魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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長くなりすぎた…けど分割もあれなので投稿します。
いつもながら誤字脱字報告、感想お気に入り登録ありがとうございます。
【オーブ解放戦】終了です。

ステージは最終章へ…!


暁の宇宙へ

上空より”ディスペアー”が舞い降りた。

シンたち非戦闘員への攻撃を目撃してしまいエアリスは咄嗟にその攻撃に対して防御し反撃してしまった。

その行動に両軍が驚く。

一方でその行動にキラはコックピットで敵の機体の足元に避難中の民間人がいることに気がついた。

 

「足元に逃げ遅れた民間人…!?」

 

<あの地球連合の機体…味方を撃ってでも守ったのか…?>

 

アスランがそう呟くのも無理はない。しかし非道な行動を咎め敵対国の非戦闘員の保護に回るのはそう簡単に出来ることではない事に感心するような色が覗かせていた。

 

しかし、一方でエアリスはコックピットで苦い表情を浮かべていた。

なぜなら味方に向けて攻撃をしてしまったことに色々な面で問題が発生するからだがあの場面で非戦闘員を攻撃することはアズラエルが地球連合から通達したオーブ侵攻に関しての誓約書で非戦闘員への危害を加えない、となっていた筈がそれを裏切る行為は明らかなルール違反だ。

それに避難が完了していなければ戦闘開始の口火を切れなかった筈だ。それを認識していなかったオーブ政府の問題もあるが…。

 

それよりも今は攻撃を停止させ仕掛けた部隊への問いかけに周波数帯を探し通信をいれた。

しかし此方で登録されている筈の味方機体を識別するが…

 

(IFFが有効になっていない…?)

 

先程の戦闘ログは録画されており直接攻撃した機体とその部隊長が追求されることになるだろうが…今はそれはどうでも良い。

一先ずシンたちを避難させなくては。

そうしている間にもこちら側にライフルを構え攻撃を仕掛けようとしているオーブ軍達へエアリスは”ディスペアー”の周波数帯で広域通信を行い戦場に響かせた。

 

《待ってください!》

 

「女…?」

 

「ッ!?」

 

アスランは”ジャスティス”のライフルを構えたまま呟きキラはその声の主が乗っているとされる機体へ注視された。

 

(まさか…その声は…?!でも、そんな…)

 

ーキラくん

 

キラの脳裏にはあの優しい少女の微笑みが浮かぶ。

でもどうして…もし生きているのだとしたら貴女が…侵略者側に立っている…!?

 

確かめたい…あの機体に”彼女”がいる…!その確証を得たい…今すぐにでも機体に駆け寄り確かめたい。

しかし、それは許されなかった。

 

「くそッ…!」

 

『現在非戦闘員が避難中です。オーブ、連合の両軍は条項に則り戦闘を停止して非戦闘員の保護を行ってください!繰り返します…』

 

キラの心情を知らずに必死にエアリスは呼び掛ける。ここで戦闘が再開されれば水の泡だ。

繰り返しそう強く告げると地球連合軍側の艦艇とモビルスーツ達は砲撃を停止しライフルを降ろし発行信号で「我一時撤退ス」と送り部隊を引き上げさせていった。

 

「オルガ達も良いね?」

 

「そうお前に言われちゃ従うしかねぇよ…此方もボロボロだ」

 

「ま、民間人が逃げ遅れてるならしょーがないんじゃない?帰るには丁度良い言い訳つくし」

 

「一時休憩…それにエネルギーがもうスッカラカン…」

 

エアリスの言葉を聞いて戦闘をしていたクロト達も素直に武装を降ろした。既に四機のエネルギーは活動限界(フェイズシフトダウン)しかけている。それに装備もロストし補給に戻るには丁度良いタイミングではあった。

足元には再会するシン達アスカ一家が離散すること無く抱き合い戦火に巻き込まれなかったことを喜んでいた。

撤退する味方部隊と避難民が輸送船に乗り込んだりM1アストレイがライフルを下げ警戒しているのをみて此方も撤退しよう、と考えていると不意に足元に駆け寄ってきた先ほど助けた少女…マユが上を見上げていた。

 

(なんで足元に未だいるの…というかなにか喋っている…?)

 

怪訝に思い外部の集音マイクを起動すると予想外の声が飛び込んできた。

 

「ありがとーッ!てんしさまーッ!パパとママ…お兄ちゃんを守ってくれて…ありがとーっ!」

 

溢れんばかりの感謝をその小さな体躯で表しその言葉になんとも言えない気持ちになった。こちらは侵略者側だと言うのに。

取り合えずで武装していないマニュピレーターの方で小さな少女に手を振る動作を見せると少女も大きく手を振った。

近くにいる両親もなんとも言えない表情を浮かべていたがシンも此方を見上げている。

なにか尊いものを見つめるように。

 

「一時帰投する…!」

 

指示を出し少し離れてからスラスターを吹かし”パウエル”へ帰投する。

 

「(…キラくん)」

 

”ディスペアー”のカメラを”フリーダム”へ向け先に帰投したオルガ達に続き帰路を辿ると同時に信号弾が青空に灯っりオーブの地から遠くに離れていく連合軍機を見送りそして対峙していた”フリーダム”も”ジャスティス”も武器を降ろしていた。

飛び去っていく機体を見て期待とその衝撃を受けたキラはただ見送るしか出来ない。

 

(本当に…貴女なんですか…?)

