っているのをみて彼女の雰囲気がそうさせているのだろうな、とキラは思った。

 

「おい、なにボサッとしてんだ!」

 

エアリスを見ていたキラはカガリがムスっとした声にそちらを見ると案の定むくれた顔で待っていた。

 

「お前達一応護衛なんだろ?」

 

タッシルの難民を抱えることになったので買い出しが必要になりカガリ達はその補給でこの街を訪れており一方でナタル達は“一般では手に入らない物資”を入手するためにこの街にやって来たのだ。

慣れた様子のカガリが雑踏の中を進みながらキラはカガリに問いかけた。

 

「…ここが本当に砂漠の虎の本拠地?ずいぶん賑やかで平和そうだけど…」

 

「平和そうに見えたって見かけだけだ…。ほら」

 

そう苦い口調で吐き捨て少し歩いて立ち止まり瓦礫が散乱した向こうを見上げる。

壊れた建物の向こうには突き出した戦艦の一部が目にはいる…“砂漠の虎”の母艦である“レセップス”が駐留しておりその威容を放っている。

 

「…あれが本当のこの街の支配者の姿だ。逆らうものは容赦なく殺される…。ここは『ザフト』の…“砂漠の虎”のものなんだ…」

 

そう言われ瓦礫が散らばった地面と平和そうな街並みに目を向ける。

「分からない」とそう思うキラだったがエアリスが口を開いた。

 

「ある意味で“砂漠の虎”は彼らを護っているんじゃない?」

 

「…なんだと?」

 

そう告げるとカガリの視線は鋭くなりエアリスを睨み付けるが、なんともないと言わんばかりにその視線を冷ややかに受け流した。

 

「アフリカ、っていう土地は昔の歴史を漁っても虐げられてきたっていう事実がある…。このC.Eの時代になっても先進諸国…、まぁこの場合は地球連合がこの土地で搾取してきたっていう事実…。まぁ鉱物資源とか坑道を押さえて現地の人たちが苦しめられてきた…。で、宇宙から降りてきたザフト、“砂漠の虎”が退けここに居座る代わりにここの地域の人々の安全を保証する…って感じかな。それに折角治めた地域を暴力と圧政で治めたらいずれ暴発…、クーデターが発生しちゃうでしょ。だからこそ“砂漠の虎”は従順なモノに恵み、反抗するものには死を…ってね。そんなことをされたら人は流される生き物、従順になるよ」

 

「だけど…!」

 

「確かにタッシルの街は焼かれた…。でもそれはサイーブさん達がその安寧を受け入れずに“自分達の自由”の為に立ち上がって起こった“結果”…でしょ。戦場に出てこなければやられなかったのに」

 

エアリスの言葉は正論だった。

戦いの代償が守るべき家族と愛するもの達だとしたらキラには戦うと言う選択肢は出てこずに“恭順”という言葉が頭を過りその愛するもの達との“生活”をないがしろにする気持ちを理解できなかった。

愛するものを捨ててまで守らなくてはならない他の事があるのだろうか、と。

 

「それに見なよ」

 

そういってエアリスは路地の先にある露天を指差し二人がそちらに視線を誘導される。

その先にはザフトの軍服を来た兵士が現地民の店主と親しげに話している様子や寛いでカフェでお茶をしている様子が見られた。

 

「此方の人達は割りきって彼らを受け入れようとしている姿勢を見せているように見えるけどね。彼ら…、ザフトが支配する事が悪い。とは言えないんじゃないかな?」

 

そういってエアリスは歩き出したのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「しかし、驚きました…。再び貴方がわたしの元へおいでになるとは…」

 

「水を押さえて優雅な暮らしだな。ジャイリー」

 

一方ナタル達は“市場では手に入らない補給品”を手に入れるために街の少し外れた豪邸に案内された。

出迎えた成金趣味の禿頭の男をみて喋り方と身に付けるものをみてナタル、トノムラは嫌悪感を感じていた。

 

対してサイーブは武骨な感じに対応する。

 

