魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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まだ主人公はでないよ。(迫真)重要話数だけどあっさり。


舞い降りる剣

雨は上がり外は青空が広がっていた。

降り注いだ雨が庭園の花草に掛かりみずみずしくなり雨粒が地面へ雫を溢したのを眺めサンルームの椅子から立ち上がる。

 

「キラ…?」

 

行かなくては。此処にいられることが出来れば何れ程楽なのだろうか…だけど。

キラは振り返りラクスに告げる。

 

「行くよ」

 

ラクスはキラの覚悟を決めたような表情を見て予め予想していたようだった。

 

「どちらへ行かれますの?」

 

「地球へ…戻らなくちゃ」

 

そう答えるとラクスは穏やかな口調であったが冷徹に指摘し”確認”してきた。

 

「何故です?貴方お一人が戻ったところで戦争は終わりませんわ?」

 

それは事実だ。自分には武器(モビルスーツ)はなく地上に降りるための手段もない。それに降りた所で全てが手遅れになっている可能性が高い。

ラクスがその事を自分に問い掛けるのは”心配して”いるからではなく現実を突きつけるのをここに運ばれて会話していて気が付いた。

 

「『何も出来ない』って言って何もしなければ何も出来ない…」

 

静かな決意の中ラクスへ告げた。

 

「何も変わらない、何も終わらないから…」

 

黙っていては、動かなければ、叫ばなければ誰も声を聞こうとしない。

止まっていては何も始まらない…キラは此処から動くことを決意する。

”彼女”も自分と同じ境遇ならそうするだろうと確信したから。

ラクスは静かに問い掛けてきた。

 

「…ザフトと戦われるのですか?」

 

キラは首を横に振る。

 

「…では地球軍と?」

 

また、かぶり振って否定する。

 

「ぼくは…なにと戦わなくちゃ行けなかったのか、ずっと知りたかった…」

 

微笑みながら少女の瞳を見返す。

 

「”彼女”の言葉の意味…それが今…分かった気がするから」

 

その言葉にラクスは少し目をみはった。

戦争だから、自ら属する陣営の利益を守るために害する者を全て滅ぼさなくてはならない、敵だから、陣営の違う友人であっても恋人であったとしても戦わねばならないそれは当然、だと割りきることが出来るだろうか?

自由の押し付け、と彼女は言ったがそれで陣営を押し込められ友人を、愛した人を害したことを許されるのだろうか?『敵である』という理由だけで?…そんなものは間違っている。

ナチュラルの”彼女”がコーディネイターである自分達と笑いあっている事実があるのだから。

 

それでもコーディネイター同士の…きっと自分はアスランを許すことは出来ないだろう。それが憎しみの連鎖を作るのを知っている。

しかし、”彼女”ならきっとこういう筈だ『罪を憎んで人を憎まず』と…あの顔に微笑を浮かべ「なんてことないよ?」という風にあっけらかんに言うのが想像出来る。

 

変えなければならない。

憧れの亡き少女の姿と意志を思い浮かべた…なら、いつまでもこの優しい場所に留まってはいられないのだから。

 

「わかりましたわ…」

 

キラの言葉の意図を感じとり頷いた後ラクスはサンルームの液晶モニターを起動し待機していた執事にこう告げた。

 

「あちらに連絡を。()()()()()()()()()()()()()()()()()()ーーと」

 

◆ ◆ ◆

 

数分後、キラは執事に手渡されたザフト軍の赤い制服に着替えリムジンに乗せられていた。

 

「あ、こうですからね?ザフトの軍人さんの敬礼は」

 

地球連合とは勝手の違う敬礼を見よう見まねで覚えているとキラはこれから連れていかれる場所をうっすらと感付いていた。

予想に違わず車から降りて長いシャフトの中を通るエレベーターで無重力エリアに到着し軍のエリアに入ると途中でザフト兵とすれ違ったがラクスがニコリと笑い掛け教わった敬礼を示すと咎めることなく敬礼を返されたのは彼女がプラントでもVIP扱いでありキラはそれを案内する係官だとでも思われていたのだろうが実際は逆でついていくしか出来なかった。

