魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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コメントありがとうございます。【オーブ編】が一段落なので返信させていただきます。
コメント一杯で嬉しいです…!誤字脱字報告申し訳ありません…!

さぁ、物語も中盤へ…!


閃光の刻

小島での戦闘を終え機体の整備とログを確認し一段落した後に食堂にてムウとエアリスは二人で食事を取っていた。

キラは”ストライク”のログの確認とトールの手伝いをしているために格納庫にいる。

 

「しかし…あの連中もしつこいねぇ、もう本部は目と鼻の先だって言うのにさ?」

 

「そうですね…連中もこの艦とモビルスーツを連合本部に届けさせたくないでしょう。まぁ私がザフト側ならそう考えますが…」

 

エアリスの「面倒くさい…」という雰囲気にムウも同意してくれたのか苦笑いを浮かべているのを見て周囲を探った後に真剣な表情で上官を見据え小声で呟いた。

 

「…それよりも気掛かりなのはキラ君達ですよ」

 

その言葉にムウも何時もの陽気さは鳴りを潜めて唸る。

 

「うぅん…"JOSH-A"ね…確かに、アズラエル理事も言ってたがあそこ程危険な場所はないわな」

 

彼も彼処は魔の巣窟である、と認識しているということに苦笑いを浮かべた。

 

「…そうですよね」

 

ニコルを殺さないようにしたことでアスランのキラへのヘイトは無くなっている…筈だ。

仮に無事に切り抜けられるとしてもキラが”アークエンジェル”に残ってしまったことでアラスカに到着してしまえばそれこそ”不幸な事故”という名目で処理されかねないその状況にイメージで頭を抱えた。

 

(撃墜されてラクスに出会わなければ”フリーダム”の受領イベントは無くなる…かといって撃墜されるのも嫌だし。…お父様のお力を借りるのもそれはそれで…うーん…!)

 

「…おい、大丈夫か?」

 

「え、あ、はぁ…大丈夫です。少し、キラ君達の事で悩んでいただけですから」

 

上の空の返事に思わず眉をひそめてしまうムウだったが仕方がない、と理解していた。

 

「…あんまり気負うなよ。幾ら軍本部だって一人のコーディネイターにソコまでする必要はないって思っているさ。アズラエル理事もきっと裏で手を回してるって」

 

「だと、良いですが…もう、いっそのこと…いえ、なんでもありません」

 

「おいおい…穏やかじゃねーな」

 

遠い目で見るエアリスにムウは不憫に思いツッコミを入れた。

 

(まぁ…嬢ちゃんの危惧してることも分からなくはない、な…)

 

確かに第八艦隊合流の際彼女はキラ達を戦場から遠ざける為に動きはしたがキラは戻ってきてしまっていた。

彼女を守りたい、という純粋な願いが裏目に出てしまった…今は未だ”アークエンジェル”の為であるが連合の一兵士として戦えばそれを()()()()()()()()()()ということでありムウはキラは兵士に向いていない甘い…いや優しすぎると思っていた。

 

キラはコーディネイターだがムウにとっても既に戦友の立ち位置におり何度も危機的状況を助けられていた。

しかし、このまま残ればそれすら利用され()()()()()()()()だから、と言う理由で危険な鉄火場へ飛ばされかねない。

 

しかし、それよりもキラ以上にムウは今目の前に居る年若い少女の行く先を案じていた。

どの立場にも居ない連合士官…それでいてナチュラルのエースパイロットはそれこそ”ブルーコスモス”の広告塔にされかねない危険な立場であるのだ。

お前さんも人の事言えないぜ…?とそれと…思い浮かべようとした言葉を頭を振って霧散させたムウは声を掛ける。

 

「一先ず、この状況を打開してから考えようぜ。此方が墜とされちゃ話にならん」

 

「…そうですね。失礼しました。少佐」

 

エアリスは勿論キラやトール達が傷つくのを見たい訳ではない。

何事もなく到着するのならそれに越したことはないし、もしかしたら何事もなくアラスカに到着、除隊を行うことも出来る筈だ。

へリオポリスから今まで自分が敵艦隊旗艦、エースパイロットを葬ってきた…乗っている機体も連合次期量産検討の試作機に乗っていてある意味で”連合に貢献している”と言っても差し支えないだろう。

…それでも想像の域を出ないのが難点なのだが。

そんなことを考えつつムウとの遅めの食事を取っていると上官から声を掛けられた。

 

「そういえばなんだが…」

 

「どうしました?」

 

「嬢ちゃんは宇宙から此処まで襲撃してきた部隊…クルーゼ隊だと思うか?」

 

「違うと思います」

 

即答、するとムウは自分の考えが一致していたことに少し驚く。

 

「へぇ…どうして?」

 

そう問われ少しだけ困ったような表情を浮かべた。

 

「…クルーゼが指揮するのならオーブ近海で”アークエンジェル”は沈んでましたよ。指揮する新しい隊長…恐らく”イージス”のパイロットが隊長なんでしょう」

 

