魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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…皆さんに謝罪を。
今回メインキャラクター退場します。
かなりのキーキャラでしたが話の進行上こうせざるを得ませんでした。
原作キャラファンの皆様…申し訳ない。

禁断の一日に二話投稿…それではどうぞ!


表裏の境界線上

「距離一二0にザフト軍”ナスカ級”三です」

 

「エアリスとの通信は?」

 

「電波障害が起きているのか…電波状況悪く依然返答ありません」

 

オペレーターが報告するように返ってくるのはノイズと砂嵐だけだ。

L4…”デブリ”の影に隠れるようにコロニーへ接近する”セラフィム”で艦長は時計を見ながら溜め息を吐く。

彼にはエアリスの独立指揮決定権に対して反論することは出来ずまた口を挟むことが出来ない為メンデル内部へ進行を許した。帰投時間になっても戻ってこない所を見る限り内部でナニか問題が発生したのだ、と考えた。

思案していると通信席に座るクルーが報告した。

 

「艦長。増援部隊到着いたしました。距離三○、補給艦”一”アガネムノン級”一”、ネルソン級”二”です」

 

「そうか…悟られていないな?」

 

「はい」

 

悟られないように到着した補給艦は”セラフィム”へ補給を行う。追加のパイロットと”01ダガー”達だ。

補給は急ピッチで進められ予定時刻に完了し補給艦が宙域を離れた後に艦長は指示を出した。

 

「…さて…ここで”聖女”を置いて撤退したら処罰を受けるのは我々だ。敵モビルスーツ奪取の件もある……総員戦闘配備!モビルスーツ部隊発進準備急げ」

 

そう艦長は指示を出し艦内が騒がしくなる。

艦長はアームレストのボタンを操作しパイロット待機室へ通信を繋げた。

 

<あら、出撃かしら?>

 

応答したのは副隊長であるジャンヌであった。

アラートがなっているのにも関わらず寛いでいる姿を見て艦長は眉をひそめたがここで小言を言ったところで反省しないだろう事を知っている為に見なかったことにした。

 

「…ああ。部隊の指揮権をそちらに任せる。良いか?」

 

<ええ。構わないわ。久々の部隊長…楽しませて貰うわ>

 

そう告げジャンヌは通信を切り暫くしてオペレーターの指示で【ネクロシス】と”01ダガー”部隊が発艦していく。

艦長は少し息を吐き、三番目の”大天使”は動き出した。

 

「”セラフィム”前進せよ!」

 

◆ ◆ ◆

 

<後ろにナスカ級三隻は辛すぎ…正面にはあの三機でしょ…!?一機でも辛いのに…>

 

”クサナギ”を護衛するアサギ達が愚痴る。三人のフォーメーションであれば一機を押さえることが出来るだろうが三機で襲いかかられたらひとたまりも無いのを自覚してジュリとマユラは頷いた。

 

「遅い…キラ達まで遅すぎる…!」

 

一方、格納庫にいたアスランは腕時計を見て時間を経過しているのを確認し”ジャスティス”まで飛びコックピットに乗り込み艦橋へ向け告げた。

 

「”ジャスティス”出るぞ!」

 

<認めません。アスランは指示があるまで待機をしていてください>

 

その返答に驚くアスランはモニターを見返すとそこにはラクスが毅然とした表情を映している。

 

「しかし!五機とも戻ってこないと言うのはっ」

 

不満を現し反論しようとするアスランをラクスは冷たささえ感じさせる声色で返答した。

 

<ならば尚の事です。これ以上迂闊に戦力を割くことは出来ません。”セラフィム”がいつ攻撃を再開するかも分からないのです>

 

「だがっ」

 

アスランは唇を噛んで押し黙ったがそれ以上に画面のラクスは悲しみを押し殺すように断固とした決意を表明した。

 

<だからこそです…例えキラやエアリス達が戻らなかったとしても私たちは戦わなくてはならないのですから…>

 

「…わかった。すまない」

 

ラクスとてキラ達を案じる気持ちはアスラン達と同じでありそれでも合理性を優先し個の感情を押し殺しているのだと感じとりアスランは自らの短慮を恥じた…それに死んだ…自分が手に掛けた少女が生きている、と知らされればその感情は大きくなるのは必然だった。

そしてそれを裏切るようにしてラクスの予想は的中した。各艦艦橋にてセンサーが敵の襲来を感じ取ったのだ。

 

<”セラフィム”来ます!距離五○!グリーンブラボー!同時にモビルスーツの発進を確認!>

 

それを皮切りに港内に戦闘配備を告げるアナウンスとアラートが鳴り響き艦内ではくクルーが持ち場に就くために走り回る。

準備を終えて”アークエンジェル”と”ドミニオン”。そして続くのは”クサナギ”と今回は整備を終えた”エターナル”が続く。

出港する戦艦より先行して港口から飛び立つモビルスーツ隊はオペレーターから告げられる報告に顔をしかめる。

 

