魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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螺旋の邂逅

「”ドミニオン”からモビルスーツの発進を確認しました!」

 

”アークエンジェル”の艦橋でミリアリアが敵母艦からのモビルスーツが発進したのを報告する。

マリューもそれを受け咄嗟に何時もより頼りにしている二人の名前を呼ぶと「了解!発進します!」と「行くぜ!」と威勢の良い返事が帰ってくる。

それを引き継ぎオペレーターであるミリアリアのアナウンスで”アークエンジェル”の搭載機が発進する。

 

「フラガ少佐”ストライク”発進どうぞ!」

 

<おっしゃ!ムウ・ラ・フラガ”ストライク”行くぜッ!>

 

「トール機、”イージス・カットラス”どうぞ!…気を付けて…!」

 

<ああ!トール・ケーニヒ、”イージス・カットラス”行きますッ>

 

左舷デッキよりモビルスーツが電磁力カタパルトにより吐き出され充電ケーブルを勢いよく切り離す。

 

「”バスター”発進どうぞ!」

 

「ディアッカ・エルスマン、”バスター”行くぜ!」

 

「続けてニコル機発進どうぞ!」

 

「ニコル・アマルフィ、”ブリッツ・エクレール”出ますッ!」

 

「キラ…!」

 

「ラクス…?」

 

〈お願いしますエアリスを連れて戻って来てください…!彼女と…沢山お話ししなくてはならないことがあります…!〉

 

発進前に”エターナル”からの割り込み通信でラクスから呼び止められモニターを見ると泣き出しそうになる姿を見てキラは力強く頷く。

 

「うん…待っててすぐ連れ戻すよ…!キラ・ヤマト、”フリーダム”行きますッ!」

 

そして”クサナギ”からもアスランの元にカガリからの通信が入る。

 

〈アスラン…頼む…!あのバカを連れ戻してくれ…!〉

 

それを受けアスランも力強く頷いた。

 

「ああ…分かった!アスラン・ザラ、”ジャスティス”発進する!」

 

六機のモビルスーツが飛び出し接近する敵部隊を迎撃する。

すぐさま宙域を中心としてミサイルとビームの光が飛び交った。

 

◆ ◆ ◆

 

”アークエンジェル”から飛び出した機体を確認するとエアリスは目をすがめた。

 

(ちょっと待ってくれ…機体増えてない?見たことないのいるんだけど…!?)

 

飛び出してきた数は正史よりも多い”六”内三機は元々敵だった機体であり巡り巡って元鞘に戻ったか…という感じだったが”イージス”が配備されているとは思わなかった。少しそれを見て眉をひそめる。

そして”クサナギ”から発進する見慣れない機体がいて驚愕した。

 

(うそーん……でもまぁ連合軍側にもう一人の私がいると考えると…良いバランス、なのか?)

 

正直”ドミニオン”の搭載機の数を考えると負けている。となれば…と戦略プランを構築して数秒…指示を出す。

 

「(仕方ない。この手で行くか…)ブルームリーダーより各機へ”フリーダム”と”ジャスティス”は私が相手をする。ブルーム各員はこっちに接近する機体の阻止。」

 

<了解…っていや雑だな!?>

 

<まぁアズラエルのおっさんも試験、って言ってたし仕方ないんじゃない?>

 

<アバウト…>

 

「恐らく”ドミニオン”には近づけないし。艦艇同士で打ち合いする。私は私であの二機を押さえた方が建設的だし…数はこっちが負けてるけど…君たちなら余裕でしょ?」

 

そう問いかけると三人の顔に不敵な笑みが浮かぶ。こういうところは乗せられやすいようで助かる。

 

<たりめぇだろ!><甘く見すぎですよ?><はっ、余裕だし>

 

フッと微笑み直ぐ様表情が切り替わった。

 

「それじゃあ…散開!」

 

<あいよ!><了解ッ><りょーかい>

 

視線を前方に集中すると接近する”白”と”赤”。

 

<トール達はあの三機の相手を!>

 

<俺たちは…あの隊長機を相手にする!>

 

<ああ…頼むぜキラ!アスラン!>

 

キラとアスランも指示を出し接近する隊長機…”ディスペアー”へ向かう。

 

「キラくん、アスラン…!」

 

散開しそれぞれの方向へ向かい”ディスペアー”はスラスターを吹かし”フリーダム”と”ジャスティス”へビームランチャーを囮として放ってレールキャノンを打ち当てながら接近し正確な射撃は二機は防御を余儀なくされ懐に入られてしまう。

 

<前回と装備が違う?”ストライク”と同系統の機体か…!>

 

対峙した”ディスペアー”の装備がオーブ戦の際と異なっていることに気がついたアスランは苦い顔を浮かべる。

彼の脳裏には”ヴァリアブルダガー”との戦闘が甦る。

キラとアスラン、二人は味方と敵の”エアリス”の実力を知っている。強さもその恐ろしさもだ。

 

一方でエアリス…”ディスペアー”は”フリーダム”に狙いを付け接近していた。

バッテリー駆動ではあるが機動力は核動力と近しく一時的ではあるが上回ることすらある。機体を操り接近しビームサーベルを起動し抜刀、叩きつけた。

 

<エアリスさん…!なんでッ!?>

 

叩きつけられたサーベルをシールドで防ぎ短距離通信をキラは仕掛ける。

しかし返ってくるのはノイズだけで言葉は無い。

 

「これが戦争って奴だよキラくん…だから君には艦を降りて欲しかったのに…!言うことを聞かなかった君が悪いんだからね…!」

 

答え、と言わんばかりに斬り付けられキラも対応する。

斬り結び互いの位置を入れ換えるが”フリーダム”がまさか圧されていた。

 

(くぅっ…押されている…!?これが…!)

