魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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【オーブ解放戦】編
決意の砲火


満身創痍の”アークエンジェル”はキラとの合流後オーブへ身を寄せた。

カガリとキラは再会しこれ迄の道中の事を話しこれまた当然の帰結としてアスランの話題となった。

 

「そっか…カガリはアスランと会ったんだ…」

 

「お前達を探しに行って、代わりにあいつを見つけたんだ」

 

そう告げカガリはキラの横顔を見ると目蓋を閉じ噛み締める様な表情を浮かべていたがその握られた拳が震えていた。殺し合った相手であり友達だった者への”憎しみ”が浮かび上がりカガリは悲しい気分となった。

 

「…めちゃくちゃ落ち込んでた。アイツ」

 

アイツは今ごろどうしているのだろうか?キラが生きていることを教えてやりたい。

キラは立ち上がり”フリーダム”の前に移動して見上げる。

 

「…あのとき…彼はエアリスさんを殺した」

 

その言葉にカガリの表情も曇る。共通の親友であるエアリスを殺したその事実が言い様のないモヤモヤしたを心のなかに産み出されほの暗い感情が支配する。

カガリは苦いものを堪えるような口調でキラへ語った。

 

「…どうしようもなかったんだエアリスも…アイツも…”敵同士”なら、だろ?」

 

「…ッ…そう、だね…」

 

今のキラは泣き出しそうな程に表情を歪ませる。

 

「私も…アイツを見つけて状況を聞いたときに”殺してやる”って思った…」

 

「え…?」

 

キラは飛び出した言葉を聞いて驚いた。

直情的なカガリではあるがそんな言葉を相手に向けて言う子ではないことをこの短い期間で理解していた…それが今なんと?

手すりを掴み手が痛くなるほどに握ると不意に手を離した。

 

「でも…そんなことしたらアイツ…エアリスは悲しむって思ったんだ。砂漠での…”砂漠の虎”と会話した時に悲しそうな顔してた…戦うのって虚しい、って」

 

「…」

 

ーそれなら…両方とも滅んだ方がいいかもしれません。

 

ーミサイルに焼かれて若くして亡くなるより寿命で亡くなった方が建設的です。私にはやりたいことも沢山有って、ナチュラルとコーディネイターの友達もいます。

 

ーラクスと会えなくなるのは悲しいですからね。そんな悲しい世界、私も“ラクス”も望んでいないですから。

 

砂漠での会話を思い出す。

あの時悲しそうな表情をしていたのは”アークエンジェル”で楽しそうに会話していたエアリスとラクス…ナチュラルとコーディネイターがあの場所で楽しく笑い語り合っていたからだろう。それは自分とエアリスに当てはまる。

 

同じ種族であり友人だったアスランを怒りに任せ殺し合った。

”敵だから””陣営が違うから”という理由で”怒り”憎しみ”に任せて刃を向けていいのか?

エアリスの言葉がキラの心に破片として突き刺さる。

 

あぁ…そうか。彼女は自分にそんな想いをさせたくないから”ストライク”に乗せたくなかったのか。

 

必然的にアスランと戦う宿命に自らその場所に身を置いてしまったのだ。

僕は彼女の制止を振り切って彼女を守りたい一心で貫き通した。

既に銃を取ってしまったのなら命じられてただ、敵を殺すのではなく行く末を探しその手に銃を取る意味を探さなくてはならない。彼女を守りたいという理由で手を取った筈だ。

殺された憎しみや怒りではなく、”何故銃を取ったのかそれ以外の意味”を。

 

(僕は…アスランを許せるのか…?)

 

キラは未だに心の整理をつけることが出来ずにいる。親友だった筈の少年に対して燻る敵意が向けられていた。

 

◆ ◆ ◆

 

「パナマが敵の攻撃を受けて全滅した。マスドライバーも破壊されてな」

 

アーリントン基地司令部にてエアリスは数時間前にパナマ基地が陥落させられたことを知らされた。

エアリスの目の前には白髪の妙齢の女性であるアンジェリーナ・ウェストウッド少将が苦い顔を浮かべている。

御歳59歳ではあるがその年齢にしては若々しいが内勤ではなく叩き上げの軍人であった。

 

「…しかし、アラスカでザフト地上軍の八割方が壊滅被害にあったのにですか?」

 

「だからこそだろう。宇宙へ上がる道を断っておかないと危険だと思ったのだろうな。ザフトも新兵器を投入したらしい。此方もモビルスーツを投入した、という話だが向こうの方が上手だったようだ」

 

そう告げ司令はモニターを操作し投入された兵器のデータを投影する。やはり、というかエアリスも知っているEMP発生装置”グングニール”であった。

同時に”パナマ”でザフトが投降している連合兵士へ向けモビルスーツサイズの銃弾を発砲している姿を思い出し苦い表情が浮かんだ。

 

ーナチュラルの捕虜なんかいるかよ!