 

一方でキラの憎しみに染まっていた心に希望の光が灯ろうとしていた。

 

◆ ◆ ◆

 

「”ディスペアー”カラミティ”レイダー”フォビドゥン”帰投します!」

 

オペレーターの声にアズラエルは仕方がない、といった表情を浮かべダーレスが苦い顔を向けると肩を竦めた。

 

「仕方ないですね…あの四機なら直ぐにでもオノゴロを制圧出来たでしょうが…それにしてもあの二機こっちで作ったXナンバーより性能が高そうです。あんなのがいる戦場で”ダガー”だけじゃ余計な被害…全滅する可能性すらありますねぇ」

 

そう告げるアズラエルの言葉に頷く。

アズラエルの財団が作成した機体は今戦場を闊歩する”ダガー”とは比べ物にならない性能だがそれと同等、いやそれ以上かもしれない性能を誇る翼を持つ機体と乱入してきた赤い機体は数の差こそあるものの押さえられてしまっていたことに艦長は背筋に薄ら寒いものを感じた。

それよりもダーレスは問いかける。

 

「しかしこちらの味方が非戦闘員を攻撃しようとしてお開き、か…」

 

「まぁ良いクールタイムでしょう。このままだと此方もじり貧でしたが…」

 

アズラエルは言葉を区切り鋭い眼光を此方から遠くに位置する海上母艦に向けた。

 

「あの機体こちらの作戦開始時に知らされていない機体でした。恐らくサザーランドの差し金でしょうがね」

 

オーブオノゴロ内陸地へ向け進行していた機体はアズラエルの与り知らぬ機体であった。その装備も人員もだ。

軍部をある意味で掌握した彼ならば収集したXナンバーと”ダガー”のデータを流用し子飼の部隊を作り出すことすら可能だろう。

 

「攻撃しようとしていた部隊はそちらに属するモノのようだ。此方から引き渡すように伝えたが…”そんなものはいない”の一点張りでな。…恐らく、”確信犯”といったところかね?」

 

非戦闘員へ攻撃を仕掛けた”ダガー”のパイロットは()()()()()()()()()と言うことになる。

 

「ええ…本当に困りますよ。こっちはルールを守って戦争してるって言うのに勝手にそんなことされちゃ…それじゃ只の殺戮者と変わり無い」

 

「耳の痛い話だ。それに少佐から送られてきた現地の様子ではIFFが反応していないとのことだが…」

 

「勘ぐられたくない、ってことですか?ますます怪しい…」

 

味方機体ではあるが識別コードがない。即ち後で”事故だった”ということで実行したパイロットと機体を葬ることすら可能なわけだ。使い捨ての部隊…アズラエルも艦隊を指揮するダーレスもいい気分はしないのだ。

 

「ともかく…あの部隊注視しておきましょう。あれはやらかす気がしますよ僕ぁ…戦いに勝って後で難癖つけられたくないですからね」

 

「ですな」

 

”パウエル”には無事に戻る四機を確認しアズラエルは立ち上がる。

一先ずの戦果を上げたエアリス達を労うために格納庫へと向かった。

 

(彼女達と今後の事を話し合わないといけないですしね…)

 

◆ ◆ ◆

 

「アズラエルの部隊か…」

 

「どうしますか隊長?」

 

「暴れるか?」

 

「えーもう終わり?」

 

”ディスペアー”からの通信によって動きを止めた【ネクロシス】。

だが《エアリス》はそれよりもモニターに映る”ディスペアー”を見つめた。

 

(あの機体…いや、あのパイロット…)

 

戦場に飛び込んだときに脳裏に響く稲妻のような感覚を受けたのは”ディスペアー”を見たからだ。

まるで()()()()()()()がいるかのように…

 

(私の立場を奪った貴様が生きているというのか…?だとしたら…!)

 

憎しみを向けるようにその機体の後ろ姿を見送る。この状態で後ろから撃ち抜いても良かった。

しかし、それでは()()()()()

内心で舌打ちをしながら撤退指示と各機体のエネルギー残量値はオーブ軍の獅子奮迅の抵抗により想定よりも低下していた。

そうとなれば指示する内容は自ずと決まっていた。

 

「…撤退する。貴様らのエネルギー残量も心もとないだろう。自爆してくるというのなら止めないが」

 

そう告げると僚機達は渋々ながら撤退していく。敵への一時への休息を与えることに誰一人として不満を漏らすものはいなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

「エアリスさん…」

 

信号弾が打ち上げられ上陸していたモビルスーツが引き上げ撤退していくのを確認していたキラは思いがけない休息時間に息を吐くが避けられない結末を先送りにしただけかもしれないがその状況を作り出してくれたエアリスに今は感謝を告げた。

 

そして海上に佇むキラは目が覚めたように機体を転じさせ同じく宙に佇む赤い機体を見つめる。

近づこうとする機体のの詳細…V字のアンテナにXナンバーのような頭部に”フリーダム”に似通ったフレーム…そして乗っている人物が放った”ザフト”という組織の機体、識別データが目の前の機体が”ジャスティス”であることを知らせた。

 

接近する機体へ一線を画すように手にしているライフルを向けた。

 

「アスラン…!」

 

握るトリガーに力が入る。このまま理性を失ってしまえば引き金を引きかねない。

目の前で倒された”ダガー”の残骸の姿がフラッシュバックする。息を呑み同じ軍に所属していた機体の為通信を繋げた。

 

「…援護は感謝する」

 

キラは明確な敵意をむき出しにして問いかけた。

 

「だが…その真意を改めて確認したい。ザフトとしてこの機体の奪還しに来たのか?それとも…”アスラン・ザラ”として只、助けに入ったのか?答えろ…」

 

敢えて名前を告げ問いかけトリガーにかかる指に力が籠るままキラは返答を待った。

アスランは”ジャスティス”のライフルを敵意がないことを示す為に降ろし上部装甲を解放し姿を見せる。

 

<確かに俺は…その機体…”フリーダム”の奪還とあるいは破壊、という命令を本国から受けている…>

 

躊躇いがちに呟かれた声はスピーカーを通して伝えられた。

そしてキラはトリガーを押す指に力が入る。腹の底から溢れ出してくる”敵”という憎悪の感情と”親友”の筈の”喜び”の感情がせめぎ合う。やはり、か…と。

 

ーあれは…僕の()()()()を”敵”なんだ…!

