魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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アスラン辺りの下りがめちゃくちゃ難しい…!
お気に召さなかったら申し訳ない。
本当はエアリス撃墜ルートじゃなくて本編に沿った流れだったんですが…ええ。ほぼアドリブです。
ここからアスランがどんどん曇って行きます。

アンチ・ヘイト追加してたっけ…?


【アラスカ】編
約束の地へ


「エアリス?ーキラ?エアリス?聞こえますか?」

 

艦橋はしん、と静まり返りミリアリアの問いかける声だけが聞こえてくる。

 

「応答してください、キラ?エアリス?」

 

初めは不思議そうに問いかけていたが次第に声色に不安の色が色づいていくのを聞いていたクルー達はただ呆然と聞いており隣にいるサイが恐ろしいものを見るように画面に表示された【SIGNAL LOST】の表示に目をやる。

後ろにいるチャンドラとトノムラはじっと身を固くして振り返りたい衝動を押さえていた。

 

艦長席に座るマリューも天を焦がし降り注ぐ血のように赤いスコールを見つめながら呆然としていた。

爆発があった地点は”ダガー”と”イージス”…そして後を追うように向かった”ストライク”…その光の柱が立ち上る地点を…見つめていた。

 

(まさか…でも、そんな…!?でも、そんなことが…)

 

同じことを繰り返そうとする思考のループから断ち切ったのは格納庫からの通信だった。

 

<おい!さっきの爆発は!>

<なんですか!?今の爆発!>

 

墜落した”スカイグラスパー”を格納し戻ってきたムウとトールが問いかけてくるのを確認したマリューが我に返り答えた。

 

「爆発は…分かりません…ーですが、」

 

マリューは一瞬躊躇った後に続けた。

 

「”ダガー”…そして”ストライク”共に交信途絶です…」

 

それがマリューが今答えられる真実だった。

モニターの中でムウの顔がみるみるうちに強張っていきトールは呆然とした冗談ですよね?、という表情を浮かべている。

ムウとマリュー、そして艦橋にいるクルー達も同じ結論に至ったのだ。

そう、ただ一人を除いて。

 

「キラ?エアリス?応答して二人とも!」

 

ミリアリアの恐怖に染まった声がマリューの胸を突き刺す、不意に。

 

「ッ!?艦長!六時の方向!レーダーに機影、数、三!」

 

フレイの強張った声が艦橋に響きマリューはハッと顔を上げた。

 

「AMF-103…”ディン”です!会敵予想時間十五分後!」

 

クルー全員の顔が恐怖にひきつる。マリューはハッとなり顔を上げる。

 

「迎撃用意!」

 

その指示にナタルが激しい口調を露にする。

 

「艦長!現在の本艦の攻撃オプションでは対応できません!これでは十分も経たずに撃沈されます!」

 

「キラ!エアリス!聞こえる!?応答して”ディン”が…!」

 

必死に叫び続けるミリアリアにナタルが立ち上がり通信機のスイッチを切断する。

冷徹に、悔しそうな表情を浮かべ真実を告げた。

 

「…もういい。ハウ二等兵。ヤマト少尉、レインズブーケ中尉は共にMIAだ。…分かるだろう?」

 

その言葉にクルー達は身を強張らせた。

 

「そ、んな…」

 

ミリアリアが弱々しくその事実を認めたくない、と頭を振りかぶるがナタルは敢えて強く肩を掴んで揺さぶった。

 

「受け止めろ!割りきらなければ死ぬのは自分だぞ!…アルスター二等兵、ハウ二等兵を連れて退出しろ。」

 

「了解…行こう、ミリアリア…」

 

「……」

 

ミリアリアはフレイに連れられて艦橋を出ていく。

フレイも辛いだろうにその感情を圧し殺し友人を手助けするために介助し出ていく。

入れ替わりでカズイがオペレーターシートに座った。

 

「”ディン”接近!会敵まで十一分!」

 

カズイの報告に焦る”アークエンジェル”クルー達。

 

「マードック曹長!エンジンの修繕は?」

 

エンジン部にて修繕を急ぐマードック達へ通信をする。

 