 

ーアラスカでやられたハンナの仇だ!

 

撃たれては撃ち返す、繰り返しの因果があそこには集約しているのを思い返しそれが今現実に起きている事なのだ、といやがおうにも自覚させられる。

 

「それで…”マスドライバー”を失った連合はどんな手を?」

 

「君も聞いただろうが大西洋連邦大統領が地球の各国へ協力を呼び掛けている。”賛同する国家は味方で賛同しない国家はザフト支援国として対応する”とな。軍部もマスドライバーを失って相当焦っているように見られる。」

 

嘆かわしいことだが、とアンジェリーナが苦虫を噛み潰した顔になる。

 

「今、連合議会でムルタ君が参加しているその代案で出ているのがオーブのマスドライバー…そしてビクトリア基地の奪還だろう」

 

「ビクトリア基地の奪還の方が難易度が高いのでは?」

 

当然だ。死に物狂いで地球連合の所有するマスドライバーを潰し地球へ封じ込める作戦を取っているビクトリアを奪われるようなことになれば、ザフトはその”マスドライバー”すら破壊しかねない。そうすれば元も子もないだろう。

 

 

「しかし、あのオーブだ。そう簡単に…」

 

「飲むとは思えない、と言うことですか?」

 

そう答えるとアンジェリーナは手を合わせ目を細める。

 

「その通りだ少佐。”オーブの獅子”…ウズミ・ナラ・アスハが「はい、そうですか」と徴用に応じるとは思えん。そうなれば結果は火を見るのは明らか…だな。」

 

まぁ、だろうな。とエアリスは思った。氏がそう簡単に理念をねじ曲げ軍門に下る事はあり得ないだろう。

その行動が後に繋がるモノがあるのだが…正直言って衝突を止めたいのはあるがここで止めてしまえば後に繋がらない可能性があった。

しかし、アズラエルはこちら側であり立場もあるが今連合国首脳達は数名を除いて戦争する気満々らしい。アズラエルも”ブルーコスモス”盟主として形式上賛同しなくてはならないし、ザフトにこのままでは”ジェネシス”を突きつけられる可能性がある。

 

しかし”衝突が避けられない”となれば戦わなければならない。

軍人である自分は命令を遂行しなくてはならない。嘗ての”親友”と刃を交えなくてはならなくとも…。

 

「状況によっては君も”オーブ”へ飛んで貰うことになる」

 

今の連合がオーブに”アークエンジェル”がいることを認知していない。

しかし、その事を知っているが故に複雑だ。今のオーブには”フリーダム”、”アークエンジェル”がいる。

 

(まさか私が悪の三兵器…いや、”四兵器”か)

 

複雑な思いのまま次の指令を待つしかないのだ。

 

◆ ◆ ◆

 

「最後通告だと!?」

 

ウズミが議会場で吠えた。

既に議場には首長ならび代表であるホムラもおり苦々しい表情で通告文を読み上げる。

 

「『現状の世界情勢を鑑みず、地球の一国家としての責務を放棄し頑なに自国の安寧のみを追求し、あまつさえ再三の要求を拒否する姿勢を崩さぬオーブ連合首長国に対して以下の要求を突きつけるーー』」

 

その通達に議場に集う首脳陣達の表情が強ばる。

一つ、現政権の即時退陣。

一つ、国軍の武装解除並びに解散。

以下二つが四十八時間以内に受け入れられない場合は地球連合はオーブをザフト支援国として攻撃する、というものだった。

 

「なんの茶番だこれは!パナマも落とされ、もはや体裁を取り繕うことも忘れたか大西洋連邦は!」

 

一人の首長が事実を告げる。

 

「既に太平洋を連合艦隊が南下中です」

 

「欲しいのはマスドライバーとモルゲンレーテですな…」

 

「が、いくら声高に筋が通らぬ、と叫んだところでもはや大西洋連邦に逆らえる国もない…」

 

