魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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えー今回も長くなりました。
申し訳ない…!
コメントありがとうございます!
誤字脱字報告ありがとうございます…!
あとこの間最高順位達成できました(日刊ランキング21位…一瞬だったけど嬉しかった!)読者様のお陰です。

次の話数でも戦闘描写は薄いかなぁ…それと主人公が空気になってるのは許して…!
それではどうぞ!!

ナタルとエアリスの描写一部変更しました。


【最終章 Ⅰ コロニーメンデル】編
揺れる世界


『いやいやぁ…お見事でした。サザーランド大佐。ビクトリア基地の制圧ご苦労様です』

 

オーブ陥落から数日後。

アフリカ共同体に程近い地球連合軍マスドライバー保有施設”ビクトリア基地”はウィリアム・サザーランド大佐率いる連合艦隊によって奪還に成功していた。

広大な敷地面積を誇る基地はその凄まじい戦火を示すように倒壊しているビルや赤茶げた土は抉れビームにより結晶化している。

そして幾重にも死体のように倒れ込む”ジン”や”ディン”、”バクゥ”等のザフト軍の機体があった。

その付近では”ダガー”や”01ダガー”とは装備の異なる【ネクロシス】の属する機体がその威容を示すように立っている。

地上では掃討部隊が忙しなく動き回りコックピット内部を確認してはまだ息のある兵士を撃ち殺していく。

ビクトリア基地には気温が上がっていくにつれ身の毛もよだつ死の匂いが充満しつつあった。

そんな中でサザーランドは此方へ向かう艦艇の中から通信をしてきているアズラエルの世辞を受け取っていた。

 

「いえ、”ストライクダガー”と”01ダガー”は良い出来ですよ。オーブでアズラエル様が苦戦されたのは、お伺いした予期せぬ機体のせいでしょう」

 

「此方もまだまだ課題が多くてねぇ…”ディスペアー””カラミティ””フォビドゥン””レイダー”でああも手こずるとは思わなかった。本当にとんでもない国だオーブは。それに脱走艦の”アークエンジェル”…アレまで取り込んでいったい何を考えていたのやら」

 

「巧く立ち回り自分達だけ甘い汁を吸おうという魂胆でしょう。卑怯な国です」

 

『どちらにしても”予想外”だったとしか言えませんねぇ…』

 

サザーランドはバカにしたように鼻をならしたが内心でその事には同意した。

莫大な資金を投じて極秘裏に立ち上げた特殊部隊【ネクロシス】…機体と人員の初陣は散々なモノに終わったことに少しだけ苛立ちを覚えたが…まぁ良い。まだ始まったばかりだ、と自分に言い聞かせる。

実際に”ビクトリア攻略戦”ではカスタムされた”01ダガー”達は十全に活躍してくれていたのは満足する結果だったと言えるだろう。

 

隊長に据えた()()とその部下は自分達”ブルーコスモス”の旗頭となるのだから…コーディネイターという化け物達とは比にならないほどの戦闘力を備えた彼女達こそが最強なのだ。

しかし、オーブでは途中でアズラエルよりその部隊の詳細を確認されたが巧く隠し通し一部隊が暴走を起こし非戦闘員に攻撃を仕掛ける場面があったというがそれは既に闇の中だ。

 

「コーディネイターを囲うような国だ。アズラエル様が対峙したとされている例の二機…もしかするとプラントの技術も相当に入っていたのではありませんか?」

 

その言葉にアズラエルは内心で”コーディネイター”を囲っている国で敵対しているからという単純な思い込みをする目の前の男を嘲笑う。思考が単純すぎるだろうと。

 

『まぁ…今後の事を考えれば次の戦場は宇宙でしょうね』

 

「アズラエル様ご自身も宇宙へと?」

 

問いかけるサザーランドに頷いた。

 

()()()()()()()()()()ってのは僕の信条に合わなくてねぇ…実際に目で見たものしか信じないんですよ。』

 

その言葉にサザーランドの眉間がピクリ、と動くが何事も無かったかのように無視して制帽を少し目深に被る。画面に写るアズラエルは軽薄そうな笑みを浮かべているだけだ。

 

『実際にあの機体…もしかしたら()()()()()()、使ってるんじゃないかなって』

 

その発言にサザーランドは目の色を変えた。

 

「なんですと…!?」

 

『まだ確証はないが此方で作った機体の稼働時間を大きく上回り撤退させられたのを見るとそれ以外に考えられないかなって。従来の機体性能じゃあの継続時間を維持するのは不可能だ』

 

「Nジャマーを作り出したのならそれを無力化する装置も作れると…?」

 

禁断の核の力。それは喉から手が出るほど欲しいものだ。

地球とプラント。双方がNジャマーによって”核”を封じられておりそれこそパワーバランスが保たれているがその一方の封印が解かれれば…由々しき事態である。

 

『どっちにしても核エネルギーを転用できる、って言うのが問題なんですよ』

 

思考の海に沈みそうになったサザーランドは画面向こうのアズラエルに意識を向き直す。

一方でアズラエルは()()()()()()()()()()()()()()()()事にした。

 

『本来僕たちは弱い生き物なんだからサ。強い奴は檻に閉じ込めておくか繋ぐ。それか牙を折っておかないと危ないデショ?』

 

「宇宙に野放しにした挙げ句、ですな」

 