<エンジンホースのブランケットの応急処置が終われば飛べまさぁ!急げよッ!>

 

整備兵達も必死の補修作業もあり漸くその作業が終了した。

 

「パワー戻りました!」

 

パイロットシートに座るノイマンが安堵の声を上げた。それを聞いたマリューは判断を下す。

 

「離床する!出力最大!」

 

応急処置を終えたエンジンが唸りを上げると同時に後方へ振り返り問いかけた。

 

「”ダガー”と”ストライク”の最終確認地点は!?」

 

「七時の方向の小島です!」

 

チャンドラが答えるがナタルが心外の声を上げる。

 

「この状況で戻るつもりですか?!」

 

マリューは唇を噛む。確かにこの状況で戻ったところで”ディン”に撃墜されるし無事かも分からない二人を探すためにこの艦のクルーを危険に晒すわけには行かなかった。

だがあの二人ならば無事かもしれない…という一抹の希望が彼女の心を支配した。

 

「”スカイグラスパー”一号機と二号機は!?」

 

<でれま>

 

<ダメだ!さっきの戦闘でエンジンがやられてる!二号機のパイロットも出撃停止だ!>

 

<!?何言ってるんですか少佐!俺はまだ…>

 

<バカ野郎!さっきの出撃から返ってきて腰が抜けて動けなくなってるだろうが!そんなお前が出撃したら撃墜されて二の舞になるぞ!分かれ!>

 

<でも!あの二人が脱出してるかも知れないんですよ!?>

 

<だからってその状態と機体で出せるかよッ!>

 

<ッ…クソッ…!!>

 

受話器越しに残ったパイロットの激しい応答が繰り広げられていた。

マリューには見えないがムウには慣れない戦場で身体が強張っているトールが格納庫の床につまづいている。

この状態では無勢に多勢…撃墜されるのが関の山だ。

受話器を叩きつけるように下ろすと次々と報告が上がってくる。

 

「”ディン”の射程距離に入ります!」

 

「艦長!撤退しなければやられます!」

 

「本部とのとコンタクトは!」

 

「ありません!」

 

援軍はない。戻って留まることもできない。

だがしかし、この艦の為に必死に戦ってくれた若い二人を見殺しにすることはできない…だがしかし、この艦にいる数百名の命を奪うことになる。

マリューは天秤に掛け断腸の思いで告げた。

 

「この空域を離脱する!中尉!人命救助でオーブに打電!島の位置と救難要請を!」

 

その指示にこの艦と艦長…そしてエアリスによって絆されたナタルは…受け入れた。

 

「ッ!?…了解、オーブへ救難信号を打電!」

 

下士官達が急ぎオーブへ島の位置と救難信号を打電すると続けて報告が入った。

 

「”ディン”接近!距離八000!」

 

「機関最大!現空域を離脱することを最優先とする!」

 

マリューの檄が飛び”アークエンジェル”は逃げ出すように慟哭の空の下を離脱するのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「回収したんですか?」

 

「元は此方の機体だ。置いていって敵にまた使われでもしたら癪だろうが」

 

被弾した”バスター”がキャリアーに載せられ格納庫の奥へ運ばれていくのを見てムウは複雑な心境になった。

元々はこちらの機体ではあったが宇宙から地上で幾度と無く煮え湯を飲まされた経験のお陰で艦の中に有ることに当惑を覚えると同時にー。

 

(なんでキラや嬢ちゃんの機体が無いのにコイツらがあるんだ…)

 

既に”バスター”と”ブリッツ”のパイロットは拘束され営倉入りしていると聞いている。

格納庫には右腕を切り落とされ推進ユニットが破損した”ブリッツ”と両腕を破壊された”バスター”を眺めていたムウは急激な加速に少しよろめき掛けた。

 

「離脱するんだな…艦長」

 