<複数の熱源を確認…モビルスーツ…例の三機と…”01ダガー”多数!…ッ!それに”セラフィム”後方に大型の熱源”三”!…アガネムノン級”一”!”ネルソン級”二”です!>

 

やっぱり増援か…!とアスランは操縦桿を握り”M2アストレイ”と”M1アストレイ”の部隊達へ指示を出す。

 

「君たちは艦の守りを!」

 

<了解!>

 

アサギ達が答えるとアスランは”ジャスティス”を駆って敵の襲撃に備える。M1では敵のエースに対応することは出来ない…そう思っていると”ジャスティス”の付近に例の三機が通信を繋げる。

 

「お前達…」

 

<こっちもあいつらには礼をしなくちゃならんしな…俺たちも前に出る。足引っ張んなよ?>

 

<あの鳥野郎…今日こそ落としてやる!>

 

<隊長戻ってこないし仕方ないか…よわっちいのは任せな?>

 

投げやりな回答だったが自分達の隊長を案じていることを感じてアスランは少しだけ口角をあげる。

しかし、戻ってこないキラ達の事を考えると操縦桿を握る手が強くなった。

 

”セラフィム”から出てきた三機のモビルスーツは数で勝っていたとしても先ほどは押されていたのを思いだし帰ってくるまでそれを押さえ込まなくてはならない…戦力が少ないなかで悪戯に減らすわけにはいかなかった。

 

「”イーゲルシュテルン”、”バリアント”起動!撃ってくるぞ!アンチビーム爆雷発射!艦制動十!面舵十五!ミサイル発射管”コリントス”装填!”ゴットフリート”照準…”アークエンジェル”級!」

 

「”ゴットフリート”照準!目標”セラフィム”!行くわよナタル!…」

「”バリアント”照準!敵艦艇”セラフィム”!ええ、ラミアス艦長!…」

 

「「「てぇーッ!!」」」

 

三隻の”アークエンジェル”級が激突する。

出港した”アークエンジェル”と”ドミニオン”の艦長が向かってくる”セラフィム”に向けて同時に主砲と副砲を発射するが直撃はせず回避され打ち返される。後方に控えるアガネムノン級とネルソン級がミサイルとビームを放ち続いてきた”クサナギ”と”エターナル”が反撃しそして例の部隊が近づき戦端が開かれここで俺たちは討たれる訳にはいかない…とアスランは”ジャスティス”を駆った。

 

◆ ◆ ◆

 

「…」

 

「…」

 

銃を向けたまま微動だにしない。

その静寂を破るようにエアリスが口を開いた。

 

「貴女は…誰なの?」

 

「私は…お前の影だ」

 

「影…?」

 

突きつけられた銃口から意識を逸らさずにエアリス…いやエミリアを名乗る少女の瞳を真っ直ぐに見つめると手にする軽機関銃の引き金の指が震えた。

 

「私は…汚い大人のエゴによって造り出されたお前の紛い物…」

 

ポツリ、と針の音が落ちるように小さく呟く。しかしそれはハッキリと聞こえた。

 

「死んだと思われたエアリス…それを復活させるために細胞サンプルから創られ赤ん坊から少女への体を急速成長させて脳への()()()()()()を施された後に”エアリス”という役割を与えられ本来の名前を消された哀れなクローン……それがこの私、”エミリア・A・レインズブーケ”だ」

 

自嘲気味にそう告げる。そして言葉の通り彼女は()()()()ということになる。

衝撃的で言葉を失いそうになる…が、しかし。その事に関して疑問が浮かぶ。

 

「…それなら貴女は何故…”エミリア”の名前を…記憶を知っているの?」

 

そう問いかけるとエミリアは自分とは違って表情豊かに忌々しげに笑って見せた。

 

「はっ…!連合の洗脳教育の賜物ってね…頭に学習装置を付けられ脳に直接()()()()()のさ」

 

そう告げ頭をトントンと叩く。しかしその回答ははぐらかしているように聞こえる。

 

「…答えになっていない」

 

「ああ。”エミリア”の事だったな…姉さん、”魂”の存在を信じるか?」

 

「”魂”…?」

 

「そうだ。この肉体…エアリスの身体にデータ化していたエミリアの魂…それが紛れ込んだデータの海から急成長した身体に流れ込み定着したんだ。まぁ、”宿主”といっても良いかもしれないな…気がついたら私は…エミリアではなくなっていた。私を生み出した連合の研究者は”エアリス”を造り出した、と喜んでいたな…当然だろうナチュラルのエースパイロット…”蒼い彗星”……ザフト的に言うのなら”彗星の魔女”か?連合、いや”ブルーコスモス”の旗頭としては姉さんの名前は十分だからな」

 