そう言ってサザーランドは笑みを浮かべるが次の言葉に心臓を鷲掴みされたような感覚を覚えた。

 

『裏でこそこそやってる毒にも薬にもならないロクデモナイ事を考えている地球軍軍人のお偉方、でもね』

 

その言葉にサザーランドは冷や汗を掻いているのを自覚する。勘づかれているのか…と画面の向こうの男を見るがその焦りなど知らない、といわんばかりにアズラエルは言葉を続けた。

 

『サザーランド大佐には申し訳ないのですが此方で先に宇宙へ上げさせて貰いますヨ。やることが沢山だ。』

 

「えぇ…到着次第迎えを準備いたします」

 

『忙しいなかスミマセンねぇ…ではごきげんよう、サザーランド大佐』

 

「失礼します」

 

そう言ってサザーランドは高級な革椅子へ腰を下ろすと同時に肩を震わせ執務室の机を叩く。

 

「アズラエルめ…!」

 

証拠の隠滅と部隊のとの関係性を全て消去しているが何かしらの手がかりがあればアレは此方を追求してくる。

戦時協定違反で軍法会議に掛けられたオーブでの戦いで実際に非戦闘員の死亡が確認されている。

それどころか部隊の結成を指示したジブリールとの結託も白日のもとにさらされ二人共々アズラエルの傀儡と化すであろう事は明白で戦争に勝ったとしてもそれでは意味がない。

それを回避するために思考の海へ沈んでいきビクトリア奪還の喜びなどとうに消え去っていた。

 

(秘密を知る者達…目撃者は全て葬らねばならん)

 

コーディネイター共がいなくなった世界の後、理想とする形を実現するためには()()()は排除しなくてはならない…!

 

「…私だ。プランを実行に移せ…!」

 

それを実行するために受話器を取るサザーランドの瞳は狂気の色に染め上げられていった。

 

◆ ◆ ◆

 

「よもや君が生きているとはな…」

 

「自分でも驚きました。まぁ…死んだ、と言えばその通りかも知れませんね」

 

連合旗艦の通路にてオーブを脱したウズミとエアリスは会話をしていた。

オーブ付近諸島の戦闘での経緯を聞いていたウズミは”ダガー”のパイロット…いやカガリの親友とも呼べる少女の行く末を聞いてショックを受けていた一人であった。

娘を大きく成長させたのは彼女だとキサカから聞かされていたからだ。

目の前にいるエアリスは極秘裏にオーブに入港し対面したときの幼い面影は消え去りカガリよりも年上に見えてしまっている。

助かった経緯とその()()を聞かされウズミの表情は曇ったが当の本人は気にしていない様子である。

 

何故彼がここにいるのか。

 

それはオーブの自爆前にウズミ他氏族を脱出させ東南アジア諸国の日本へ逃した後にウズミが生きていることを悟られぬ為にアズラエルの取り巻きの一人として同行させていた。彼が生きている、ということはそれだけオーブの復興は早まるだろう、というアズラエルの判断である。

ウズミは”パウエル”の士官室へ送り届けた後にアズラエルの私室へ向かう。

 

「失礼します。」

 

『…ええ、ではごきげんよう。サザーランド大佐。』

 

誰か、サザーランドとの通信をしていたらしいアズラエルがノックの音に気がついたようで「入ってきてください」と促され入室する。

 

そんな中奪還に成功したと報告を受け宇宙へ上がる為にビクトリア基地へ向かう艦艇”パウエル”のアズラエルの私室にて通信を終えると首元のネクタイを緩めていた。

 

「やはり、クロですか?」

 

やり取りを聞いてそれとなくエアリスが問いかけると頷いた。

 

「間違いありませんねぇ…アレでは”私が犯人です”といっているようなものです。正体不明の部隊…アレはサザーランドとジブリールの莫大な資金を投じた私兵部隊ですね。間違いありません。諜報部からの情報と符合します」

 

「…」

 

「それに…面白いことが分かりました。」

 

「面白い、事?」

 

エアリスが首を傾げる。その事をアズラエルの口から知らされ愉快ではなかった。

 

「あの部隊の隊長…()()()()()A()()()()()()()()()が就いているらしいです」

 

「ッ!?」

 

そう告げるアズラエルは愉快そうな表情を浮かべてはいなかった。どちらかと言えば不快感丸出しである。

 

「…あながち貴女が戦場で感じた”もう一人の自分”がいた気がした…というのは間違いではないンでしょう」

 

”オーブ解放戦”の後アズラエルに戦場で感じた奇妙な感覚を伝えたがどうやら悪い意味でビンゴだったようだ。

 

自分に姉妹がいる、とは聞いたことはない。即ち…それは…

 

「いったいどういうカラクリなのか…これは調べる必要がありますね。」

 

死んだ筈の人間が()()()()()…どちらかが本物か、いや偽物…()()()()()()()()()()…?

自分自身という存在を疑いたくなってしまう。

 

(そもそも…私は……?それにあの朧気な夢は一体…?)

 

「…エアリス?」

 

考えに行き着きそうなタイミングでアズラエルに声を掛けられ向き直った。

 

「…いえ、少しだけ考え事を」

 

「そうですか…此方を見てください」

 

そう言って調査報告書を此方へ渡すとそこに記された詳細な機体データとパイロット…思わず目を疑ってしまう。

 

(ブーステッドマン…いやエクステンデットか!)