 

彼女の実力なのか、と舌を巻く。

 

<キラッ!>

 

「ッ!!ちぃっ!?”ジャスティス”か!」

 

押さえ込まれる”フリーダム”を援護するためにアスランが”ジャスティス”のリフターを射出するが背面に懸架した<ゲイボルグ>で軌道をそらし背面から接近する”ジャスティス”へコックピットのコンソールを操作しストライカーに接続されたフリーアームを動かし<アーキバス>で牽制する。

”フリーダム”を手持ち武装で相手して”ジャスティス”は背面ストライカーを同時に操作して相手取るその姿は二人のコーディネイターから見ても異常であった。当然手動である。

 

<くっ…砲撃戦の機体でここまで…!キラ!彼女を相手に手加減は出来ないぞ!本気でやらなければ此方が討たれる!>

 

<くそッ…エアリスさんッ!>

 

アスランの言う通りキラは「エアリスだから…」と言う理由で無意識に手を抜いていた。しかしそんなことをしていればやられるのは此方であるのは明白であった。ナチュラルとして規格外である彼女なら尚更だ。

そして一方でエアリスもC.E世界におけるエースパイロット達相手に手を抜ける筈がない。

 

(やっぱり…やるしかないのか!?)

 

キラにはラクスとの約束もある。だが、彼女を相手に無意識に手を抜くなど無傷で捕らえることなど不可能だった。

数度目の斬り合いをして隙を突かれて蹴り飛ばされてしまう。

”フリーダム”は綺麗な”くの字”を描く。

 

<くっ…?!うわぁあああああッ!!?>

 

「遅いッ!!その程度の覚悟で世界は変わらないんだよッ!!」

 

一方でエアリスはサーベルで打ち込んでくる”フリーダム”を受け流し蹴りを入れて反対側に保持するライフルを発射して防御姿勢を取らせ武装を奪おうとするが”ジャスティス”がリフターのビームを発射し割って入りサーベルを連結し双刃状態で突っ込んでくる。

 

<下がれキラ!やられるだけだぞ!!>

 

<アスラン…!>

 

「そう来るよね…!」

 

接近する”ジャスティス”に対してライフル下部の装備されたフォアグリップがアンチビームコートを起動し攻撃を防いだ。切り裂き武装を奪う筈の武装に防がれたことにアスランは驚いた。

 

<なにッ!?>

 

「はぁああああああっ!!」

 

返す刃でマテリアルライフルの銃口下部のビームバヨネットが起動し貫こうとするがコックピット内部にロックオンを示すアラートが鳴り響くと同時に殺到する無数の光条がエアリスを襲った。

 

「ちっ…!キラくんか…!」

 

咄嗟にスラスターとAMBACを多用し器用に攻撃を避けたがそれでも全部を回避することは出来ずに脚部の装甲の1ヵ所を焼いてしまうが戦闘に支障はない。

 

<外した…!?>

 

「脚を止めて行う戦闘がどれ程愚かしいか…分かっているよね…!お返しだっ!!」

 

高速反転機動をして”フリーダム”目掛けスラスターを吹かし背面撃ちを行う。ストライカーに装備されたレールランチャーが”フリーダム”へ着弾した。

 

<くっそぉおおおおおおおっ!?>

 

大きく吹き飛ばされ揺れるコックピット内部でキラは叫ぶ。

 

<キラッ!うぉおおおおッ!!>

 

「まず…ッ!?」

 

”ジャスティス”は肩部分のグリップを引き抜き投擲する。形成されたビームの刃、それはエアリスが良く使用した武装でその恐ろしさを良く理解していた。

 

「知ってるよ…そいつの対抗策は!」

 

<バッセル・ビームブーメラン>が飛翔し”ディスペアー”のシールドに接触するよりも受け流すように弾き返す、のではなくシールドを当てるように誘導し囮にして手放し激突する。

直撃したブーメランは”ジャスティス”に戻るように弧を描く。その間に手にしたライフルを放ち”ジャスティス”へ向ける。

 

<なっ…!?ぐぅうううううッ…!?>

 

ガゴンッ!と宇宙空間に響く金属の激鉄音と同時にシールドを砕く。

大口径の対MS用弾頭はアガネムノン級の装甲すら貫くそれは”ジャスティス”のラミネートシールドの左端に着弾し大きくシールド表面を抉り取った。

 