エミリアは鼻で笑う。

オカルトじみた結果論に「バカな…」という感想を覚えてしまうが頭の片隅に”ユニウスセブンや本編でのフレイ、ステラの霊体…”の件があることを思い出し否定しきれなくなった。

 

「あり得ないと思うだろうがこれが真実だよ…姉さん」

 

銃を突きつけヒステリックに叫ぶ。

 

「…私は姉さんが憎い!私は肉体を失いお前の身体に突如として意識を押し込められた!私は…”エミリア”は…存在理由はどこにある!?」

 

「エミリア…」

 

「…私は”エアリス”だ…!存在する限り…私は…だから姉さん、貴女を殺す…!私が私であるために!」

 

「違うッ!!」

 

銃を突きつけられていることなど忘れて叫んだ。そうしなければならないと無意識に、感情的に叫んだ。

そうでなければ悲しすぎる、とーー。

 

「”エミリア”としての自覚があるのなら貴女は”エアリス”じゃない!…人は他人には成れはしない!自分は自分だけのものッ!!私を…私の役割を…貴女が演じる必要はないのよ…!」

 

「ッ!?貴様が…それを……ふざけるなぁ!!」

 

その言葉に逆撫でられ感情が爆発する。

エミリアは手に掛けた引き金を引こうとするがそれを察知した反射的に腰に付けた宙間固定用のアンカーを投げ付けた。

 

「ッ?!逃がすかッ!!」

 

投げ付けられたアンカーはかなりの速度で飛来しエミリアは軽機関銃で払い除けるがその隙に物陰に走り出していたエアリスを一拍遅れて攻撃する。

研究室内に銃弾が散らばり内装を破壊しているそれは彼女の怒りを示していた。

 

「ここで死ね…エアリスぅぅぅぅぅッ!!」

 

一方で物陰に隠れたエアリスは拾い直した拳銃を構え背中に伝わる銃弾の衝撃を感じながら決断しようとするが…躊躇ってしまう。

 

(くっ…どうして…)

 

存在を知らなかったとはいえ生きていてくれた”妹”…それを前にしてすぐに引き金を引けるほど薄情ではないのだ。

身体が…そのあり方が螺曲がってしまってとしても彼女は…たった今知ったとしても…”エミリア”…大切な妹だ。

 

「ッ…ごめんッ」

 

背中に伝わる遮蔽物を撃つ軽機関銃の弾丸の雨が止んだのを確認し物陰から顔を出し狙いを定め引き金を引いた。

 

「ぐっ…!?」

 

放たれた弾丸は手にしていた軽機関銃だけを狙い撃ち手放させた。

手放した軽機関銃をその場に放り出し逃げ出すように研究室から走り出す。

 

「ッ!待って…エミリア!!」

 

その後を追いかける。しかし最悪の場面に遭遇した。

 

◆ ◆ ◆

 

キラは呆然としていた。

目の前にいる男が雄弁に語るーー。

 

「『僕は…僕の秘密を今語ろう…』」

 

人類初のコーディネイター…ジョージ・グレンの言葉から始まったその語りは次第に心にじわりと毒のように広がってキラの思考を蝕んでいく。

 

「奴のもたらした混乱はその後、何処までその闇を照らしたと思う?」

 

くつくつと笑いながらラウは饒舌に言葉を走らせる。

 

「あれから人は…いったい何を始めてしまったのか知っているかね?」

 

あらゆる容姿、才能が全て金次第で自分の物になる。

 

女は語った。目はブルーが良いなぁ…髪はブロンドで…

 

まるで自分の子供を装飾品のように、装備のように改造することが出来る。

 

男は語る。子供には才能を受け継がせたいんです…

 

そう…多くの人たちは自らの遺伝子を継ぐ子供達へ未来を託す…チケットを買ったのだ。

 

医師は雄弁に語る。優れた能力は未来の子供への”贈り物”です…

 

「しかし…そう簡単にうまく行くものではない…」

 

ー流産しただと!?何をバカなことやっている!高い金を掛けて遺伝子操作したものを…!

ー妊娠中の栄養摂取には十分に気を付けてください。日々の生活もこちらの指示通りに…

ー完全というわけには行きませんよ…母体が生身なんですから。

 

自らが腹を痛め産んだ子供の顔を見て母は叫ぶ。目の色が違うわ…!