エアリスの言葉にムウは”暗に隊長が未熟だ”と言っているように聞こえて「容赦ないな…」とザフトの指揮する部隊長に少しだけ同情し苦笑いを浮かべた。実際に彼女の戦闘力はザフトのエースパイロットにも匹敵するだろう。

 

「さっきの戦闘で手痛い被害を受けたのですからこれ以上追ってこないで欲しいものです」

 

「そうだな」

 

(きっと恐らく…いや、確実にアスラン達は追撃に来る…)

 

そんな雑談をしながら無事に北回帰線を越えるように祈っていた。

その会話を食事を取りに来たナタルがチラリと聞いていた。

 

◆ ◆ ◆

 

”アークエンジェル”の艦橋のドアが開くのを感じたマリューは時計を見ると交代の時間五分前であることを確認してまさか自室から此処までの距離を秒単位で計っているのではないか?と考えたが彼女ならやりかねない⋯と思い直す。

 

「代わります」

 

「ありがとう」

 

短いやり取りを終えてマリューは立ち上がりナタルは通信席のカズイへ声を掛ける。

 

「アラスカとのコンタクトは?」

 

「通信状況酷く、未だ取れません」

 

その返答にマリューも数十分前に聞いたものと同じであることに二人の女性士官は顔を見合わせ溜め息を吐く。

 

「…このまま行けば明日の夕刻前には北回帰線を越えられるわ。そうなれば連絡も着くでしょう」

 

マリューがそう告げるとナタルは計器を見て苦い顔を浮かべた。

 

「ボスゴロフ級は高速艦です。あの後此方をロストしてくれていれば良いですが…」

 

「深度が浅い場所を狙って航行しているから流石のザフト潜水艦も追ってこれない…というのは希望的観測ね。追ってくる部隊は確かにしつこいわ…”クルーゼ隊”、因縁の部隊ね」

 

”オーブ”から出てきた”アークエンジェル”を辛抱強く待ち続けた相手が連合の量産MSのデータを量産ラインに乗せるのを阻止できるこの瀬戸際で”ブリッツ”を失った程度で引き下がるとは思えなかった。

 

「フラガ少佐とレインズブーケ中尉が「あれはクルーゼ隊でない」と会話を耳に挟んだのですが…」

 

「え?だってあの機体群達は…」

 

へリオポリスから奪われたXナンバー達は此方を追い続けているではないか、とマリューがそう思っているとナタルが困ったように首を振った。

 

「私には分かりませんが…実際に対峙している少佐達…それに中尉が「あれがクルーゼが指揮するのなら此方はオーブ近海で沈んでいる」と話していましたので」

 

兵士なりの”直感”という奴なのだろうか?とマリューは何となく腑に落ちない気分になっていた。

艦橋から去ろうとする前にナタルに先程収容したザフトのパイロットと奪い返した”機体”の状況を確認する。

 

「先程回収した機体と捕虜にしたパイロットは?」

 

「機体に関しては片腕が取れているだけで整備すれば稼働できる、とのことです。それにザフトの捕虜に関しては治療を終えて今は独房に入れています。よっぽど先程の戦闘の衝撃が激しかったのでしょう…未だ目覚めていません。」

 

先程の戦闘を艦橋で確認していたがコックピットに打ち込まれた電磁砲の威力は凄まじく並みの人間ならば死んでいても可笑しくない程だ。

 

「そう…」

 

「それにしても戦闘中だというのに回収するとは…此方のフォローの事も考えて欲しいものです」

 

プリプリと怒るナタルにマリューは苦い顔を浮かべる。

手塩に掛けて製作した奪われた機体が戻ってきた事とこれから連合本部へ向かうと言うのに捕虜をわざわざ連れ帰ると言う事後処理が発生することに素直に喜べないからだ。

それを実行したエアリスはナチュラルであるのにザフトのコーディネイターを圧倒するその天性の才能は本当に貴女はナチュラルなの?と問い質したくなった。

 

◆ ◆ ◆

 

トールの”スカイグラスパー”のログ整備の手伝いを終えて整備作業を終えた格納庫には整備兵達や技師達は休憩に向かい誰一人いない。

居るものと言えば自分と機体達…その中には先程エアリスが激闘の末に鹵獲した”ブリッツ”が片腕を失った状態でハンガーに固定されておりその隣には”ダガー”が鎮座している。

 

「……」

 

キラの脳裏にはアスランの乗る”イージス”とエアリスが駆る”ダガー”が激しく激突する姿が浮かんでいた。

その時にエアリスの叫びとアスランの声が通信機に聞こえ激しさを想起させた。

 

ーゴーグル付きぃ!!ー

 

ー舐めるなぁぁぁぁッ!!ー

 

大切な女性と大切な友人…顔も知らない赤の他人のそれはキラにとっては大事な人たちで…立場は違い殺し遭う事になっている状態に吐き気すら催した。

 

ー滅ぼし合うしかなかろう?ー

 

戦い、そしてこの艦で生活をした敵将の言葉を思いだしゾッとした。

自分達が置かれている状況が今一度現実として突きつけられていることに。

 