本来固定用のアンカーとジャッキを併用し膝立ちで撃ち反動を相殺する装備だがエアリスはそれを無視し放った。

当然の事ながら大口径の射撃反動により機体は大きく動いてしまうがそれを念頭に制御するために脚部スラスターを全開にし背面のスラスターを小刻みに噴射して反動を殺し体勢を整えすかさず急加速を仕掛けるエアリスは歯を食い縛り体勢を崩す”ジャスティス”へ”ディスペアー”はすぐさまサーベルを抜刀し接近する。

 

「お前には…少し…いやかなり恨みしかないけど…こっちを恨まないでねッ!!」

 

サーベルをシールドに叩きつけ蹴り飛ばすほぼ私怨100%の攻撃だ。

 

「腕の1本や2本…覚悟しろッ!」

 

<くっ…!?>

 

<アスランッ!エアリスさん!>

 

”ジャスティス”の腕を切り落とそうとするが寸前で進路上に”フリーダム”が放った<バラエーナ・プラズマ収束砲>の二色ビームが遮る。

 

「やっぱり強いな…二人ともッ!」

 

”自由”と”正義”に対して”絶望”は二機を相手取り互角…それ以上の戦いを繰り広げていた。

 

◆ ◆ ◆

 

「”アークエンジェル”及びオーブイズモ級接近してきます!進路グリーン九四、マーク三ブラボー!」

 

ナタルは迷うことなく指示を飛ばす。

 

「”01ダガー”を発進!”アークエンジェル”の死角を突け!ミサイル発射管一番から六番”コリントス”終端誘導を自立パターンBにして装填!照準、オレンジアルファ十四から四二まで五ポイント刻みに発射せよ。同時に転進、進路インディゴ十三マーク二○、チャーリー!機関最大!」

 

ハッチが解放され送り込まれたブルーコスモスの兵士ではなく第八艦隊で”メビウス”から機種転換を受けた兵士達が乗り込み発進する。その前に”ブルーコスモス”の息が掛かっている兵士達は救命艇に押し込んで戦闘宙域から離脱させていた。

 

ナタルの指示を受けたCICが武装の入力と操縦席に座る操舵主が戦艦のスラスターを点火させ一つの郡体として”ドミニオン”が動き出した。

 

「そんな明後日の方向に…ってほうほう、なるほどねぇ?」

 

「…揺れますよ。おしゃべりは厳禁です。舌を噛みますよ?」

 

アズラエルが明後日の方向にミサイルを発射しようとするナタルの行動に一瞬疑問を浮かべたがその目的を理解し納得するように首を頷かせるとナタルもそれを見てネタバラシをされたくなかったのか口を閉ざすようにお願いした。実際に機動するのだから戦艦は大きく揺れる。

 

一方で”メンデル”から出撃した”クサナギ”は身動きを取れずにいた。コロニー用のメタポリマーストリングに船体が絡め取られてしまっていた。

結果として一対一の状況に持ち込まれてしまった”アークエンジェル”は”ドミニオン”から吐き出された”01ダガー”を相手に”M1アストレイ”が迎撃に出るがモビルスーツ隊に気を取られていたマリューは”ドミニオン”の艦影を見失う。

 

「”ドミニオン”は!?」

 

「ッ!ブルー十九にアルファ!”ドミニオン”です!」

 

「いつの間に…ッ!?」

 

デブリを利用しナタルは位置を悟られないように移動していた。そして主砲が放たれ緑の光条が真空を震わせた。

 

「”ゴットフリート”…てぇーッ!」

 

「回避ーッ!下げ舵二十!」

 

放たれる前に回避に成功した”アークエンジェル”しかし、その程度では終わらない。

 

「オレンジデルタよりミサイル急速に接近!」

 

「ッ?!迎撃ッ!」

 

「間に合いません!」

 

フレイが悲鳴を上げるように叫ぶ。

 

「”アークエンジェル”…!くっそやらせるかッ!!」

 

三機との戦闘の最中気がついたムウは<アグニ>を数発放ち接近するミサイルを打ち落とす。しかし全てを打ち落とす事は叶わず数発が抜けて”アークエンジェル”の右舷へ着弾し大きな揺れが艦橋に伝わる。

先の攻撃で”ゴットフリート”とミサイル発射管が使用できなくなってしまった。

終端誘導されたミサイルはその場所を通る”アークエンジェル”の熱源を関知して動きだし突如として現れ奇襲に成功した…置きミサイルが本命で隠れて出てきた”ゴットフリート”による攻撃は囮だったのだ、とマリューはこのとき気が付き唇を噛む。

 

「流石ね…ナタル…!」

 

味方であれば心強い…しかし、敵に回れば厄介この上ないと嘗て副官を指揮する艦へ向けられた。

 

◆ ◆ ◆

 

「おらおらおらー!」

 

「そぉら!抹・殺!!!」

 

「隊長が良いとこ取りしていったからお前の相手は俺たちだよ…退屈させんなよな?」

 

”レイダー”カラミティ”フォビドゥン”が敵部隊へ接近する戦端は直ぐ様斬って落とされた。

三機は”アークエンジェル”から発進したモビルスーツと対峙する。

 

「くっ…!」

 

「大丈夫かトール?」

 

「問題…ありません!っ来ます!」

 

受領後に慣熟訓練も程程に直ぐ様出撃したトールは同じくモビルアーマーに変形する”レイダー”が接近する。

 