「俺も出来れば貴様とは再会したくなかったが、俺たちの“水瓶”を枯らすわけにはいかん…」

 

そう告げるとジャイリーはにんまり、と笑みを浮かべた。

 

「お考えを改めれば宜しいものを…。大事なのは信念よりもお命ですよ。サイーブ・アシュマン」

 

慇懃で柔らかい物腰だが、その雰囲気はどことなく上から見下しているような雰囲気を醸し出しているのは生活に余裕があるからで、実際にこの場を支配するのはジャイリーであることを。

 

「水場は変わるものです。水は水。飲めれば良いのですよ…。それが尊い命を繋ぐものなのです」

 

「今、貴様とその話をするつもりはない。…それでどうなんだ?此方の要望を聞くのか、聞かないのか」

 

「それは無論…。同胞は助け合わなくては…」

 

白々しい台詞を吐くジャイリーは此方が支払う“代価”にしか興味がないのだろう。…あまつさえ“払うものを払えば”平然と味方すら売ってしまいそうな雰囲気を感じた。

 

「まぁ具体的なお話は“ファクトリー”の方で…」

 

そういって立ち上がり「フホホホ」と笑いながら“ファクトリー”と呼ばれる廃工場地下に案内されたナタル達。

 

「水と食料、燃料は既に用意させました。後は“例の品物”の問題ですが…」

 

そういって胡散臭い男達が台車に幾つかの木箱を乗せて彼女達の前に立ってその蓋を解放すると、そこに詰められていた内容物に目を見張った。

 

「七十五ミリAP弾、モルゲンレーテ式EQ一七磁場遮断ユニット、マーク五〇〇レーダーアレイ…」

 

すらすらと名前を読み上げるジャイリーの横で物品を確認するトノムラは改めて驚きの声を上げた。

 

「うわっ!純正品じゃないか…」

 

「呆れたものだな…。一体こんなものどこから…」

 

ナタルが呆れるのも無理はない。連合軍正式装備である弾薬、兵器がデットコピー…、ではなく純正規品でありこんなザフト勢力圏でこんなものが手に入るとは…、即ち連合軍関係者が横流ししていると言うことに他ならないという事実に、軍規に厳しいナタルには許しがたい状態。…ではあるが今の”アークエンジェル”にとっては“渡りに船”と言わざるを得なかった。

 

「世界には未だ知られていない()()()()も多うございましょう?ムホホホ…」

 

ナタルの反応に気を良くしたジャイリーは例の甲高い声を上げた後ナタルに視線を向ける。

怪訝な表情を浮かべるナタル。

 

「…なにか?」

 

「いえ、そう言えばそちらのお仲間に“彗星の魔女”がいらっしゃいましたな…。これは()()()()からのプレゼント……。此方に」

 

そういってジャイリーは指を鳴らし台車に乗せた資材を見せなんの事だか分からなかったが其よりもなぜ一介の商人がエアリスの二つ名を知っているのか…?と警戒をせざるを得なかったがにやにやと笑う目の前の男に警戒の色を見せるしかなかった。

 

「ま、その代わりと言ってはなんですが…」

 

「分かっている。それで?どうなんだ?それで良いのか?」

 

「ああ。品物に文句はない」

 

これだけの品物を揃えられたのは僥倖…が、それに見合う“代価”を払うことが出来るのかと言うものだ。

 

「希望したものは、全て揃うんだろうな?」

 

「それはもう。…これを」

 

ジャイリーは笑って物資の計算書をバインダーに挟みサイーブに手渡しその額面をみているのだろうが、動揺している様子は見られなかったが気になったトノムラが後ろから覗き込むとその金額に眩暈を引き起こしそうになった。

 

「な、なんだこの金額…?!」

 

足元を見るのは当然とはいえ()()()()()()()ふっかけすぎではないのか?