 

部隊の主要メンバーが全員が薬物と外科手術によって強化されたブーステッドマン…ではなくエクステンデットの雛形だ。そして隊長とされる少女…その見た目を見て驚く。

 

(わ、たし…?)

 

身体活性剤を投薬される前の()()()()の少しだけ髪色が違う以外見た目そっくりだった。

()()()()()のようで…アスランに撃墜され生死を彷徨っているとき夢に見た少女の面影がある。

どうして私が私を見ていたのか…考えれば考えるほどに分からなくなっていった。

思考の海へ沈みそうになった瞬間に頭を振って浮上する。

 

(それよりも…今後の事を確認しておかなければ)

 

エアリスはアズラエルを見た。

 

「…オーブで何故ウズミ氏を救出したのですか?戦争責任を押し付けるのは暫定政権で…」

 

そう問いかけるとアズラエルは革張りの椅子に背を預けた。

 

「彼を助けたのはそう言った責任の押し付けのためではないのですよ」

 

「?」

 

「それよりも大切なこと…このままではナチュラルとコーディネイターがお互いがお互いを潰し合う。それは理解していますね?」

 

「…ええ」

 

「だからこそ、ですヨ。”オーブ”というナチュラルとコーディネイターが共存する国…それを統治している彼が生きていることに意味がある。”要石”なんですよ。世界がその姿を形作る為に」

 

「要石…」

 

そう告げるアズラエルの言葉にエアリスは納得するとおどけるような表情を浮かべる。

 

「ま、ともかく。僕の野望のために働いて貰いますヨ?宇宙へ上がればさらに忙しくなります」

 

次の言葉にエアリスは内心で驚いた。

 

「君が抜けた”アークエンジェル”がどのくらい頑張れるのか…テストしてみようじゃありませんか。ハルバートン肝いりの部隊だとしても僕は実物を見なければ信じられないのでね…目標を達成できる為に必須のピースとなるか、それか只の”ババ”になるか…です」

 

「…合流すると?」

 

「勿論。宇宙の地球軍に関しては此方の手の内。ですがまだまだ。手札は弱い…足場は固めておかなければ…そして()()()()()()()()も此方で保護しなくては()()()()()()なんて不可能でしょう」

 

(キラくん…)

 

未来を変える道筋は大きく変わろうとしていた。

 

◆ ◆ ◆

 

<HAL B 距離二百。HAL C距離二百三十。軸線よろし>

 

<ランデブー軸線クリア…アプローチそのまま。調査値を修正する…>

 

<ナブコムリンク。所定員はそのまま…アプローチ最終フェイズ…>

 

<ローカライズ…確認した。全ステーション接続を確認。>

 

無数の星々と地球光を受け二隻の軍艦が漆黒の闇から姿を現す。

オーブから脱出した”アークエンジェル”と”クサナギ”だ。

 

「”クサナギ”ドッキングが完了した」

 

「カガリさんは…?」

 

「今は落ち着いている。”泣くな”とは言えんよ…今は」

 

無事にドッキングが成功し艦長としてキサカが”クサナギ”の指示を取ることになりマリューと会話をするとカガリの話題が上がる。

心配そうな声を掛けたのはオーブがオノゴロ島とモルゲンレーテが自爆したことを知らされたからだ。

 

「……おとう、さま…」

 

カガリは私室にてベッドの上にうずくまり膝を抱えて泣きじゃくっていた。

最後に触れたあの優しい温もりを思いだしひたすらに悲しみに染まるしか出来なかった。

 

「カガリ…?」

 

「ッ」

 

来客を告げるインターフォンが鳴る。

”クサナギ”護衛のために着いてきていた”フリーダム”と”ジャスティス”は"M1アストレイ"の収容と共に手狭な艦内へその機体を駐機させ降りてきたキラとアスランだ。

入室しその姿を見たカガリは再び泣き出しキラの胸の中に顔を埋める。

キラは何も言わずに抱き締める。その光景を見てアスランはいたましげな目で見つめた。

 

「大丈夫…少し、顔洗ってくる…」

 

「うん。待ってるから」

 

そう言ってカガリはその場を離れ洗面所へ向かう。

鏡の前に立つ自分の目元は涙で赤く腫れぼっていた。

洗面所の引き出しを開きタオルを出して顔をがしがしと拭うと涙の跡は失くなったが未だ目元は赤いが先程よりはマシになったと思った。

ジャンパーのポケットに手を突っ込むと角ばった固い紙の感触が手に当たりそれを掴んで引っ張り出す。

そこには生涯の別れを告げる前に父から受け渡された写真…女性が子供二人を抱き抱え慈しむような表情を浮かべている写真がそこにあり再び裏面を見返す。

 

ーキラとカガリ…

 

これが事実であるのならばこの抱かれている嬰児達は自分達ということになる。

 

ーお前は一人ではない。”きょうだい”も居る。

 

その言葉に再び困惑を覚えていた。自分とキラがきょうだい…?この女性も幼い頃にキラと顔を合わせた記憶もない…これは一体どういうことなのだろう…?