 

”喜び”が”憎しみ”に上書きされかけその引き金を引こうとしたその瞬間にアスランが頭を上げる。

 

<だが、今…俺はおまえとその友軍に敵対する意思はない!>

 

「アス、ラン…」

 

キラは目を見開く。

押し掛けたトリガーを戻し画面をみるとソコには今にも吐きそうなほどに苦しげに聞こえる声でアスランははっきりと告げた。

 

<話が…したいんだ…おまえと…>

 

”フリーダム”と”ジャスティス”は戦場の傷跡が生々しいオノゴロ島の海岸に着陸する。

向かい合って立った機体はお互いに上部装甲が開きラダーを使い降り立つ。

ソコに司令所から出てきたカガリやオーブ兵士達が気がつき近づき降り立った赤い機体のパイロットスーツの形状をみて驚き遠巻きに立ち止まる。

キラは胸のざわめきと沸き上がり掛けている感情を押さえるために唇を強く噛み拳を握りしめた。

近づこうとするザフト兵士からキラを守ろうと兵士達が銃を一斉に構えたが咄嗟に手で制止する。

 

「彼は…敵じゃない……!」

 

その言葉を聞いてカガリはハッとして歩みを二人の場所へ進める。

二人は距離を詰めアスランの黒髪が風になぶられキッと結ばれた口元に凛々しい筈の目元は今にも涙を溢しそうな程潤んでおり嘗ての面影は昔と違っていた。

何処かに行っていたトリィが自分の肩に停まる。

昔のように再会したというの今のキラの表情は親しいものが見れば驚くぐらい険しく泣きそうな表情を浮かべていた。このまま口を開けば憎しみの言葉が飛び出しそうでキラは必死に押さえる。

 

「キ、ラ……」

 

「アス、ラン……!!」

 

ギリッ、と奥歯を強く噛み閉める。目の前にいる人物はあの日見た夕暮れと同じ景色の筈なのに”敵”になり()()を…!

だが、同時にあの戦場で…民間人の女の子を救ったあの機体にあの人が生きていることを考えると目の前にいるアスランを許してしまいそうだった…許しちゃ行けない筈なのに、と。

泣きたいような可笑しい気持ちになりキラはどうしたら良いか迷った。

 

「おまえらぁーッ!!」

 

カガリが叫びながら突っ込んでくる。嫌な予感がすると案の定人目を憚らず二人を捲き込むように腕で首を抱きついた。

 

「この…ばっかやろぅ…!」

 

二人はもみくちゃにされ目を白黒させる。カガリもまた泣きたいのか笑いたいのかわからない顔をして目に涙を溜めて二人を見る。不意に二人は顔を見合わせてアスランは苦笑しキラは苦い顔を浮かべた。

 

◆ ◆ ◆

 

「しかし、それは…!」

 

アスランはキラからこのオーブ侵攻の経緯を聞いて絶句する。

 

「うん、大変だってことは分かってる…」

 

アスランとキラは腰掛けて会話しているが少しだけ未だ距離は遠い。

向こうから駆け寄ってくるカガリがドリンクを二人分持ってきてそのまま側で耳を傾け”アークエンジェル”のクルーと彼らに混じってディアッカとニコルが物陰から見ていた。

 

「でも仕方ない、って僕も思うから…」

 

そう告げカガリを見やる。

 

「カガリのお父さんの言うとおりだと思うから」

 

アスランとキラを見つめるようにモビルスーツや戦艦が急ピッチで作業が進められる格納庫の二人の背後には”ジャスティス”と”フリーダム”が肩を並べる。

 

「…オーブが地球軍に付けば大西洋連邦はその力を利用しプラントを攻める…」

 

キラはそう告げアスランを見る。

 

「…ザフトの側に付いてもおんなじだよ。只敵が変わるだけで…繰り返し。血反吐を吐くマラソンと同じだ」

 

アスランは呆然としながらキラを見る。

 

「そんなもの…僕はもう御免だ…!友達を…大切な人を撃ちたくない…!」

 

「しかし…!」

 

勝ち目のない戦いを思い止まらせようと反論しかけたアスランだったがキラの漆黒の意思を宿す強い眼差しを見て言葉を詰まらせる。ややあってキラは俯いた。

 

「エアリスさんは…君の仲間を沢山殺した…僕も沢山」

 

アスランの中に苦いものが広がる。

 

「でも…彼女はコーディネイターが憎くて殺したんじゃない彼女は”地球軍”で”ザフト”と戦っただけなんだ。大切なものを守るために」

 

「…」

 

思い返すように噛み締めアスランに語った。

 

「ヘリオポリスで…”アークエンジェル”に乗り込んだとき彼女は僕を庇ってくれたんだ。地球軍の人たちに銃を突き付けられた…でも彼女は僕の前に立って大人に向かって”銃を降ろせ”って」

 

懐かしそうに、嬉しそうにキラは語る。

 

「救難ポットに入ってたラクスとも仲良くなって一緒にお話ししたり…あ、たまたまアークエンジェルに乗せられてた楽器を使ってセッションとかしてたかな」

 

「ラクスが…」

 

ー私の”親友”ですわ

 

”プラント”で再開したラクスにもそう言われたことを思い返す。あの短い期間でラクスと仲良くなり心を通わせた少女…その存在に興味を惹かれる。

 

「でも君は…”彼女”を殺した…」

 

アスランはハッとする。自分が手に掛けた二人の”大切な親友”自らの身勝手な思い込みで切り裂いたコックピット…その事に遠巻きに見ていた連合の制服を着用した少女達が強張るのが見えた。

 

「今でも…僕は…君を許せないんだと思う」

 

「キラ…俺は…」

 

ここでアスランは思っていたことを発露させる。

 

「俺も…最初は”ゴーグル付き”を敵として追っていた…だがお前があの船に乗っていると知ってラクス返還の際に”着いてこい”と言ったのに断られたのを根に持っていた」

 

情けないことだ、と分かっていた。

 

「アスラン…」

 

「お前が…お前が俺の…”友達”だったから…ナチュラルに良いように使われている、と…そう()()して俺は…お前の…ラクスの大切だったその子をこの手で奪ってしまった…軍や上官の命令じゃなくて俺の意思でその子が疎ましく思った…!」

 

アスランは泣き出しそうな眼でキラを見る。

 

「”コーディネイター”と”ナチュラル”が仲良く出来るなんて俺には想像できなかったんだ!だから…俺は…俺は…!」

 

「もういいよ…アスラン」

 

キラはアスランの肩に手を置く。その表情は仕方ないな、と如実に現れている。

その表情を見てアスランは今自分がみっともない女々しいことを言っていることに気がついて羞恥と後悔でマトモにキラの顔を見ることが出来なかった。

 

「それに俺は…お前を殺そうと…」

 