当然だ。艦の攻撃オプションは粗方破壊され艦搭載機も戦闘機二機だけという有り様では新たに出現した敵機体を迎撃する事はできない。

その判断をあの優しい艦長が苦渋の決断で下したのだと想像に固くなくムウは苦い表情を浮かべる。

整備兵が忙しなく動き回るその中で下士官の制服を着用する戦闘時にオペレートしてくれるミリアリアとフレイは格納庫に現れた。

二人は見渡した後に一点を見つめ歩き出すその姿を見てムウは身体を強張らせた。

そこは”ダガー”と”ストライク”が格納されていたメンテナンスベッドであり二人は当てが外れたように立ち止まり一人はその場で座り込んでしまった。座り込むミリアリアの背中をフレイが擦り涙を泣きすする声が聞こえムウは慌てて掛けよった。

 

「エアリス、キラ…?」

 

「ミリィ…ダメよ、ここにいちゃ」

 

「二人は…?」

 

ムウが近づいたのに気がつきミリアリアが振り向く。その表情にムウはやるせない怒りが溢れ拳を握りしめてしまう。フレイは苦しそうな表情と悲しみを含んだ表情でミリアリアを宥める。

 

「ミリィ…」

 

「そんな筈、無いんです…」

 

弱々しくムウへ問いかけるミリアリアの表情に必死の色が浮かぶ。二人が死んだなどと、信じられないと認められないと。

 

「MIAだなんて……そんな筈が……無いんです…!あの二人が…キラと…エアリスが…何時もみたいに、”疲れた”…って言って帰ってくるのに…うぅ…うぁああ…っ!!」

 

「ミリィ…うぅ…うぁああっ」

 

堰を切ったように泣き崩れいつものように元気を振り撒いていた少女達の痛ましい姿を見てムウは手を伸ばそうとするがその直前で手を引っ込める。

 

(何故なんだ…っ!!)

 

ムウの拳は血が出るのではないか、という程に強く握りしめられていた。

彼もまた脳裏に浮かぶのは自分よりも一回りも下の少年少女…コーディネイターでありながら守るためにその手に銃をとった少年とその少年を戦場に送らせないようにするのとこの艦を守ってくれた実年齢よりも幼い少女…何故大人である自分が生き残りまだ十五歳の少年少女が戦場で散らなければならないのかーー?

 

「くそォォォッ!!」

 

ムウは行き場を無くした怒りをメンテナンスベッドの柱にぶつけ格納庫には慟哭と震える音だけが響いていた。

 

◆ ◆ ◆

 

一方でザフト軍潜水艦”クストー”ではイザークの叫びが発令所に木霊していた。

 

「不明だと!?一体どういう事だ!?」

 

”ストライク”との戦闘後に”クストー”に回収されその際に戦闘での怪我を治療した後に発令所に来たイザークは艦が北方ではなく南下しているのと艦長による友軍の状態を聞かされた為だ。

 

「詳しい状況は分からない」

 

艦長はイザークと目を合わさずに淡々と状況を伝える。

 

「まず”バスター”と交信が途絶えその後に大きな爆発が起こった後に”イージス”との通信が途絶した」

 

「エマージェンシーは!?」

 

「どちらからも出ていない」

 

その問いに対して艦長に無慈悲に答えた。

 

「ッ!?”ストライク”と”足つき”は!?」

 

「今、”足つき”はボズマン隊が追撃している。我々はクルーゼ隊長から帰投命令が出た」

 

「そんな馬鹿な…今すぐ艦を戻せッ!あの二人が…そう簡単にやられる筈がない…!伊達に”赤”を来ている訳じゃないんだぞ!?」

 

「…ならば、状況判断も冷静に出来る筈だぞ。我々は帰投を命じられたのだ」

 

”クストー”の艦長は自分の息子と同じ年齢のイザークに言い聞かせるように告げた。

その瞳がイザークの感情をより大きく動かす。やめろ、何故そんなにも可哀想に…みたいに俺を見る…!まるで一人取り残された子供みたいじゃないか…!

そんな筈がない、あの二人がやられるなんて…!

 

「捜索には別動隊が出ている」

 

「だが…!」

 

「オーブが動いていると言う情報もある。分かってくれ」

 

これ以上は言わないぞ、と実質命令を受けイザークは黙り込むしかなった。

 

◆ ◆ ◆

 

”アークエンジェル”からの通信を受け飛行挺の中でカガリは戦闘があったとされる小島群を小窓から覗いていた。

 

(あいつらは無事だろうか…?)