 

「カガリ?」

 

「あっ、ごめん…」

 

戻って来ないカガリを心配してかキラが扉越しに声を掛けてきた。

カガリは写真をポケットに戻し洗面台を後にする。艦橋にはマリューとムウが来てミーティングをするということをキラに聞かされ共に”クサナギ”の艦橋へ向かう。

今はただ、一緒にキラとアスランと居たかった。

 

◆ ◆ ◆

 

「”クサナギ”は以前からへリオポリスからの運搬連絡船として活用してきたものだ。モビルスーツ運用システムも武装も取り揃えているが”アークエンジェル”には劣る」

 

発着場で待っていたキサカに案内を受け移動しながら説明を受ける。

通路の向こう側のガラスには格納庫がありメンテンナスベッドには”M1アストレイ”と”M2アストレイ”が鎮座している。

居住区を通りすぎるとアサギ、ジュリ、マユラの姿があり軽く手を振ると向こうも返す。

その中で居住区には子供の姿もありマリューは意外に思っていたのはこの戦艦も安全とは言いづらい、しかし地上のオーブも地球連合軍の占領下にあるため同じかも知れないという発想に行き着いた。

 

「五つの区画に分け中心部を行き来するのか…効率の良い運用方法だな」

 

そうして”クサナギ”の艦橋へ辿り着くとその光景にマリューは思わず呟いた。

 

「”アークエンジェル”に似ているわ…」

 

「”アークエンジェル”が似ているのだ。親は同じ”モルゲンレーテ”だからな」

 

キサカが笑って見せるとマリューはなるほど、と頷いた。

順番としては”へリオポリス”の運搬船として作られた”クサナギ”の方が先だったからだ。

武装も艦内レイアウトも似通う部分も多い。

 

「宙域図を出して貰えるか?」

 

艦橋のオペレーターシートに座る女性へ声を掛けるときびきびとした口調で「はい」と答える。

その女性を見てムウが驚く声を上げた。

 

「エリカ・シモンズ主任?」

 

「こんばんわ少佐」

 

「どうしてここに?」

 

「慣れない宇宙での”アストレイ”運用ですもの。私が居なくちゃ始まらないでしょ?」

 

エリカは無頓着に言い笑った。自分達は国家という枠組みを越えて同じものを目指す”同士”であり必要とされたからここに居るのだ。

マリューとムウは未だに国家に帰属する軍隊生活が身に染みている為に違和感を覚えていたが後から入ってきた若者達はそれがさも当たり前のように馴染んでいる。

キサカも入ってきたカガリの様子を見て落ち着いているのを確認し安堵してモニターに写し出された。

 

「一先ず…ここを目指すのはどうか?L5にはプラント。L3にはアルテミス…対局に位置するここにはまとまったコロニー群がある。”アークエンジェル”と”クサナギも当面の物資には困らないほどに詰め込んできているが直ぐに問題になる。」

 

オーブを起つ前に物資は積み込めるだけ積み込んできた。しかし。彼の言う通り”水”は問題になる。

 

「L4のコロニー群は開戦の頃から破損し、次々と放棄され無人と化したが水場としては使えよう…」

 

キサカの言葉にマリューはつい呟いてしまう。

 

「なんだか…思い出しちゃうわね…」

 

「大丈夫さ”ユニウスセブン”の時とは違うよ。」

 

その事を聞いてアスランの顔が強張るが冷静な声で説明に務めた。

 

「…L4には未だ稼働しているコロニーも幾つかある。以前に不審な一団が根城にしていると言う情報を受けザフトで調査したことがあったんだ」

 

アスランは皆の注目を受けながら臆すること無く説明する。

 

「住人は既に居ないが未だ稼働しているコロニーも未だある筈だ。ザフトが調査に入った段階では居住している者達は居ないと聞いている」

 

「じゃあ決まりだな」

 

トールがそう言うと子供達はすっかりザフトの兵士と打ち解けている。彼が執拗に”アークエンジェル”を追いかけ回していたのは奇妙としか言いようがない。

 

「しかし…本当に良いのか?君は」

 

唐突にムウがアスランへ問いかけると表情を固くする。キラとカガリは意表を衝かれたように表情を浮かべムウを見やる。

 

「無論君だけじゃなくて”アークエンジェル”にいる彼と彼女もだが…」

 

”アークエンジェル”にいるディアッカとニコルの事を指しているのであろうそれはムウも彼ら達を信頼してないわけではない、しかし。

 

「少佐…」

 

「オーブでの戦闘も勿論見ているし。状況が状況だからな。着ている軍服に拘る気はないが…」

 

ムウの視線は軍人のそれだった。

 

「だが、俺たちは状況次第でザフトとも刃を交える可能性もある。オーブの時とは違う…そこまでの覚悟は君にあるのか?君はパトリック・ザラの息子なんだろ?」

 

アスランの顔に苦痛が走る。それよりも先にカガリが噛みついた。

 

「誰の子だって関係ないじゃないか!アスランはーー」

 

「軍人が自軍を抜けるのっては君が思っているほど簡単じゃないんだよ…ましてや軍のトップが自分の父親じゃ…」

 

ムウの懸念は尤もだった。

その言葉にキラも表情を曇らせるのは”へリオポリス”からの状況…キラがアスランと戦った時と同じ状態なのだから。オーブでは敵が地球連合でアスランは抵抗無く戦う事が出来ていたが”プラント”を相手にする場合同胞へ銃を向けられるのかと国家元首である父親への反抗心でここにいるのなら前線を、背中を預けることなど出来はしない。