 

「高い金を出して買った夢だ…誰だって叶えたい、誰だって壊したくないだろう…」

 

ラウの声色が劇的に高まる。

 

「だから挑むのか!?それが夢と望まれて叶えるために…!」

 

ラウは荒々しく問いかける。

 

「人は、何を手に入れた!?その手に!その夢の果てに!知りたがり…欲しがり…やがてなんのためだったのか忘れ…命を大事と良いながら弄び…殺し合う…!」

 

「ほざくなッ!」

 

キラを物陰に置いて飛び出すムウは拳銃を構えラウへ発砲する。

走る彼の姿を追いかけ自棄になったように銃を乱射し室内の備品を壊していく。

 

「何を知ったとて!何を手にしたとしても変わらない!…最高だなヒトは!そして妬み!殺し合うのさ!」

 

柱の影に入り込んだムウが叫び返した。

 

「何をッ!貴様ごときが偉そうにッ!!」

 

銃弾がラウの前髪を掠り、ラウは銃を上に向け照明の吊り金具を破壊し墜落させると大きな砂ぼこりが舞い上がり周囲に破片が飛び散る。

 

「私にはあるのだよ…この宇宙で只一人…」

 

ラウは勝ち誇るように宣言する。

 

「全ての人類を裁く権利がなぁ!!」

 

「ふざけるなこのやろうッ!!」

 

(僕は…なんのために…産まれたんだろう…?)

 

呆然とするキラは目の前の男が語る言葉は真実ならば数多の犠牲の上に両親のエゴによって生み出された存在ならば…どうして存在している?

頭の中を掻き回され混乱する脳内に浮かぶのは一人の女性の姿。

”コーディネイター”だから、”ナチュラル”だから…と差別をしない、優しく平等な一人の”人間”として接してくれた彼女の姿を思い出す。

 

一瞬だけ気を取り戻しそこではムウとラウが会話を繰り広げていたが耳を疑うような内容を口走っていた。

 

『自分はお前の父親のクローンだ』と…。

 

流石のムウも絶句した。

 

「クローンだと…!?そんな与太話誰が信じるかッ!」

 

その声は迷い揺れていた。嘲笑うかのようにラウは皮肉っぽく返した。

 

「私も信じたくないが…残念だが真実でね」

 

違法とされたクローニング…それをムウの父親であるアル・ダ・フラガはキラの父親であるユーレンへ資金援助を条件に行わせたのだ。

そして生まれたのが”ラウ・ル・クルーゼ”ということになる。

 

「間も無く最後の扉が開く!…私が開く」

 

ヒトのエゴによって生み出された”怪物”は叫んだ。

 

「世界は終わる…果て無き欲望の世界は…そこで思い上がった傲慢な者達の…その望みのままにな!」

 

「ぐっ…!?」

 

ラウは銃口を動けないムウへ向ける。動き出そうとするキラだったがそれよりも先に誰かが撃った一発の銃弾が室内に響き渡った。

 

「なっ……!?」

 

「えっ……?」

 

「…………」

 

カラン、と乾いた音が鳴る。仮面が外れたのだ。同時にどさり、と崩れ落ちる音が響く。

崩れ落ちた男の白いザフトの軍服の心臓部分が赤いシミが広がっていく。

 

「ははっ…そうか、ここが…私の…さい、ご………か………こふっ…」

 

最後まで世界を呪った男は一発の銃弾をその身に受け呆気なくその生涯を終えた。

突然の事にキラとムウは呆然としていた。自分達を追い詰めた男の最後にしては呆気なさ過ぎた。

仮面が外れたその素顔は跡取り…ということありムウと同じかそれより…といった感じの筈が青い目に顔には年齢に見合わぬシワが刻まれている。

しかし、その表情は妙に晴々としており不気味な雰囲気すら感じさせた。

 

死んだ男の顔を覗き込んでいると室内に一人、ヒトの気配を感じとると二人は弾かれるように見る。

そこには………。

 

「嬢……ちゃん…?!」

 

「エアリス…さん…?」

 

ソコには以前の姿のままの童顔じみた少女…戦友とも呼べる人物であるエアリスが()()()()()()()()()()()表情が死んでいる顔に笑みを張り付けていることに。

キラはゾッとしてしまう…彼女が本当に…エアリス…?

 

しかし、その”エアリス”は自分達が知っている声色で語り掛ける。

 

「どうしたんですか二人とも…顔色が悪いですが…?」

 

同じ声色…しかしそれでいてナニかが…決定的なナニかが欠如している事にキラは背筋を寒くする。

これが本当にあのヒトなのか、と。

取り憑かれたような笑みは身体を強張らせた。

 

「どうしたの?そんな怖い顔をして…私に会うのがそんなにイヤだった?」

 

一歩、また一歩と近づく”エアリス”にキラは異様なものを感じるこの感覚は…なんだ…!?