「人は分かり合えないから相手を傷つける…それがよく知る仲だとしても、だよ。僕もだよアスラン。だから君を殺そうとした…」

 

知っているからこそこの戦いの虚しさ、”敵”と言う概念の愚かしさ、”戦争”と言う人間性を殺すそれは非情としか言いようがない。

争いがなければよき隣人でいられたかもしれないのに。

 

「戦わなくて…笑い合える人種も関係なく手を取り合える世界ならどれ程良いんだろうか…」

 

遠くを見つめるキラの姿を見てアスランは只見つめるしか出来なかった。

 

「このままじゃ本当に敵を滅ぼし合うだけの殺戮を繰り返すしかない…僕は…そんなものは嫌だ。だから僕は戦うんだ」

 

「キラ…」

 

「例え守るために手に取った銃だけど…僕はもうそれでも撃ってしまった…」

 

自分がモビルスーツに乗ったのは大切な者達を守るため…そのために銃を手に取り命を奪ってしまったことを悔やんでいるがそうしなければ守れないものがあったのは確かだ。守れたものもある、それが事実なのだから。

タラップに足を掛けたキラを見上げるアスランは親友の表情を見て喉元にナイフを突き付けられたような感覚を覚えた。

 

「なら…僕たちもまた、戦うしかないのかな?」

 

そう告げられアスランは友の顔をまじまじと見つめる。キラは悲しげな表情で彼を見ていた。

 

「…作業に戻るよ。攻撃何時再開されるか分からないから」

 

そう告げ立ち去ろうとするキラにアスランはすがるように声を掛けた。

 

「ひとつだけ聞きたい…”フリーダム”にはNジャマーキャンセラーが搭載されてる…そのデータお前は…」

 

「ここで、あれを何かに利用する人がいるのなら…」

 

足を止め振り返り見返す。その気迫に、覚悟に言葉を失った。

 

「ぼくが…僕が討つよ」

 

◆ ◆ ◆

 

オーブの格納庫にてアスランは周囲を見渡す。

辺りには忙しなく動くモビルスーツと艦艇を整備する整備兵と命令を通達するために走り回る軍関係者…そして目の前にひっそりと立つカガリやキラをも…殺さなくてはならない。命令として。

だが…そんな命令に対して()()()のアスラン・ザラであれば命令を忠実にこなすだろう…しかし、一個人のアスラン・ザラは疑問と嫌悪感を覚えていた。

 

「俺は…」

 

迷うアスランを前にカガリが声を掛けた。

 

「良かったな」

 

「え?」

 

「…キラが生きてて」

 

「ああ…」

 

その事にアスランはぎこちなく笑みを浮かべる。

 

「キラ、変わっただろ?」

 

カガリはまるで自分の事のように自慢するのが可笑しかった。

キラは”フリーダム”の前で別のパイロットと言葉を交わしているのが視界に入る。

 

「…いいや」

 

「そうか?」

 

そう返答するとカガリが少し不満そうにしていた。

 

「やっぱり…あいつだよ」

 

泣き虫で甘ったれで…こうと決めたら絶対に引かないある意味で強情なキラ。

そして今誰よりもこの”戦争”という負の側面に向かい合う戦士であることを再確認し改めで自分の知っているキラとは違うんだなと自覚してしまった。

アスランは立ち上がり歩き出す。

 

「あ、おい…!これからどうするんだお前…」

 

アスランは足を止め後ろを振り返る。その表情を見てカガリは息を呑む。覚悟を決めた表情だ。

その答えはキラと再開しその言葉を聞いたことで既に出ていたのかもしれない。

軍人としての自分、人としての自分。前者は荊の道で外道に墜ちる。取る道は一つだ。

 

「決まっている。俺はーーーーー。」

 

◆ ◆ ◆

 

「首尾は?」

 

「ダメですね。こっちに寄越した部隊の素性をサザーランドに問い合わせても知らぬ存ぜぬ、って事で向こうもビクトリア攻略に忙しいみたいですから取り合ってくれません」

 

「…うぅむ」

 

早朝。

一時休戦で連合旗艦である”パウエル”の艦橋でアズラエルとダーレスの会話を傍に立って聞いている。

 

「うぅむ…此方としてはオーブの”マスドライバー”と”モルゲンレーテ”の使用権をもぎ取れれば良いのだがね。再三アスハ代表から会談の要請が届いているが理事国はなんと?」

 

そう問いかけるとアズラエルは肩を竦めた動作をして見せた。

 

「ダメダメですね。『用意した一個師団を用いて攻めきれない国家なら消えてくれた方がマシだ』と理事国はそう判断しているみたいでねぇ…簡単に言ってくれますよ全く」

 

疲れたような表情を浮かべる盟主を見てダーレスは同情するような表情を浮かべる。伺い立ても大変だな、と艦隊司令を務める自分と重ね合わせ苦笑した。凡そ()()ブルーコスモスの盟主とは思えない人間臭さを感じ少しだけ親近感が沸く…とはいえ此方は軍人であり司令部より通達された任務を遂行しなくては、と。

 

「あとどのくらいですか?諸々の準備が整うのは」

 

「此方の準備は間も無く終わる。そちらは?」

 

「こっちも準備万端です。特務少佐。デモンストレーションも程程に。今度こそあの厄介な二機を落としてください」

 

そう言ってアズラエルは此方に視線を向ける。無理難題を言ってくれるな、と思い苦笑する。

 

「強敵ですよ?あれ」

 

「ほう…撃墜できないと?」

 

「撃墜されるつもりも毛頭ありませんが」

 

メガネ越しの碧眼がアズラエルの青い瞳を射貫く。

そう強い言葉で啖呵を切るとアズラエルは満足そうに笑みを浮かべる。実際にこの男は”オーブ”が落ちようが落ちまいが関係ないのだ。自らの強さの象徴である”エアリス”が無敗であれば満足なのだから。

 

「良いでしょう…あのサザーランドが用意した部隊よりも先にモルゲンレーテやマスドライバー…制圧して見せてください?」

 

「分かりました」

 