 

()()()()は高う御座います…。命を繋ぐ”水”ですゆえ…」

 

「ふん。…キサカ」

 

ニヤリ、と笑うシャイリーに引きながらその伝票はサイーブに渡りその後ろにいるキサカが受け取った。

 

「支払いはEarth dollar、でか?」

 

「はい、無論それで結構で御座います」

 

「…では直ぐに運ばせろ」

 

そういってキサカは後ろを振り返りその場から立ち去る。続けてサイーブもここに居たくないのか続けて踵を返す。

指示を受けた男達が資材を乗せたコンテナを運搬車両に運び始めた。

 

「ど、どうなってるんですかね…俺、ついていけないですよ…」

 

「わ、私に聞くな…」

 

分からないのが自分だけでないことを知ってトノムラは安堵したが其よりもジャイリーが発言したエアリスの二つ名を知っていると言うことと“さるお方”。…その事がナタルは引っ掛かった。

 

◆ ◆ ◆

 

「はぁ~…」

 

キラは買い込んだ荷物を脇においてカフェの椅子にへたり込みその力を抜く。大量に購入した紙袋が幾つも並んでいる。買い物の際にエアリスに良いところを見せようと買い物袋を持つのは良かったのだが、そこにはカガリもいて女子二人の買い物に付き合う羽目になり市場中を引きずり回していた。…がその際にエアリスとカガリの着せ替えを見ることになったので得だな…。と思ったキラだったが女の子の買い物に付き合うものじゃないな、と少し思った。

疲れているキラを尻目にカガリとエアリスが買い物リストのメモ確認し「これ買った」「これはなかった」と言い合っていた。

 

(エアリスさん…、もそうだけどカガリあれだけのことを言われて嫌悪感なく接することが出来るのはすごいよなぁ…)

 

そうキラが思うのも無理はない。出会った当初に組伏せてレジスタンスの追撃の際に頬に平手打ちをしてこの街に到着してから自分の意見が「甘い」と一蹴されてしまったのにも関わらず険悪になっていないのは凄いな、と思い見ている。

それはカガリの性格も関係しているだろうが…今はせんなき事だった。

 

「大体揃ったが…おい、この“エルザリオ”の乳液だの化粧水だのこんなところにあるもんか。一体誰だこんなもん頼んだの…」

 

「あ、私とフレイだね…。やっぱり此方の方にはないか…」

 

「お前かよっ!」

 

カガリがツッコムとエアリスはうんざりしたような表情を浮かべている。

 

「私が欲しい、っていった訳じゃないよ…。フレイが『あんたはもっと女の子らしく身嗜みに気を使いなさい』って言われちゃって…、化粧水なんてどれも同じでしょ何て言ったらお説教が…」

 

「お前結構そういうのに気を使ってると思ってたんだがな…違うのか?」

 

「したことないよ?面倒だしお化粧なんかしたことない…」

 

「は?」

 

その事にカガリはムカついた。

目の前にいるキャスケットを被った亜麻色の髪を持つ碧眼の美少女は自分より色白であり、水々しいその肌は化粧をしていなくともナチュラルで美しいそれは、聞く人が聞けば怒りすら覚えるような無いようだったがエアリスは何事もなく続けた。

 

「今まで研究所にいて外にでることもない出不精…。服装だって制服着てれば楽…面倒くさがりなんだ。私」

 

その事を聞いたカガリは呆れたように言う。

 

「お前なぁ…。素材が良いんだからなんか勿体無いぞ?」

 

「興味ないし…。研究できればそれで良いし。それで着飾って男に媚びるのは…なんかイヤ。そんなことをするよりだったら戦争の早期終結に動いた方がいい」

 

「…ッ」

 

その言葉にキラがドキリとしてしまった。飄々としたその表情のなかに今闇が入り込んだような…。そんな感じを覚えたのはキラだけでなくカガリも同じだったようで、苦虫を潰したような表情を浮かべそしてナニかを決意するようにエアリスのテーブルの上に置いた手に自分の手を被せる。

 

「今度オーブに寄った時に沢山服を見に行くぞ」

 

「は、え?」

 

「い・い・か・ら!!」

 

「あ、う、ううん…」

 