 

「自軍の正義を信じていなければ戦争なんて出来ない。それがひっくり返るんだ。そう簡単にいくか。彼はキラと違って正規の軍人だろ?」

 

苛烈。正論過ぎる言葉はカガリを完全に黙らせていた。

 

「悪いんだけどな…出来ることならアテにしたい…どうなんだ?」

 

そう問われてアスランは拳を握りしめ俯いたが少ししてムウに向き直る。

 

「”プラント”で”オーブ”で…地球で…様々なモノを見て聞いて…思ったことは沢山あります…それが間違っているのか正しいのか…今の俺にはよく分かりません…」

 

その迷いのある言葉とは裏腹に瞳と声色は透明感があった。

 

「ただ…俺が生きたいと望む世界は貴方達と同じと…そう思っています」

 

「…キラとは大違いだ。君しっかりしてるねぇ?」

 

そう告げると空気が弛緩していく感じがする。話題に出されたキラは心外そうに眉をつりあげる。

ジト目になっているキラの表情にムウは笑いをこぼす。

 

「はははっ。…それよりも俺たちがオーブから託されたものは大きいぜ?」

 

「ええ」

 

マリューは頷く。

 

「二隻…俺たちがやろうとしているのはほとんど不可能に近い」

 

「そうね…」

 

「信じましょう…小さくても希望の火は消えないんでしょ?」

 

キラが静かに言った。その言葉に全員が頷いて微笑んだ。

 

「プラントにも同じようなことを考えている人はいますよ」

 

「…ラクス?」

 

「ああ、あのピンクのお姫様?」

 

ムウが思い出した。デブリベルトで拾ったプラントのお姫様。その印象は強く焼き付いている。

 

「アスランの婚約者ですよ」

 

そうキラが告げると全員が驚いた。特にカガリは目を見開く。古風な関係とその言葉は驚かせるには十分であった。

アスランは沈痛な面持ちになる。

 

「…彼女は今、追われている…”プラント”に…反逆者として」

 

彼女が…!?とキラは思ったがその自分達と同じ考えは”プラント”では異端であり自分に手渡した”フリーダム”はザフトの最高機密…それが発端なのだろうとその考えに行き着く。

 

(貴女は今、何をしているんですか…?)

 

彼女もまたラクスと同じくこの戦争の行く末を案じる一人であることは間違いなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

<私たちは何処へ行きたかったのでしょうか?何が欲しかったのでしょうか?>

 

”プラント”の街頭モニターに映る歌姫の姿を困惑と同情の目で見つめる一般市民がいる。

 

<戦場で今日も愛する人たちが死んでいきます…一体私たちはいつまでこの悲しみの中で過ごさなくてはならないのでしょうか…>

 

一方でラクスの放送を否定する放送も流された。

 

<ラクス・クラインの言葉に惑わされてはなりません。彼女は地球連合を通じて我が軍の最重要機密を売り渡した売国奴なのです!>

 

”プラント”の国家元首となったパトリック・ザラの言葉にコーディネイター優性主義の一般市民は国を売り渡したラクスへ憎しみの目を向けている者すらいる。

”クライン派”の議員は既に拘束されていたがラクスとその父親であるシーゲルの行方は分からず度々ゲリラ放送が回線に割り込みラクスの放送が流れるようになっていた。

 

<戦いを…終わらせなければなりません…>

 

回線を辿り特務隊が建物へ突入するが当の本人は居らず通信機器のみが起動していた。

特務隊の隊長が自動拳銃をホルスターから抜いて機材を撃ち抜く。ラクスは尻尾を掴ませなかった。

ゲリラ放送は未だ続いていたがそれに対抗するようにパトリックの市民を鼓舞するような放送が増えた。

 

<戦いなど誰も望みません!だが、何故このような事態になったのか…思い出していただきたい!自らが生み出したものでありながらその能力を妬んだナチュラルが我々コーディネイターに行ってきた迫害の数々を!>

 

彼は人々の感情へ問いかけナチュラルへの憎しみを駆り立てる。

 

<ーーそれに反旗を翻した我らに示した答えとして”ユニウス・セブン”へ放たれた一発の核ミサイル!>

 

同胞を殺された憎しみ。自分達に迫る生命の危機は机上の平和論よりも強い

 

<この戦争、なんとしても勝利しなくてはならないのです!敗北すればなお過去より暗い未来しかありません!>

 

敵と味方と…世界を二分するパトリックの言葉にラクスはただ、静かに訴えるしかない。

 

<地球の人々は私たちと同胞です。コーディネイターは決して進化した種ではないのです…婚姻統制を敷いても尚生まれてこぬ子供達…既に未来を生み出せぬ私達の何処が進化した種なのでしょうか…?>

 

その言葉に反論するようにパトリックの言葉が飛ぶ。

 

<我らはもはや、ナチュラルとは違う種なのです!その問題は既に我々の叡知が解決に導いています!>

 

<戦いをやめ、道を探しましょう…求めたものは何だったのでしょうか?幸福とはなんでしょうか?このように戦いを送る日々を過ごすことでしょうか?愛する人を失っても尚、戦い続ける未来に間違いなく待つものでしょうか…?>

 

ラクスがゲリラ放送を行っている最中逃走を続けていたシーゲルは遂にパトリックの刺客に追い付かれていた。

 