ーもし、アスランがエアリスさんを害して…殺してしまったら?ー

 

そんな恐ろしいことをふと、想像してしまい膝に置いていた手が握りこぶしになり力を込めすぎて白くなっていた。

 

「君は…僕の、敵?」

 

その自分が発した言葉が奇妙に響き、スッと心に欠けていたような最後のピースが嵌まったように腑に落ちる。

もし、アスランがエアリスを殺したらキラは許しはしないだろう。そうなればキラはアスランの”友”ではなく”敵”へと変わるだろう。

 

「戦いたくなんて無い…アスランは…僕の…!」

 

”ブリッツ”のパイロット…オーブで見たあの三人の少年達の一人の内、仲間を奪われたアスランはきっとエアリスを”仇”として狙うだろう。

 

そしてその行く先は…。

 

◆ ◆ ◆

 

「レーダーに艦影!」

 

”クストー”の発令所にてオペレーターが鋭い声を上げると海図を見ていたアスラン達は弾かれたように顔をあげた。レーダーパネルに映る光点を見つめているとオペレーター達は素早くデータを照合しアスラン達が望む答えを出した。

 

「ライブラリ照合…『足つき』です!」

 

「間違いないか!?」

 

艦長が問い質すとオペレーターは力強く頷く。

 

「間違いありません!」

 

アスラン達のみならず先の戦闘で仲間を失った若いクルー達も並々ならない熱意に燃えていた。

パネルに送られるデータを見ながら艦長が呟く。

 

「群島が多い海域だな…日の出のタイミング、仕掛けるには頃合いだな」

 

「今日で片だ!”ゴーグル付き”と”ストライク”め!」

 

イザークが自らの平手に拳をバンッと当てて闘志を露にする。

 

「ニコルの仇もお前の傷の礼もまとめて取ってやる!」

 

イザークが声をあげ、ディアッカが不敵な笑みを浮かべると同時に、アスランは自分の中にある冷たい決意を言葉にして冷淡に、告げた。

 

「…出撃する」

 

待っていろ”ゴーグル付き”…!

あの強敵を打ち倒すには何時も以上に冷静でなければならない…そしてこの手でキラを取り戻す!

”イージス”のコックピットに向かい自身の心へ投げ掛けた。

あれはキラの仲間ではなく地球連合の…コーディネイターの強敵で俺たちの驚異となるパイロットだ。

 

機体へ搭乗しその時を待つと”クストー”は機体を発進させるために船体を海上へ浮上させると丁度日の出のタイミング、その緑色の船体が海面を割ってその姿を現した。

 

<発進よろし!>

 

オペレーターからの発進許可が降りアスランは告げた。

 

「今日こそ”ゴーグル付き”を堕とす!アスラン・ザラ、”イージス”発進する!」

 

垂直カタパルトから放たれ飛び出すイージスと共に”グゥル”が展開しその背面に足を乗せ遠くに朝日を受け白い光を反射する”アークエンジェル”を目指し飛翔する。

 

◆ ◆ ◆

 

「ソナーに感!ボスゴロフ潜水級です!」

 

”アークエンジェル”のCIC席にて突如としてトノムラの声が響き渡る。

 

<総員第一戦闘配備!総員第一戦闘配備!>

 

(ッ!やっぱり来た…!)

 

警報がクルー達の眠りを打ち破る。下着姿のままで眠りに耽っていたエアリスは意識を覚醒し毛布を跳ね上げ手早く士官服を着用しロッカールームへ駆け出す。

各要員達も持ち場へ就こうと慌ただしく動いてその人の波を潜り抜け走った。

 

「エアリスさん!」

 

女性用のロッカールームへ到着しようかというタイミングでキラが後ろから声を掛けると驚くように振り返るその表情にキラはどうしようもなく言葉に詰まってしまう。

 

「…?どうしたの?」

 

「エアリスさん…僕は…」

 

貴女とアスラン、戦って欲しくない。アークエンジェルの援護を…と告げたかったが今は一刻を争う。

黙ってしまったキラを察した表情で見た後にエアリスは踵を返してロッカールームへ向かう。

 

「キラ君、ごめん…前にも言ったと思うけど…」

 

振り返るエアリスの表情を見たキラは悟ってしまった。

 

「彼相手に手加減なんて出来ない。もし、そうなれば私が墜とされる。きっとこのアークエンジェルも」

 

真剣な表情に息を呑む。キラ自身その事は身に染みていた。手加減などとそんな甘いことを言っていられる相手ではないと言うことを。

 

「…そ、れは…」

 

「でも、殺したくなんて無いよね。私も同じだよ。出来る限り無力化するようにするから…急がないと」

 

「…はい」

 

そう告げお互いにロッカールームへ入っていく。

分かっていたことだった。彼女は同い年だけど”兵士”であり”戦士”なのだ。自分とは覚悟が違う。

敵を目の前にして”手加減”など出来る筈がない。微かな望み…淡い希望に縋るしかないのだ。

 