突然の剣幕に気圧されるエアリスをみて漸く言い負かしたと感じたカガリは笑みを浮かべる。

そんな彼女らの前に給仕がお茶と料理を並べた。ナンのように薄いパンにカットされたレタスにトマトとこんがり焼かれた羊肉のスライスが載せられている。ガガリが注文した“ドネル・ケバブ”だ。

 

「まぁとりあえず腹拵えだ。あーっ!腹減ったお前達も食えよ!このチリソースを掛けてだな…」

 

「おーっと!あいや待った!」

 

三人がそれぞれケバブに手を付けようとすると突然脇から声が掛かりそれに驚きカガリとキラがそちらに目をやるが、その声と姿にエアリスは「やっぱり来たか…」と冷静に見ていた。

その男の格好はアロハシャツにカンカン帽、サングラス…とあからさまに派手で現地の人間ではない北欧系の長身…でやたらといい声の色黒な男性が白いソースボトルを手にしている。

 

“砂漠の虎”、…アンドリュー・バルトフェルドが接触を図ってきたのだ、と。

 

カガリとバルトフェルドが“チリソース”と“ヨーグルトソース”での“食の戦争”をし始めた。

その光景をみてエアリス。

 

(“分かり合えない”っていう隠喩だったのかなこれ…)

 

水と油…混じり合うことないナチュラルとコーディネイターの主張を代理戦争しているのかと今この世界に入り込んだことで感じ始めたエアリスはそっちのけで何も付けずにそのままいただいた。

砂漠地帯であるが野菜が水々しくその水っぽさに負けぬように濃い味の付いた羊肉がパンズと合わさり非常に美味だったので半分まで食べ終え通りかかった給仕を呼び止めた。

 

「あ、すみません。もう三つ注文お願いします」

 

「はい、ありがとね~」

 

愛想の良い給仕が店の奥に戻り追加のケバブを注文していた所で言い争うカガリとバルトフェルドがキラのケバブにどっちのソースを掛けるかで皿の上で争った挙げ句、二種類のソースをぶちまける。

一瞬「あっ…」となった下手人だったが空いているエアリスの皿を見て再びソース戦争をしようとしたが…

 

「いい加減にしてくださいね?どっちで食べようが人の自由ですよ?あと、煩いです」

 

ニコニコ、と笑みを浮かべプレッシャーを掛けるとバルトフェルドは「大人げなかったな…お嬢さん」、カガリは「ご、ごめん…」と謝罪しその場は収まった。

 

「もっきゅもっきゅ……」

 

二色のソースをぶちまけたケバブはエアリスが食べたがソースの味しかしなく「ミックス美味しくない…」となったが、キラには新しく注文していたケバブを手渡し何も付けずにそのまま、カガリはチリソースたっぷり、そしていつのまにか席に座るバルトフェルドも注文しヨーグルトソースで食べていた。

エアリスはミックスソースになったケバブを平らげチリソースを掛けたケバブを食べ終わった後三つ目のヨーグルトソースを掛けたケバブを頬張っていた。

 

頬はリスのように膨らみ、ソースが頬に付着している様子を見てカガリはポケットからハンカチを取り出してソースを拭った。

 

「ああ。もうほっぺに付いてるぞ此方に顔向けろ……。全く……リスかお前…」

 

「んく…んぐ…んく…。ありがとう御座います」

 

「食べすぎじゃないか?お前」

 

「食べても太らない体質なんで大丈夫です」

 

「そうかよ…」

 

カガリの視線がエアリスの()()に注がれていることを気がつかなかったがキラがそれに気がつき顔を赤くして顔を背けるとバルトフェルドが笑った。

 

「はっはっはっ!…いやぁ~それにしても随分な大荷物だね。パーティでもするのかい?」

 

「余計なお世話だ!大体お前…」

 

「実は親戚が誕生日でパーティーをしようって話になって色々買い込んでいたんです。おじさんはこの辺りの人なんですか?」

 

