魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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砂の嵐が止む頃に

”ラゴゥ”のコックピットでは母艦”レセップス”が黒煙を上げているのをアイシャが気がついた。

 

「不味いわよ、アンディ!」

 

その言葉と光景を確認しバルトフェルドが舌打ちする。

 

「”足つき”め…!あれだけの攻撃でまだ…!?」

 

既に護衛艦二隻は黒煙を上げて一隻が撃沈しており”バクゥ”と”ザウート”も全機体を喪失し残っている”バスター””デュエル”も空に浮かぶ”アークエンジェル”の攻撃を避けたのか、其れとも抜け駆けしようとして地表に降りたのかは知らないが無様に砂に足を取られ動けずにいる。唯一まともに動いているのも砂漠戦に改造された”ジン・オーカー”。

 

いつの間にか形勢が逆転し歯噛みしたバルトフェルドだったが目の前の敵…狙いを定めた”ダガー”のライフルから放たれたビームが前肢を貫き爆発、素早くパージし被害を免れた。

 

「さっさと投降してよ!もう戦えるだけの手段はないでしょうがッ!!…ぐぅっ!?」

 

お返し、と言わんばかりに構えたライフルを”ラゴゥ”のビームキャノンでライフルが被弾、素早く手放し被弾を免れた”ダガー”は咄嗟に両腰部のピストルホルダーからハンドキャノンを抜こうとしたその時だった。

”ストライク”が突如目の前の”ラゴゥ”を無視し黒煙を上げる”レセップス”へ飛翔する。

 

「え…?」

 

なぜそんなことを…?とエアリスが疑問に思ったがモニターに映る敵機体データがその理由を導かせた。

 

「”デュエル”に”バスター”…?き、キラくんどうしたのッ…くうッ!?」

 

キラを追いかけようとしたが其れを前方の”ラゴゥ”…バルトフェルドとアイシャが許してくれない。

咄嗟に構えたシールドにビームキャノンが直撃し身動きが取れない。

”ストライク”は脇目も振らずに”デュエル”へと向かっていく。

その執着はエアリスを驚愕させたが止める術は無く今目の前の相手を無視して向かえば此方が砂漠の塵と化すであろうことは確実だった。

 

迫る敵機体を視界に捉え操縦桿を握る。目の前の敵はそんな生半可な覚悟で相手をしてはいけないのだと。

 

「はあああああああっ!!」

 

サーベルを抜刀しとハンドキャノンを構えフットペダルを押し込み”ラゴゥ”へ向かうのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「ぐぅ……なっ!?”ストライク”!?貴様ぁあああああっ!!」

 

「”デュエル”…!!お前だけは…!!!」

 

一方では”デュエル”が”ストライク”になぶり殺しにされ掛けていた。

体勢を崩し咄嗟にシールドを構えるものの蹴り飛ばされた。その場から離脱しようとするが追いかけサーベルで腕を切り落としもう一つの腕でサーベルを抜刀し頭部を貫いた。

その姿は”執念”と呼ぶにふさわしい。

 

「うわぁああああああっ!?も、モニターがッ!?」

 

視界がノイズに埋め尽くされ映像を得ることが出来なくなり冷静さを失ったイザークはライフルを構えるがその保持していた腕ごと切り落とされ武器を喪失した。

 

「こいつ!!」

 

砂地で踏ん張って援護するため散弾とビームを発射する”バスター”の攻撃を背後を見もせずに回避して”デュエル”に追撃を仕掛ける。

 

「飛べ、イザーク!こいつはヤバイ…ッ!!」

 

攻撃オプションの殆どを失い逃げの一手しか無くなってしまった。

それを見たディアッカは指示を出して”デュエル”は視界を失った状態でスラスターを吹かせ撤退しようとする。

 

「逃がすかぁああッ!!」

 

しかし、復讐の鬼と化したキラは目の前で逃げ出す”デュエル”を見逃すほど今の彼は甘くなかった。

スラスターを吹かし飛び上がろうとした瞬間”ストライク”の腰部ホルダーが開閉し”アーマーシュナイダー”が握られ殺意を込めて背面スラスターに突き立てた。

 