 

カガリの脳裏には最後に見た笑い合った二人の笑みがちらつく。

二人と過ごした時間は決して長いとは言えないし短いとは言えない時間であったが印象に残る二人だった。

特にエアリスは自分の戦争に対する意識を根本的に変えてくれた恩人でもあり同性の友人でもある。

そんな人たちを心配しない筈がないのだ。

飛行挺は高度を下げその戦闘地点である小島の砂浜に着陸した。

 

「…ッ!?」

 

ハッチが開くのをもどかしく感じながらカガリは砂浜へ駆け出すと目の前の光景に思わず息を呑む。

周囲には焼け焦げた鉄の塊が散らばり木々を焼いて地面は大きく抉られておりビームがかすったであろう地面は含まれていたガラスが大きく結晶化して未だにプスプス、と煙が立ち上っている。

波打ち際に転がるあの時無人島で見たXナンバーの頭部が転がり海水を浴び広範囲に広がる爆心地の近くには胸から腰に掛けてビームサーベルで切り裂かれ転がる連合のモビルスーツと左腕を切り落とされ無惨にも岩場に背を預けるように転がる”ストライク”は横たわっていた。

そこで行われた想像を絶する戦闘の惨状を目の当たりにしたカガリは言葉を失ってしまう。

 

「自爆したのか…?」

 

そのキサカの言葉にハッと我に返ったカガリはあの小島でであった少年の顔を思い返す。

 

「あいつ、が…?」

 

先に到着した兵士が”ストライク”のコックピット内部を確認しキサカヘ「パイロットはいません!」と報告するのを聞いたカガリはもう一機の方へ近づいたときに気づいてしまった。近寄った機体の付近に有ったモビルスーツの上半身…その特徴的なバイザーが転がっていた。

その搭乗しているパイロットの姿を。

 

ーカガリ。

 

冷たい奴かと思えば優しくて誰よりも強くて嫉妬するぐらい美人で可愛い同性の親友の姿が脳裏に浮かび駆け寄る。

 

「カガリ!止せ!」

 

”ストライク”よりも無惨な状態になっている”ダガー”の姿に乗っていたパイロットの惨状を想像しカガリを制止するキサカだったがそれを無視しカガリはサーベルによって切り裂かれコックピットの体を成していない場所を恐る恐る覗きこむ。

 

「エアリスッ!?」

 

目の前にはコックピット内部は()()()()()()()()()()()()にくり貫かれ綺麗さっぱり無くなっておりパイロットスーツの衣服片やメットの類い、血痕などは一切無い。まるで最初から存在しないようだった。

 

「エアリス…?」

 

くり貫かれたような状態のコックピットを見てカガリの中に絶望からの希望を見いだしていた。

キサカは悲惨な状態のコックピット見て落ち込んでいるであろうと予測し後ろから声を掛けた。

 

「カガリ…」

 

しかし、その予想は外れバッと振り返りカガリは答える。

 

「いない、あいつがいない!もぬけの殻なんだ!」

 

「何…?」

 

「脱出したのかも…!付近の海岸は!?」

 

カガリの沸き上がる希望にキサカも意識を切り替えて指示を出すと捜索隊と一緒にカガリも探し始めた。

暫くして捜索隊の一人が声を上げる。

 

「キサカ一佐!浜の向こうに!」

 

「ーキラ!?」

 

カガリは声のする方向へ走っていき波打ち際に倒れている影とそれを取り囲む人々の姿が見え心が押し潰されそうになる。生きているのか、それとも最悪の結果なのか…。

しかし、それは裏切られた。

波打ち際にいたのは赤いパイロットスーツを着用した兵士…ザフトのパイロットスーツだ。

骨折しているのか腕が奇妙な方向にねじ曲がっており被ったメットの奥にはあの時焚き火を囲んでいるときに見た物静かな顔が見て取れた。

 

「アスラン…!」

 

◆ ◆ ◆

 

「う…っ」

 

目が覚める。鉛のように重い身体を起こし鈍痛のする頭を少しだけ動かし周囲を見渡すと何処かの室内らしい場所に治療され寝かされていたことに気がついた。

 

ーここは何処だ?