噛みつこうとするカガリを宥め質問する言葉に「お、おじさん…」と苦笑いを浮かべて切り返そうとしたその瞬間にエアリスが“殺気”を感じ取った。

 

「伏せてッ!!」

 

その声にキラとバルトフェルドがテーブルを蹴り上げ楯にしてその声に1拍遅れて反応するが遅い。

エアリスはカガリの首根っこを掴んで隠れると、乗っていたケバブとお茶がぶちまけられ二人に掛かり汚れるが気にしている暇はなく空気をつんざき切り裂く銃弾が飛び込んできた。

同時にロケットランチャーの擲弾が店内に炸裂し悲鳴と絶叫が響き渡った。

 

「…無事か!?」

 

そういって派手な男…ではなくバルトフェルドが足首のホルスターからザフト製の拳銃を取り出し大声で尋ねてくるが、爆発で一時的に聞こえづらくなって良く聞こえないが「問題ない」とジェスチャーで伝えるとテーブルを遮蔽物にしながら応戦し始めた。

 

「死ねコーディネイター!宇宙の化け物!」

 

「青き清浄なる世界のために!」

 

襲撃者が口々に叫ぶ怒号を聞きソースやお茶を被ったカガリが「ブルーコスモスか!?」と驚くが隣にいるエアリスはタイミングを伺っていた。

此方に銃撃を仕掛けるブルーコスモスの構成員の一人が同じくカフェを利用…偽装して紛れていたザフト兵士に撃ち抜かれ倒れ込む。その際に手から落とした自動拳銃が足元に転がってきておりそれを素早く手にとって残弾と故障していないかを確認するためにスライドとチャンバーを確認した。

 

「構わん!全て排除しろ!」

 

向こうの方が装備が潤沢だがそれをモノともせずに拳銃で迎撃していく。

 

「頭さげてッ!!」

 

その最中正面にてバルトフェルドを襲うブルーコスモスの構成員の一人が死角のビルの角からタイミングを伺っているのに気がついて手早くセーフティーを解除し狙いを定めトリガーを“二度”引いた。

 

マズルフラッシュが焚かれた瞬間に自動小銃を持っていた男性の手から装備が落ち二発目が眉間から赤と透明な液体が吹き出し地面を汚し絶命した。

気がつくと辺りは静かになっており『排除』は終了し硝煙の匂いと戦場特有の“雰囲気”が漂い辺りには怪我人と先程まで利用していたカフェの店主が負傷しているのを見て手にしている拳銃をセーフティーを掛けて地面に転がす。

 

「おい!大丈夫か!?」

 

テーブルの影からカガリが飛び出してきたがその見た目に思わず吹き出しそうになった。今の彼女はケバブのソースとお茶でめちゃくちゃになっておりかなり悲惨だ。

 

「なに笑ってんだよ!それを言うならお前も酷いことになってるぞ…ってバカッ!お前は見るな!」

 

恐らくキラに告げたのだろうそれは今のエアリスの状態を見てそういったのだ。

エアリスもテーブルをひっくり返した状態でカガリほど酷くソースを被っていないが“奇跡的”にお茶を被って色味の薄いブラウスが“透けてしまっており”輪郭が見えてしまっていた。

 

「え、ちょっ、カガリ!?」

 

「見るな!」

 

そのやり取りを繰り広げてるとバルトフェルドが此方を生暖かい目で見ている…いや興味深そうに見ているのに気がついた。

 

「隊長!ご無事ですか!?」

 

「ああ。私は平気だよ。そこにいるレディのお陰でね?」

 

そして顔を隠していたサングラスを取るとカガリが息を呑むのが聞こえた。

 

「アンドリュー・バルトフェルド…!」

 

小声で呟く声を聞いてキラも硬直していた…がエアリスは表情を隠しながら“有名人”に会えたことに少し喜んでいた。

 

◆ ◆ ◆

 