そう告げ艦橋を出ていく。

やることは沢山ある…オーブの戦力を極力削がない、キラくん達を宇宙へ上げる等目が回りそうだ。

…だが私は一つ伝えなかった帰還した際にアズラエルに戦場で感じた()()()()()…まるでもう一人の自分がいるかのように感じたがそれは確証が無かった為だ。

 

ふと脳裏によぎるその言葉を脳内で呟く。

 

(あり得ないと思うけどもしかして…)

 

あの戦場で稲妻が走ったかのような感覚…まるで本編で少佐とクルーゼが共鳴したかのような…それでいて()()()()()()()()()()()()()それは…。

 

◆ ◆ ◆

 

「ミサイル発射を確認!連合艦隊攻撃を開始しました!」

 

オーブ基地司令所ではオペレーターの報告にカガリは拳を握りしめる

 

「再度の会談要請に答えもないまま…!」

 

同じくヤラフェスの行政府では侵攻再開の知らせを受けた首長達が愕然とする。

 

「ウズミ様…!」

 

「おのれ…これが回答か!地球軍め…既に敵と見なせば言葉も聞かぬのか!?」

 

指示を仰がれウズミが憤怒の表情を浮かべモニターを見つめるなかオーブの格納庫では迎撃準備の為に関係各員が走り回る。

 

<オノゴロ島へ向けモビルスーツ群、航空戦力進行中!>

 

「迎撃ーッ!!」

 

補修が終わった”M1アストレイ”がキャリアーから起動し発進していく。

ドックに入っていた”アークエンジェル”も発進し敵艦隊を目指すと同時に島の迎撃装置が稼働し降り注ぐミサイル群を配置したリニアガンタンク部隊と共に迎撃する。

 

「キラ!」

 

アスランは出撃しようとするキラへ近づくと周囲に聞こえないようにして告げた。

 

「どのみちオーブに勝ち目はない…分かってるんだろう?」

 

キラの思想は確かに立派だが彼一人、”フリーダム”一機ではこの物量に対抗できる筈がない。

その意味を告げるとキラは悲しく微笑んだ。

 

「うん…たぶんみんなも思ってるよ…」

 

でも、と言葉を区切ってキラはアスランを見る。

 

「勝ち目の無い戦い、だからって言いなりになることはできない。必要なのは何のために戦うのか…だから僕は行くよ」

 

キラは既に心を決めていた。

 

「本当は戦いたくない。でも戦わなきゃ守られないものがあるから」

 

こうと決めたキラの心をアスランは過去一度も変えることは出来なかったのだから。

その優しい視線がアスランの喉元に不可思議の刃を突きつけられているような感覚を覚える。

 

「アスラン…話せて良かった」

 

「キラ…!」

 

彼の姿が”フリーダム”の上部ハッチが解放され下へ吸い込まれていく姿を見て息苦しい。

時間があれば、と思うが現に連合の艦隊は攻撃を仕掛けてきている時間は既に無い。

 

「困りましたね」

 

「参ったねこりゃ…」

 

「ニコル、ディアッカ…!!?生きて……?!」

 

そして”フリーダム”を見上げるアスランの元に同じザフトのパイロットスーツを身に纏う同僚の姿を見て驚いた。

撃墜し死んだと思われた仲間が生きていたのだ。

 

「お前、”アレ”の奪還命令受けてんだろ?やっぱ不味いよなぁ…俺たちザフトが介入するのはよ」

 

そう問われアスランは苦い表情を浮かべる。

 

「だが俺はあいつを…あいつらを殺させたくない…!」

 

「そうですね…でも僕はそれでいいと思います」

 

「ニコル…?」

 

「奇遇だな。初めて意見が合うじゃんか」

 

「ですね」

 

そう言って二人は視線を合わせ頷く。その光景にアスランは呆気にとられた。

 

「え…?」

 

思いがけない反応に虚を突かれたアスランは唖然とするのを見た二人は笑みを浮かべ背中をポン、と叩いて搭乗機へ向け走り出した。

 

◆ ◆ ◆

 

出撃したキラは押し寄せる”ストライクダガー”と”01ダガー”の群れにマルチロックオンで狙いを定め四肢と武装をもぎ取っていくが直ぐ様動けなくなった僚機を乗り越え続々と押し寄せまさに焼け石に水、と言った感じだが戦い続けるしか無い。

すぐ眼下で戦っていた”M1アストレイ”がビームに貫かれ爆散した。

 

「ッ!」

 

アラートが鳴り響きキラは接近する”四機の機影”を確認する。

キサカが情報収集の末に必要最低限のデータをかき集めてくれた四機の機体達は”ストライク”と同じく実弾兵器を無効にする。自分が乗っていた機体が前期だとしたらあれらは性能をブラッシュアップした後期Xナンバーと言うべきだろう。

 

此方を見つけると同時に先頭にたつ機体から三機の機体が取り囲むように散会する。

”レイダー”は口に当たる部分からビーム砲<ツォーン>を吐き出し”フォビドゥン”がプラズマ砲<エクツァーン>を”カラミティ”はタイミングをずらしながら全身の火器を乱れ撃つ。

 

「くっ…!」

 

キラも必死に機体を動かし反撃しようと転じるがそれを目の前の”ディスペアー”が許してくれない。突如現れ咄嗟に大出力ビームソードが振るわれシールドを両断しようかと言う勢いが襲いかかる。

 

「これを避けるのは流石だねぇ…キラくん!」

 

「やっぱり貴女なんですか…!?エアリスさん!!」

 

通信は届かずただ武器をぶつけ合い命を奪い合う行為にキラは嘆くがエアリスは喜ぶ表情を浮かべる。

”フリーダム”は叩きつけられたビームソードをパリィし押し返すとその直後にキラはキラリと光るものを一瞬視界に入り機体を動かすと”フォビドゥン”の鎌<ニーズヘグ>が襲いかかり紙一重で回避するが息つく暇も与えない、と言わんばかりに”レイダー”と”カラミティ”が其々機関砲とプラズマバズーカを放ち追い込んでいく。

 

「くっそぉー!!」

 

”フリーダム”は後退しながら盾を構え接近してくる四機を相手にライフルを発射する。

 

<キラッ!!>

 

「ッ!?アスラン…!?」

 

スピーカーから入ってきた声にキラは戸惑いを隠せずにいた。

 