「うぉおおおおおっ!!」

 

「なんだあの烏賊みたいな…っ!?この動き…あのときの戦闘機野郎か!」

 

近づく機体の動きを見て”スカイグラスパー”のパイロットだと気が付く。

”レイダー”の撃ち掛けられた<アルムフォイヤー>をコブラで回避しスラスターを吹かしてターンし体勢を整え機首になっているビームライフルを撃つ。

 

「おいクロト!」

 

「こっちは僕がやる!そっちは頼んだよ?そらぁあああああッ!滅・殺!」

 

モビルスーツ状態に変形した”レイダー”が<ミョルニル>を投擲する。すさまじい勢いでトールは”イージス・カットラス”の<イーゲルシュテルン>を撃つが弾かれてしまう。

 

「くっ…!?うぉおおおおおっ!!」

 

「変形したっ!お前もか!」

 

「毎度毎度…なんなんだお前達はっ!?」

 

<ミョルニル>が接近する直前にモビルスーツ形態に変形し回収したイージスのシールドを振るって直撃を逸らしてライフルを撃ち掛ける。

 

「この…っ野郎!!」

 

ライフルをモビルアーマー形態で回避しビームクローを展開する”レイダー”に追従するためにトールも直ぐ様”イージス・カットラス”を変形しドッグファイトに持ち込む。

数度の接触の後に再びモビルスーツ形態に変形し”イージス・カットラス”のサーベルが”レイダー”の機関砲兼シールドにぶつかり火花を散らす。

 

「うぉおおおおおおおッ!!」「おらぁああああああッ!!」

 

凶鳥(レイダー)の怪物と剣盾(イージス・カットラス)を持つ勇者が激突する一方でオルガとシャニも”ストライク”と”バスター”、”ブリッツ”との激闘を繰り広げていた。

 

「おらおらぁ!!」

 

”カラミティ”が三機に向け<シュラーク>と<トーデス・ブロック>を放ち散会する所を”フォビドゥン”が<フレスベルグ>を撃ち誘導する。

 

「このぉ!」

 

「そこです!」

 

”バスター”と”ブリッツ・エクレール”がそれぞれ<超高インパルス狙撃砲>を連結しビームライフルを放つが<ゲシュマイディッヒ・パンツァー>に阻まれてしまう。

 

「…ふっ」

 

「ちっ…!エアリスだけでも面倒だって言うのにこいつらの相手もしなくちゃならんのかよ!」

 

「少佐!あの機体にエアリスちゃんが…?」

 

連携しながらビームライフルを撃ち掛けながら”M2アストレイ”を操縦するアサギからの通信に怒鳴り返す。

 

「その話は後だ!余計なことに気を取られると落とされるぞ!お嬢ちゃん達、ついてこいよ!」

 

「は、はいっ!」

 

今はキラとアスランが押さえてくれている…しかしあの二機が掛かっているのにもかからわずエアリスの搭乗しているとしている機体はほとんど被弾なく押さえ込んでいるのをモニターで確認してしまうとやはり末恐ろしく敵には回したくなった。しかしあの二人を信じてムウは此方に攻撃を仕掛けるXナンバーを押さえることに注力する。”M2部隊”を率いて<マルチプルストライカー>を装備した”ストライク”を駆って”カラミティ”に接近する。しかし重火力に似つかわしくない機動力を持つ為にその姿を捉えることは難しい。

 

「おらおらぁ!その程度じゃ届かねぇぜ!!」

 

「くっ…!?」

 

五機のXナンバー達は各々の武装を展開し全力を持ってぶつかり合っていた。

 

◆ ◆ ◆

 

「さて…どうしたものか。既に戦端は切られてしまったようだが…」

 

”アークエンジェル”と”ドミニオン”の戦闘を”メンデル”の反対側のデブリより見つめる艦群がいた。

”ヴェサリウス”…クルーゼが搭乗するザフト軍艦と僚艦である”ホイジンガー”と”ヘルダーリン”が追随する。

 

「一つは”足つき”…まさか”エターナル”が合流しているとは思いませんでしたがこれは一体どういう状況なんでしょう?”足つき”が”足つき”と戦闘を行っているようですが…」

 

アデスが問いかけるがクルーゼは肩をすくませた。

同じく艦橋にて状況確認をしているイザークもこの状況が分からなかった。

”エターナル”がラクス・クラインによって奪われヤキンで”フリーダム”に守られていたことを考えると”アークエンジェル”と繋がりがあることは理解できるが…しかし、”クライン派”が連合に”スピットブレイク”の情報を売ったとするのなら何故連合に攻撃されている?ということになり益々分からなくなった。

 

…しかし、アラスカにて命を救われたイザークとしては”クライン派”が”アークエンジェル”と共にいることも何故か腑に落ちていた。

 

「さぁてな。私にも分からんが”足つき”…脱走艦かもしれんぞ?”オーブ”での戦闘でも目撃されていたからな。地球軍に追われているのかもな…ともあれこう状況が交錯しているのであるのなら手の打ちようがない」

 

そう告げクルーゼはイザークと隣にいる女性兵士を見る。

 

「まず私とイザーク、ハーネンフースで内部に潜入し情報収集の任に就く」

 