 

と問いかけの独り言が出る前に室内に誰かがいることに気がついた。

 

「目が覚めたか?」

 

その声の方向に視線を向けると一人の少女が此方へ銃口を向けて飛びかかられて対処できる位置で立ち止まる。

 

「ここはオーブの飛行挺の中だ。浜で倒れていた所を発見して、収容した」

 

未だに覚醒しきっていない脳内で言葉を受け入れ今自分が置かれている状況を理解して生気の無い表情で視線を下げ銃口を向けている少女へ話しかけた。

 

「中立のオーブが何のようだ?…それとも今度は地球軍か?」

 

「訊きたいことがある…”ストライク”と”ダガー”…やったのはお前だな」

 

少女は震えそうになる声を必死に圧し殺しながらその質問を投げつけた。

俯いていたアスランは肩をビクリ、と震わせ虚空を見つめながら投げ遣りに答えた。

 

「ああ。俺が…やった」

 

「ッ!!」

 

カガリはその返答に自らの内に眠っているナニかがザワリ、と沸き上がるのを感じとり必死に押さえ込む。

 

「パイロット達はどうした!?お前のように脱出したのか?それとも…」

 

その先を言えずに声が震え出す。

 

「見つからないんだ…エアリスが…キラは…ダガーのパイロットが!」

 

銃口を突きつけるがアスランは凍りついた表情のまま黙ったままでありそんな相手に苛立ちが沸き上がる。

 

「…なんとか言えよッ!」

 

思わず引き金を指に掛けていた。セーフティーは外してありいつでも撃てる状態でそれをしないのは理性がそれを押し留めているからだ。

 

「キラと…”ゴーグル付き”のパイロットは…俺が殺した」

 

”ゴーグル付き”、ザフトでの”ダガー”の別名称を聞いてカガリは呆然とする。二人がこいつに…?

カガリは自らの内で爆発する怒りがこみ上げ間合いなど忘れて接近し胸ぐらを掴んでグラグラと揺らし銃を突きつけるがアスランはなすがままにされていた。

 

一方でアスランは目の前のオーブの少女が何故あの憎き連合の”ゴーグル付き”のパイロットを気にしているのかが理解できなかった。

 

「殺した…俺が…」

 

気の抜けた様子で続ける。

 

「”ゴーグル付き”は…俺がサーベルで切り裂いて…爆発したその後に”ストライク”は”イージス”で組み付いて…自爆した…脱出できたとは…思えない…」

 

「貴様ァァァッ!」

 

震える手で銃を向ける。

 

「なんで…何でだよぉッ」

 

カガリはアスランへ銃を突きつける。涙混じりの表情に殺意の色が浮かぶ。

 

「あいつは…ナチュラルなのに…地球軍の癖にっ!”アークエンジェル”でたった一人のコーディネイターのキラにも優しくて…良い奴だったのに私や…キラの自慢の……」

 

カガリは感情的に叫ぶその言葉を聞いてアスランは自らの過ちに気付く、いや()()()()()()()()

 

()()だったんだぞッッ!!」

 

「とも、だちッ……!?」

 

”友達”と言う言葉にアスランの先程までの幽鬼のような顔色が変化し苦しく息苦しそうな表情に変わった。

月での生活、ヤマト家での暮しが。宇宙でラクスの返還の際の言葉が甦る。

 

ーあの船には…守りたい人達や友達…大切な人がいるんだ!!

 

あの優しいキラが…モノグサなアイツが強要されたとしても自らの意思を曲げて他人を守るなんてことをする筈がないのを何故気がつけなかったのか。いや()()()()()()()()()()

その守りたい人…それがあの”ゴーグル付き”のパイロットなのだろうその人物を俺が自分の手で撃ってしまった…?

俺は”友達”を手に掛けてしまった?