またしてもエレベーターに乗って到着して開いた扉の向こうには長い通路が続いておりラクスの後をついていきセキュリティが頑丈そうな扉とその左右には作業服をつけた技官が控えていた。

ラクスの姿を視認した技官がスリットにIDカードを通して扉を開く。

扉の奥は格納庫のようでキャットウォークに近づきライトアップされると暗がりのその奥にあるものをキラは視認することが出来た。

 

「ガン…ダム…?」

 

ツインアイと四本のアンテナ…嘗ての搭乗機である”ストライク”を想起させた。

がここ”プラント”にあるということは奪われたXナンバーを解析してザフト独自に作り上げたモビルスーツなのだろうと想像が出来る。背面の翼は”シグー”や”ディン”をイメージさせた。

 

「”ガンダム”というのは少し間違いですわね。ZGMF-X10A”フリーダム”です…でも”ガンダム”の方が強そうですわね?」

 

「これを…何故僕に?」

 

困惑するキラはラクスに問い掛ける。これは恐らく一般兵の目に触れて良いものではない…今まで戦ってきたザフトのモビルスーツとは違う見た目でこれは極秘開発された最新鋭機の筈だ。そんなものをどうして…?困惑しているとラクスはあっけらかんと答えた。

 

「今のキラには必要な力かと思いましたので…想いだけでも、力だけでもダメなのです。ですから…」

 

想いだけでは力が足りない、力だけでは変えられる気付きが足りない。

 

「キラの願いに、”エアリス”が望んだ場所へ向かうために、この力は不要ですか?」

 

「…君は…誰?」

 

計り知れない意志を内包した目の前のピンク色の少女を見てついつい問い掛けてしまった。

 

「わたくしはラクス・クラインですわ。…キラ・ヤマト…そして”エアリス・A・レインズブーケ”の親友です」

 

そうだ。ラクスもまた”エアリス”によって知り合うことが出来た大切な平和を願う少女の一人だ。

キラはただ一言告げる。

 

「…ありがとう」

 

「わたくしも歌いますから…()()()()を」

 

「気を付けてね…」

 

「ええ、キラも…エアリスに怒られてしまいそうですが…」

 

「え、えっ?」

 

次の瞬間に柔らかな感触がキラの頬に触れる、キスされたのだと自覚して顔が赤くなるがラクスは微笑み離れていく姿をみてキラはコックピットへ潜り込み起動させる。

 

ーGeneration

 

Unsubdued

 

Nuclear

 

Drive

 

Assault

 

Module……

 

初めて”ストライク”を起動させたときにのOSの頭文字を取って『GANDAM』と”アークエンジェル”内部での名称で呼んでいたがこちらの技術者も遊び心でそう読めるようにこれを作ったのか、と笑みが溢れた。

OSが立ち上がりこの機体の武装と動力源を確認し思わず呟く。

 

「Nジャマーキャンセラー…?」

 

即ちこれは”核動力”で動いていることに他ならない…”血のバレンタイン”を経験した”プラント”が戦況を覆すために苦渋の決断で導入したのだろうと想像に固くない…そしてこれが地球連合に渡ったら嬉々として”核”を使うだろうと。

手渡された”武器”の重さを実感しスロットルレバーとフットペダルを押し込むと各所のスラスターが噴射を始める。

工廠内部では警報音が響き渡りエアロックが閉じる向こう側には笑顔で手を振るラクスの姿が見えた。無事に逃げ切ってほしいと願いながら上方のエアロックが解除されていく。

 

「想いだけでも…力だけでも…!」

 

キラは飛び出す、その手に”自由”の名を冠する新たな剣を手にして。

 

◆ ◆ ◆

 

水中からの”ゾノ”と”グーン”の攻撃によって遂にメインゲートが陥落した。

”アークエンジェル”も湾部を突破しようと試みたがその前方をモビルスーツの大部隊が行く手を阻む。

バーストストライカーを装備した”スカイグラスパー”に搭乗するムウは毒づく。

 