首長達は諦めたような口調で言った。

 

「ユーラシアは疲弊し、赤道連合、スカンジナビア王国等最後まで中立を貫いた国々も既に連合の傘下じゃ…」

 

一人が思いきった口を開く。

 

「我々も…選ばねばならない、ということですかな?」

 

「事態を知ったカーペンタリア基地からも会談の申し入れが来ておりますが…」

 

「ふん!敵の敵は味方か」

 

ザフトとしてもこの状況を座視している場合ではないのだろう。

せっかくパナマ基地のマスドライバーを潰して連合軍を地球へ封じ込めたというのにオーブの動向次第ではその苦労も水泡と化してしまうし、数少ない地上でのコーディネイター受け入れ国家であるだけに”プラント”は”オーブ”と水面下で交流を続けていた。それとオーブの技術が地球連合に渡ることを危惧しているからだろう。

 

「どうあっても世界を二分したいのか!大西洋連邦は!敵と味方に!」

 

ウズミは怒りのまま吐き捨てる。

 

「そしてオーブはその理念と法を捨て命じられるがままに与えられた敵と戦うことになるのか!?」

 

首長達は沈鬱な表情で黙り込む。ここで地球連合を受け入れればそのときだけは安寧を得られるかもしれないが陣営を定める、ということは”どちらかの敵になる”ということに他ならない。

”連合”と組めば”プラント”が。”プラント”と組めば”連合”が敵となる。行く末など明白だった。

 

「例え連合に下り明日の戦火を免れたとしても明日はパナマの二の舞ぞ!陣営を定めれば戦火は免れぬ!」

 

「分かっております…しかし……ともかく避難命令を…」

 

首長の中でもっとも年長の男が口を開いた。

 

「子供達が時代に殺されるようなことは…避けたいものじゃな…」

 

◆ ◆ ◆

 

「おーい!全クルー集合だってよ!」

 

マードックの声が格納庫に響き”フリーダム”のコックピットで作業をしていたキラの耳にも入り作業を中断し下へ向かった。

”アークエンジェル”の格納庫には全クルーが集められ整列させられていた。彼らの前にはマリュー、ムウそしてオーブ軍としてキサカとカガリが立つ。

目の前に立つマリューが厳しい顔で口を開いた。

 

「現在、このオーブへ向け地球連合軍艦隊が進行中です…」

 

何を聞かされるのかと怪訝な表情を浮かべていたクルー達はその発表される内容に一同は衝撃を受ける。

 

「連合に与し、共に”プラント”を討つ手を取らぬ、と言うのであれば、ザフト支援国と見なす…それが理由です…」

 

「なんじゃそりゃ…」

 

「ふざけてやがる…」

 

「んな滅茶苦茶な…」

 

思わずクルー達の間からそんな言葉が漏れ出す。当然だ。つい先日パナマを落とされたばかりだと言うのにマスドライバーが使えなくなったから寄越せ、逆らえば力ずくで奪う、とそう言っているのだ。それは軍としての規律や信念は失われていた。

ざわめきが収まってからマリューは続ける。

 

「現在オーブ政府はあくまで中立を貫く、として現在も外交努力を継続中ですが、残念ながら…地球軍の対応を見る限りにおいて戦闘回避の可能性は非常に低いもの…と言わざるを得ません」

 

マリューは怒りを堪えるような表情を浮かべる。

 

「…オーブは全国民に対して都市部、軍関係施設からの退去を命じ政府は不測の事態に対して防御体制を取る、とのことです」

 

マリューはここでようやく息をつき辺りを見渡す。

 

「我々もまた道を選ばなくてはなりません…」

 

クルー達は静まり返り、これまで艦長を頼んできた若い女性を見つめる。

 

「現在”アークエンジェル”は脱走艦であり、私たちの立場すら定かではない状態にあります…オーブのこの事態にどう我々は対応すべきなのか…命ずるものはなく、また私もあなた方への命令する権限を持ち得ません…」

 

みな、さっき以上にその言葉に動揺を隠しきれない。マリューは続ける。

 

「回避不能、となれば明朝09:00(マルキュウマルマルマル)戦闘が開始されます。オーブを守るべく、これと戦うべきなのか、そうでないのか…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

オーブを守るために戦う。それは自身が所属していた組織に真っ向から反発することになる。兵士達の戸惑いも大きい…カガリは不安げな表情で見守っているとキラが気がつき優しく微笑む。