「隊長自らですか?」

 

アデスの問い掛けに自らの決定を翻すつもりもなく淡々と告げた。

 

「ああ。胡座を掻いてみている状況でもあるまい。既に”フリーダム”、”ジャスティス”…例の強奪機体を連合に手渡す訳にも行かん。それに…私も()()の運用試験を行わなくては。もう、機密もなにもあったものではないが」

 

()()とは…?と考えたイザークだったが思い当たる節があった。”ヴェサリウス”に搭乗時に”ヤキン・ドゥーエ”からの補給としてクルーゼに渡された機体を思い出す。

 

イザークも詳しく聞かされてはいないが”フリーダム”は戦況を一変させるモビルスーツである、と聞かされ実際にアラスカでそれを目の当たりにしている為アレを連合に渡すわけには行かないのは理解していた。

 

「それとイザーク。”ジャスティス”…アレに乗っているのはアスランだが…討てるかね?」

 

試すように問いかけるクルーゼ。イザークは拳を握りしめその問いかけに返答した。

 

「ッ…無論です!あんな裏切り者などに…!」

 

「そうか。そうであれば全艦コンディション・イエローで待機。”ヴェサリウス”、”ホイジンガー”と”ヘルダーリン”はここを動くな?…しかし、”コロニー・メンデル”か…色々な事に片がつきそうだな」

 

なにかをひとりごちる上官の後をついていく。上官の本心と意図を理解できず少し苛立った。

 

◆ ◆ ◆

 

”アークエンジェル”と”ドミニオン”は戦闘を行う”メンデル”の宙域から離れた場所にて三隻目の”大天使”が戦場を監視していた。

 

「戦闘は既に始まっているな」

 

「ああ。しかし…”アークエンジェル”と”ドミニオン”…まさか、就航したばかりの姉妹艦を両方を撃沈とはな」

 

艦橋にて目付きの鋭い三十代程の男性艦長とモビルスーツ隊隊長と副官を兼任する”エアリス”が艦長に問い掛けるが命令に対して呆れたような口調で答えた。

 

「仕方ないだろう。サザーランドも自分の意にそぐわない兵士は必要ないと考えているのだろう。”アークエンジェル”も”ドミニオン”もな」

 

「元々は”アークエンジェル”…その艦搭載機がNJCを積んでいるかもしれない…とよくもまぁザフトからの情報提供者からの眉唾な情報を鵜呑みにするものだ…」

 

”エアリス”は呆れた、という表情を浮かばせるが艦長は肩を竦める。

 

「仕方があるまいよ。それ程までに強力な”兵器”だからな。いつ宇宙から地上に核ミサイルが降ってくるかも分からん、と連合の上層部は考えているのだ。無理もない」

 

「…まるで土竜叩きだな」

 

ハッ、と鼻で笑う。その表情は侮蔑の意味合いが込められていた。

 

「そう言うな。実際に本当であれば驚異的だろう。”アークエンジェル”を攻撃する()()()は揃っているからな。そして”ドミニオン”に忍ばせた内偵が()()()()()()()と確認した…討ち取るには丁度良い」

 

即ち、最初から()()()()()()()調()()()()()、とーー。

そう告げる艦長を後にしてエレベーターへ向かい振り返る。

 

「出撃する。”セラフィム”は後方より支援していろ。接近するモビルスーツ隊はハーシェスの01ダガー隊に任せておけ。オーブの艦艇から出撃した量産機への弾除け程度には役立つ」

 

「【聖女部隊】はどうするのかね?」

 

「…連れていく。”アークエンジェル”の直援の機体は厄介そうだからな」

 

”エアリス”は内心で「連れていかないと面倒くさいことになるな…」と思いながら伝えエレベーターへ乗り込みそのまま格納庫へ向かい愛機へ搭乗し通信を繋ぐ。

 

「仕事だ。馬鹿者ども」

 

<ふふふ…待ってたわ>

<やっとこさ暴れられるぜ…!>

<あはは…!選り取り見取りでどれから壊しちゃおうかな~!>

 

「(アイツを消すのは後回しだ…)先ずは”アークエンジェル”を落として”フリーダム”と”ジャスティス”を奪取する…殺すなよ?」

 

<了解><ちっ、了解><えー?…りょーかい>

 

各機体のストライカーが装備され管制官より発進指示が出された。

 

<GAT-X001F"ファントムダガー"発進どうぞ!>

 

「”コロニー・メンデル”…これも因縁か?”エアリス・A・レインズブーケ”ファントム・ダガー発進する!」

 

◆ ◆ ◆

 

「くそう…なんでこんなことに…」

 

”ドミニオン”に搭乗していた”ブルーコスモス”側の兵士達は救命艇に乗せられ戦闘宙域をさ迷う。

友軍の背信行為を暴く…という任務であったがそれらを見破られこんな狭いところに押し込められ宇宙をさ迷う羽目になっているのはプライドの高い彼には我慢できなかった。

 

「お、おい!友軍だ!」

 

同じく任務を受けていた兵士の一人が救命艇のライブラリ登録された友軍機を確認し自分達を助けに来てくれたのだと喜びの声を上げているのを聞いて軍本部は我々を見捨てていなかったのだ、と少し溜飲が下がったと同時に思考がフリーズした。