「ぐぅっ…!やっぱり来るよね…アスランッ!!」

 

接近しようとしてた”ディスペアー”に”ジャスティス”の<バッセルビームブーメラン>が襲いかかりシールドを掲げるがその質量故に大きく弾かれてしまう。

そしてクロトが驚きながら”レイダー”を操縦し背面リフター<ファトゥム-00>が襲いかかり直撃を避けるために距離を詰めた。

 

「どうして…?」

 

<俺()()だって解っている…!>

 

()()()…と言われてキラは海岸沿いで戦う”バスター”と”ブリッツ”の姿が目に入る。

 

「アスラン…」

 

キラの胸の中に熱いものが込み上げる。敵だった…殺し合いをしていた筈の少年と少女が”アークエンジェル”を守るために連合のモビルスーツを蹴散らす為に戦っているその行動に言葉だけでない必死の行動を見てそう思えた。

アスランも此方に手を貸す義理はない筈だ…それなのに…!

 

<戦わなくちゃ守らないと行けないことがあるってことを…!蹴散らすぞ!>

 

「うんッ」

 

”フリーダム”と”ジャスティス”が散会し四機のモビルスーツへ襲いかかる。

息の合うフォーメーションに翻弄される三機のXナンバー…しかし()()が鍛え上げたパイロットたちは弱くない

 

「おらおらーッ!!」

 

「滅・殺ッ!!!!」

 

「うわぁああああああッ!!」

 

周囲にはビーム。実弾、サーベルの剣線が煌めき遠目から見れば花火のように見えるが一発でもかすれば機体を破壊されかねない驚異だ。

 

(この現状で頑張っているのは流石だけど…無理があるな…!)

 

”ディスペアー”のライフルとビームランチャーが二機目掛け飛ぶが当然の事ながら回避されてしまう。

 

「うぉおおおおおおおッ!!」

 

”ジャスティス”がビームサーベルを連結し<アンビテクストハルバートフォーム>で襲い掛かり互いのシールドにサーベルが激突する。

 

「丁度良い…!この身体の成長のツケを払って貰おうか!!」

 

ニヤリとエアリスは笑みを浮かべる。

アスランが驚愕の表情を浮かべる。乗っているパイロットは当然解らないがその実力は”ゴーグル付き”に匹敵、いやそれ以上かもしれない、と。

 

「コイツ…ッ!?強い…!!」

 

切り結び、離れて撃ち合う光景を見ながらエアリスは”オーブ”が陥落するのは時間の問題だった。

いや()()()()()()()と言った方が良いかも知れない。

”M1”の部隊と共に”バスター”ブリッツ”ストライク”アサギ達の”M2アストレイ”が海岸沿いに”ダガー”と例の”01ダガー”部隊が上陸し次々と軍施設と”M1アストレイ”を撃墜していき磨り潰されていく。

”アークエンジェル”も連合艦隊へビームを放ち轟沈させるが物量を覆す事は出来ずオーブの艦艇が一隻、また一隻…と沈んでいく。自走できる艦艇が少なくなっていくのが見て取れるが誰一人として退くことをしなかった。

 

「戦闘は西アララギ市街に移動…」

 

「第三防空施設全滅…以下部隊はB指揮下へ!」

 

「第十二防空大隊全滅しました…!」

 

「残存M1部隊は東支庁へ移動…部隊を再編せよ…!」

 

発令所では敗戦濃厚の色が漂う。オーブ全域を映すモニターには無事な施設は殆ど無く機体の残骸が写し出されていた。その光景を見てカガリは鬱血しそうな程に拳を握りしめる。

 

「カガリ…」

 

「指揮官が持ち場を離れてはいけない…そういいたいんだろ…!」

 

キサカの顔をカガリが見返す。その表情にキサカは気圧されそうになる。

不安気になるオペレーターへ檄を飛ばす。

 

「狼狽えるな!上空の戦力への対応は第八航空混合戦隊を向かわせろ!第四沿岸地区は放棄!内陸部へ侵攻する敵部隊へは第一機甲大隊で迎撃!残存のイソガミ支庁へ集まった第四、第七のM1部隊は合流しそれを迎撃せよ!」

 

カガリの勇ましい指示にオペレーターたちは「了解!」と返答し指示を各部隊へ飛ばした。

泣き出しそうになる自分へ檄を打ち込みながら戦場を見つめるしか出来なかった。

 

同じ頃オーブ行政府地下では…

 

「ウズミ様」

 

部屋に戻ってきた首長の一人が部屋へ戻りウズミへ声をかける。

待っていた、と言わんばかりにウズミは問い返した。

 

「手配は」

 

「準備には後二時間程必要かと…」

 

その返答にウズミは苦い顔を浮かべ首を振った。

 

「ダメだ。掛かりすぎている。時間はもう既に無いのだ…!」

 

ウズミは立ち上がり弟であるホムラへ視線を向けると頷いた。

 

「良い、私も直接赴く」

 

次に発せられる言葉は”オーブ”の現状を、その戦での行き先を示していた。

 

「残存の部隊は”カグヤ”へ集結するように命令を。…………”オノゴロ”を放棄する!」

 

◆ ◆ ◆

 

「くッ…エネルギー切れか…燃費は良くなってる筈なんだけどねぇ…流石は核動力機…!」

 

撃ち合い斬り結んでいた”ディスペアー”でコックピット内部で珠汗を流しながらそう呟く。

機体が自分に追い付き凌駕しているとは言っても此方はバッテリー駆動で向こうは核動力機体…燃費の差は覆しようがない。

 

「此方は四機がかりだってのに被弾しないのはどう言うことよ…このザラ野郎…!」

 

アラートが鳴り響くコックピット内部で悪態を吐きながら離脱するために”ジャスティス”へ蹴りを見舞って離脱する。オルガ達の機体ももうエネルギーが尽き掛けている。

 

「アズラエルに一言言われそうだけど…仕方ない。撤退するよ!」

 

<チッ…!しょうがねぇ…>

 

<次こそはあの白いの落とす…!>

 

<赤いのもね…!>

 

◆ ◆ ◆

 

「オーブを離脱!?」

 