「ちぃッ!!もうメインゲートはくれてやったんだ!此方は見逃してくれても良いだろうがぁッ!!」

 

接近する”ディン”を撃ち抜き、後ろから追撃して展開する”グゥル”に乗った”シグー”と”ジン”の複数機を空中でドリフトした”スカイグラスパー”が”アグニ”とコンボウェポンユニットのバルカンとミサイルで蹴散らしていく。

一方で”アークエンジェル”に前方から近づく”ディン”の小隊を補給して”シャドウストライカー”に換装して再出撃した”スカイグラスパー”に搭乗するトールも叫びながら蹴散らす。

 

「くっそーッ!!?此方はもうボロボロなんだッ!さっさと通してくれッ!」

 

”ブレードスラスター”を吹かして急接近、二機の”ディン”を勢いそのままに両断し近づこうとするモビルスーツを”シュマルツァクリンゲ”で牽制し戦闘機でインファイトに持ち込む。

 

奮戦する両機だったがそれ以上にザフト潜水艦隊が苛烈であり海上を封鎖し追い込もうと対艦ミサイルを発射し”アークエンジェル”と僚艦を襲い急速な回避行動と”イーゲルシュテルン”の迎撃によって難を逃れたが眼下では数少ない生き残りの僚艦が被弾し撃沈していく。

 

「ちぃッ!」

 

「くそっ!味方が…ッ!」

 

ムウとトールは沈んでいく僚艦を見送りながら機体の中で歯噛みする。

 

<後方より”デュエル”接近!>

 

無線から飛び込んできた声にハッと我に返る。その視線の先には幾度も対決した宿敵の姿だった。

 

「くっそぉ!こんな時にッ!」

 

「少佐は前方の部隊をッ!”デュエル”は…俺が相手しますッ」

 

「やれるのかッ!?」

 

「やりますッ!」

 

機体を交差させ立ち位置を切り替えムウはトールへ問い掛け力強い回答が返ってきてこの絶望的な状況だというのに心強いな、と思ってしまう。

実際にトールの技術は新兵以上の安定を見せ既に多くの敵機を撃墜している。マージンの取り方もセンスが良い…今の彼になら背中を任せられる、と。

入れ替わり前方を防ぐ大部隊に”ツインアグニ”と”ダブルガンランチャー”を撃ちながら襲いかかる。

砲撃を喰らって海の藻屑と化していくザフト軍モビルスーツ達。

 

「さっさと退けよッ!!」

 

「戦闘機風情が…!”バスター”とは違うんだよッ!!」

 

一方トールも”スカイグラスパー”の主砲のビーム砲を撃ちながら”ブレードスラスター”を展開し”デュエル”とインファイトを仕掛け対する”デュエル”もビームとミサイル、レールガンを発射する。

紙一重で回避をして死闘を繰り広げるムウとトール達。一方”アークエンジェル”の艦橋では絶望的な報告が矢継ばやに響き攻撃によって艦は被弾によって大きく揺れ動く。

 

「六七から七二ブロック隔壁閉鎖!艦稼働率四十三パーセントにまで低下ッ!」

 

「”リューリク”自走不能!」

 

「”ロロ”轟沈!」

 

「”ジン”、”シグー”接近…!」

 

「うわぁああああああっ!?もうダメだぁーーッ!!」

 

「落ち着けバカヤロウッ!!」

 

「”ウォンバット””バリアント”てぇーッ!機関最大!振りきれーッ!!」

 

マリューが声の限り叫び指示を出す。

ムウとトールが奮戦していたとしてもこの状況ではこの艦のクルー達は切羽詰まった恐怖が浮かんでいる。

確実にじわじわと背後から迫る死の手が近づいているのが理解できた。

そして遂にノイマンが悲鳴のような声を上げる。

モビルスーツが放った攻撃が”アークエンジェル”のサブスラスターに被弾し大きく艦体が揺れた。

 