 

「クスクス…ほら、おいで……また…抱き締めてあげる」

 

その無表情に張り付いた偽りの笑みを浮かべキラを迎え入れようと両手を広げた。

それはまるでエサを招き入れる巨大な食虫植物(ラフレシア)のように…甘く、毒のような魅力にキラは彼女へ向け足を一歩、また一歩と蠱惑へと誘われる。

 

「あ…」

 

”エアリス”の腕に誘われようか、とその瞬間だった。

 

「私の声で言葉をッ!!もう止めて!”エミリア”ッ!!」

 

また一人、室内に乱入する声…女性の声が響きキラを制止した。

その声はムウも聞き馴染みのある人間味がある声で発せられた声の方向へ視線を向けるとその姿を見て息を呑んだ。入ってきた人物を見て両手を広げるのを止めてお互いに拳銃を突きつけた。

 

「エアリス…さん?」

 

「が…二人…!?」

 

その見た目はキラの記憶の”エアリス”とは違っている。

身長は頭二つほど大きくなり女性として成長した身体は実年齢以上に、そして肩まで掛かっていた亜麻色の髪は腰ほど迄に伸びていた。

違う、と見た目では分かっているのにキラは連合の軍章を付けたパイロットスーツの美しい女性に視線を奪われていた。

 

「もう止めて…エミリア…もう…私にならなくて良いの…!」

 

「何を言ってるの?私こそが…”エアリス・A・レインズブーケ”…貴女こそ…私を騙るのを止めて頂戴」

 

「”エミリア”ッ!」

 

連合軍の兵士…”エアリス”達が銃を向け会う。これはどう言うことなんだ…?

そんなことを考えていると目の前で彼女達が近接格闘を仕掛け会う。

CQC…近接格闘術と言われるものをお互いに仕掛けあい互いが手にしていた拳銃を弾き飛ばされキラの足元に転がってきた。

 

「がはっ…!?」

 

「格闘術じゃ私の方が上ね?」

 

体格差があったとは言え易々と女性を組伏せた小柄な”エアリス”は女性を締め上げた。

 

「さぁ…この”偽物”を撃って?出来るでしょう?…私たちは”仲間”だもの…」

 

虚偽に満ちた笑みが向けられる。

 

「…ッ!?」

 

「キ…ラッ…!」

 

足元に転がる手放した拳銃を拾い上げるキラは震える手で言われるがまま銃口を向けた…しかしそれを止めようとするムウだったが出血のしすぎで朦朧となり力が入らず視線がおぼつかない。

 

「あっ…がっ…!?…キラ、くん…ッ…!」

 

「ッ!?」

 

首を締め上げられ苦しげにもがく女性は”キラ”の名前を呼んだ。

 

どうして僕はエアリスさんに銃口を向けている…?

どうして目の前に二人のエアリスさんがいる…?

どうして記憶の中のエアリスさんと目の前の人物が一致しない…?

どうして…知らない筈の女性から自分の名前を知っている声色で呼ぶのだ…?

 

考えれば考えるほど思考は負の螺旋へ巻き込まれていくのを感じる。どちらかが本物でどちらかが偽物、いや…両方が偽物…?

 

頭の中がこんがらがり混沌とする脳内…思考すればする程それはド壺に嵌まっていく感覚を覚える。

どうすれば良い…迷いが最高点に到達したその時だった。

 

ーキラくん、信じて。

 

拘束されている少女が口を開きその言葉を描いた。

その声に思考がクリアになっていく。

そうだ…自分が信じるものを…僕は…彼女を守る…!

 

手にした拳銃の引き金を…記憶の中にある容姿の”エアリス”へ向け引いた。

 

パァン、と乾いた音が研究室に響き渡る。

硝煙の香りと銃口から登り立つ煙が漂っていた。

 

「ぐっ………!?私は諦めないぞ…”エアリス”…この手で貴様を殺すまでは…!」

 

放たれた弾丸は”エアリス”のパイロットスーツの肩口に辺り血を滲ませる。

拘束を解き恨み節を崩れる彼女へ向けながら足早に研究室を出ていった。

 

「ッ…はぁ…はぁ…はぁ…ッ…!!!」

 

「エアリスさんッ!」

 

拘束を解かれ息を荒く吐く女性に駆け寄るキラは名前を呼んで近づいた。

呼ばれ見上げたその表情は成長してしまったとしても自分が知るエアリス・A・レインズブーケの顔だった。

 

「エアリスさん…なんですよね…」

 

不安そうに問いかけられ困ったように笑みを浮かべる。

 

「ははは…参ったな…見た目、変わっちゃったけど……うん。キラくんが知ってる…エアリス、だよっ…」

 

そう告げる彼女は今にも泣きそうだ。

理由があるのだろう其は筆舌にし難い理由があるのだろうが今は問うまいと決意しそれを見たキラは我慢できずに抱き締めた。

 

「え、キラ…くん?えと…なんで…」

 

抱き締められるとは思わず顔を少し赤くしている。構わずに抱き締める腕の力を強めた。

上目使いで見つめる彼女にただ一言、こう告げた。

 

「お帰りなさい…エアリスさん」

 

「………………うん。ただいま…キラくん」

 

少女は少年の抱き締められた腕の力に逆らわずに甘んじて受け入れ身体全体が熱くなると同時に抱き締められた腕の力強さに成長した少年の温もりを感じながら。

そして少年は守られるだけの存在を卒業し腕の中に居る少女をもう二度と離さない…と決意して。

 

◆ ◆ ◆

 

「はぁ…はぁ…くそっ…!」

 

研究所から出てきたエミリアは肩で息をしながら機体へ乗り込む。既に近くに居た”フリーダム”や”ディスペアー”、中破した”ストライク”の姿はない。

既に撤退した後らしく忌々しげに港口の方を見る。

 

(…この手で葬らねば私は…”エアリス”になれない…!)