 

「えっ…?」

 

目の前に現れた改造された緑色の”ダガー”…左肩のエンブレムに描かれた【死神と砕かれた棺桶】が描かれたそれは連合のエースパイロットであるレインズブーケ少佐の部隊のマーク。

しかしその機体が此方の救命艇に向け腕部のマシンキャノンの銃口を向けていた。

 

何故?とその言葉を浮かべる前に高初速弾の火線が解き放たれ救命艇は穴だらけとなり内燃燃料に引火し士官達の肉体は真空で蒸発した。

任務に準じた彼ら達は人知れず葬られてしまった。

 

「悪いわね坊や達。…これも仕事なの。君たちの犠牲は無駄にはならないわ」

 

そう言い残し”ハルピュイア”はウイングバインダーを動かし白亜の巨艦へ飛翔する。

 

◆ ◆ ◆

 

”フリーダム”と”ジャスティス”の二機を巧みに捌いているその時だった。

三機がいる宙域目掛け二色の荷電粒子が横断し戦闘をやめ其々にバラけさせた。

 

<なんだ…!?>

 

<こんな時に増援…!?>

 

次の瞬間此方を狙っての高出力ビームが襲うと同時に新しい機体達が戦場へ乱入し其々が分かれていく。

一機は軌道を変えて光の尾を描いて”フリーダム”と”ジャスティス”へ突っ込む。

 

「その機体貰い受けようか!」

 

<新手…!>

 

”ファントム”がライフルを速射し”ジャスティス”は回避しサーベルを返す刃でぶつけるが接近した機体は意に返すことなくシールドで受け止めた。

 

互いのサーベルはシールドと激突した。

そして飛来する三機の悪魔達は”三隻同盟”の機体へ襲いかかった。

 

<我々の任務は脱走艦である”アークエンジェル”の排除、そして艦搭載機である”フリーダム”と”ジャスティス”の奪取だ>

 

<了解。あら、選り取り見取りね>

 

<了解!おうおう!獲物がたくさんだぜ!>

 

<りょーかい!きゃははははっ!オモチャがいっぱいー!>

 

接近する機体群達に対面したことのあるディアッカ達は苦い顔を浮かべる。

 

「こいつらあのときの…!」

 

「あの機体は…!」

 

「ちぃっ…!またあの嬢ちゃんか!エアリス達の相手でも厄介だって言うのに!」

 

それは同時に”アークエンジェル”のクルー達も確認していた。

 

「マークニ三にアルファに新たな高熱源体接近!戦艦クラスです!飛翔する熱源”四”…モビルスーツです!」

 

サイの報告にマリューは振り返った。

 

「これは…!」

 

「どうしたの!?」

 

引き継ぐようにミリアリアが声を上げた。

 

「オーブ侵攻時に報告のあった四機です!」

 

「くっ…こんな時にナタルと別部隊を相手にしなくてはならないなんて…!」

 

マリューは苦しい声を上げた。戦艦の数で並び出撃しているモビルスーツの数も同じになってしまった。

これからはパイロットの力がものをいうだろう。苦しい戦いになる、とそう感じた。

 

◆ ◆ ◆

 

「”アークエンジェル”に接近する熱源”四”…ライブラリ照合…例の部隊です!」

 

そして同時にその状況を確認した戦艦から出撃したであろう黒、緑、赤、青のダガー部隊の攻撃を受ける”アークエンジェル”の報告を受けナタルは驚きアズラエルは苦虫を噛み潰した表情を浮かべる。

例の四機が”フリーダム”と”ジャスティス”を襲う光景を見てアズラエルの額に汗が浮かんでいた。

 

「例の部隊か!…索敵急げ。母艦が直ぐ近くにいる筈だ!対空監視厳に!」

 

「ちっサザーランドめ…あの二機を生け捕りにするつもりで投入してきましたか…」

 

サザーランドも”プラント”に潜ませた現地調査員を通じ二機のデータを既に得ていた為に”アークエンジェル”搭載のあの機体を狙っていたのだ。

 

「艦長、救命艇のシグナルロストしています!」

 

クルーの一人が言葉に怒りを滲ませていた。

 

「味方まで消しに掛かるのかよ!クソッ!」

 

無理もない、とナタルも同様に義憤に駆られながらアズラエルに問い掛ける。

 

「…どうされますかアズラエル理事?このままでは”アークエンジェル”はこのまま擂り潰されます。」

 

”ドミニオン”に放たれたミサイル群は未だに”アークエンジェル”を狙うが見るものが見れば()()()()()()()()のが見て取れる。問い掛けられたアズラエルはフッと息を吐いた。

 

「恐らく此方も消すつもり……仕方ありませんがテストはもう十分です。此方も折角の味方になる部隊を失うわけには行きません…艦長、()()()()()()()()()()()を」

 

「了解しました。少佐に打電、『此より、”アークエンジェル”を援護せよ』と通達!」

 

「了解!」

 

「ッ艦長!敵母艦と思わしき艦艇の光学映像出ます!」

 

戦艦の光学映像が出るとクルー全員が息を飲む。

 