「推力低下ーッ!?艦姿勢維持できませんッ!!」

 

次の瞬間、ムウと滞空迎撃を抜けてきた”ジン”が”アークエンジェル”の正面の艦橋に肉薄した。

艦橋の空気が凍りつく。

ミリアリアが自分達を殺そうとする存在を視界から排除するために目蓋を閉じノイマンは信じられないといった表情でカズイは口を開き腰が抜けただただ目の前に現れた単眼の巨人を見つめるしか出来ずマリューはただただ目の前の敵を睨み付けることしか出来なかった。

 

ーこれで…終わり…!?

 

此処に到達するまでの出来事が走馬灯のように呼び起こされると同時に此処までついてきた少年少女達を巻き込んでしまった後悔と悔しさがにじみ出て涙が溢れそうになる。

キラとエアリスを死なせてしまった自分の不甲斐なさが悔しかった。

 

艦橋窓にいる”ジン”が突撃銃を構え撃ち抜こうとするのがゆっくりと感じられた。

マリューは自分達に向けられた銃口が火を吹くのを待ったーー。

 

しかし。

 

「ーーッ!?」

 

自分達を撃ち抜く筈だった”ジン”の突撃銃は爆発し突如の攻撃にそのパイロットも機体の頭部を上にして見上げると次の瞬間に上空から降り注いだ何者かによって切り落とされる。

 

「な、に…?」

 

視界を機械の翼が占領する。

舞い降りた()()は”アークエンジェル”を背にしているがモビルスーツだった。

 

艦の各所に設置されたカメラから舞い降りた機体の見た目を知ることになったマリューは息を飲む。

四本のアンテナが施されたXナンバー…”ストライク”によく似た頭部に白く輝く四肢に黒とブルーのツートンカラーで連合の機体とは似つかない未知の機体は背面の六対の翼を広げその姿は戦場に舞い降りた”天使”すら思えた。

それは戦場で戦うムウ達も同じ感情だった。

 

「何だ!?」

 

「あのモビルスーツは!?」

 

唖然と見つめるクルー達の耳に聞き馴染みのある声が飛び込む。

 

<こちらキラ・ヤマト…>

 

クルー達は一様に信じられないと目を見開き目と目を合わせる。

ミリアリアはサイの目を見て呟く。

 

「キ……ラ…?」

 

「キラだよ…!」

 

サイが肯定した。彼が戻ってきたのだと。

 

<援護します、今のうちに退艦を…!>

 

「キラ…くん…?」

 

困惑するマリューを他所に迫る敵部隊に対してキラが乗っている機体は両対の翼から砲身が回転して飛び出し腰の砲身も展開され手にしていたビームライフルが掲げられ次の瞬間には五つの砲門が火を吹く。

それらは一撃で”ディン”や””グゥル”に乗ったシグー”と”ジン”の武装や腕、カメラ…そして”グゥル”だけを的確に打ち込んで無力化していく。

 

<マリューさん!今のうちに退艦を!>

 

「あ、いえ…あ…本部の地下に”サイクロプス”が仕掛けられていて…私たちは囮に…知らなかったのよ!」

 

<えっ…!?>

 

泣き出しそうになるマリューだったが事の経緯を説明するとキラは呆気に取られながら接近する”ジン”のカメラを撃ち抜き無力化する。

 

「だから…此処では退艦出来ないの。もっと基地から離れなくては!」

 

その事を知らされたキラは苦虫を潰したような表情を浮かべそれよりも先に彼女達を…この戦場にいる兵士達へ呼び掛けた。

 

<ザフト、連合両兵士に告げます!>

 

マリューは息を呑む。

全周波数に乗せて明瞭な口調で告げた。

 

<アラスカ基地は間もなく”サイクロプス”を起動させ自爆します!>

 

イザークはトールの”スカイグラスパー”との戦闘中にコックピットの中で耳を疑った。

 

ー下手な脅しを…!