「くっ…!」

 

潜伏先にザフト特務隊の兵士達が詰めかけクライン派の兵士が次々と銃弾に撃ち抜かれていく。

随員は既に残り二名となり室内には続々と兵士が入り込み最後まで抵抗を続けていた側近も銃弾に撃ち抜かれその骸を晒した。

突撃銃の銃口を無数に突きつけられここまでか…!と道中ばに倒れ残していく同士と娘に申し訳無さを感じながら最後まで銃口を突きつける兵士を睨み付けた…が最後の時はいつまでもやってこなかった。

 

「何…?」

 

銃口を突きつけていた兵士達が力無く崩れ落ちていく。まるでドミノが倒れるような光景にシーゲルは思わず呟いてしまうが自分意外に立っているものがいることに気がついた。

 

「シーゲル・クラインですね?」

 

「…誰だ」

 

黒と濃紺のパイロットスーツに様々なタクティカルジャケットを身に付ける男性が立っていたがヘルメットはスモークが掛かりその表情は伺い知れなかったが彼らの探していた人物が見つかった為スモークを解除した。

若い三十代程度の男だ。連合式の敬礼をした。

 

「失礼しました。連合宇宙軍第八艦隊特務第十三独立部隊<B.L.U.E.M>所属クラウス・メッシュリード少佐です。アズラエル氏とハルバートン准将の両名の命で貴方を保護しに参りました」

 

救助を命じた人物の名前を聞いて驚いたが救助されたことに違いはない。

シーゲルは差し出された手を握り返し苦笑いを浮かべる。

 

「そうか……まさかブルーコスモスの盟主に助けられるとはな…しかし助かったよ」

 

「こちらへ貴方の身柄はこちらで預からせて貰います。」

 

「ああ…頼む。だがどうしてここがわかったのだ…?」

 

「”プラント”にも同志はいますからね」

 

”プラント”国内にも密偵はいる。コーディネイターでありながらナチュラルへ荷担する者達の事を指す。

今回のシーゲルが国家反逆罪で指名手配されていることを情報としていれたアズラエルがハルバートンを経由してクラウスの隊へシーゲルの救出を命じたのだ。

 

「そうか…」

 

「ご息女様の方もご無事です。さぁ、こちらへ…」

 

こうして本来散る筈の命は存在しない筈の介入によって救われることになる。

 

「逃しただと…!?何をしている馬鹿者ッ」

 

パトリックの執務室には秘書官が先ほど特務隊がシーゲルの潜伏先を突き止め逃走を図った彼とその随員と共に射殺…出来なかった、という報告だ。あまつさえその追い詰めた特務隊は全滅しシーゲルの行方が分からなくなった、という話を聞いてパトリックは執務室の机を拳で叩く。

激動の時代を生き抜き、苦楽を共にした仲であるが時代が進むにつれ彼のナチュラル回帰論とコーディネイター優性論でぶつかり政敵となっていた…そしてまた敵として道を違え今日という日を向かえる。

パトリックは知らせを告げた補佐官に冷たく言い放った。

 

「だが娘の方が未だ国内に残っている筈だ。探しだし捕らえよ!」

 

パトリックのその言葉は微かだが、震えていた。それは嘗ての情か。怒りゆえか。

 

◆ ◆ ◆

 

「与えられた敵を討つだけでよいのでしょうか?もう一度考えてみてください。敵として見なされている人々にも父、母、子供がいるのです。それを私達は忘れているのでは無いでしょうか…」

 

注意深くセッティングされた機材を前に次なる放送の準備をしていたラクスは部屋に入ってきたダコスタを確認し振り返る。

 

「…また、移動ですのね?」

 

「はい。申し訳ありませんが…」

 

「いえ、大丈夫ですわ。それより新しいお話は…?」

 

てきぱきと身支度を整え潜伏先から出るラクスにダコスタ手短に情勢を語った。

 

「ビクトリアとオーブが進行を受けてオーブのマスドライバーは破壊。ビクトリアのマスドライバーは奪還されました」

 

「まぁ…」

 

その情報にラクスは表情を暗くする。

 

「ビクトリアにはかなりの部隊が展開している、と聞きましたが?」

 

「連合軍も新型モビルスーツを投入したようです…」

 

ザフトはモビルスーツという新兵器によって物量に勝る連合に優位を保てていたが同じステージ立てば物量に劣るザフトでは数の暴力に対抗できないのは明白であった。

 

「そうですか…私達も急がなくてはなりません…」

 

ラクスは潜伏先からフードを被り出ると何処から通信が入り残っていた通信要員がダコスタを呼び止める。

 

「マーチン!」

 

「なんだ?」

 

「シーゲル様が…」

 

ダコスタが振り返ると通信要員が焦っているのが見てとれ怪訝な表情を浮かべるが耳打ちされると驚く表情に染まり通信機を引ったくり確認する。

 

「シーゲル様が…!?どうしたというんだ!」

 

ダコスタは通信機の向こうにいる相手を怒鳴り付け情報を確認する。その内容に目を見開いた。

 

「そんなことが…」

 

「あの…」

 

涼やかな声に弾かれ後ろを見るとラクスが通信機の前にいるダコスタ達を見ていた。

 

「父が…どうされたのですか?」

 

ダコスタはラクスへどう説明したものか困っていた。

”連合の兵士がシーゲルを保護して第八艦隊に合流している”と。

 