オーブ全軍に撤退命令が出された。”アークエンジェル”はマスドライバーが設置されたカグヤ島へ集結し応急的な修理を受けていた。マスドライバー管制室に呼び出されたマリューは想定していた指示とは異なっていることに思わず面喰らってしまい思わずウズミへ食って掛かってしまった口調になる。

 

「我々に脱出せよと…そうウズミ様はおっしゃるのですか!?ウズミ様…!」

 

「貴女方にももうお分かりだろう…オーブが陥落するのは時間の問題だ」

 

「ッお父様…ッ!」

 

その言葉にカガリは驚いた表情を浮かべ泣き出しそうになる。その言葉の意味は誰よりも理解しているからだ。

 

「…人々は既に避難した。()()の手もある。…後の責めは我々が追う。しかし、それでも失ってはならぬものがある」

 

ウズミの穏やかな瞳に確固たる決意が宿る。

 

「地球連合の背後には”ブルーコスモス”の姿がある…そして”プラント”もまたパトリック・ザラ…コーディネイターこそが新たな種とする優良種こそが至上、という思想に染まっている」

 

そのウズミの言葉を部屋に入ってきたアスランが苦い顔を浮かべていた。

その表情を見てマリューも何故自分達義勇軍に加わっているのか腑に落ちた。彼らもまた命じられるがままに敵を撃つことに疑問を覚えたからだろう。

 

「このまま進めば世界はやがて望まぬもの同士が、認めぬもの同士が際限無く争う世界となるだろう。それで良いのか!?君たちの世界は…未来は!」

 

マリューはウズミの言いたいことを理解した。

このままオーブが陥落してもナチュラルとコーディネイターが際限なく争うのが続くだけだ。

それこそ文字通り()()()()()()()()()()()まで。

 

「過酷な道だが…ここでその灯火を消すわけには行かぬ。解ってくれような?…マリュー・ラミアス」

 

マリューはその言葉の意味を噛み締め真っ直ぐにその瞳を見つめた。

 

「…小さくとも強い灯火は消えぬ、と私もそう信じています」

 

◆ ◆ ◆

 

”パウエル”の艦橋でオペレーターの報告が入る。

 

「オーブ艦隊撤退していきます。残存の部隊マスドライバー施設のカグヤ島へ集結しつつあり」

 

オペレーターの報告を受けアズラエルとダーレスが顔を見合わせる。

 

「背水の陣かね?此方がマスドライバー施設を傷つけられない、と踏んでか…」

 

そうダーレスからの問いかけにアズラエルは少し上の空で答える。

考える素振りを見せた。

 

「そうかもしれせんねぇ…(ウズミさん…どうやら捨て身で”アークエンジェル”とオーブの残存部隊を宇宙に逃すつもりですか…そんなことになったら責任は…いや、”だからこそ”ですか…なるほど)マスドライバーが一番の目的ですからね」

 

アズラエルはその事をこの部隊集結の行動の意味を理解していた。

 

(やれやれ…貴方も不器用なお方だ。仕方ありません。此方も”契約”が続いている事ですし…一肌脱ぎましょう…と言っても脱ぐのはエアリスですが、ね?)

 

「”イルガルス”の動向は」

 

「部隊は此方の作戦要項に則り行動している模様です。逸脱した違法行為は認められず」

 

例の部隊は大人しく作戦に従事しているようだが…逆に不気味に思えてくる。

実際に彼らが今侵攻している地区は壊滅状態で後数時間もしたら間もなくモルゲンレーテを制圧することが出来るだろう

その事実はアズラエル的には面白くなかった。

 

(エアリスに似た機体…そしてエアリスと同等の能力…まさか、ね…後で諜報班へ()()を振っておくのが吉、ですか)

 

撮影したデータと戦闘ログを確認しイヤな想像が頭を過るが今は目の前の状況をどうにかするのを考えるのが先決だった。

 

「ブルーム隊を此方へ。特別オーダーです。」

 

アズラエルはエアリスを呼びつけ()()()()を申し付けた。

 

(…と、言うことです。頼みましたよ?)

 

「はい?」

 

その命令にエアリスとオルガ達は面喰らったような表情を浮かべる。

 

◆ ◆ ◆

 

「レーダーに機影!モビルスーツじゃな」

 

首長の最年長が管制室で声を上げると緊張感が走り警報が鳴り響くとキラ達は愛機へ走り出す。

 

「ラミアス殿発進を!」

 

「分かりました!キラくん達は?」

 

「発進を援護します!”アークエンジェル”は行ってください!」

 

「”バスター”と”ブリッツ”は大気圏で飛行できない!”アークエンジェル”へ!」

 

<くそっ…!>

 

<分かりました!二人とも気を付けて>

 

ディアッカとニコルは”アークエンジェル”へ乗り込んだ。

 

「”クサナギ”は!?」

 

<すまん、直ぐに出す!>

 

「お父様…!」

 

「何をグズグズしておるか!さっさと行かぬか!」

 

管制室でウズミがカガリに一喝する。今のカガリは離れようとしたくない駄々っ子のようだったが仕方がない。

父は責任を取りこの場に他首長と残るつもりなのだ、と感づいていた。

それが堪らなく悔しく涙を目尻に溜め父親を説得したいのだ。

 

同時に”クサナギ”の予備ブースターを装着し負えた”アークエンジェル”が上空へ飛び上がり<ローエングリン>でのポジロトニック・インターフィアランスのゲートを潜り抜け数分後には大気圏を突破した。

 

<来るぞキラ!…何ッ?>

 

「ッ!?さっきの部隊と違う…!」

 

此方に迫るのは先程の機体達ではなく全機が”01ダガー”のカスタム機で構成されていた。

 

「ちっ…アズラエルの部隊め。存外役にたたなかったな」

 

「あら、さっきのより強そうね」

 

「楽しみ甲斐がありそうだな!」

 

「新しいオモチャだぁ~…さっきの”ストライク”には逃げられちゃったから…楽しませてね?アハハハハッ!!」

 

「散開ッ!!」

 

”エアリス”の合図と同時に四機の”ダガー”のバイザーが赤く輝きスラスターを吹かす。

”ハルピュイア”がビームソードを引き抜き突撃し攻撃を仕掛け”ジャスティス”が後退するとそれを狙うように”ファーブニル”の二対のランチャーが火を吹き狙うが”フリーダム”がライフルを発射し牽制、サーベルを引き抜き接近戦へ持ち込もうとするが割って入った”レヴィアタン”が突撃斧槍で突進してくる。

 

「キラッ!くっ…!」

 

攻め立てられる”フリーダム”へ援護に入ろうと敵機を振り切り向かおうとするが”ファントムダガー”に遮られる。

 

「何処へ行く?逃がさん!貴様達にはあの艦の行き先を吐いて貰わねばな!」

 

手にしたライフルが放たれ右や左に避けながら”ジャスティス”は応戦する。

”クサナギ”の発進がまだだ。アスランは歯を喰い縛りながら目の前の敵の猛攻を凌ぐ。ここで自分達が撃墜されることになればカガリは…!