 

見たこともないモビルスーツが突如現れ味方の機体を攻撃している姿を見てその疑問を振りかぶる。

きっとあれは連合の新型モビルスーツで被弾している”足つき”を援護するために出任せを言っているに違いない。

そう行き着き”スカイグラスパー”をあしらい未知の機体へ迫る。

ライフルを構え発射するがシールドに阻まれた。

 

「…ッ!”デュエル”…!」

 

大気圏突入の際にエアリスを負傷させた憎き敵を視認し黒い感情を吐き出す。だがーー。

 

「はぁああああっ!!」

 

サーベルを振り下ろすがあっさりと回避し”デュエル”を突き返そうとする。

 

<やめろと言っただろう!?死にたいのか!>

 

「なにぃ!?」

 

スピーカーから聞こえた声にイザークはカッとなる。

冷静さを失いがむしゃらにサーベルで切りかかろうとするが未知の機体は空中で宙返りを決めて腰に差してあるビームサーベルの発振器を抜いた。

 

「うわぁああああああっ!!?」

 

コックピットに迫る光の刃を見てイザークは悲鳴を上げた。しかしその刃の軌道はコックピットではなく”デュエル”の膝から下を切り裂いた。

コックピットの中で唖然とするイザークは呆けていたが全身を襲う衝撃にハッとした。

バランスを崩した機体は未知の機体に蹴り飛ばされ宙を舞っていることに。

 

<早く脱出しろ!もう止めるんだ…!>

 

スピーカーから聞こえる自分と年齢の変わらない少年の苦々しい声が聞こえた。

いったいあれは誰だったのか…と思いながら途中で”ディン”に拾われイザークは撤退することになった。

 

◆ ◆ ◆

 

「そろそろですかな?」

 

待ち時間の間、茶を飲みながら優雅に雑談していた将校達はふと時計に目をやる。

時刻を確認した将校の一人であるサザーランドが首から掛けた鍵を取り机の上に置かれたアタッシュケースに鍵を差し込む。もう一人の将校も鍵を取りだした。これこそが"JOSH-A"地下に埋設された”サイクロプス”の起動装置である。

 

厳粛な面持ちで装置を起動させる。

 

「この犠牲により戦争の早期終結へ向かわんことを切に願う…」

 

「”青き清浄なる世界のために”…三、二…」

 

「「…一」」

 

二つの手が同時にキーを捻り、ボタンを押した。

 

◆ ◆ ◆

 

膨大なエネルギーが”アークエンジェル”でも観測された。

 

「”サイクロプス”起動ーッ!!?」

 

「機関全速!回避ーッ!!!」

 

死に物狂いで”アークエンジェル”は撤退する。背後には電磁波がドーム状に広がり基地内部にいた連合兵士と基地へ進行していたザフト兵士の生身を沸騰させ破裂させていく。モビルスーツも同様に爆発し地面を走行していた”ザウート”も倒壊した建物に潰され破壊される。

あらゆる物体の生存を許さない死神の手は刻一刻と近づいていく。

”アークエンジェル”は残ったエンジンを全開にしてその場を離脱する…広がった電磁波はやがて爆発し連合本部があったアラスカの地に巨大な爆心地を作り出し爆発の余波は大気を大きく揺るがすのだった。

 

「そんな馬鹿な…」

 

その光景を作戦海域にいたボズゴロフ級の艦長が呟く。

ザフトの戦力を結集して挑んだ奇襲作戦”オペレーション・スピットブレイク”はザフトの勝利で幕を閉じる筈だったが最後の最後にどんでん返しの結果で終わった。

地球連合総司令部を制圧したという戦果はあるものの地上戦力の大半を巻き添えにしてという結果は非常に後味の悪いものでしかなかったのだから

 

「してやられたな…ナチュラルどもに…」

 

誰もがモニターに映る現実に注視しクルーゼの表情を見ることはなかった。

邪悪な笑みを浮かべていることすら気づかなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

「た、助かったのか…俺たち…」

 