◆ ◆ ◆

 

カガリの様子を見るために”クサナギ”に着艦していたキラ達は積載容量限界の格納庫から”アークエンジェル”へ移動しようとしていた。

既に”クサナギ”は”M1アストレイ”と”M2アストレイ”がギチギチに詰め込まれメンテナンスハンガーにも入れない状態であり逆に”アークエンジェル”は”ストライク”に”バスター”と”ブリッツ”とトールのスカイグラスパーは大気圏内専用の機体のため保管庫に収容されているため余裕がある。

万が一、ということもあり機体は分散していた方が得策であった。

 

「…アスラン?」

 

そう問いかけるとなにか考え事をしていたようで少し上の空のようだったが意を決してキラへ向き直るがそれよりも前にカガリがパイロット控え室が入ってきて中断された。

 

「キラ…?」

 

漂うように入ってきたカガリの表情も深刻そうなモノでありアスランの傍で立ち止まる。

 

「ちょっと良いか…?」

 

「あ、じゃあ…俺は…」

 

「ちょっ、ちょっと…良いからいろって…いや、いてくれ!」

 

カガリは気を利かせて出ていこうとするアスランの腕を取って引き留める。

 

「どうしたの?カガリ」

 

何の話だろうか…とキラは怪訝に思うがカガリから差し出された写真を受けとる。

そこには一人の女性が慈しむ表情で二人の嬰児を抱き寄せている写真であり特段可笑しいところは見当たらなかったがカガリから促された。

 

「その…裏を…見てくれ」

 

「裏…?」

 

キラは写真を裏返すとそこに書かれた文字に驚愕した。

 

ーキラとカガリ

 

「キラと…カガリ…!?」

 

「なんだって…!?」

 

その事を呟くと写真を見ていたアスランが驚く声を挙げる。

 

「”クサナギ”が出港するするときに…お父様から渡されたんだ…お前は一人ではない…”きょうだい”もおる、って…」

 

カガリは無意識にアスランの腕を抱き止める。必死に情報と感情の濁流に流されてしまわぬように。

 

「どういう…こと…だ?」

 

「そんな…僕に言われても…分からないよ…」

 

キラも混乱しながら写真の裏を覗く。

キラとカガリ…その文字が示しウズミが告げたその言葉を額面に受けとれば自分とカガリは”きょうだい”ということになる…しかし自分はこの女性を見たこともなければ母や父に聞いたこともないそれは…一体この女性は何者なのか…今まで育ててくれた母と父は…?

 

「ウズミさんは…他に…?」

 

問いかけるとカガリは首を振る。確かめてみたことだが偶然にも誕生日は一致していた。

 

「…これだけじゃ…分からないよ…」

 

「お前と…きょうだい、って…私は…一体…?」

 

混乱していたがそれよりもカガリの声に気がつきハッと顔を上げる。

込み上げてきた感情が塞き止めてきた堤防が決壊しようとして涙が込み上げていていた。

カガリを慰めるようにキラは肩に手をおいた。

 

「今は…考えていても仕方ないよ…カガリ」

 

「えっ…」

 

「例えそれが真実だったとしても…カガリのお父さんはウズミさんじゃないか…それは事実でしょう?」

 

カガリは目をみはりキラへ抱きつき大粒の涙をこぼしながら幼子のようにわんわんと泣き始める。

抱きついてきたカガリを抱き締めるように背中に手を回しポンポンと叩きながら慰めた。

自分が本当にカガリのきょうだいであるのなら守らなくてはならない…その事を自覚し泣きじゃくる”妹”を慰めるために優しく抱き締める。

その光景をアスランは静かに見つめていた。

 

◆ ◆ ◆

 

「キラ…シャトルを借りられるか?」

 

カガリから見送られ”クサナギ”から発進して”アークエンジェル”へ向かう二機。キラはアスランから接触通信を受けていた。その内容に戸惑いを見せる。

 

「アスラン…?」

 

アスランも先ほどムウに言われたことを反故するようで申し訳なさが滲み出るがカガリとキラのやり取りを聞いて決心したのだろう。

 

「俺は一度…”プラント”へ戻る…一度父とちゃんと話がしたい…」

 

しかし、それは危険がともなく行為でありそれをキラが指摘するが強くアスランは首を振る。

 

「アスラン…でも…」

 

「分かっている…!でも、俺の父親なんだ…!」

 

「分かった…マリューさん達に話すよ。」

 

一度こうと決めた友人が折れないのはキラは理解している。諦めたようにキラは了承した。

 

「すまない…」

 

こうしている最中に”フリーダム”と”ジャスティス”はアークエンジェルへ着艦するためのアプローチを取るのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「宇宙か…」

 

マスドライバー”ハピルス”から打ち上げられたシャトルにエアリスを含めた<BLUEM>の面々は大気圏を離脱し久々に体に無重力を感じていた。

座席でクロトは携帯ゲームで遊びオルガはハードカバーの小説を楽しみシャニはアイマスクをしながらヘッドフォンから漏れ出す音楽を楽しんでいる。

アズラエルは持ち込んでいるPCを小気味良い音を叩きながら仕事に集中しているようでそれぞれ趣味や仕事に打ち込んでいる光景が見えそんな中で一人思案する。

 

(原作知識はもう宛にならない。か…)