「”ドミニオン”…!?」

 

そこには多少の差異があるが殆ど形の似た色の異なる”アークエンジェル級”がそこにいた。

 

「ちっ…同型艦…!サザーランドめ…やってくれますねッ」

 

”コロニーメンデル”を中心とした戦場で様々な組織の思惑が錯綜していた。

 

◆ ◆ ◆

 

「ッ来た!…皆、確認したね!」

 

<やっとかよ!>

 

<漸く?遅いんじゃない?>

 

<…おっそ>

 

【B.L.U.E.M】各員に”ドミニオン”からの任務変更の通達が届く。

エアリスはモビルスーツ部隊へ指示を出した。

 

「ブルームリーダーより各員へ!我が隊はこれより”アークエンジェル”及び関係者の援護を開始する。攻撃目標は接近する()()()…”ブルーコスモス”だ!」

 

そう告げると小隊メンバーは勇ましく返答した。

 

<<<了解!!!!>>>

 

これからが本番でありエアリスはフットペダルを押し込み暗黒の大海を突き進んだ。

 

◆ ◆ ◆

 

「釘付けにする!さあ機体を明け渡して貰おうか!」

 

「くっ…!」

 

”フリーダム”のコックピットの中でキラは苦しげに息を吐いた。

”ファントム”とライブラリ表示されるダガー系統のモビルスーツとの戦闘…その機体に本当にナチュラルが乗っているのかと疑いたくなった。

 

そして…。

 

(どうして…あの機体からエアリスさんの声が!?)

 

キラは対峙するモビルスーツより発せられる声が親愛なる人と同じものに困惑していた。

しかし、それは暖かみなど無駄という温度を削ぎ落とした冷徹な声色でそれが幻影のように纏わりつきそその戦闘スタイルは信じられないほど似ていて技巧的な力押しはキラの精神をゴリゴリと削っていく。

 

「キラ!」

 

同時にアスランもキラを援護するために”ジャスティス”を駆って攻撃を仕掛けるがビームソードが振るって決定打を与えられない。

 

「お前達は”アークエンジェル”とオーブ艦艇を攻撃しろ。此方は私が片をつける!」

 

”エアリス”は指示を出すと残った三機が艦艇へ向かう。次の瞬間にはその周辺にはビームと弾丸の嵐、閃光が散っている。

しかし、そんなことに気を取られる暇もないほどに二対一の状況でありながらその卓越した技巧はキラ達を追い詰めた。

 

「くっ…!?」

 

「キラッ!」

 

「終わりだな、”フリーダム”!」

 

<バラエーナ>の火線を潜り抜け懐に入られてしまい攻撃を受けきりもみに吹き飛ばされる”フリーダム”は体勢を整えられずに背中を見せてしまい”ファントム”から向けられたビームライフルの銃口が向けられ放たれた。

 

やられるーーッ!?

 

死を覚悟した次の瞬間。

モビルスーツが白い彗星が尾を引いてキラの前に立ち塞がり放たれたライフルの一射を防ぎきった。

 

「え…?」

 

その光景にキラとアスランは驚愕する。

敵として立ちはだかった”ディスペアー”が眼前に此方に背を向けて庇うように立ち塞がっているではないか。

キラは思わず口に出す。

 

「エアリス…さん?」

 

通信は帰ってこない。しかし確信した。彼女は生きてくれていたのだ、と。

アスランは立ち塞がった機体から銃口を”ファントム”へ向け直す。

 

「”ディスペアー”…?!まさか本当にあれに…?」

 

「…待っていたぞ…この時を…!」

 

”エアリス”も任務の事など忘れて舞い降りた”絶望”へ機体を向けた。

 

◆ ◆ ◆

 

「やぁああああああッ!!」

 

「はぁああああああッ!!」

 

ディスペアー(絶望)”と”ファントム(幻影)”…二機のダガーが交差し数度の緑と二色の光条が輝き合い収束ビームがぶつかりプラズマを放つ。

コックピットの中でエアリスが叫んだ。

 

「一体誰なんだ…お前は!」

 

撃墜する勢いで狙っているにもかかわらず全てが予測されるように回避されているのを目の当たりにして苛立つようにサーベルをぶつけ合う。

 

<私はお前だよ…エアリス・レインズブーケ!いや、”姉”と言うべきか?>

 

「私に妹はいない!」

 

<そうさ!()()()()()()()()()()()()な!>

 

一人だった…!?一体なんの話だ!

 

「ッ!?何を意味の分からんことを…!ほざくなあッ!」

 

<そうだ…足掻いて見せろ…私がお前を殺すのだから…!>

 

互いにビームサーベルとビームソードの光刃がラミネートシールドのアンチビームコートを焼いていく。

 

<これが本当に…ナチュラル同士の戦闘なのか…?>

 

その戦闘を突如として連合軍の新手と開始した”ディスペアー”達を見てアスランは呟きを漏らす。

一言で言えば”異常”に尽きるものでその一手一手が撃墜しかねない致命傷をお互いが防いでいるそれはまるで()()()のようだった。

 

アスランの通信を聞いてキラもその光景に戦闘を中止して食い入るように見ていた。

 

(まるで…もう一人、エアリスさんがいるみたいだ)

 

キラも通信を聞いているわけではない。その戦闘方法がエアリスに似ている…とそう感じたのだ。

 

◆ ◆ ◆

 

一方で”セラフィム”から吐き出された”ダガー”達は”アークエンジェル”を襲う。

 

(ッ!?この感覚は…!)

