魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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慟哭の空の下で

「こんなの使えるのどこぞのシンか何処ぞのノースリーブの制服を着たグラサン大尉しかいないでしょ…」

 

時間は遡る。

地球降下後のアフリカにて熱中症から復帰したエアリスは第八艦隊から送られてきたストライカーのデータ並び補充品を確認していたエアリスはぼやいた。

地球連合の装備開発局経由で送られてきたストライカー…水中用の”ソリッドストライカー”空戦用の”ジェットストライカー”…此は未だ利用目的が分かるから良い。問題なのは最後の一つをみて感情を露にした。

 

「(ワナワナ)…こんなんどうしろって言うのよ!」

 

肩を震わせ俯いていた顔を勢い良く上げてエアリスが叫ぶと整備兵達がビクッと反応しその声の主を見るがマードックが「何時ものあれだ」と視線で合図すると何事もなく作業へ戻っていった。

 

「欠陥装備じゃないのよ…!!」

 

キラがHDリマスターの際に確か第八艦隊補給の品に「こんなの使えないよ!」と匙を投げた”マルチプルアサルトストライカー”の元になったI.W.S.P.「統合兵装ストライカーパック(Integrated Weapons Striker Pack)」がソコに鎮座しており頭を悩ませていた。

 

「今乗せてるOSのバージョンで対応しきれないから自分で作れって言うの?…なんで納品した後にカスタマーに調整させるの?!バカなの!?死ぬの?!」

 

うがーッ!と吠えるエアリスに可哀想なものをみる目でみる技術班と整備班の人員がいた。

ある意味で同情だろうが。

 

高性能センサー付きのレールガンや単装砲、対艦刀に攻防一体型のシールドと重武装化されており過剰なほどの攻撃力を持つ。さらに、火器管制のためストライク本体の射撃統制システムを補助するコプロセッサーも搭載されているし重量増加と後方に偏った重心モーメントの影響によって低下した運動性については、パック後部には2基のスラスターと3対の空力翼を設置することにより補われている。

 

モビルスーツでの開発で出遅れているために地球連合軍上層部…モビルスーツ推進派が要求するスペックである「近・中距離での高機動総合戦闘力」「対艦・対MS接近戦能力」「射程外からの超長射程火器による砲撃能力」を単体で実現し、「究極の装備」という開発目標に相応しい万能性を獲得するに至っている…が、しかし。この世界でナチュラルとして戦っている彼女は理解していた。

 

此はナチュラルには扱えない、とエアリスは詳細を見て断言した。

 

構造の複雑化による整備性や信頼性の低下とコストの高騰、取り回しの悪い武装類…パック本体のデッドウェイトによる姿勢制御の悪化に加えて、兵装と制御用電装系の重装備化による消費電力の増加により本体のフェイズシフト装甲の作動時間が大幅に短縮してしまっている…此を扱うにはバッテリーを多く積む”ダガー”…後の時代に出てくる”パワーエクステンダー”搭載機…C.E73年以降の機体でなければ無理だろう。

 

確かカガリに此が渡されたけど複雑すぎる火器管制はナチュラルには扱えず式典装備になっていた筈。

”机上の空論”の産物であるこの”I.W.S.P”を装備開発局が、エアリスに体の良い”実戦データ”を収集してもらうために倉庫から引っ張り出して送ってきたのだろう。

”ノワールストライカー”でも作る資金源にでもしたいのか。

 

思わず頭を抱えてしまう。

 

「はは…オートマチックインテンションでも作るぅ?…………………はぁ…」

 

溜め息を吐いた後に目の前にあるストライカー用のガントリークレーンに吊るされている<I.W.S.P.>に視線を向け諦めから”これをどう扱えるようにするのか”という技術者としての側面を見せる。

 

「……嘆くその前に、装備の見直ししますか…………PS装甲のない機体なら背面のレールガンとガトリングでどうにかなるし…PS装甲搭載機相手にするならガトリングは良いかな…そう言えば<アーキバス>の改良テストも行わないと行けないし…丁度良い、乗っけよう。ガトリングシールド?いらない」

 

ぼそり、と呟きエアリスは複合火器管制システムの立ち上げと装備時に必要の無い…と言うか取り回しの悪い装備を外し別の装備を組み合わせることにするのだった。

この時砂漠でPS装甲に換装され、オーブにてエリカにこっそりとバッテリーを入れ換えられている事など予想だにしてもおらず、まさか”I.W.S.P”が実戦レベルになっているとは思いもしなかった。