 

コロニーが大きく揺れるのは外で戦闘を行っているからだろう。

早々に脱出を図る為機体を操作しようとしたその時、見慣れない機体が転がっているのに気がついた。

恐らく先ほど殺害した士官が搭乗していたであろう機体は持ち主を失い投棄されたのだろうと予測し機体へ近づきコックピット内部をまさぐる。

プロテクトが掛かっていたがエミリアは難なくプロトコルを解析し解除した。

 

ソコに記されていた機体のスペック…其は到底バッテリー駆動では扱うことが出来ない装備群ではあったがバッテリー駆動であり拍子抜けしたが詳細を確認するために画面を操作しその機体の()()()()()()を確認し目を見開いた。

 

「NJC…だと?」

 

禁断の力…核を無制限に扱うことが出来る能力をこの機体は搭載予定だったらしい事にエミリアはまだ何か無いかとまさぐる。

 

「…これは」

 

そしてコックピットのホルダーに納められているデータディスク…その内容物を確認し感情の薄い表情に冷徹な笑みを貼り付かせたのはその内容物は”フリーダム”と”ジャスティス”のデータ…そしてそれを運用できる”NJC”の製作データだったからだ。

 

「あはっ…アハハハハハハハハッ!!!」

 

暫くして”ファントム”の元へ戻りスラスターを応急処置し起動させ飛翔した。

応急処置を終えた”ファントム”の腕の中には大破した”Pプロヴィデンス”…そしてコックピットの中にいるエミリアの手元には”禁断の力”を封じ込めたデータディスクがあった。

 

◆ ◆ ◆

 

数刻前。メンデル内部にて。

イザークとディアッカ達の立つ地面が揺れた。中断していた戦闘が開始されたことを意味していた。

”バスター”と”ブリッツ”へ戻ろうとする友人達に再び銃を向け直した。

 

「ザフトでなきゃ…何て言うなら撃てよ」

 

「…騙されているんだお前達はッ!」

 

軍の命令ならば裏切り者は撃たねばならない…そう頭では分かっている筈なのにイザークは引き金を引くことを躊躇った。既に”親友”とカウントしている…尚更撃つことなど出来ず彼の心を苦しめた。

 

ディアッカとニコルの言ったことは世迷い言だ。立った三隻で何が出来ると言うのか…どの陣営に与せずに戦争を終わらせるなどと…!

 

「さて…どっちかな」

 

そんなイザークの考えを切り捨てるようにディアッカが呟く。

 

「わかんねーけど俺は行く」

 

ディアッカは最後に寂しそうに呟いた。

 

「出来れば…お前達と戦いたくねぇけど…な」

 

そしてラダーに取り付き二人はコックピットに消えていく。

勝手なことを…敵に回ったのは貴様達の方だろうが…!

 

「ジュール様…」

 

「ああ…此方も撤退する…」

 

離れていく機体を見送りながらイザークは波立つ心を必死に抑えながらコックピットに戻ると信じたくない情報が記されている事に気がつき目を見開いた。

 

「隊長のIFFが消失しているだと…!?隊長……!!」

 

”デュエル”のコックピットにはクルーゼの生体反応と”Pプロヴィデンス”のシグナルがロストしていた。

 

◆ ◆ ◆

 

戦闘がコロニー外周で発生し内部で情報収集の為に侵入したメンバー達は全員帰還したのを待ちわびたかのように弾んだ声でミリアリアが報告する。

 

「艦長!”フリーダム”です!」

 

モニターに”メンデル”から出てくる五つの機影が映し出された。

”フリーダム”に続き”ディスペアー”と”ストライク”そして”バスター”と”ブリッツ”も確認できた事にマリューは肩の力を抜くがキラからの報告により身を固くする。

 

<ムウさんが負傷しています…>

 

「えっ…!?」

 

この時ばかりはマリューも指揮官としての役割を忘れ恋人の怪我の具合を心配してしまう。

 

<キラ、俺が…>

 

<エアリス、ここは僕たちが…>

 

”フリーダム”ここまで機曳してきた”ストライク”に近づき引き渡す。

二機は被弾した”ストライク”を預けた後、飛び立つ姿は嘗て同じ姿を想起させた。

 

「行くよキラくん!」

 

「はいッ!」

 

前方では例の三機と増援だろう黒い”01ダガー”が蠢き犇めきビームとミサイルの煌めきに照らされていた。

”ジャスティス””カラミティ””フォビドゥン””レイダー”は苦戦を強いられているのが見て取れる。

スラスターを吹かし戦線へと加わった。

 

◆ ◆ ◆

 