 

「よって、これを機に艦を離れようと思うものは速やかに退艦し、オーブ政府の指示に従って避難してください」

 

マリューが自分達を引き留めようとしないことにクルーはざわつく。

だが、彼らも一度考えなくてはならない。一度はあの”アラスカ”で死んでいる…地球連合のやり方に疑問を持ったのならばその答えはすぐに出るだろう。

マリューはしみじみとクルーの顔を見渡した。

 

「…私のような頼りない艦長に、ここまでついてきてくれて…ありがとう…」

 

そこで涙ぐみ掛けてマリューは深く頭を下げた。

頼りない艦長、とは思うがマリューでなければ”アークエンジェル”はここまでこれなかっただろう、とキラは思う。それはあの人も同じことを思っている筈だ。

 

◆ ◆ ◆

 

”アークエンジェル”の格納庫に全クルーが集められ整列し、マリューの口から今現在オーブが大西洋連合艦隊からの侵攻を受けていることを告げられ、それぞれ反応を見せるクルー達⋯あるものは下船し、残り戦うことを決意する者達に分けられた。

キラも残る側のクルーでありマリューからの通達後に自室へ戻ろうとしたときカガリから声を掛けられた。

 

「キラ!」

 

「ちょっと落ち着きなよカガリ…そんな服を着てる人が慌てていたらみんな不安がるよ?」

 

「そうか、そうだなッ…でもッ」

 

キラが指摘すると、彼女は慌てて裾を直したがやはりじっとしていられずに髪をかきむしる。

 

「オーブが戦場になるんだッ!こんなこと…」

 

目に見て慌てているカガリを見てキラは穏やかに優しく告げた。

 

「でも正しいと思うよ?僕は…オーブの取った道…一番大変だと思うけど」

 

正しい道だ。中立を貫き敵とならない、敵と定めず両者陣営を見定める存在が必要なのだ。

それを今オーブは選ぶ。

きっと死んでしまったエアリスもそれを選ぶ、深く傷つき、失うことになろうとも

その尊いモノを守らねばならぬ、とキラは思った。

 

「キラ…」

 

「だからカガリも落ち着いて。出来るかどうか分からないけど…僕も頑張るよ」

 

その言葉にカガリは感極まってキラに抱きつく。

人通りの少ない艦内であっても人の目を気にせずに抱きつくのはやめて欲しいな、と思った。

カガリに抱きつかれるのに対して「女の子なんだから」と気軽に抱きつかないで欲しいと心の片隅にエアリスに対して申し訳なさが込み上がってきた。

そんなことを思っていると通路の方でサイとカズイが話しているのが視界に入る。

 

”アークエンジェル”に乗艦していた学生組も全員が残る…と言うわけではなかった。

カズイは降りる事を選択したがサイやミリアリアが降りないことを知らされ、残ることを決意したがサイに窘められその際に自らの心の内を吐き出す。

 

「俺だけ降りたら皆、臆病者とか…卑怯者とか…俺の事思うんだろ!?」

 

「カズイ…」

 

「どうせそうなんだけどさ!…でも…だって俺出来ることなんて無いよ!戦うなんて…出来る奴がやってくれよ…!」

 

「分かってるよ…向いてないだけだよお前には…戦争なんてさ。お前、優しいから…」

 

「サイ…やっぱり俺…」

 

「だからやめとけってそういうの。後で後悔するぞ…平和になったらまた、会おうな。それまでしっかり生きてろよ?」

 

そういってサイはカズイの肩を優しく叩いた後手を差し出す。

カズイは泣きそうになりながら差し出された手を握り返し荷物をもって下船する。

勇気あるその判断をした友人にキラは敬礼した。

 

◆ ◆ ◆

 

”アークエンジェル”の独房にミリアリアが訪れるとそこに収監されている捕虜二人…ディアッカとニコルは気付き鉄格子越しに顔を覗かせる。そこに敵意がないのは食事を運んだり会話をしたりしていた為ある意味絆された結果であった。共通の話題としてやっぱり”エアリス”の話をしたことだろうか?