◆ ◆ ◆

 

「敵影三!五時方向、距離三000!」

 

CICの席に座りトノムラが声を上げると”アークエンジェル”に接近する機影が映る。

”グゥル”に乗るXナンバー達が射程距離に入った途端に散会する。それはレーダー上の光点でも見ることが出来た。

 

「同方向より熱源!」

 

同時にサイの言葉にマリューが素早く指示を出した。

 

「回避!取り舵二十!」

 

”バスター”が放った<超高インパルス狙撃砲>から放たれたビームが船体を掠めこれが戦いの火蓋となった。

 

「アンチビーム爆雷用意!ミサイル発射管”ウォンバット”装填!”イーゲルシュテルン”並びに”ゴットフリート”、”バリアント”起動!」

 

ナタルが号令を掛けると”アークエンジェル”は針ネズミのように火器をせり出して周囲は夥しい程の火花を撒き散らし接近する敵機を近付かせないようにしていた。

砲火が飛び交い機動兵器から放たれたビームが船体を掠めアンチビーム爆雷で減衰する。

外れたビームが水面を掠め大きな水柱と水蒸気が立ち込める。

 

「各パイロットの状況は!」

 

ナタルにミリアリアが振り向き答えた。

 

「”一号機”にフラガ少佐、”二号機”へ、ト…ケーニヒ二等兵!”ストライク”は甲板後部!”ダガー”も甲板後部に!」

 

その声を聞きながらキラは”ストライク”へ乗り込み起動させムウの毒づく声を聞いていた。

 

<ちっ!分かっちゃいたがすんなり通させてくれないかッ、嬢ちゃん!>

 

パイロットスーツに着替え”ダガー”のコックピットに潜り込み起動させながらムウへ返答する。

 

<了解です!少佐!…バジルール中尉!私が迎撃に出ます!当てないでくださいよ!ケーニヒ二等兵は”ストライク”と”アークエンジェル”の直援に!直撃させなくて良い…牽制してくれるだけで助けになる!良いね?無理して彼女に怒られないように!>

 

<りょ、了解!>

 

彼女なりの緊張の解し方に艦橋にいるメンバーは追われる立場だが少しだけ気持ちの余裕を持つことが出来ていた。が、ナタルは叱責するようにエアリスに告げた。

 

<中尉!無駄口を聞いてる場合か!………各機武運を!>

 

準備が整った機体からハッチが解放されカタパルトより射出されていく

 

<フラガ機発進どうぞ!続けてケーニヒ機どうぞ!…気を付けて>

 

ムウが威勢良い啖呵と共に飛翔する。

 

「今日こそ叩き落としてやるぜッ!ムウ・ラ・フラガ!出るぞ!」

 

「トール・ケーニヒ!出ます!ッ!」

 

”スカイグラスパー”二機が左右から飛び出し接近する”バスター”と”デュエル”へ向かっていき直ぐ様に起動が完了した”ストライク”が発進する。

 

「(エアリスさん…アスラン…どうして貴女と君が戦わなくちゃならないんだ…!)ッ…行きますッ!」

 

悲鳴にも似た独白がキラの心を蝕むが今はそんなことを言っていられない。自分がどうにかしなくてはキラの大切な人が傷ついてしまうのだから。やるしかない、と。

今回のストライクは”ジェットストライカー”を調整して装備しているため万が一甲板から振り落とされても問題は無いしこの装備ならばエアリスの機体に追い付くことが出来た。

そんなことを考えつつ”アークエンジェル”を守るべく甲板へ降り立ち接近するXナンバーへライフルを構えた。

 

そして直ぐ様エアリスの機体がカタパルトへ運ばれた。

 

<エアリス機発進どうぞ!頑張って!>

 

「(アスラン達の猛攻を凌ぎきれるか…?やるしかない…!)ッ了解!エアリス・レインズブーケ、”ヴァリアブルダガー”行きますッ!!」

 

発進すると同時にPS装甲が展開し鉄灰色の装甲が濃紺に色づきバイザーに光が点ると同時にセンサーに点滅と接近を告げるアラートが鳴り響く。

白い尾を引いて接近する三機のXナンバー…”デュエル””バスター”…そして”イージス”。

迎撃するために武装の安全装置を解除し手にしたライフルを構え背面ストライカーパックの武装の火を放った。

 

◆ ◆ ◆

 

二機の戦闘機と四機のモビルスーツが南洋の海に飛び交う。

”バスター”が両脇に抱えたガンランチャーとビームライフルを構え飛翔し”デュエル”も増設されたレールガンとミサイルで狙う。

対する”アークエンジェル”も”バリアント”と”ウォンバット”、”ヘルダート”で迎撃し”ストライク”が接近するミサイルとモビルスーツを甲板上部で狙撃する。

 

「うぉおおおおおおおおおっ!!!」

 

「くッ…!!」

 

”アークエンジェル”へ接近する”デュエル”に”ヴァリアブルダガー”が放ったビームが交差しシューターフロート(回転するように撃ち合い)で回避したが互いに放ったビームがシールドに衝突し皮膜を剥がしていく。