 

「お、れ…はッ…!」

 

憎しみと怨嗟を向けられ漸くその事を認識し涙を溢しアスランは臓腑が押し潰されそうになり吐き出しそうになった。

信じなければならなかった親友の言葉を”裏切った”。だが、あれは…キラとそのパイロットは俺たちの…”敵”だったそれを討たねばならなかったそれを二律背反の真実にアスランの情緒はぐちゃぐちゃになりただ涙を流すしか無い。

 

軍人であるのなら敵を撃たなければならない、だが、その敵が大切な、知っている人物の心を許した”友”であっても?

 

分からない、分からない分からない……!!

 

悔いてももう遅い。その事実はアスランの心に深く、暗い、影を作り出したのだ。

 

「なんで…俺は…生きてるんだろうな…友達を殺したのに…脱出して…」

 

カガリは虚脱して上の空を呟くアスランへ銃口を突きつける。が、アスランが言った言葉に引っ掛かった。

 

「どう言うことだ…?友達…?」

 

「…ああ、小さい頃から知ってる…キラは…友達()()()()()…」

 

その言葉に戦慄する。親友だったと言うのを知っていたのに殺し合っていたーー?

そんな馬鹿な話が有るか!

 

「なんでっ…それで…殺し合う必要があったんだよ!」

 

「分からないさ…!俺にも!分かれて出会ったときには”敵”だったんだ!」

 

「敵…?」

 

カガリの脳内で”彼女”の言葉がリフレインする。

 

ーそれなら…両方とも滅んだ方がいいかもしれません。ー

 

違うッ!

カガリは脳内で強く否定する。キラとエアリス、コーディネイターとナチュラルの二人が仲睦まじく分かり合えているのだからそんなことはない筈だ!

 

「一緒に来いと…何度も言った!アイツはコーディネイターだ!俺たちの仲間なんだ!それなのに地球軍にいる方が可笑しい!そうだろ!?それを…あの”ゴーグル付き”の兵士が…」

 

「バカヤロウッ!!!」

 

カガリは否ッ!と叫び返す。

 

「”アークエンジェル”で…キラとエアリス…コーディネイターとナチュラルが一緒に戦って乗り越えてたのを私は見た…!おんなじじゃないアイツらが手をとって笑い合ってたッ!それなのに…友達で同じコーディネイターのおまえ達はなんで殺し合う!?」

 

「…ッ!」

 

「エアリスはキラを戦場から遠ざけようとしてた…キラを守ろうとしてたんだぞッ!!」

 

そう告げるとアスランは涙を流し項垂れる。彼は自分がやってしまった”過ち”に気づいたのだろう。

だが、もう遅い。失った命は戻らないのだから。

 

ー戦争、ってのは…血反吐を吐いて繰り返すマラソンのようなものだよ。ー

 

ああ、エアリスが言ったことはこの世界それを顕した言葉だったのだな、と。

殺しては殺されて、憎しみをぶつけて憎む、永遠と繰り返し終わることはない負の連鎖が彼らの戦いに集約していたのだ。

カガリは目の前にいる少年が”親友(エアリス)”を殺したと言う事実に腸が煮えくり返りそうになった。

 

しかし、彼女(エアリス)が”復讐”を望むとは思えない。

今にもフラッと帰ってきて「やめなよ」と宥めてくれそうだ。

 

「…ッ」

 

カガリの目尻に涙が溜まる。

 

だから私は親友を撃ったこの彼を憎まない。

誰かがこの負の連鎖を断ち切らねばならない、”分かり合える”それが彼女が望むこの世界の姿なのだ、と。

 

◆ ◆ ◆

 

ボズマン隊の”ディン”部隊の追撃を逃れアラスカの防空圏に入り護衛を務めてくれた航空防衛隊に感謝を告げると一機に緊張していた艦内の空気が弛緩する。

それは上級士官でありマリューもナタルも同じであり「半舷休息とします」と告げるとその直後に格納庫から通信が入る。

 

<艦長!止めてくだせぇ!フラガ少佐がとにかく機体を修理しろって!>

 

「え?」

 