 

…しかし食事の時間だったが手にしているのはトレーではなくザフトのパイロットスーツと適当に見繕った私服が一着ずつ紙の袋に入れられていた。

その事にニコルが問いかける。

 

「こんにちわミリアリア…ってどうしたんですか?紙袋に…僕たちのパイロットスーツ?」

 

「こんにちわニコル…戦闘になるのこの艦」

 

「はぁ?」

 

隣の独房に入れられているディアッカその発言を聞いて起き上がる。

 

「連合が攻めてくるのよ。だからニコル達を解放して良いって…だからこれ持ってきたわ」

 

「え、え!?ちょ、ちょっと待ってくださいよ!?」

 

「お、おい!?どう言うことだ?」

 

地球連合の艦である筈のこの艦がここオーブにいることがおかしいのだが中立であるこの国を連合が攻撃する?どう言うことだ?と与えられた情報が処理しきれず思わず叫んでしまう二人だったがミリアリアは知らない、と言わんばかりに営倉のロックを解錠する。

手にしていたパイロットスーツとそれぞれの私服が入った紙袋をおいて立ち去ろうとするが僕とディアッカは掛けよった。

 

「戦闘って…どう言うことですか!?」

 

「連合が攻めてくるから”アークエンジェル”は戦うのよ。だからあんた達捕虜をいつまでも乗せておくわけには行かないの。アラスカで脱走艦になった私たちを匿ってくれたオーブにはお世話になったから協力する事になったの」

 

その回答に僕は混乱する?オーブに協力?脱走艦?そしてなぜ地球連合がオーブに攻めてくるのか理解できない。

 

「なんじゃそりゃ…やっぱりナチュラルってバカなのか?!」

 

「言葉を選んでくださいディアッカ!」

 

「す、すまん…だけど突然過ぎないか?」

 

「悪かったわね…でも早く退艦した方がいいわよ。今日の朝方には攻撃が開始されちゃうからどこも大混乱だと思うわ…幸いにして”プラント”へ出ている便はまだあるみたいだから」

 

プラントへ出ている便がある、といっても今の僕たちはMIA判定を受けてる筈だからそう簡単に入国できるとは思えないが…紙袋をチラリ覗くとセンスの良い女の子用の私服が用意されておりパイロットスーツでは目立つと言う判断だろう…資金の入った封筒も覗かせ目の前の少女の面倒見の良さが暖かく感じる。

 

「と、言うわけだから悪いんだけど後の事は自分達でどうにかして頂戴…そこの袋に入ってるのはオーブと私からの餞別よ」

 

「ありがとうございます…その、”ブリッツ”と”バスター”は…」

 

そう問いかけると無慈悲な回答が返ってきた。

 

「それは元々こっちの機体よ?あの二機は”モルゲンレーテ”が持って行っちゃったわ」

 

「うげぇ…」

 

「ははは…ですよね…」

 

最悪である。二人とも機体を失ってどんな顔して”プラント”に帰れば良いのだろうか?と考えたがそれよりも戦闘が始まる国から無事に脱出できるかどうかも怪しい…そんなことを考えているとミリアリアがしんみりした表情で謝った。

 

「ごめんね。こんなことになっちゃって…」

 

「ミリアリアは戦うんですか…?」

 

素朴な疑問を投げ掛ける。彼女は正規に訓練された軍人でないことを日々の会話で知っている。なおさらこの艦に乗る理由もない筈だが彼女は自らの意思で告げる。

 

「…私は”アークエンジェル”のCIC担当なの。それに”オーブ”は私たちの国なの」

 

その言葉に僕は胸を打たれた。僕が戦うと決めたその理由と同じだからだ。

しかし、ナチュラルがナチュラルの国を攻撃すると言うおかしな関係に僕の胸の内はモヤモヤを溜め込んでいくのを覚え好転させるために手渡された紙袋を開くと普段は着用しない長袖のパーカーとデニムのショートパンツが入っており可愛らしいものだった。近くにあったロッカールームを借り受け着替えた後にディアッカと共に”アークエンジェル”を下船する。

 

おもむろに僕はディアッカに話しかける。

 

「これから…どうしたらいいんでしょうか…ディアッカ」

 

「どうする、ったってなぁ…俺が聞きたいぐらいだぜ」

 

「そう、ですね…」

 

話しかけられたディアッカも困ったような表情を浮かべる。当然だろう…機体も取り上げられた状態でこの国に放置されたのだから教えて欲しいぐらいだ…これからどうすれば良いのか、と言うことを。

その光景を見て自分達を案じてくれたナチュラルの少女達の姿が思い浮かぶ。

 

「「……」」

 