先程までとは異なり顔も見えない状態だと言うのに”デュエル”からはパイロットの鬼気迫る表情を感じてエアリスはその攻撃を捌く。

放たれたビームを回避し打ち返すと”デュエル”はヒラリ、と反転して再び撃ち返し迫る。

二機が激突している一方で”アークエンジェル”は攻撃を仕掛ける”バスター”の攻撃へミサイルを発射するがガンランチャーによって叩き落とされてしまいビームライフルによる反撃を受けラミネート装甲の被弾率が上昇していく。

奪われたXナンバーはその戦い方が洗練され本来の性能を発揮していく。

 

「着いてこいトールッ!」

 

「了解ッ!」

 

上空からムウ達の”スカイグラスパー”が急降下し”バスター”へ色鮮やかな火線が降り注ぐがそれを”バスター”は回避しお返し、と言わんばかりに肩部ミサイルポットを開いた。

二機は素早く対応し左右に分かれムウは海面ギリギリを飛翔し追い付けないミサイルは海面に激突し無力化、トールもフレアーを使い無力化し二機は窮地を脱したがその隙に”バスター”の攻撃は確実に”アークエンジェル”の攻撃オプションを奪っていく。

放たれたビームライフルが”イーゲルシュテルン”を破壊し艦橋後部下のミサイル発射管を破壊し激しい誘爆を引き起こし艦橋にいるマリュー達に凄まじい揺れを与えていた。

 

艦橋では被害状況を知らせるクルー達の声、それは次第に緊迫し切迫してくる。

 

「”イーゲルシュテルン”五番、六番被弾!」

 

「”ヘルダート”発射管隔壁閉鎖!」

 

「くっ…!アラスカとのコンタクトは!?」

 

「ダメです!電波状況ひどく応答ありません!」

 

通信が繋がらない、しかしそんなことを気にしている暇はなくナタルは迎撃するために指示を飛ばす。

 

「”ゴットフリート”照準!当てろよ…てぇーっ!!」

 

「ッ!?直上に”イージス”!」

 

”ダガー”と”デュエル”が激しい戦闘を繰り広げている間に弾幕を掻い潜ってきた”イージス”が上昇し”アークエンジェル”を見下ろす形となっておりそれを見たキラは”グゥル”目掛けライフルを構え発射するがその直前に機体を蹴って離れモビルアーマー状態に変形し艦橋を狙った。

 

「ッ!面舵!回避ーッ!」

 

”イージス”から”スキュラ”が放たれその直前にノイマンが操縦桿を大きく右に切るとその熱量は艦橋すぐ横を横切り回避した…かに思われたが左舷の”バリアント”を穿ち激しい爆発を引き起こしCICのコンソールからはショートを引き起こしていた。

 

「くそっ…!」

 

キラはライフルからビームを発射するが”イージス”はヒラリと回避してモビルスーツ形態に戻って放り投げた”グゥル”に飛び乗って離れていく。

”アークエンジェル”の被害は甚大であり左舷より煙を吐き出して高度がドンドンと下がっていき艦橋には警告音と報告が上がる。

 

「プラズマタンブラー損傷!レビテーター、ダウン!」

 

チャンドラが報告しノイマンが苦しげに叫んだ。

 

「揚力維持できません!」

 

「姿勢制御を優先して!」

 

「緊急パワー、補助レビテーター接続!」

 

マリューとナタルが命令するがその声は上ずりがちであった。

 

「”アークエンジェル”!?…いい加減にしつこいッ!」

 

帰るべき場所から火の手が上がっていた。

”デュエル”との戦闘に気を取られていたエアリスは母艦が被害を受けたことを確認しながら振り下ろされるサーベルをシールドで受け止め、がら空きになった胴体へ蹴りを叩き込んだ。

 

「なにぃッ!?…うわぁああああああっ!!?」

 

体勢を崩した”デュエル”は反射的にレールガンとミサイルを放つが”ヴァリアブルダガー”はその場で反転し手にしたライフルと背面のビームランチャーで肩部レールガンとミサイルポットを穿ち爆破、体勢を崩す…が”デュエル”もタダでやられた訳ではなかった。

 

「くそぉおおおおッ”ゴーグル付き”ぃ!!!」

 

「くっ…!?」

 

海に落下していきながら手にしていたライフルから放たれたビームが”ダガー”が手にしていたライフルを掠めスパークし、寸での所で手を離すが爆発からは逃げることはできずに吹き飛ばされてしまう。

”デュエル”は”グゥル”に着陸し体勢を整えた。

 

「ぐぅううううううううっ!?…ッ!!」

 

「イザークッ!うぉおおおおおおっ!」

 

しかし、”イージス”はフォローするように入り込みタイミングを見逃さず襲いかかる。

放たれたビームを咄嗟に脚部から切り離したビームブーメランを空中でキャッチしビームの刃で切り裂きその直後に

投擲した。

 

「いけよぉおおおおおおっ!!」

 