 

その調整に付き合わせられる整備班と技術班は阿鼻叫喚したとも言う。

 

◆ ◆ ◆

 

時間はオーブ近海に戻る。

 

「くっ…その装備でも空中戦を…!」

 

フライトユニットとして機能している”I.W.S.P”を飛翔させ二機へ接近する。

ある意味で”ヴァリアブルダガー”が装備する”I.W.S.P.”は別物に変わっていた。

背面ストライカーに装備されている火器は単装砲が取り外され変わりに小型化したビームランチャーとレールガン、ビームサーベルユニットを増設、設置位置はエールストライカーの様に背面上部に二本刺さっている。

腕部にあったガトリングシールドは撤去され両腕には取り回しのしやすい小型化したラウンドシールド、両脚膝部分にはエアリスが改造したビームブーメラン”シュマルツァクリンゲ”のウェポン増設ユニット…両腰に改良した小型ビーム対艦刀”ベシュヴィンクト”…等と言った面影が消えた”大出力大火力魔改造ストライカー”を身に纏い二機へ飛翔する。

 

「”ゴーグル付き”め…!」

 

”ブリッツ”のコックピットの内部でニコルが接近する”ヴァリアブルダガー”を苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ”イージス”のコックピット内部ではアスランが敵意を剥き出しにして二機は巧みに連携を取り挑み掛かる。

手にしたビームライフルを腰部マウントへ戻し腰部サイドアーマーから獲物を引き抜いた。

 

「早速実戦投入させて貰うよ…!本来の仕様と少し違うけど!」

 

ビームの射撃から飛び出した”ヴァリアブルダガー”は腰から実体剣対艦刀…ではなく<シャドウストライカー>に搭載されていた<ベシュヴィンクト>の小型改良型であるビーム対艦刀<ベシュヴィンクトMk-Ⅱ>を引き抜いた。

 

「貰った…!」

 

接近してきた”ダガー”へ狙いを定めた”イージス”の放ったビームライフルが”ダガー”と捉える。

シールドを装備していない側を狙いアスランは捉えた”ダガー”に対してライフルの引き金を引いた。

発射されたビームが”ダガー”を捉えた…訳ではなかった。

 

「な、にッ!?」

 

”ヴァリアブルダガー”が引き抜いたビーム対艦刀が到達する筈だった射線上に振るわれると切り裂かれ霧散する。

 

「まさか発射したビームを目視で切り裂いたのか…!」

 

アスランが驚愕したのは高速で飛来するビームを目視で尚且つシールドではなく対艦刀で切り裂いたのだ。

そんな驚愕も他所にエアリスは”ブリッツ”に狙いを定めていた。

 

「ニコルッ!」

 

「ッ!そこだっ!!!」

 

「此方に来る…!アスランッ!このぉ!!」

 

間髪入れずに”ブリッツ”が<グレイプニール>で”ダガー”を狙うがサーベルで切り裂かれ爆発し右手の<トリケロス>を構えるが狙われていることに気がついたエアリスはトリガーを素早く二度引いて背面ユニットの<110ミリレールガン>を二射、シールドに連続着弾し体勢を崩されてしまう。

 

ドンドンッ!と鉄塊を打ち付ける音が響き渡った。

 

「うわぁああああああっ!?」

 

「墜ちろッ!!」

 

体勢を崩したその隙に一気にスラスターを吹かし懐に入り込みビーム対艦刀で右腕を一閃で破壊し”グゥル”から蹴り飛ばし海へ叩きつける。武装を失った”ブリッツ”では戦闘に参加できないだろう。寸でのところで海面に叩きつけられず小島へ着陸した”ブリッツ”を見送り戦闘可能な”イージス”へ視線を向けた。

 

今、”ストライク”は空中で換装し”エールストライカー”を装備し地上に落ちた”デュエル”と”バスター”をムウの”スカイグラスパー”と相手取っている。

僚機と母艦に関しては問題ないだろう。

それよりも…。

 

(先ずは”ブリッツ”を無力化する…!アスランの”イージス”は後回しだ…!追い詰めるとどんなことを仕出かすか分からない…!)