ラウ・ル・クルーゼが戦死した。この出来事はザフト軍の兵士達に多大な精神的なダメージを与えた。

同時に憎しみの動力源と化して動き出した。

最高指揮権を持つアデスが指示を出し任務を遂行することになる…もちろん戦闘に加わるイザークは尊敬する上官を失い当然ショックを受けたが先ほどの邂逅を思い出す。

 

「ディアッカ達が…敵…?」

 

どうしてもその概念が頭で受け入れられない…ディアッカも…ニコルも…暫く見ない内に成長していると感じてしまい自分だけが取り残されたような感覚を覚え胸に空虚なものを感じ取ってしまう。

しかし、彼は心に決めていた。仲間に取り残されてしまったが自分だけは”プラント”の為に戦おう、と。

ここで自分が戦うのを止めてしまえば”プラント”は滅びてしまう…この時間にも地球軍は続々と物資を宇宙へ上げている。戦わなくては…守ることは出来ない。

”故郷”を守る…そのために自分は軍へ入隊したのだから。

 

◆ ◆ ◆

 

「ナスカ級です!距離八〇、ブルーデルタ!」

 

恐れていた最悪の結果をサイが知らせた。この戦場を”連合”・”ザフト”・”四隻同盟”が対峙することを意味する。

 

「モビルスーツ接近!熱紋照合”ジン”十二!”デュエル”!内一機は登録無しの模様!マーク十八デルタ!」

 

その報告を受け挟撃を受ける”アークエンジェル”と”ドミニオン”は”セラフィム”と連合軍艦艇そして”クサナギ”と”エターナル”はザフト軍ナスカ級に囲まれた状況は正に前門の虎、後門の狼だ。

 

「バルトフェルド艦長!」

 

通信で呼び掛けるとバルトフェルドは素早く指示を出す。

 

<後ろのナスカ級は”エターナル”と”クサナギ”で!前面の連合軍はそちらに任せた!>

 

「分かりました!ナタル!」

 

<了解!>

 

”クサナギ”と”エターナル”は回頭し後方のザフト軍と対峙する。

そこから発進したモビルスーツ部隊を相手にするために向かうのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「……これではいけませんね」

 

ザフト軍の戦闘を暫く観察していたラクスはそう呟いた後にバルトフェルドに提案する。

 

「艦長」

 

「どうしました?」

 

「火線の全てを”クサナギ”と共に”ヴェサリウス”へ集中してください。」

 

指揮官席に座る儚げな少女から出る提案とは思えない発言に思わず振り返ったバルトフェルドは驚きに目を見張る。

 

「…あの艦を突破し戦線を離脱しましょう」

 

その言葉に副官のダコスタは驚きの声を上げる。

 

「そんな!今あの火線の中を飛び込んで行ったら三隻に集中砲火に晒されますよ!?」

 

しかし、バルトフェルドは思案する。

 

「ですが、突破できれば一番追撃される危険は低い筈です。この状況では火中の栗を拾いに行くしかありません」

 

ラクスの提案に舌を巻く。中々の慧眼だ。

確かにザフト軍の艦を突破できれば後ろに展開している連合軍とかち合うことになる。そうなれば連中は”敵同士”…追撃などしている場合ではないだろう。

 

「なるほど…その作戦で行きましょう」

 

「隊長!?」

 

ダコスタが騒ぐが無視する。アイシャは笑っていた。この盤面を突破するのが艦長の仕事だろう。

 

「”アークエンジェル”と”ドミニオン”へ打電!”我に続け”!前方ナスカ級を突破する!後ろから撃たれないように押さえ込みを頼め!」

 

◆ ◆ ◆

 

「ちっ…厄介な…!だが、武装は少ないなりにやりようはある!」

 

”ディスペアー”が飛翔し”ジャスティス”に狙いを付けていた”ファーブニル”へ背面ストライカーのビームランチャーを打ち掛け攻撃を中断させる。

 

「アスラン!」

 

<キラッ!>

 

そして”フリーダム”が飛びかかり”ファーブニル”へ切りかかるが”ハルピュイア”が変形し高速移動しながら背面のマイクロミサイルを放ち”レヴィアタン”の手にしている突撃斧槍の先端ガトリングランチャーが火を吹き”ジャスティス”へ狙いを定めるが肩部から解除した<バッセル・ビームブーメラン>を投擲し防御の体勢を取らせると大きく弾かせる。”レヴィアタン”に向け直撃させるつもりで放ったビームランチャー…しかしそれは弾かれ霧散してしまう。

 

「ビームを!?ちっ…ラミネート装甲ッ…!?」

 

「もらったぁ!…おいおい良いところで邪魔してくれるじゃねぇーかご同輩!!」

 

”ファーブニル”は攻撃の隙をつきガトリングガンとビームランチャーを撃ち掛けるが後方からやって来た増援が阻止して戦列に参加するその姿は自分の部下達であるシャニ達だ。