「うわぁああああっ!?」

 

突き刺さったナイフはスラスターを爆発させ其れが誘爆、コックピット内部の機器がスパークし爆発した。

飛び上がった空中の”デュエル”にナイフを突き立ててブースターを破壊しその最中に背後から蹴り飛ばされ”バスター”の元に吹っ飛ばされた。

 

「イザーク!どうしたんだ!?イザーク!」

 

「痛い…痛い…痛いッいッ」

 

通信からはその言葉だけが聞こえどこか負傷したことは確実であった。

 

<援護する!そいつを連れて早く離脱しろッ!>

 

「すまん助かる!…くそッこいつはヤバイぜ…!イザーク!しっかりしろ!」

 

「ぐぅっ…うぅ…っ…」

 

反応する声色も弱々しいイザーク。

倒れてしまった”デュエル”を回収せんと”レセップス”の艦搭載機である”ジン・オーカー”が岩影に隠れながらマシンガンを発射し”バスター”も二門の射撃武装を撒きながらシールドを構えながら突進してくる”ストライク”を牽制するがその気迫は凄まじかった。

 

ディアッカは迫る”ストライク”をみて背筋に冷たいものが走るがそれよりも怪我をしているイザークを早く治療するためにここから離脱しなくてはならない。倒れている”デュエル”を抱えスラスターを吹かしその場を離脱する。

 

<なっ!?ぐうぁああああっ!?>

 

次の瞬間についでと言わんばかりに僚機の”ジン・オーカー”がライフルに貫かれ爆散した。

 

「畜生ッ!撤退するぞッ!」

 

「お前は…ッ!!」

 

撤退する二機に向けて手にしたサーベルを構えスラスターを吹かす。

キラの視線は隣にいる”バスター”を無視して”デュエル”にのみ注がれた。

”ストライク”はビームサーベルを引き抜き中破している”デュエル”の背中を目指しスラスターを吹かせ切っ先を突き立てようとしたーー。

 

◆ ◆ ◆

 

「熱くならないで!負けるわ!」

 

アイシャが叱るようにバルトフェルドに告げると唸った。

 

「分かっている!」

 

ライフルを破壊し二射目を当てようとするが”ダガー”のシールドに阻まれ攻撃が通らない。

その隙を狙い”ラゴゥ”が走り出すと”ダガー”もブレードスラスターを起動させサーベルを抜刀し両者の影が砂漠に映し出される。一瞬だった。

 

”ラゴゥ”は背面ビームキャノンを片方切り落とされ誘爆、爆発しバルトフェルドは寸でのところで分離し被弾を免れた。一方で”ダガー”も背面のブレードスラスターも破損した。向こうの装備はまだ健在でありこちらはもう攻撃オプションは頭部パーツが咥えるビームサーベルしか残っていない。

 

もう、この辺りが潮時だろう…と。バルトフェルドは通信をいれる。

 

「ダコスタ君」

 

<隊長!>

 

モニターには疲れきり殺気立った部下達を見つめ申し訳ない気分になりながらバルトフェルドは告げた。

 

「退鑑命令を出したまえ」

 

モニターの中で息を呑むダコスタに()()()()()()()()()()()()

 

「勝敗は決した。残存兵を纏めバナディーヤに引き上げ、ジブラルタルと連絡を取れ」

 

<隊ちょ…!>

 

指示を一方的に突きつけ通信を切った。

 

「…君も脱出しろアイシャ」

 

そう前の席に座るアイシャにバルトフェルドが告げるとアイシャは振り返って笑った。

 

「イヤよ。そんなことをするくらいなら死んだ方がマシね?」

 

その返答に思わず笑みを浮かべる。自分が部下に言った「死んだ方がマシ」と言う言葉をここで理解することになるとはな…と。

 

「君もバカだな?」

 

「貴方ほどじゃないわ?其れか移ったのかもね?」

 