 

予想外の爆発を起こすアスランをどうにかしないことには自分も”アークエンジェル”も撃墜されかねない。

ここでニコルを殺さなかったのは原作通りの流れになってしまうからだ。

 

「ニコルッ!?うぉおおおおおおおっ!!!」

 

しかし、一方で”ブリッツ”を撃墜した”ダガー”へ”イージス”はライフルを発射しながら接近してくる。

エアリスの”ヴァリアブルダガー”とアスランの”イージス”がビームを放ちながら両者はシールドで受け流し交差しお互いがサーベルを展開し切り結ぶ。

 

「ぐっ…!本当に面倒臭い奴だなおまえはッ!」

 

数度切り結んでエアリスは手にした<ヘビービームライフル>を発射して足元の”グゥル”を狙う。

放たれた荷電粒子が”グゥル”のミサイル発射管が被弾し煙と炎が吹き上がりあからさまに推力が落ちているのが見てとれる。

 

「”ゴーグル付き”ぃ!!!」

 

「なっ…!?ぐぅううううううっ!!?」

 

”グゥル”の乗り捨てリモートでスラスターを吹かし咄嗟に質量爆弾として転用し”ヴァリアブルダガー”へ投げつけると接近したタイミングで手にしたライフルが火を放ち爆発。その爆発を防ぐためにシールドを構えるがその爆発をまともに受け後ろへ吹き飛ばされてしまう。

強烈な爆発をマトモに受けエアリスはコックピットの中で苦悶の表情を浮かべながら体勢を建て直す。

 

”グゥル”から離れた”イージス”は素早くモビルアーマー形態へ変形し<スキュラ>を放つ。

二色の荷電粒子が”ヴァリアブルダガー”を襲った。

 

「な、めるなぁあああ!!このフリーダム野郎ッ!!」

 

機体を建て直し背面ストライカーの高出力ビームランチャー<アーキバスMk-Ⅱ>を発射し相殺する。

<スキュラ>と<アーキバスMk-Ⅱ>の荷電粒子がぶつかった瞬間に辺り一帯に凄まじい光が広がった。

 

続けて放たれた二射目の<スキュラ>はエアリスは背面ストライカーの推力にモノを言わせ回避する。

 

「あんなのが当たったらこの子(”ダガー”)だってひとたまりもない…当たってやるものかよッ!」

 

直撃すればひとたまりもない。だがそれは当たれば、の話だ。

今のエアリスに鈍重極まる一撃は当たる筈がなかった。

 

「くっ…!やっぱり反応が遅い…!このままじゃ駆動系がイカれる…!」

 

二射の<スキュラ>を回避すると海に落ちていく”イージス”は近くの小島へ着陸するのを確認しエアリスは機体のエネルギー残量を確認する。ゲージは未だ半分以上残っており追撃しても問題ない。

だが、しかし。

 

「駆動系がイエローアラート!?…ええい!」

 

”イージス””ブリッツ”との会敵時に駆動系が磨耗してしまっているのかインジケータがイエローアラートを吐き出していた。戦闘には支障はないがいつ何が起こっても不思議ではない。

撤退する…その事も頭に過るが”ストライク”が”ブリッツ”を撃墜してしまう光景が再生されてしまう。

その結果アスランはトールを殺し二人は殺し合いへ発展してしまう事は避けなければならない。

 

「未だ、行ける…!」

 

現在進行で”イージス”は”アークエンジェル”を狙い攻撃を続行しようとしている。

迷っていたら此方が沈められる…!フットペダルを押し込み”イージス”を追撃した。

 

<撃ち方止め!ッレインズブーケ中尉!深追いをするな!…おい!エアリスッ!>

 

ナタルの通信を無視して落ちていった小島へ向け飛翔する。

 

「…ッ!エアリスさん…!」

 

その通信を聞いたキラは”ダガー”の動きを注視すると小島に落ちた”イージス”へ追撃へ向かうのが見え言い様のない感情に支配される。

 

ーアスランとエアリスさんが殺し合う…そんなの…ダメだ!ー

 

直ぐ様”ストライク”が二機の元へ向かおうとするが”バスター”と”デュエル”が行く手を阻む。

 

「くっ…邪魔をしないでくれ!!」

 

◆ ◆ ◆

 

「くぅ…!」

 