<増槽つけて坊主と嬢ちゃんの捜索に戻るって!聞かねぇんですよ!>

 

その報告にマリューは騒然とし、同時に納得してしまった。

受話器を置いて格納庫に向かうとムウは整備士へ作業へ促しながら自らも修理箇所に取りついていた。

 

「少佐!出撃は許可いたしません!整備兵達を休ませてください!」

 

「…オーブからはナニも未だ言ってきていていないんだろ?」

 

「ええ、ですが…」

 

「なら艦はもう大丈夫だろ?…なら良いじゃねぇか」

 

「いえ!認めません!」

 

子供じみた調子でいじけるように言うムウにマリューも強い口調で告げると修理箇所を触っていた手を止め振り返る。

 

「けど、もし脱出してたらーー」

 

「私だって!出来ることならば飛んでいきたいわ!でもっ…それは出来ないんです!」

 

「艦長…」

 

「今の状況で貴方まで失ってしまったら私は…ッ!」

 

マリューは咄嗟に口をつぐんだ。気が動転していたのだろう自分の言葉に頬が熱くなるのを感じ視線を逸らすとムウはその言葉を受け呆然として暫くして視線を逸らしていた。

 

「…今はオーブと…エアリスさんとキラ君を信じて…留まってください…!」

 

ムウはその言葉の意図を追求することはしなかったが彼女の気持ちも痛い程理解できた。

ムウとマリュー…二人は連合軍人であり戦友や恩師を戦場で亡くした経験も勿論ある。

それこそ自分より若い命が戦場で、目の前で散っていったのも…しかし、それはいくら経験しても慣れない、いや慣れたくないものだ。

 

彼の気持ちも、彼女の気持ちもお互いに理解できていた。

自分は艦長であり彼はモビルスーツ隊の隊長としてこの艦の最上級士官なのだから。

 

「りょーかい」

 

ムウはマリューの肩に手を優しく置いて柔らかい声を掛けその場から立ち去った。

マリューは懸命に涙を堪え生き延びた喜びを喜ぶことなど出来なかった。

 

◆ ◆ ◆

 

「迎えだ」

 

キサカがノックし室内に顔を出すと椅子に座っていたカガリが顔を上げる。

そのやり取りをなに気なしに聞いていたアスランは何故、ここにいるのかとぼうっとしていた。

 

「ほら、迎えだ。ザフトの軍人であるお前をオーブ国内に連れていけない」

 

カガリはそうアスランへ話しかけるが当の本人は上の空だ。その状態を見てカガリは困ったような表情になる。

 

「ったく、お前…大丈夫か?」

 

腕を引っ張りベッドから立たせる。アスランはなすがまま彼女に引っ張られ立ち上がり心配そうに見上げるその表情に罪悪感を覚えた。

 

ー友達を殺した俺が彼女に心配されるなんて…そんな権利ある筈が無いのに。

自傷気味に、皮肉じみた言葉を発した。

 

「…やっぱり変な奴だなお前。俺みたいな奴にそんな言葉を掛けるなんて…」

 

アスランは呟くように言うとカガリは苦しそうな表情を浮かべた。

 

「もう、誰にも死んで欲しくないだけだ。…多分、エアリスだっておんなじことを言うんだろう。お前の事を言ったところできっとカラッとして『気にするな』って言うだろう」

 

「……」

 

言葉を失う。キラを、この少女の親友(ともだち)を殺してしまった俺の過ちを…誰が許してくれると言うのか。

目の前の少女の力無い笑みがジクジクと傷に染み込み鈍痛がする。

 

「待て」

 

立ち上がりドアの向こうへ歩きだそうとしたとき呼び止められた。

 

「持っていけ。ハウメアの護り石だ」

 

「お前の親友を殺したのにか?」

 

「…分からない。でももう、誰も死んで欲しくないんだ」

 

カガリはアスランの目をまっすぐに見てそう答えた。その力強い意思を宿した瞳を視線を逸らすことは出来ずに見入っていた。

その後にアスランは船員に連れられボートに乗せられ停泊しているザフトのヘリに運ばれるとハッチから身を乗り出した

 

「キサマァッ!どの面下げて戻ってきやがった!」

 

そう罵りながらも腕を吊った状態のアスランを見てオーブ船員から受けとり手を貸して乗り移る手助けをした。

 

「…”ストライク”と”ゴーグル付き”は討ったさ」

 

すれ違いながらアスランは疲れたような声を上げるとイザークは一瞬困ったような表情を浮かべつつもその口元には「参ったな…」という笑みが浮かぶ。

あのイザークが自分を案じてくれている…夢でも見ているのだろうか?