「なっ!?あの状態で反撃、するだとッ!?」

 

アスランも咄嗟にシールドを構えたがビームブーメランの特性上シールドに激突した瞬間に大きく仰け反らせられ”アークエンジェル”から引き剥がすように小島へ叩き落とし今度は”ダガー”が戻ってきたビームブーメランを手持ち武器にして体勢を崩した”イージス”へ斬りかかる。

負けじとアスランも機体を動かし斬撃を弾き機体を押し込み”アークエンジェル”から離れ眼下に広がる小島の一つに墜ちていき”赤”と”濃紺”が切り結ぶ。

 

「エアリスさんッ!」

 

くそっ、と揺れる”アークエンジェル”の甲板上で悪態を吐くキラは小島に降り立ったエアリスの元へ向かおうとするが武装を奪われたとは言え健在の”デュエル”と”バスター”の攻撃に晒されていた。

艦橋では警告音がけたたましく鳴り響きコンソールには不調を示すランプが明滅している。

数々の攻撃を受け艦の命とも言えるエンジンを手懐けてきたノイマンもついぞ叫びを上げた。

 

「姿勢制御不能ッ!?」

 

「着底する!総員衝撃に備えよッ!」

 

マリューがノイマンの報告に歯噛みし指示を出したその瞬間、体に着底した衝撃が伝わり艦橋が揺らされる。

揺れる艦橋にサイの声が響いた。

 

「ッ!二時方向に”バスター”ッ!」

 

高度を落とす”アークエンジェル”の前に立ちふさがるように”バスター”が回り込んでくるが振動に負けないようにナタルが艦砲射撃を指示を出すが巨体は小島の一つに着底し砂浜を削り森林をなぎ倒し白い装甲を傷つけていき島に乗り上げるようにようやく停止した。

マリューは未だに揺れの収まらない艦橋で上を向くと”バスター”が腰に着けた二門の砲身が此方に向けられていることに気づきハッとする。

 

ーやられる…!ーと時が止まったような感覚を覚えたその瞬間。

 

《やらせるかァァ!!!!》

 

《ミリィー!!!!!》

 

ムウとトールが雄叫びを上げると共に二機の”スカイグラスパー”が突っ込んだ。

トールの”ランチャーストライカー装備のスカイグラスパー”が”バスター”の”グゥル”を撃ち抜き爆発するそのタイミングで飛翔し接近する二機へ向けてガンランチャーとライフルを構えるがムウが駆る”バーストストライカー装備のスカイグラスパー”が発射した”アグニ”が放たれ交差すると次の瞬間ムウの機体は右翼に散弾を食らうが”バスター”は右腕を吹き飛ばされ小島へ墜ちていく。

 

「少佐!」

 

被弾し黒煙を上げる”スカイグラスパー”だったが海面に着陸し浅瀬に乗り上げたらしい。

それを見て安堵するトール。

 

「…大丈夫だ!それよりナイスフォローだったぜ新兵!」

 

「は、はいっ!」

 

二機の”スカイグラスパー”によって窮地を脱した”アークエンジェル”は前方に墜落した”バスター”は起き上がろうとしたがギギギ…とギクシャクしていた。

 

「くっ…ハイドロ消失…駆動パルス低下…ッ!?」

 

「”ゴットフリート”照準!」

 

”バスター”が身動きを取れないのを確認したナタルは間髪入れずに”ゴットフリート”を照準するが…。

 

「待って!」

 

マリューが気がつき発射を止めるとモニターの向こうには”バスター”のコックピットが開き中からパイロットスーツを着用した兵士が渋々、と言った感じに手を上げていた。

 

「投降するつもりか?!」

 

このタイミングでか!?驚きの声を上げるとマリューが後ろを振り返り二人はしばしば顔を見合わせて困惑した。

 

◆ ◆ ◆

 

「ディアッカ!貴様らぁああああっ!」

 

バスターが撃墜され身動きが取れなくなっている状態のその姿を見てしまったイザークは機体を座礁し身動きが取れなくなっている”アークエンジェル”へ向け飛翔する。

 

ーニコルに引き続きディアッカも…!

 

イザークは焦燥と怒りに駆られ戦艦へ狙いを定めるがそう簡単には行かなかった。

 

「”デュエル”!?未だ来るのか!?」

 

「邪魔をするなっ、”ストライク”ゥ!」

 

”アークエンジェル”の甲板から飛翔し攻撃を仕掛けようとする”デュエル”の迫る顔面に”イーゲルシュテルン”を発射しながらサーベルを振り下ろすが”デュエル”は咄嗟に”グゥル”を飛び出して”ストライク”目掛け蹴りを見舞った。

 

「ーッ!?くぅ…!?」

 

「くそぉおおおおおおおおおっ!?」

 

その質量にたまらず吹き飛ばされキラは素早くスラスターを吹かし体勢を整えながらライフルを腰のラックから抜いて構え放たれた一撃は”グゥル”に着陸したその直前に”デュエル”の右足を撃ち抜きバランスを崩しそのまま海へと墜ちて行き大きな水飛沫、柱を上げた。

 

「はぁ…はぁ…ッ」

 

甲板に着陸し周囲の状況を確認する。

既に”ブリッツ”は鹵獲し”バスター”は中破、そしてパイロットは捕虜…残るはアスランの”イージス”のみだ。

素人から見ても分かる、もう既に”詰み”だと。

 

(もう分かるだろうアスラン…!もう、君たちは…!)