体勢を立て直そうとするアスランだったが接近している”アークエンジェル”の底部<イーゲルシュテルン>と<スレッジハマー>の弾幕に晒され只でさえ少ないバッテリー残量が減少し既に継続戦闘は危険な領域へ差し迫っていたがアスランの闘志は未だに燃え滾っていた。

 

「まだだッ!”ゴーグル付き”ッ!はっ!?」

 

突如コックピット内部に警報が鳴り響きその場から離脱する”イージス”であったが手にしていたライフルが”ヴァリアブルダガー”が手にしている対艦刀によって引き裂かれスパークし誘爆を恐れ手を放すと直ぐ様爆発した。

後退し難を逃れたアスランであったが目の前の機体を信じられない思いで見つめた。

 

「さっさと退けよっ!もう勝ち目なんて無いだろうがッ!!」

 

「”ゴーグル付き”ッ!お前がいなければキラは…戦わなくて済んだんだ…!お前がッ…!!」

 

「未だ来るのか!?しつこいな!」

 

「ぐっ!?うわぁああああああッ!」

 

腕部に装備されたサーベル発振器を励起させ切り付ける。

殺意が乗った的確な攻撃にシールドで防ぎ弾き受け止め攻撃を回避するがエアリスの”ヴァリアブルダガー”の方が手数が多い。”イージス”の顔面目掛け<レールガン>を放つと後ろへ吹き飛んだ…同時に”イージス”の鮮やかな赤色のPS装甲がダウンし鉄灰色へ戻っていく。

 

負けた…?

 

彼は唖然としてサーベルを構えるモニターに映る”ダガー”を見つめる。

策を張り巡らせキラを取り戻すために戦いを挑んだと言うのに自分達とそう変わらない少女一人に全員で翻弄されてしまっている事実にショックを隠せないでいた。

キラを取り戻せないでここで…!

 

そんなことを思っていたその時だった。

 

「ッ!」

 

明確な敵意を捉えたエアリスは感じとり接近する方向へ機体の頭部を動かす。

 

<アスラン下がってー!!>

 

突如としてスピーカーからニコルの明瞭な声が飛び込んでくる。

次の瞬間には二機の間に黒い機体…”ブリッツ”が<ミラージュコロイド>を解除して<ランサーダート>を小脇に抱え突撃してきたのだ。

 

「やはり来たッ!!だが、踏み込みが……甘いッ!!!」

 

突然の警告にエアリスは予測していたように直ぐ様反応する。

 

「なっ!?」

 

”イージス”の方へ向いていた”ダガー”が寸前までとは言え<ミラージュコロイド>で偽装していた”ブリッツ"は来ることを予測していたかのように動くことに思わず恐怖を覚えてしまうニコルの行動はソコで奇襲は失敗してしまっていた。

 

体に叩き込んでいる反射的にストライカーに装備されているレールガンで”ブリッツ”の胴体へ電磁加速された弾丸を躊躇なく叩き込む。

 

「うわぁああああああああっ!?…………ぅう………ッ」

 

18メートルの巨体は亜音速の弾丸が叩き込まれ糸の切れた人形のように吹き飛び小島の地面へ黒いPS装甲を削りながら落着すると装甲色も鉄灰色へ戻っていったのだった。

そしてその衝撃はパイロットの意識を借りとるに十分すぎる衝撃でありニコルはコックピットで気絶するように頭を垂れて意識を失う。

機体の反応…パイロットが動きを見せないことを確認しエアリスは倒れた”ブリッツ”へ近づいた。

 

(やりすぎたか…!?)

 

<くそっ!ニコルがやられた…!>

 

<なんだとっ!?>

 

その光景に”ストライク”を抜けてきた”バスター”と”ブリッツ”がPSダウンした”イージス”を救助するためにやってきていたが”ブリッツ”が撃墜されたことを目撃し唖然としてしまう。

しかし、ここは戦場であり呆けている暇はなく三つの機体は”アークエンジェル”の攻撃にさらされていた。

 

<くそぉおおおおおッ!!?>

 

<ふざけるなッ!>

 

<撤退するぞアスラン!!>

 

「ニコル…っ!」

 

<ボサッとするなアスラン!今の貴様の機体じゃ返り討ちに遭うだけだ!退くんだよ!>

 

<くそ…ッ!?>

 

<アスランっ!>

 

イザークの慟哭とディアッカの提案を受け入れるしかなく倒れた仲間を助けに行くには無謀だと流石のアスランも理解していた。

 