愛らしい最愛の女性の笑みを網膜に焼き付け前方に映る”ダガー”を見据える。

 

「…では付き合ってくれ!!」

 

”ラゴゥ”が弾丸のように前へ飛び出した。

 

◆ ◆ ◆

 

「バルトフェルドさん!アイシャさんッ!!」

 

既に攻撃オプションをほぼ失っている状態だと言うのに口に咥えた筒からビームの刃を出力させエアリスは通信回線を開いて呼び掛ける。

 

<まだだぞ…お嬢さん!>

 

スピーカーからは聴き馴染みのある渋い言い声が砂嵐に紛れて声が返ってくる。

 

「もう既に決着はついてるんですよ!?降伏してください!」

 

”レセップス”含め残りの艦は既に死に体だ。搭載しているモビルスーツも戦闘機も既に残っていない。

”バスター”も”デュエル”も既に戦闘能力はなく今戦っているのは彼らしかいないのだ。残っている”ジン・オーカー”も此方に決定打を与えられる装備もない。つまりは…詰みだ。

 

”ラゴゥ”がサーベルを向ける。

 

<既に勝った気か?言った筈だぞ!戦争の終わりに明確なルールなど無いと!>

 

進んで殺したくない、殺されたくもない…!だがこの場面ではどうしようもない…!殺らなければこっちが殺られる…!

突きつけられる現実にエアリスの操縦桿を握る拳に力が入る。

 

<戦うしかなかろう!お互いに敵であるかぎりどちらかが滅びるまで!>

 

右肩を切り裂かれビームブーメランが使用不可能なったが”ラゴゥ”も片翼とサーベルの反対側を切り落とされた。

が、そのエアリスの戸惑いが隙となり飛びかかる獣がその刃を突き立てよう近づく。

 

「この…ッ!!!」

 

咄嗟の判断だった。

 

「わからず屋がァ!!」

 

腰を落としサーベルを投げ捨て肩部からビームブーメランを解除、シールドを捨てると同時にビームブーメランを投擲しH.E.A.T弾が込められたハンドキャノンが”ラゴゥ”の死角となった盾の裏側から火を吹いて貫通し頭部、足を撃ち抜き残った最後の前肢がビームによって切り裂かれオレンジ色の虎は爆発すること無く滑るように地に伏した。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!」

 

コックピット内部で息が上がるエアリス。

 

<どうして…殺さなかった?>

 

地に伏した”ラゴゥ”からバルトフェルドの通信が入る。

 

「…殺したくなかったんです。私の我が儘ですよ。」

 

<………甘いな君は。敵を逃がしたらそれはまた新しい武器を持って襲いに来るぞ?>

 

通信越しにはバルトフェルドから呆気に取られたような声色が漏れていた。いや、警告か。

 

「其れに…まだ貴方のブレンドしたコーヒー味わっていないですし…アイシャさんみたいないい人残して死ぬつもりですか?ダメですよ、そんなの…」

 

<お嬢さん…>

 

<お嬢ちゃん…>

 

”ラゴゥ”に乗る二人の声が漏れ出ていた。

 

「撃つだけじゃ解決できない、その銃を握る手を開いて相手の手を取ることだって出来る筈です。」

 

そう告げるとバルトフェルドは笑った。

 

<理想論だな……だが悪くない…>

 

◆ ◆ ◆

 

「畜生ッー!?」

 

サーベルを構え突っ込もうとしているストライクが接近しているのをコックピットのアラートで気がついたディアッカは顔をしかめる。もうダメか…と思われたその時だった。

 

「…なにッ?」

 

飛翔していた”ストライク”が灰色に染まって墜ちる。

機体の電力がゼロになりディアクティブモードに変化してしまい握っていたサーベルのビームが消えた。

 

「動きが止まっ…た…?今の内だッ」

 

既に遠くに離れる二機に追撃と睨み付けるキラだったが声を掛けられ光を失っていた瞳が色を取り戻し動きが止まる。

 