二人は、この平和そのものの国の光景を目に焼き付けた後、歩き始めた。

 

◆ ◆ ◆

 

明朝。

地球連合軍艦隊旗艦”パウエル”と合流したアズラエル達は艦橋にてオーブからの最終回答を確認しクツクツと笑う。

 

「『要求は不当なものであり、従うことは出来ない。オーブ連合首長国は中立を貫く意思に変わり無い』…」

 

その回答は”予想されたものであった”事にアズラエルは満足げに呟く。

 

「いやぁ…流石は”オーブの獅子”と言ったところですかね?期待を裏切ってくれない。ほんとに…僕としては”良かった”と、言えれば楽なんですが…」

 

「…」

 

傍らにいるサングラスで顔を隠すエアリスに同意するようにみやる。

彼女の表情は複雑そうだが任務であれば戦うだろう。

 

これも全て平和への礎の為の尊い犠牲…と言うつもりはないが自分はビジネスマンで物事はスマートに行わなくてはならない。だからこそこの状況を無駄に消費せずに利用させて貰おうと考えた。

アズラエルとしても新設予定の部隊長に推したエアリスに不信感を持たれるのは避けたかった。

 

好き勝手に暗躍するサザーランドに牽制する意味合いも今回の戦闘には含まれる。

当然腐りきっている大西洋連邦にもだ。

 

正直”ナチュラル”と”ナチュラル”同士で争うなど旧暦の時代の再現か、と呆れてしまうがそれも人間の性か、と諦めるしかない。

しかし、そうであるのならば”自分のエアリス”が最強であることを証明して見せよう。

 

「此方で手は色々と回しましたが、約束は約束です。そうなれば、我々が取る道は一つしかありません。」

 

アズラエルは連合会議にて誓約書…非戦闘員への保護、及び不可侵条約、オノゴロ島以外のオーブ領土への侵攻…戦闘で発生した捕虜への無事を確約する…等これらを盛り込ませ連合軍人に飲ませていた。

戦うのは自分ではなく”彼ら”である。

 

「是非とも、その信念貫き通して欲しいものです」

 

水平線の向こうに未だオーブの島々の姿は見えないがきっとそれは苛烈な戦場になる、そうアズラエルは確信していた。

 

◆ ◆ ◆

 

”JOSH-A”から傷ついた白亜の船体は補修作業が終わりドッグ内部は作業員の姿は疎らで嵐の前の静けさが充満している。

これから数時間後に苛烈な戦場に向かうことになるのだがこれが正しかったのか、とマリューは思った。

ここに残ったのはオーブへの義理…そして見てきた戦場への”疑問”が表面化したことによるものだ。

”戦いを終わらせるために戦う”という矛盾…何を信じていいのか、分からなくなる。

 

「なーにたそがれてんの?艦長さんが」

 

”アークエンジェル”の艦橋にてマリューがオーブ軍が着々と作業を進めるのを眺めているとムウから声を掛けられる。

彼は先の戦闘で回収、修復された”ストライク”を受け取り機種転換と慣熟訓練を終えて侵攻してくる地球連合軍艦隊を迎え撃つ準備をしていた。

 

「結局、退艦は十一名。みんな凄いじゃないの”アラスカ”の一件が相当頭に来たのかねぇ?」

 

クルーの大半は残ったことになる。それに自分達の都合で徴兵してしまった学生組は殆ど残った。

だからこそマリューは彼ら彼女達の前でああは言ったもののそうするように強いてしまったのではないか、と不安になってしまう。未だ軍の命令であればそうするしかない、と諦めながら従うしかなかったが今は違い命じられるがままに戦う必要はないのだから。

そしてマリューは疑問に思っていたことを口にだした。幸いにして今艦橋には自分とその問題の人物しかいない。

 

「…どうして…少佐は”アラスカ”で戻ってらっしゃったんですか?」

 

その問い掛けに虚を突かれたような顔になった後にがっくりと肩を落とす。

 

「えっ!?…今さら…聞かれるとは…思わなかったぜ」

 

それが回答だ、と言わんばかりにマリューは腰に手を回され唇を重ねる。不意打ちのキスに硬直するが驚きはしたが抵抗、拒否する事はしなかった。マリュー自体軍内部で女性で魅力的な人物であり様々な男性から不埒なセクハラ行為を受けてしてきた者達をさせたことを後悔させてきたが今回彼女は相手を殴ることもせずその感触に身を委ねる。