<レインズブーケ中尉!撤退しろ!深追いする必要はない!>

 

「…了解!”ブリッツ”を鹵獲しました。援護願います!」

 

<なにっ!?この状況でか!?…おい!エアリスっ…!全く人の話を聞かない奴だな…!!?ヤマト少尉っ、援護を!>

 

ナタルは戦場で奪われた”ブリッツ”をこのタイミングで鹵獲するとは思わず放って置け!と思ったが此方の制止を聞かずに小脇に抱えながら接近するXナンバーを”ヴァリアブルダガー”の武装で牽制しているのを見た。

”アークエンジェル”は”戦闘を行っているエアリス達の付近へ覆い被さるように近づき”ナタルは指示を出してCICにいるチャンドラとトノムラへ指示をだし周辺に”イーゲルシュテルン”で援護し始めた。

スコールのように降り注ぐ弾丸が”イージス”達へ襲いかかる。

PSが展開してある状態ならば驚異でもないが今の”イージス”は電源が切れてしまっている…75ミリの高初速弾を食らえばひとたまりもない。

 

<アスランッ!>

 

「クソッ…!!」

 

ディアッカに通信で叱責を貰い我に返ったアスランは予備パワーで機体を稼働させ援護して貰いながらその場を後にするしかなかった。

 

「了解ッ!エアリスさん!!」

 

「ありがとう!援護ありがとう!離脱するよ!」

 

「はいッ!」

 

<”スカイグラスパー”一号機、ニ号機収容完了です!>

 

ミリアリアが”スカイグラスパー”を収容したことを伝えるとマリューが指示を飛ばす。

 

<二機を回収後に戦闘空域を離脱する!推力最大!>

 

”ストライク”は大破した”ブリッツ”を小脇に抱える”ヴァリアブルダガー”を援護しながら戦闘区域だった小島を離れる。

二機の着艦と同時に”アークエンジェル”はスラスターを吹かして戦闘空域を離脱すると先ほどまで戦っていた小島はどんどんを小さくなっていく。

 

「くそっ……くそぉおおおおおおおおっ!!!」

 

乗っていた仲間を奪われその光景を後ろ髪を退かれながらアスランは自分の不甲斐なさに操縦桿を強く握りしめコックピット内部で嘆くしか出来なかった。

 

◆ ◆ ◆

 

抱えていた”ブリッツ”を降ろし格納庫のモビルスーツゲージへ機体を預けてコックピットから降り指示を出す。

 

「”ブリッツ”のパイロットを医務室へ!コルシカ条約に基づいて捕虜の扱いを厳とせよ!」

 

エアリスが指示を出すと保安部隊とストレッチャーを持って待機していた技術班が外部からコックピットハッチをこじ開け乗っていたニコルを運び出して行ったのを見送る。

が、しかし。

 

(…あれ?なんかニコル随分身体が細い…というか華奢?スレンダーな気が…)

 

運び出されていったニコルの身体を見て違和感を覚えていた。

それよりも”アークエンジェル”に居る兵士達は”コーディネイター”に対してブルーコスモス的な思想は持っておらず危害を加えないと思うが一応コルシカ条約を持ち出して牽制しておかなければ、と。

指示を出した後マードックが近づき肩をバシバシと叩いてくる。

 

「あいたっ!?」

 

「よっしゃあ!お疲れさん!よくやったな!」

 

マードックが声を張り上げると他の整備兵達もエアリスを誉めちぎった。

 

「ついに一機無力化したんだな!」

 

「たしか…”ブリッツ”だったよな!?」

 

「流石っす中尉!もう向かうところ敵なしっすね!!」

 

無邪気に”戦果”を褒め称える整備兵達からの賛美を受けとるエアリスは苦笑いをしながら反応する。

もし、仮に自分がコーディネイターだとしたら原作キラのような感覚を覚えたのだろう…と複雑な気持ちになったが此方へ駆け寄ってくるキラは自分を心配しているだけで深く沈んだ表情でないことを感じ取った。

向かってくるキラに向かって手を上げる「大丈夫だよ」、と。

 

「あはは…ありがとう。あ、マードック曹長」

 

「なんだ?整備なら今すぐにでもはじめちまうが?」

 

「捕獲した”ブリッツ”整備をしておいてください。パーツはありましたよね?」

 

「”ブリッツ”をか?だがなぁ…」

 