 

「…ナニをボサッとしている?さっさと寝ていろ怪我人が!!」

 

イザークはぶっきらぼうな口調で言いつつ自らでヘリの簡易ベッドに横たわらせる。

彼が自分に気遣うなんて…これは夢なのかもな、とそう思った。

夢であればどれほど良かったのか…。

 

◆ ◆ ◆

 

ベアリング海を白亜の戦艦が割りながら陸地へ近づく。

地球連合軍統合総司令部”JOSH-A”がそこにはあった。

管制の誘導を受け満身創痍の”アークエンジェル”は流れる滝裏に隠されたメインゲートにその巨体を滑り込ませた。

その光景を随時地下奥深くの一室で見ていた制服を着用する高官達がいた。

 

「”アークエンジェル”…よもやたどり着くとは…しかし」

 

その声色は僚艦の無事と落胆が混じりあったものだった。

 

「”アーキバス”と”ストライク”を喪失するとは…意味がないのでは?」

 

「そう言うな。まだ使える人材が生き残っただけマシと言える。護り続けてきたのハルバートンの執念か?」

 

「いや、実際にはあの艦を護り続けていたのは”マクシミリアン”の娘ですよ。それにコーディネイターの少年とね」

 

「そうはっきり言うなサザーランド大佐」

 

「だがまぁ…土壇場に来て”ストライク”とそのパイロットがMIAと言うのは”幸い”だったが…レインズブーケ中尉もMIAと言うのは非常に残念でなりません」

 

「ええ。全く。彼女がいれば”象徴”として祭り上げることが出来ましたな」

 

その言葉に全員が頷いた。

映し出された書類にはキラとエアリスの名前が乗っており”MIA”のデータスタンプが捺されている。

 

「しかし、エアリス中尉、いや”特務少佐”の活躍によってGATシリーズは当初の性能を大きく発揮し我らの旗頭となる機体です。それを”コーディネイター”の少年ではなく”ナチュラル”の少女がそれを示してくれたのは素晴らしい。コーディネイターの少年に扱われていたのでは話にならない」

 

「確かにな…」

 

サザーランドと呼ばれた将校の言葉に全員が頷いた。

 

「”ナチュラル”の少女が”コーディネイター”を圧倒するのは実証されました。少佐が運用した機体データは全て受け継がれ発展しています」

 

モニターが切り替わり一機のモビルスーツとモビルアーマーの画像が表示された。

頭部はエアリスが搭乗していた”ダガー”を思わせるバイザー型の頭部と様々な武装と機能を示した装備(ストライカーパック)達。

支援機と見られるモビルアーマーは”スカイグラスパー”…ではあるが異形である。

 

「”マクシミリアン”とアズラエルはなんと?」

 

()()()()()()()()()()()()()、と伝えています」

 

サザーランドは暗がりの部屋でくつくつと笑みを浮かべた。

 

()()()()()()()()()()()、とね。全ては…これから起こることも。」

 

その場に居合わせた将校達はサザーランドと同じく厳粛な表情を作っていく。

戦場で散った”コーディネイター”の少年の事など既に書面上で処理されたに過ぎず忘れてしまっていた。

悼む命はナチュラルの少女だけであった。

最後にサザーランドが呟く。

 

「全ては、青き清浄なる世界のために…!」

 




キラ「……」
エアリス「………」
カガリ「何してんだアスラァァァァン!」
アスラン「俺は…なんて事を…死にたい…」

作者「ダメ。もうちょっとだけ苦しんでもらうぞ」

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