 

【ネクロシス】からの攻撃を迎撃していたムウは突如襲ってきた馴染みの感覚に驚く。

ラウ・ル・クルーゼがこのL4までに何のようなのだ!と機体を翻しメンデル内部へ向かう。

奴が来る、ということは”ザフト”がこの戦いに参入することになるのだ。

隣で戦っていたディアッカとニコルが咎め驚く声を上げる。

 

<あ?お、おいおっさん!>

 

<少佐?一体どこへ…!>

 

「おっさんじゃない!ザフトがいる!」

 

<はぁ!?>

 

<えっ!?>

 

”メンデル”へ向かうムウの後をついていこうとするディアッカに続きニコルも続こうとするが敵の攻撃が激しくそれどころではなかったが飛んで来たビームを”フォビドゥン”が逸らす。

 

「え…?」

 

<行けよ。通信で聞いてたけどお前、向こうが気になるんだろ?>

 

「どうして…」

 

”フォビドゥン”のパイロット…年若い少年の声が聞こえてきた。

 

<此方は”アークエンジェル”の護衛の仕事があるんだ。気になって気が逸れて撃墜されたら此方が隊長に怒られる>

 

それだけ言い残し接近する機体群へ近づいていった。

 

「…ありがとう。でも君も死なないでね…!」

 

<此方の台詞だっつーの…>

 

機体を翻しムウ達の後に続き”メンデル”のゲートを潜り抜けシャフトを通り抜けると赤茶げた人工の大地が眼前に広がっており既に戦端が開かれていた。コンソールに表示される馴染みのある名称に驚く。

 

「”デュエル”…!?…それにあの機体のエンブレムは…!」

 

飛び込んできた機体は馴染みのあるものでありそして乗っているパイロットの少年の顔を思い出す。

そしてもう一機は見たこともない機体でザフトの新機体なのだろう”ジン”の系譜であろうそれは青で塗装され肩のエンブレムには鳳仙花が記されていた。クルーゼ隊に所属しているシホ・ハーネンフースだ。

それにも向こう側も感づく。

 

「”バスター”…!?それに”ブリッツ”も…!?」

 

彼の脳裏に皮肉っぽい表情としっかりものの少女の表情が浮かぶ。

何処かで生きていて連絡を取れる…ひょっこり戻ってくるのだとそう信じていたのだが今”ストライク”共に出てきた、ということはつまり…。

イザークの血液が沸騰するように怒りを覚える。

 

「貴様らぁーッ!!よくも二人の機体でッ!!!」

 

冷静さなど何処へやら、怒りに支配されたイザークはハーネンフースと共に機体へ迫った。

 

「ディアッカさんとニコルさんの機体で…!」

 

怒りに燃え同時に戦闘が開始され”デュエル”と”バスター”が。

”ブリッツ”とハーネンフースが乗る”ディープ・ゲイツ”が戦闘を繰り広げる。

 

離反した自分達に敵対するのは当然であった…いや、自分達が敵対しているのだが。

彼女が語った戦争の悲惨さを自分が体験することになるとは、とニコルは苦い顔になりながら”ブリッツ・エクレール”を操る。撃墜されるわけには行かなかった。

 

「ちっ…!新型か?毎度毎度ザフトは凄いねぇ!」

 

飛来する機体に宿敵が乗っている事に気がつきライフルを撃ち放たれた火線を回避しすれ違いざまに<アーキバス>を放つが回避されてしまう。

 

「ほぉ…?今度は貴様が”ストライク”のパイロットか?」

 

スピーカーから入る明瞭な声が確信へと導く。”JOSH-A”で遭遇した仮面をつけたあの男…!

 

お互いにサーベルを抜刀しシールドに打ち付け激しいスパークを散らす。

 

「ッ!?(不味い…ッ!)」

 

その直後にムウの脳天に稲妻が走りその場から退避すると先程までいた場所をビームが通り抜ける。

もう一機いたのか…!?と探すムウであった機体の反応は一つ…しかしその装備は彼にとっては見慣れたものであった。

 

「避けたか、流石に悪運は強いようだな?」

 

「ちぃッ!!」

 

ムウの目の前に立ちふさがるシルバーグレーの機体色にXナンバーに共通するデザインにアンテナ、そして背面には大型のバックパックから分離していたと思われる砲身がついていたコーンの様な突起物が有線を巻き取り”X”のシルエットを形取る。

 

「試運転には貴様が丁度よい…”ムウ・ラ・フラガ”!!」

 

「やはり貴様か…”ラウ・ル・クルーゼ”!!」

 

ムウの駆る”ストライク”とクルーゼの操る”プロトプロヴィデンス”が激突する。

ここだけでなく”コロニー・メンデル”各所で其々がぶつかり合う。

 

あるものは己が宿命我が運命に抗い、拒むように抜き身の感情を真空の宇宙へ晒すのだった。

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