マードックは格納庫の床に転がっている”ブリッツ”を見て難しそうな表情を浮かべる。

メインである複合防盾が失われ戦闘力を失っている機体を直すよりも”ダガー”と”ストライク”を修復した方が建設的だと思っているのだろう。優先順位的には後者だ。

 

「勿論アラスカに到着してからで大丈夫ですよ。失った右手に関しては私が作ってた装備をくっ付けておいてください」

 

「人使いの荒い中尉様だなぁ!?…わーった。やっておくよ。…よーしっお前ら!未だ油断できないからなぁ!各機整備急げよぉ!それに”ブリッツ”は動かないようにゲージに固定しておけぇ!」

 

マードックの檄に整備兵達が「はいっ!」と活気ある返事をして直ぐ様作業へ取りかかる。

会話を終えるとトールやムウ、そしてキラが此方へ駆け寄ってくる。

一先ずの激闘を潜り抜け一時の休憩をするためにその人混みへ向かったのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「くそっ!くそっ!くそぉ!!」

 

逃げ帰るように”クストー”へ帰還したイザーク達はロッカールームにてパイロットスーツ姿のまま力任せに殴り付けその横でアスランとディアッカは黙りこくったまま着替えていたがふとした拍子にロッカーを蹴りつけると一つ扉が開き中のモノが見える。ソコには吊り下げられた赤い制服がかけられていた。

 

「イザーク!もうやめろっ!」

 

ディアッカが咎めるようにイザークへ声を掛ける。

その言葉にハッとした。その袖を通すものは殺されていないが連れ去られてしまった。

”連合軍の捕虜となった”と聞けばザフト兵士にとってはもう助からないのと同義だ。

コーディネイターを人間扱いせずに酷い拷問に掛けられることになる…それがザフト兵士の間で伝わる連合軍に対するイメージだった。

実際に捕虜保護条約を守らない連合兵士も多いのが事実である。それはザフトも同じであったが。

捕まったが最後、”死”である。

 

「なぜアイツがそんな目に遭わなきゃならない!?」

 

イザークは喚きこの状況を作り出したアスランへ食って掛かる。

 

「こんなところで!?ーええ!?」

 

「だったら言えば良いだろう!?」

 

逆にアスランは喰って掛かってきたイザークの胸ぐらを掴みロッカーへ叩きつけた。

 

「俺のせいだと!俺を助けようとして敵に捕まったと!」

 

アスランの感情にイザークは自分よりも敵に捕まったニコルの事に衝撃を受けているのだと感じ感情が溢れだしそうになり整った顔がくしゃりと歪み涙を流しそうになったが割って入ったディアッカに宥められた。

 

「アスランもイザークも止せ!俺たちが言い争っている場合じゃないだろ!?俺たちが討つべきなのは”ゴーグル付き”だ!」

 

「分かっている!ミゲルも艦長もあの”ゴーグル付き”にやられた…!次は必ず討つ…!」

 

イザークは最後にアスランを見据えロッカールームを飛び出す。続いてディアッカもロッカーへ掛けられたニコルの制服を一瞥し苦々しく痛みを湛えた表情で立ち去った。

 

「く…ぅぅうぅ…っ!」

 

アスランはよろよろと開かれたままのロッカーへ近づきニコルの身に纏っていた制服へ手を伸ばすとパサリ、とロッカーの中に仕舞われていた何かが地面へ広がる。

ニコルが趣味にしているピアノの楽譜が散らばりアスランは力無くロッカーへ拳を叩きつけ力無く地面へへたるように座り込み涙を流す。

脳裏に浮かぶは何時も自分を労ってくれた優しい表情をした同僚であり戦友の姿があった。

嗚咽を溢しながら俯いていたアスランは顔を上げる。

 

「…”ゴーグル付き”…!!」

 

親友(キラ)を、戦友(ニコル)を奪ったあの連合のモビルスーツとそのパイロット…!

どうにか無力化できないかとそんな甘い考えをしていたから二人は奴の手の中に堕ちてしまった…!

 

先程まで放心していた表情は決意に変わり目付きは凄惨へ変わり呟く言葉は殺意を纏う。

 

「俺が…”ゴーグル付き”を討つ…!」

 

自分が甘かった…だから奪われてしまう。必ずこの手で俺が…”ゴーグル付き”を討つのだ、と決意した。

 

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