どうしてこうなった…とキラは内心で思っていた。

先程カフェで襲撃に会いバルトフェルドを助けた…いや巻き込まれてしまった際にエアリスとカガリの“惨状”を見てシャワーを貸す…と言う流れだったのだが連れてこられたホテルのような豪華な宮殿にザフト兵士や砂漠専用のジン・オーカーが巡回、配備しておりそれを見て焦っていた。

 

「いや、本当にいいですから…」

 

ここに来るまで数度目の言葉を口にするとバルトフェルドが拒否する。

 

「ダメダメ!お茶を台無しにしちゃった上に此方は命を救ってもらったんだよ?そのまま帰すわけにはいかないじゃない」

 

バルトフェルドはキラ達の焦った様子を“気づかない”様子で車から先に降り立ち手を伸ばす。

 

「大体彼女達なんか、服ぐちゃぐちゃじゃないの。せめてそれだけでもなんとかしてもらわないとねぇ?」

 

「いやっ、わ、私も全然平気だからっ!」

 

そういうカガリも必死に首を振るがエアリスはバルトフェルドが伸ばした手を取った。

 

「そうですね。せっかくのご厚意無下にするわけにはいきません。お言葉に甘えさせていただきます」

 

「ほら、此方のレディはこう言ってるんだし…」

 

とエアリスが受け入れているのに拒み続けるのも不自然だと思った二人は腹を括って敵地へと乗り込むことにした。

先んじて進むバルトフェルドとエアリスが姿を現すとバルトフェルドに気がついた兵士が敬礼し後ろにいるエアリスに怪訝な表情を浮かべていたが敵視はされていないようであった。

通路の奥からダコスタが現れ驚いたような声色をしていたが「助けてもらってね」と告げると安堵していたが呆れたような雰囲気を感じさせる。

 

「(ペコリ)」

 

「彼女が僕の命を救ってくれた客人だよ。ダコスタ君」

 

「あ、失礼しました。…隊長を救ってくださいましてありがとう御座います」

 

「いいえ。お気になさらず。お茶を被った甲斐があったと言うものです」

 

エアリスはにっこりと微笑むとダコスタは顔を少しだけ赤くして後ろにいるキラ達にも目礼しその場を立ち去った。

自分達が歩く後に館内を巡回する兵士達の視線が厳しいものだと感じたが街中でテロ行為があった後だ、厳しくなるのは当然だなと思いながらバルトフェルドの後に着いていく。

 

「あら、お帰りなさいアンディ」

 

不意に聞こえた声に顔を上げると目前に黒髪を流したペルシャ猫のような美しい女性…アイシャがいることに気がつきエアリスは少しテンションが上がった。

 

「ああ。ただいまアイシャ」

 

「この子達ね?アンディ」

 

「ああ。どうにかしてやってくれ。チリソースとヨーグルトソース、そしてお茶まで被っちゃったんだ」

 

「あらら、ケバブね?さ、いらっしゃい」

 

そう言われ少女二人はアイシャに肩を優しく掴まれシャワールームに連れていかれるのを見てキラが心配そうに見ていたがエアリスが振り返り「大丈夫」とアイコンタクトを投げると心配そうにしていたがその場で立ち止まる。

シャワールームに入る際に向こうから「おーい君は此方だ」と声を掛けられていたで“あの部屋”に入ったのだろうなと思った。

 

「お着替えを持ってくるからそこのシャワーで汚れを落としてちょうだい。来ていた服もクリーニングに出すわ」

 

「いや、だから…」

 

戸惑うカガリにエアリスは耳元で呟くと一瞬ビクっ!としたがその言葉を聞いて納得したのか従う様を見せた。

 

「敵の腹の中だけど大丈夫だよ」

 

「…わ、わかった」

 

従う様子を見せて満足したのかアイシャは笑みを浮かべシャワールームを出ていくのを見送ってエアリスとカガリは濡れて不快感マシマシになった衣服を脱ぎ籠に放り込んだ。

シャワー室はお湯で直ぐ様視界が曇り声だけがハッキリわかる状態になっていた。

 

「うわ、カガリって結構腹筋あるんだ…」

 