その際にムウの表情を見てカッコ良く見えてハッとしたマリューはかけなしの残った自尊心集め怒鳴る。

 

「わ、私はモビルアーマー乗りは嫌いですっ」

 

「あ、今の俺、モビルスーツ乗り」

 

そう言うことじゃない!とマリューは叫びたかったが二度目のキスで再び唇を塞がれた。

反論する前に二度目のキスを受け入れた、ということはもう()()()()()()()()()()()とマリューは理解した。

キスしている光景を入ってきていた下士官達に見られていたことを知るのは戦闘の後だった。

 

◆ ◆ ◆

 

時計の針が九時を指す。

 

遂に攻撃が開始された。

オーブ沖に展開したミサイル巡洋艦から放たれた夥しい巡航ミサイルがオーブを襲う。

カガリ号令の元”オーブ解放戦”が開始され迎撃のためにリニアタンク、そしてモビルスーツ”M1アストレイ”が出撃した。

 

「オーブ軍、戦闘を開始しました!」

 

射撃指揮官席に座ったサイが報告しマリューが宣言する。

 

「”アークエンジェル”発進します!」

 

ゲートが開き白い巨艦が姿を現し迫り来るミサイル群を捉えた。

 

「”ゴッドフリート”てぇーッ!」

 

霰のように降り注ぐミサイル群をM1アストレイと戦車体が蹴散らしていくがミサイルの雨が止んだと思えば近づいてきた強襲揚陸挺から続々と連合軍のモビルスーツ”ストライクダガー”が姿を現す。

 

「アサギ!」

 

「任せて!」

 

「ジュリ、左!」

 

接近する連合軍をM1アストレイで迎撃する。

戦況がカガリとキサカが詰めていた作戦司令室に届く。

 

「敵モビルスーツ、イザナギ海岸に上陸!」

 

「第八機甲大隊と第四小隊を回せ!侵攻を阻止する!」

 

カガリは冷静に指示を飛ばす。しかし矢継ぎ早に次なる知らせが入った。

 

「上空に大型輸送機接近!」

 

上空からパラシュートを装備した”ストライクダガー”が姿を現し対空迎撃のための砲座を踏み潰しイナゴの大群のようにM1アストレイ達へ襲いかかった。

そして”アークエンジェル”で状況を確認し待機していたパイロット達が出撃する。

 

「キラ・ヤマト”フリーダム”行きますッ!」

 

「ムウ・ラ・フラガ”ストライク”行くぜッ!」

 

「トール・ケーニヒ”スカイグラスパー”出ますッ!」

 

キラが”フリーダム”、ムウが”ストライク”そしてトールが”スカイグラスパー”で出撃した。

数で勝る”ダガー”の部隊にフリーダムが舞い降りマルチロックオンシステムで複数機の武装、四肢を破壊していく。

そのコックピットでキラは苦い顔を浮かべた。

 

(エアリスさんの機体と同じ…いいや、あれとは違う…!)

 

そう自分に言い聞かせ迫り来る”ダガー”達を破壊していく。

 

「すっごぉ…」

 

迎撃に出ていたオーブ三人娘…アサギ・コードウェルはその圧倒的な力と鮮やかさに見とれていた。

 

「おーお、カッコいいねぇ!俺は未だ新米だけどなぁ!…ほら、お嬢ちゃん達!ボサッとしてないで次が来るぞ!」

 

呆けているアサギ達の前で複数のダガーが爆発する。

モルゲンレーテのエリカ・シモンズによって魔改造された”シャドウ””バースト””ジェット”の全てを統合したマルチプルアサルトストライカーを装備した”パーフェクトストライク”を駆るムウが初陣とは思えない動きで攻撃していくのは場数と最適化されたエアリスが残したOSのお陰だった。

 

「これ以上好き勝手にやらせるもんかよ!!」

 

シャドウストライカーとバーストストライカーの二つを装備した重爆撃戦闘機と化したトールの”スカイグラスパー”は大推力で飛翔し”ストライクダガー”とスピアヘッドの部隊を”ブレードスラスター”で両断し”ツインアグニ”の火線で蹂躙していく。彼もまた場数を踏んで戦闘機乗りとして成長していた。

 

オノゴロ島はモビルスーツ、戦闘機が入り乱れる混戦状態となった。

 

◆ ◆ ◆

 