 

アズラエルとクロト達が味方になったことで新たな敵が出現した。

それも自分自身というある意味で王道的な展開だがこの作品が現実である自分にとっては良い迷惑でしかない。

 

(クローン…か笑えないよ…)

 

()()()()()()()()()()()()()は分からない、しかしまともな理由ではないということだけは分かる。

まさかフラガ少佐と同じ、いやクルーゼと同じ状況になるとは思わなかった。

 

(そして…この宇宙で…)

 

どうなるかは分からない。しかし暗黒を照らす星々の輝きと地球光に照られされた静寂の空間は再び閃光と人々の命が散るのは確信できた。

何れ程の被害が出るか分からない…何れ程自分が大切なものが守れるのか…それを碧眼がそれを見つめる。

 

シャトルは大気圏離脱ブースターを切り離し月軌道周回へ乗ったのを確認した。

眼下には地球軍月基地である第八艦隊が有する”プトレマイオス基地”が視界に入る。

”低軌道開戦”で散る筈だった第八艦隊司令デュヘイン・ハルバートンが生き延びている為だ。

 

ザフトへの反攻作戦…は建前でありここの基地司令とアズラエルは裏で手を結んでおり暴走しようとしている一部連合軍上層部と”ブルーコスモス”達への観察と牽制の為の組織【B.L.E.U.M】の一部部隊の宇宙での拠点でもある。

 

(仕方ない、か…)

 

迷っていても自分のやることは変わらない。両種族の全滅戦争の回避…そして大切な人たちを守る。それだけだ。

もうすぐ基地で再開する人物にどんな言葉を掛けようか、と考え一種の現実逃避に思い耽った。

 

散る筈だった命は生き延び違えた道は再び一つになり結束しより強く光を放つ。

そして…強い光から生み出された影は強く陰影を焼き付けるものだ。

 

<第22輸送船団は第三周回で待機だ>

 

<N11班グループはFパッドの支援を行え…そうだ。”ドミニオン”の就航が先だ!>

 

基地内部放送で指示があるのを確認していると降下した基地内部のプラットフォームには連合軍の戦艦とは異なり白亜の巨艦の姿を写し取ったような同型艦が威容を形作っている。

シャトルが到着し基地司令室執務室へ向かう。

 

「さて…無事に到着しましたし…エアリス?」

 

挨拶に行ってこい、という意味だろう。素直にしたがった。

 

「…了解。機体の搬入お願いします」

 

気を利かせてくれたのか分からないが一先ず皆と分かれて執務室へ向かった。

一方で”プトレマイオス”基地司令室にて一人の女性が到着し名乗りを上げた。

 

「第七機動艦隊所属、ナタル・バジルール少佐参りました」

 

「久しいなバジルール少佐。元気だったか?」

 

ナタルの前にはハルバートンがおり低軌道開戦以来の再開だった。

 

「はっ!閣下もお元気そうで何よりです」

 

再開の挨拶も程程にハルバートンはここへ呼び出した目的を告げる。

 

「うむ。君に任せたい艦があるのだ…ナタル・バジルール少佐。貴官にアークエンジェル級二番艦”ドミニオン”艦長を命じる。それと…君に会わせたい人物がおってな?」

 

唐突に何を言い出すのだろうか、とナタルが返事をするとハルバートンが入室するように促す。

 

「はぁ…」

 

「そろそろ良いタイミングだな…さ、入ってきてくれ」

 

「失礼します」

 

「…?………?……ッ!?」

 

後ろの扉が開き一人の女性士官が入室する。身長は高くヒールを履いているお陰でナタルより少し小さい程度だったがそれよりもその制服はあまりにも改造され過ぎていてナタルは思わずしかめた表情を浮かべたが足元から上に向かい顔を視界にいれた瞬間に驚愕した表情を浮かべるのを確認し名を告げる。

 

「第十三独立部隊【B.L.U.E.M】所属、()()()()()A()()()()()()()()()特務少佐であります。よろしくお願いしますバジルール()()?」

 

「”ドミニオン”の戦闘部隊として一緒に乗艦する…()()()()()()()特務少佐だ」

 

そのファミリーネームはナタルにとっても印象深く”戦友”と言っても過言ではない。しかし彼女はソロモン諸島の戦場で散っていた筈だ。それが何故今…ここにいる?!

似すぎている…それは親族と告げられた方が納得できたが目の前の本人が口を開く…聞きなれたあの声で同じ艦に乗っているものでなければ分からないことも言って。

 

「久しぶりですね。バジルール中尉…じゃなかった少佐?覚えてますか?閣下の前で食って掛かったのを?」

 

皮肉交じりに告げたジョークを感情の表情に薄い笑みを浮かべるのは見覚えがあった。

それにあの”アークエンジェル”の艦長室にいた者にしか分からないことを。

 

「本当に…君なのか?中尉?」

 

「ええ。正真正銘のエアリスですよ…久しぶりですバジルール中尉」

 

その幼げな顔つきは面影を感じさせる。そしてハルバートンが優しげに見つめているのをナタルは見て目の前にいる彼女が”アークエンジェル”で共に戦った”エアリス”本人なのだと理解できた。

ただ、ナタルはひたすらに困惑する。

 

登場人物は集う。

舞台は再び”宇宙”へ移り変わり様々な様相を見せるのだった。

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