クルーの一人が呟く。

”アークエンジェル”は惨状から無事に脱出し作戦海域から離れた海岸の近くに突っ込む形で着底していた。

艦橋窓の外には”アラスカ”の跡地に大きなキノコ雲を作り出しているその光景を見て全員が底冷えする恐怖を感じ取っていた。一歩間違えば自分達もあの場所で散ったもの達と同じ末路を辿っていた…と考えると背筋が寒くなる。

着陸した”スカイグラスパー”達から降りたムウもその光景を見てやるせなくなり持っていたヘルメットを砂浜に投げトールは気が抜け砂浜に腰を下ろす。

 

艦のすぐ近くに着陸した先ほどこちらを守ってくれたモビルスーツ…先ほどの色鮮やかな色は鉄灰色(ディアクティブモード)に変わっており”ストライク”と同じくPS装甲を搭載しているのだろう。

その傍らには途中で脱出をしようとしていた”ジン”の姿もあり先の戦闘のマイクロ波の影響で既に死亡しておりパイロットスーツを着用した少年が悔しそうに地面を叩いているのを艦から降りてきたマリュー達がムウと合流し見つめる。

暫くして少年は立ち上がりこちらへ駆け寄ってくる。黒髪を靡かせ心なしか落ち着かせた雰囲気を纏ったキラ・ヤマトがザフトの赤いパイロットスーツを着用していた。

 

「マリューさん…本当に間に合ってよかった…」

 

「キラ君…なの?」

 

「はい」

 

死んだと思っていた少年が五体満足で戻ってきてくれたことになんとも言えない感情が込み上げマリューはなにも言えなくなってしまう。

不意にミリアリアやトール、サイにフレイ、カズイが彼に飛び付き取り囲む。

 

「キラッ!」

 

「キラぁ!」

 

「お前…お前…」

 

「本当にキラなのよね!?生きてるのよね!?」

 

「よかった…よかったよ…キラ!」

 

「心配掛けてごめん…改めてお話ししなくちゃならないことが沢山ありますね」

 

取り囲まれていたキラは自分が乗ってきた機体を見上げるムウとマリューに話しかける。

 

「ええ…」

 

「僕も…お話ししたいことが沢山あります」

 

「そうでしょうね…」

 

「ザフトにいたのか?」

 

「そうですけど…僕はザフトではありません、そして地球軍でもない」

 

静かなる決意を秘めた瞳で見られたマリューはハッとする。既に艦長呼びではなく個人名で呼ばれていることに。

 

「わかったわ。取り合えず話をしましょう…それで、あの機体は?」

 

「補給や整備の事を仰有っているのなら心配は不要です…」

 

次の言葉に全員が驚愕した。

 

「あれにはー『Nジャマーキャンセラー』が搭載されています」

 

ーつまりは”核”で動いている!?

先ほどの戦闘で見せたバッテリー駆動で動く現行のモビルスーツの全てを凌駕するほどの火力、機動力、運動性を有しており確かに補給の必要はないだろう。そんなものをどこで…と誰かが問い掛けようとしたときキラの目に力が宿る。

 

「データを取りたいと仰有るのであればお断りして僕は此処を離れます」

 

明確な拒否にマリューはハッとなった。少年の穏やかな表情が険しくなった。

 

「奪おうとされるなら僕は敵対してでも守ります」

 

「キラ君…」

 

「”あれ”を託された僕の責任ですから…!」

 

少年から大人へ成長したキラを見たマリューは対等に会話しようと決めた。

 

「わかりました…機体には一切手を触れないことを約束します。良いわね?」

 

マリューはクルーに強く念を押すと全員が強く頷く。その光景を見てキラは微笑んだ。

 

「ありがとうございます…」

 

「…どうしてお前は…俺たちを助けたんだ?」

 

モビルスーツのところへ戻ろうとするキラへ声を掛けるムウ。純粋な疑問だった。そして返ってきた回答も純粋なものだった。

 

「そうしたかったからです」

 

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