一方の管制室ではいつまで経っても離れようとしないカガリにウズミが一喝する。

 

「何をクズグズしておる!我らには我らの役目、お前にはお前の役目があるのだ!」

 

「お父様…!」

 

カガリは必死に抵抗する。

 

「イヤですッ!お父様が残るのなら私も…!」

 

ウズミは駄々を捏ねるカガリの腕を引いて発着場へ向かう。

 

「想いを継がぬ者なくば全て終わりぞ!それが何故分からん!!」

 

父の迫力にカガリはビクり、とすくんでしまう。

ウズミに引き連れられながら発着場で待つキサカへ投げつけるように受け渡す

 

「ウズミ様…カガリ!」

 

「キサカこのバカ娘を頼むぞ!」

 

「はっ…!」

 

キサカも彼の意図を察知し敬礼する。

 

「お父様…!!」

 

今にも泣き出しそうになるカガリに先程の厳しい表情とは一変して優しい表情を浮かべる。

 

「そんな顔をするな…お前は私の娘だろう?」

 

「です、が…ッ!」

 

ウズミの手がカガリの頭を撫でる。その大きくて優しい手付きがもう感じられなくなる恐怖で一杯だった。

今だから、この状況になって父の偉大さを改めて知る…だからこそ反発していた時間を大切にしたかった…。

 

「父とは分かれるがお前は…一人ではない」

 

そう言ってウズミは懐から一枚の写真を取り出した。

 

()()()()()もおる…」

 

写真を受けとるとそこには若い女性が二人の赤ん坊を抱き抱えておりなんの変哲もない写真…と思ったが裏返すとそこには目を疑う文字が書かれていた。

 

ーキラ&カガリ。

 

「え…っ?」

 

どう言うことなのか、と問いかけようとした時には既に父は一歩引いていた。

 

「そなたの父で幸せであったよ…」

 

目の前でハッチがしまる。

 

「ああっ…!」

 

カガリはハッチにすがるがウズミの足場がどんどん離れていく。ガラス越しに見つめるがそれも分厚い隔壁に閉ざされた。

 

「お父様ぁー!!!!!!!!」

 

その叫びが合図となったのか発射を知らせるランプが点滅し管制官の声が響き”クサナギ”が飛び立つ。

まるで植物から種子が飛び立つように…平和という花を咲かせる種は宇宙へ向かうのだ。

カガリは遠くに離れていく祖国と父親を残し涙を流し嘆き悲しむ。

 

「あぁ…ッお父様っ…お父様ぁーーッ!!」

 

同じく”クサナギ”が飛びたちマスドライバー付近で戦闘していたキラ達は加速する船体に追いすがりマニュピレーターで掴み”ジャスティス”へ手を伸ばす。

掴み損ねること無くガッチリと掴み二人は追いすがってくる敵部隊へ向け砲門を向ける。

”フリーダム”と”ジャスティス”のビーム砲とレール砲が火を吹き追いすがる敵機の視界を奪った。

 

「くっ!?」

 

「なにッ!?」

 

「うぉっ!?」

 

「うわぁあああああっ!?!?!?」

 

【ネクロシス】の面々は視界を遮られ高波を被る。

その隙にマスドライバーを離脱した無事に”クサナギ”は成層圏へ到達した…その後ろ姿を見てウズミは満足げに微笑む。

 

その後、オーブの”マスドライバー”と”モルゲンレーテ”は自爆装置によって破壊された。

地球連合艦隊は目的を達することは出来ず撤退を余儀なくされた…。

その後、大西洋連合はオーブを占領化に置いてC.E73年の初めまで略取されたという…しかし、連合が目指した”モルゲンレーテ”と”マスドライバー”は破壊されたが最後のオーブ軍残存を脱出させた後、自爆まで少しだけ猶予があったという。

 

◆ ◆ ◆

 

「種子は飛んだ…これで良い」

 

「いやいや…貴方にいなくなって貰っては困りますよウズミさん?」

 

「ッ!?」

 

管制室に第三者の声が響く。もう既に管制室にはウズミと共に残った首長しかおらずそこに姿を見せたのは白スーツの男…アズラエルだった。

 

「貴方が死んだらカガリが悲しみますよ?」

 

「…ッ貴女は…!?」

 

そしてそのとなりには”美女”と呼ぶに相応しい女性がたっている。軍服からして地球連合の兵士だろうがその声色と仕草を見てウズミは驚くがそれよりも何故ここに彼らが…!となったが目の前にいるアズラエルが肩を竦める。

 

「娘の成長を見届けるのは立派ですが大人がし始めた戦争、子供に背負わせるのは酷だと思いません?」

 

彼らは地下のルートを使いオノゴロへ侵入したのだ。

 

「……何をしに来た」

 

首長の一人が拳銃を取り出し此方に向けるが人を撃ったことがないのだろう震えている。アズラエルは臆すること無く語り掛ける。

 

「何しに来たって?ウズミさん…”まだ、契約は終わってません”よ?貴方にも手伝って頂かなければ…ね?」

 

怪しく笑うアズラエルに観念したようなウズミ。

 

「…これも君の計画か?アズラエル」

 

「いやいや。()()()()()()()()()でしてね…協力者は多い方がいいンですよ」

 

その日、散る筈の命は散ること無くひっそりと表舞台から姿を消した。

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