 

友人がこの状況を見て撤退してくれることを祈った、しかし。

 

「え…?」

 

次の瞬間に離れた小島の方から爆発音が響き渡る。

それはエアリスがアスランと共に墜ちていった小島の方向だった。

急ぎスラスターを吹かしそちらの方向へ向かうキラが見た光景は”イージス(アスラン)”が”ヴァリアブルダガー(エアリス)”を撃墜した光景だったのだ。

 

「あ、あぁ、あぁーッ…!!」

 

力無く倒れる”ヴァリアブルダガー”の残骸を目撃した瞬間、キラのナニかが切れた。

 

「ア"ァ"ア"ア"スラア"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ア"ン!!!!!!!」

 

◆ ◆ ◆

 

少し時間は遡る。

 

”ヴァリアブルダガー”と”イージス”は戦闘を続けていた、いや”イージス”が纏わり付き烈火の如く攻撃を繰り広げてた。

 

「”ゴーグル付き”ィ!」

 

”イージス”のコックピット内部でアスランは喚きながら”ヴァリアブルダガー”へ斬りかかるがエアリスはラウンドシールドを受け流し逆にシールドバッシュを受け飛び退けられる。

アスランはエアリスとの戦闘で既に冷静さを失い既に視界には憎き連合軍機しか入っていない。

再びがむしゃらにスラスターを吹かして体勢を整え振り上げた右手のサーベルで斬り掛かるが右手をはね除けられ回し蹴りを見舞われてアスランはカッとなる。

 

ー連合の、ナチュラルの女パイロット如きにあしらわれているのか!?

 

「ふざけるなぁああああああっ!!!」

 

”イーゲルシュテルン”を発砲しながら突っ込みサーベルで再び斬りかかる。

 

ーお前が…キラと仲間を奪った…!

ーお前がいなければキラは戦わずに済んだのに!

あの時(宇宙)、ラクスと一緒に此方に来る筈だったのに!

ーどうしてキラがナチュラルの戦艦に乗っている!?お前が縛り付けているからか!!

 

「”ゴーグル付き”ーーーーっ!!!!」

 

その時、アスランの中に眠る”可能性の因子《SEED》”が弾けた。

 

「俺がァッ!お前を、討つッ!」

 

視界がクリアーになり敵の動きが見えた。

振り上げたサーベルを叩きつけ受け止めた瞬間に左手のサーベルを展開し叩きつけると大きく後方へ吹き飛んだのを確認するとアスランは”イージス”を空中で変形させて”スキュラ”を放つと”ヴァリアブルダガー”は虚を突かれて高出力の二色ビームを辛うじて避けたが大きく体勢を崩されてしまった。

”イージス”の攻撃を受け止め反撃しようとした”ヴァリアブルダガー”の動きが鈍く、いや止まったと言うべきだろうそれをアスランは逃さず、シールドを保持した左手を切り飛ばし胸から腹部を切り落とした。

次の瞬間に大きな爆発が起こった。

 

◆ ◆ ◆

 

一方で”ヴァリアブルダガー”のコックピットでエアリスは冷や汗を掻いていた。

 

「くっ…!?なんでこんなに私を狙ってくるんだ…!?」

 

”イージス”が突っ込んでくるのを身体が無意識に機体を建て直して攻撃を防ぎ、受け流そうとしている。

しかし、エアリスには不可解だった。

 

「なんでこんなに…ッ!」

 

まるで”仲間を殺された”かのような親の敵でも見るような行動に困惑が強まるのはアスランの”種”を割るような行動…ニコルを殺したわけではないのに何故…!

しかし、今の状況ではアスランを殺さない、ではなく自分がアスランに殺されないように抵抗するしか出来ていない状況に表情に苦いものと焦燥が浮かんでいる。

それに拍車を掛けているのがコックピット内部に鳴り響く警告音の数々…バッテリーは問題ないが駆動系が悲鳴を上げていたのだ。

宇宙から地上の此処迄戦い続けた”ダガー(相棒)”は成長したエアリスの能力に追い付けなくなってきている。

 

ー死ぬわけには行かない!