<キラ君もういいわ!これ以上の戦闘は無意味よ!既に戦略は達成している>

 

エアリスの通信で彼女の声を聞いたキラは正気を取り戻す。その間に”デュエル”を抱えた”バスター”は作戦区域を離脱、遠くへ向かっていった。

 

「良かった、止まってくれた…」

 

それを見たエアリスは自身の声がキラに届き、”ストライク”が止まったことにホッとする。

 

<もう戦闘は終わった!落ち着いて…ね?>

 

”ダガー”は近づき”ストライク”の肩を掴む。

 

「はぁ…はぁ…エアリス、さん?」

 

<……この地ので作戦は既に終了した。私たちの勝利だよ…さぁ、帰ろう…>

 

「は、はい…」

 

エアリスに呼び止められそのサーベルの発振器を停止した”ストライク”は腕を降ろす。

正気に戻ったキラはモニターの向こう側に機体はボロボロであるがその機体から出てきて白旗を上げる無傷のバルトフェルドとアイシャ…そして動かなくなって砂漠には動かなくなり火を吹くザフトの機体と艦船達…と散らばる”デュエル”の四肢。

そう戦闘は無事に終了したのだ…と言うことを理解しキラは力を抜くと同時に恐怖が襲いかかった。

 

その光景に力無く動かない機体達を見て僕がやったのか…?とそう思いバルトフェルドが言っていた狂戦士という言葉がやけに脳から離れずに我を忘れて大切なモノを守るために戦いに没頭する自分が恐ろしくなった。

何時か、大切なモノを壊してしまうのではないか…と。

 

<各員は被害状況を報告しろ…レーダー観測員、周囲を警戒………全機体帰投せよ。>

 

「レインズ機帰投します。」

 

<フラガ機、帰投するぜ>

 

<…ヤマト機、帰投します>

 

ナタルが告げ”アークエンジェル”が戦闘を終了したことを確認し着陸してハッチが解放され艦搭載機は帰還するのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

砂漠での戦闘が終わったその日の夜。

 

「『明けの砂漠に』」

 

「勝ち取った未来に」

 

「生き残ったもの達に祝福を」

 

サイーブが杯を掲げるとマリューも続きムウが締め括るとナタル含めた四人が杯を合わせ中に入っている酒を煽ると酒の強さにむせ返ると同じものを一気に煽って空けるのを見て「信じられない」と言った目で見つめ隣にいるサイーブの今まで見たことの無い陽気な笑みを浮かべていた。

レジスタンスの拠点では大きな薪がくべられ子供ははしゃぎ回り人々は酒を酌み交わし勝利に酔っているのを見て取れた。

 

「…でもあんた達もまだ大変だな。『虎』が居なくなったって言ったってアフリカからザフトが撤退した訳じゃない…奴らは鉱山が欲しいんだろ?すぐ、また次が来るぜ?」

 

「…そのときはまた戦う。戦い続けるさ、俺たちは。俺たちを虐げようとする者達と」

 

誇り高い砂漠の戦士はそう宣言した。マリューはその姿を見て敬意のこもった眼差しで見つめた。

 

「とうさん。長老が戦士を送る祈りをするって」

 

サイーブは息子に呼ばれ皆が集まる場所へ赴きこの戦いで亡くなった死者たちの為の弔砲を轟かせ名前を読み上げる。

 

エアリスもクルー達に混じって死者を弔う祈りに参加する。

敬礼し星空を見上げ彼女は記憶にある嘗て迫り来る侵略者や怪獣と戦った男の言葉を借りてキラやカガリに伝えた言葉…撃てば撃ち返されその怨嗟はいたちごっこに廻ってくるのがこの世界の”戦争”、正に「血を吐き続けるマラソン」だろう。

 

見上げる夜空の星々の輝きは尊いものに感じるが同時に自分達の行く末を監視している感じがしていた。

戦わなくても良い日が来るのか…と思いながらエアリスは美しくとも恐ろしい星の輝きを見つめた。

 

 

 

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