不意にカガリのシャワーブースに突入してきたエアリスがカガリに近づきお腹の辺りを指でツーっとなぞる。

変な声が響く。

 

「ひんっ!?あ、ちょっ触るなバカっ!うわぁああっ?!」

 

ポヨンッ。

払い除けた反動でエアリスの()()()なものに当たりその弾力に驚く声を上げるカガリ。

 

「あっ!今触った!」

 

「ち、ちがっ…今のはお前が悪いだろぉ!?ってお前から触ってきたのが始まりだろっ」

 

「うーん…でもいいなぁカガリの…大きすぎず…小さすぎずに…いいなぁ…」

 

「お前で出不精の癖にその身体…嫉妬で刺されそうだな…(栄養全部そこに行ってる…?でっかいな…腰ほっそ…)」

 

「だらしなくない…とは思うけど、…邪魔だよ?」

 

「刺されるぞお前!」

 

きゃいきゃいとシャワールームには年頃の姦ましい声が響き渡っていたと言う。

 

◆ ◆ ◆

 

「わぁ…」

 

「お、おいって…」

 

「せっかく着替えたんだからキラ君に感想聞かなきゃ…」

 

バルトフェルドとキラがコーヒーを飲みながら"Evidence01"のレプリカを見ながら語り合っていると、入ってきた扉が開きアイシャがシャワーを浴びて綺麗になった二人が出てきたことに思わず感嘆を漏らしてしまった。

アイシャの後ろに隠れていたカガリに引っ張られ前に出ると恥ずかしそうにしているカガリの肩を押して一緒に前に出る。髪を結ってドレスを着用し端正な顔立ちはとても魅力的だ、と感じていた。

 

「どう、かな?」

 

続けてカガリの隣に立つエアリスは少し長くなっていた髪を結ってふだんしない化粧を施され裾の長い青いドレスを着用しケープを纏っているが背中はバックリと開いて美しい白い肌が見えていて思わず近づくとシャンプー、またはバスソルトか彼女自身から発せられるいい匂いが香りキラの視線が向けられているのに気がつきその肌が少し朱色に染まっていた。

 

「うん、すごく似合ってます…カガリもそのドレスいいと思うよ」

 

「そ、そうか…」

 

キラが照れカガリが恥ずかしそうにしてエアリスが赤くなっているのを見てバルトフェルドとアイシャがにやにやと見ているのに気がつき「掛けたまえ」と誘導され三人はソファーへ腰かけるとアイシャは部屋を出ていった。

既にテーブルの上には人数分のコーヒーカップが置かれている。

 

「さっきの服の感じも良かったがドレスも似合うね。…と言うか()()()()姿()()()()()()()()()()()って感じかな?」

 

バルトフェルドに褒められカガリは不機嫌になるがエアリスは「ありがとう御座います」とお礼だけ告げてコーヒーカップに入った黒い液体を口に含む。

市販品より酸味が少し強いがエアリスの好みだった。

 

カガリがバルトフェルドに不機嫌そうに問いかけるとそれを飄々とした雰囲気で返答する。それが癇に触ったのかテーブルの上を叩きコーヒーが入ったカップが倒れそうになったのを持ち上げ阻止するエアリスはその成り行きを見守っており、キラは冷や汗を掻いていたのは素性がばれてしまう…と言うことだ。

 

「キミも死んだ方がマシな口かね?」

 

先程までの陽気な雰囲気は明後日の方向へ消えてしまったのかと錯覚するほどに冷たい雰囲気を漂わせ三名を見つめる。

 

「君たち二人はどう思っている?」

 

「え…?」

 

「どうしたら終わると思う?()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お前…っ!どうしてそれを…!?」

 

その問いかけにカガリが反応を見せてキラは息を呑む前にエアリスはそんなカガリを見て溜め息を吐かざるを得なかった。

その光景を見てバルトフェルドが「正直者過ぎるのも考えものだぞ?」と笑って立ち上がる。

 

「戦争にはスポーツやゲームのように得点や制限時間はない…」

 