オーブオノゴロ島沖合。

フリゲート艦に守られた旗艦”パウエル”ではモビルスーツの発進が進められていた。

 

<あー君たち?”モルゲンレーテ”と”マスドライバー”を壊してはいけませんよ?>

 

各機体に乗り込んだパイロット達に届けられたアズラエルの言葉にシャニが笑みを浮かべる。

 

「他は幾らやってもいいんでしょ?」

 

「必要最低限に留めなさい。極力モビルスーツはコックピットを外す事。特にオーブの艦艇にはね」

 

そう問い掛けに答えたのはエアリスだった。彼らの上官であり彼女の言葉は絶対だ、と体に叩き込まれている。

そうしたのは彼女自身だが。

彼らにとって彼女は”姉”同然なのだから。

 

「わーってるよ…」

 

「隊長は心配性ですからねぇ…」

 

「あ、それと三人とも?これが初出撃ってことを忘れないように。撃墜され怪我でもしたら皆の好きなもの買ってあげないからね?」

 

「えーっ!?」

 

「そりゃねーぜ!?」

 

「うげぇ…」

 

三人とも露骨に嫌そうな表情を浮かべる。こう告げたのはエアリス自身彼らに傷ついて欲しくないからだ。

会話の最中にアズラエルがパン、と手を叩く。

 

<おしゃべりはそこまでです。ではレインズブーケ特務少佐?頼みましたよ?>

 

「了解…そちらも気を付けて。艦長。アズラエル理事を頼みます」

 

「そちらも十分に気を付けたまえ。少佐、武運を。」

 

”パウエル”の艦長に送り出されオペレーターの指示のもと出撃する。

 

<ブルーム1オルガ・ザブナック”カラミティ”おらぁ!いくぜぇ!>

 

<ブルーム2クロト・ブエル”レイダー”発進しますよ?>

 

<ブルーム3シャニ・アンドラス”フォビドゥン”出るよ>

 

左右に展開したカタパルトから三機が同時に発艦し”レイダー”がモビルアーマー形態になりカラミティがその上に着地。フォビドゥンはバックパックを展開し飛翔した。

 

<アーマメントシステムはType1を選択、ストライカーは”パラディオンストライカー”装備します>

 

装着が完了しカタパルトに移動し遅れて発艦する。

 

「エアリス。他部隊の情報随時貴女にリンクします。対応をよろしくお願いします」

 

「了解。」

 

「それと…」

 

「?」

 

「つまらない戦いで怪我のないように、ね?」

 

アズラエルの気遣う言葉に思わずフッと笑みがこぼれた。

 

「分かりました……ブルームリーダー、エアリス・A・レインズブーケ”D(ディスペアー)・ダガー”行きますッ!」

 

ゴーグルが緑色に輝き”パラディオンストライカー”のスラスターが吹き出し大空へ飛翔した。

目指すはオーブオノゴロ島。嵐は迫っていた。

 

◆ ◆ ◆

 

「ほう?あれがアズラエルの部隊か…」

 

連合艦隊に紛れた”パウエル”と同じような地球軍空母に搭載されたモビルスーツのコックピットで一人の少女が呟く。

 

<今回の任務、君の実力ならば容易いだろう>

 

サザーランドの配下であるその母艦の指揮官がそう告げた。

 

「当然だ。あのような”贋作”とは違う……私が…”本物”なのだ…」

 

手にしていた首に掛けている大きめのロケットの中に納められていた写真…両親の顔を塗り潰された家族写真がありそして写る亜麻色の髪の少女が映っている。

それを見て憎しみと怨嗟、そして羨望の眼差しが向けられる。

 

<では頼むぞ…”青き清浄なる世界のために”…>

 

そう言って艦長は通信を切る。

少女は部下へ命じた後出撃する。ここに”アークエンジェル”クルーがいれば、その告げる名はあり得ぬものだったからだ。

 

 

 

 

 

 

()()()()()A()()()()()()()()()”ファントム・ダガー”…目標を殲滅する」

 

 

 

 

 

 

エアリスと良く似た…いや瓜二つと言った方が正しいか。治療を受ける前の姿だ。

しかし、一つ違うのは感情を全て失ったかのように欠落していた。

 

その姿は”幻影”の名を持つモビルスーツを駆って戦場へ向かいその碧眼は映るもの全てを燃やし尽くさんばかりに怒りに震えていた。

 

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