 

エアリスは焦りながら”イージス”を退ける為に動くが”スキュラ”を不意に撃たれて大きく体勢を崩してしまった。

 

「…しまっ!?」

 

その隙を逃さず”イージス”は突っ込みサーベルを振り下ろした。

 

「ぐぅうううううううっ!?!?……はッ!?」

 

体勢が崩れたそのタイミングでサーベルを受け止めた瞬間に左腕が完全に逝った。

次の瞬間に左腕が勢いで吹っ飛び煙を上げスパークし機体の駆動系が踏ん張った衝撃で火花を散らしその動きが鈍くなり軸足に関しては分解し始めていた。

 

エアリスの視界は突如としてスローモーションへ変化する。

 

「あっ」

 

迫るサーベルの赤刃が殺到するのを見て察するエアリスは冷静だったのはアドレナリンが出ているからか。

”イージス”はサーベルでコックピット狙うのが分かったエアリスはスラスターを吹かして体勢をずらすと胸から腹に掛けて斬り落とされるその直前、コンソールを操作し後方へ引っ張られる衝撃と共に意識が途切れた。

 

◆ ◆ ◆

 

炎を上げ残骸と化した”ヴァリアブルダガー”を見てキラの中の”種”が弾けた。

 

「ア"ァ"ア"ア"スラア"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ア"ン!!!!!!!」

 

キラは喚きながら”イージス”へ突撃する。

その弱気な心は何処へ、その胸の中には大切な存在を奪った憎き敵を滅ぼさんとする怒りが渦巻いていた。

目の前に乗っている人物が幼き頃からの友人だと言うのにそれを忘れ叫びサーベルを振り下ろす。

 

ーエアリスさんを…エアリスさんを…!!!ー

 

”イージス”も反撃してきて苛烈さを増していき互いの光刃が交差し装甲を傷つけ合いながら死闘を演じる。

キラはがむしゃらで尚且つ正確にサーベルを振るうと”イージス”の左腕が斬り飛ばされ宙を舞った。

 

アスラン()が…アスラン(こいつ)が…エアリスさんを…!!!ー

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!」

 

理性を無くした獣の様に叫び目の前に立ちふさがる”敵”をただ滅ばさんとする”戦士”としてその力を振るった。

コーディネイターである自分を肯定し守ってくれ時には励まし優しくしてくれた人種など関係無かった。

 

ーキラ君は戦わなくても良いんだよ?私が頑張るから

 

裏表の無い心からの笑みに惹かれていた。その表情が脳裏にちらつく。

 

ーよしよし…キラ君は頑張ってる…頑張ってるよー

 

優しく、母のような無償の愛を向け抱き締めてくれた少女。

そんな優しい少女をこいつが…殺したーーー!

 

サーベルを振るった動作で”ストライク”が飛び上がり”イージス”の頭部を蹴りつけた。

機体が吹っ飛ばされ呻くアスランだったが機体の体勢を整える為左足で地面に着陸し後方へ飛び退く”イージス”を逃すまい、と迫る…が対する”イージス”は残った腕と両足のサーベルを展開しビームの刃が”ストライク”の左腕を切り飛ばしシールドが宙に舞う。

お互いのパイロットがコックピット内部で獣の様に叫びながら失った者達へ向け悲しみを表明するように激突を繰り返した。

”イージス”の頭部は破壊され”ストライク”のコックピットハッチがサーベルによって切り裂かれ露出する。

二人の悲しみと怒りを体現するように大粒の雨と雷鳴が鳴り響いた。

 

アスランもキラも”互いに殺し合うだけの感情”しか持ち合わせるしかなかった。

”友”ではなく、”敵”だった。

 

永劫に続くかと思われた戦闘は終わりを告げた。

イージスはモビルアーマー形態へ変形しクローで四肢を拘束し露出した”スキュラ”で止めを刺そうとした次の瞬間、フェイズシフトが落ちる。

 

ーこんなところで…!?

 

トリガーを引くが発射できずに呆然とするアスランだったが警告音で我に返る。

目の前には拘束を解除しようする”ストライク”が手にしたサーベルでクローを両断しようとする光景が視界に入り軍人として教育されたアスランは敵を倒す為の”最終手段”を採った。

 

ボタンを押してテンキーが露出し番号を入力し10カウントが表示された。

アスランは”イージス”の自爆装置を作動させたのだ。

装置を起動させ機体から脱出するのを切り裂かれたコックピットハッチから見たキラは「逃げるのか…!?」と思うのと同時に背筋に嫌なものが走った。

 

アスランとキラの二人、次の瞬間に衝撃と閃光が身体と視界を覆い尽くしたーーーー。

 

◆ ◆ ◆

 

凄まじい衝撃は”アークエンジェル”にも届いた。

その音に損傷した機体と共に帰還したムウとトールや整備中だったマードック、そして艦橋にいたクルー達もその爆音に耳をたてた。

そして呆然とするミリアリアの前でモニター…それが二つ消えていたことに気がつく。

 

「…え?」

 

”ストライク”と”ダガー”の通信回線が”SIGNAL LOST”へ置き換わっている事に。

切り替わったモニターにミリアリアが震える手を伸ばす。

 

「キラ…?エアリス…?」

 

応答はない。返ってくるのはノイズだけ。

 

ーそんな、はずがない…。

 

同じく爆炎が立ちのめる光景を艦橋でマリューとナタルが呆然とし息を飲んで見つめていた。

その炎が天を焦がさんとする程に立ち込めその赤色と周囲の雨が血を思わせるほどに降り注いだ。

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