キラはエアリスとカガリを立ち上がらせ後ろに隠すように庇いながら立ち上がったバルトフェルドがどのような行動を取るのかを注視する。

 

「ならどうやって勝ち負けを決める?どうやって終わらせる?」

 

窓際にあるサイドチェストの引き出しを空けて中身を取り出し…拳銃を三人に向けた。

 

「敵であるもの、全てを滅ぼして…かね?」

 

銃を向けられ後ろにいる少女二人を無事にこの敵の本拠地からどう脱出するかを考えを巡らせているとバルトフェルドが考えを読み取ったのか笑って宥めた。

 

「やめたまえ。いくらキミ“達”が狂戦士であろうとこの場所から暴れて脱出など不可能だ。ここにいるのは全員“君達”と同じ()()()()()()()()なんだからね」

 

「お前ら…ッ!?」

 

カガリが息を呑み見開きキラが目を見開いた。

 

「君達の戦闘を二度見た…。砂地の接地圧変更、熱対流のパラメーター…。それに音速で飛翔するミサイルを撃墜に囲まれた状態で迎撃…。君たちは同胞のなかでもゆう、「あの…私ナチュラルなんですけど…」しゅう……は?」

 

一瞬部屋の空気が変わった気がした。

 

「いや、私正真正銘のナチュラルです」

 

「………本当かい?それは」

 

そうエアリスが真面目な表情で「はい。特徴のない何処にでもいるナチュラルです」と答えると「そ、そうか…」と少しばつの悪そうな表情を浮かべるバルトフェルドをみて空気が弛緩しているのがわかった。

 

「ナチュラルの君はどう思うかね?」

 

質問の矛先と銃口が今度はエアリスに向けられるとキラが庇おうと前に出ようとするが視線で制して前に出る。

 

「それを一介の兵士である私に聞きますか?……そうですね…この戦争を終わらせるなら()()()()()()()()()()()()()()()()()…が、」

 

そこで一旦言葉を切るとバルトフェルドは此方に向けた銃口はそのまま此方の話を聞こうとしていた。

 

「それでもし“連合”が勝とうが、“ザフト”が勝とうが勝者はいずれ同じ種族で“敵”を作り出す。人類は“争い”をしないという選択肢を取れずに。“ナチュラル”だろうが“コーディネイター”だろうが其れは変わらない。血反吐を吐き続けるマラソンを繰り返す…」

 

碧眼がバルトフェルドの青い瞳を見ながら告げた。

 

「それなら…両方とも滅んだ方がいいかもしれません」

 

「……。」

 

「まぁそんな絶滅戦争はごめんです。ミサイルに焼かれて若くして亡くなるより寿命で亡くなった方が建設的です。私にはやりたいことも沢山有って、ナチュラルとコーディネイターの友達もいます。ラクスと会えなくなるのは悲しいですからね。そんな悲しい世界、私も“ラクス”も望んでいないですから」

 

「…ッ!そうか…いやはや、君は面白いな…」

 

そう告げるとバルトフェルドは突きつけていた銃を下ろし笑った。

 

「…帰りたまえ。今ここで君達をどうしようと考えていないよ。それに君達に命を救われた、という事実がある。ここは戦場ではない…有意義な話が出来て良かったよ。…君たちはどうかは知らんがな?」

 

そう告げるとキラ達はドアへ向かい相手の気が変わらぬ内に撤退することにした。

 

「また、戦場でな」

 

「…ええ。それとコーヒーご馳走さまでした。美味しかったです」

 

バルトフェルドは笑みを浮かべ「機会があればまたご馳走しよう」と言った。

部屋から出ると見計らったようにアイシャがすぐ近くにおり、手にはクリーニングが終わったエアリスとカガリの服が入った袋を手渡された。

着ているドレスを返そうとするカガリだったがアイシャの棘のある言葉…をぶつけられたがそれが嫌みであるとカガリは感じて絶句したがアイシャは花のような笑みを浮かべていた。

 

見送られた三人はバルトフェルドの屋敷を後にするのだった。

 

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