 

所々損耗はしているが五体満足だ。突如通信が入る。

 

<おせぇよ!どこほっつき歩いてやがった!?>

 

「こっちも色々あったのよ!無駄口叩いてないでさっさと討つ!」

 

<へっ、だから言ったろ?隊長は無事だって>

 

<もーまんたい>

 

<うっせ!>

 

全く緊張感の欠片の無い…と戦闘中でありながら緩やかな空気が流れていた。が、それでもここに集った七機は油断すること無く敵の迎撃に向かう。

しかし、数で勝っていたとしても連合軍の機体の性能とパイロットの力は驚異的だった。

 

「あら、そっちは隊長機が戻ったのね?」

 

「良いねぇ…血が滾るってもんだ!」

 

「あ、強そうなの来た!アハハハッ。簡単に壊れないでねッ!」

 

三つのモビルスーツが”ディスペアー”目掛け向かってくる。

決して万全とは言えない状況での戦闘…しかし落とされるつもりは更々無いのだから。

エアリスはスロットルレバーと操縦桿を握りフットペダルを押し込んで向かってくる【ネクロシス】を迎撃する。

 

◆ ◆ ◆

 

<突破するぞ!ラミアス艦長!>

 

バルトフェルドからの通信を受け戦闘宙域突破の作戦を受けたマリューはナタルの”ドミニオン”と共に彼女らの前面に展開する”セラフィム”含む連合部隊を攻撃しその均衡を崩した。

”アークエンジェル”から放たれた<ゴットフリート>がアガネムノン級のバイタルパートを貫き爆発させ”ドミニオン”は<バリアント>をネルソン級のミサイルハッチに直撃させ撃沈させる。

 

その光景を見て”セラフィム”艦長が痺れを切らした

 

「"ジェファーソン"並び”ドレイク”撃沈!」

 

「ちっ…!エアリスは!未だ戻らんか!」

 

その問いかけに答えるようにオペレーターが返答する。

 

「ッ艦長!メンデルよりエアリス機確認!」

 

その言葉を聞いた艦長はここでの継続戦闘は無意味だと判断した。一隻ならば未だやりようがあったがアークエンジェル級が二隻…そして例のモビルスーツが来るとなると此方の戦力では対抗は難しいだろう。それに搭載機三機とハーシェスの部隊の”01ダガー”のパワーもそろそろ限界だった。

 

<艦長>

 

「遅いぞ…何をしていた」

 

<()()()を確保した…これで問題なかろう>

 

エアリスがそう告げると艦長は驚いた。()()()…すなわち今回の任務である対象モビルスーツに関連するものを手に入れた、と言うことに他ならない。

いったいメンデル内部で何が…となったが素早く思考を切り替えた。

 

「…そうか。信号弾撃て!現宙域を離脱する!」

 

信号弾が撃ち上がったのをマリューとナタルが確認した。

 

「撤退する…?」

 

「僚艦を失ったからか…?」

 

それならば都合が良い…しかし別の思惑が隠れているようでマリューは思案したが撤退してくれると言うのなら深追いするつもりはなかった。

 

「信号弾撃て!此方も宙域を離脱します!艦回頭八十!全速前進!キラくん達を回収急いで!」

 

信号弾が打ち上げたのを確認し迫ってきていた【ネクロシス】を牽制するために殿を努めた。

 

「キラくん達は撤退を!私が殿を務める!オルガ、シャニ、クロトは”ドミニオン”へ!」

 

撤退するシャニ達を追撃しようと【ネクロシス】は攻撃を仕掛けた。

 

「逃がすかぁ!」

 

「どこ行くつもりだ!?」

 

撤退の理由が僚艦の撃沈ではなくメンデルから出てきたエミリアであることは感じていた。

しかし、その際にあの機体が何かを抱えているのにエアリスは見逃していた。

それよりも目の前に接近する敵機をあしらう方が最優先された。

 

「しつこいッ…さっさと艦に帰れよ…!!」

 

残った武装を展開しすさまじい加速でサーベルを抜刀する。

すれ違いざまに”レヴィアタン”の槍と腕を切断し破壊し高速移動する”ハルピュイア”に対しビームランチャーを通過予測地点へ置いて直撃させ脚部を破壊、そして此方を狙う”ファーブニル”にたいして残ったサーベルを投げつけ発射直前のビームランチャーに吸い込ませ臨界直前に爆発させた。

 

「えっ…!?」

 

「なッ…!?」

 

「ぐっ…!?」

 

追ってこようとした敵部隊は唖然とするような反撃を受け立ち止まってしまう。

そして”アークエンジェル”の<バリアント>によって進路を封じられ距離を取られ撤退せざるを得なかった。

 

一方で後方に展開していたナスカ級の中心艦である”ヴェサリウス”へ向け二隻の主砲が突き刺さる。

”ヴェサリウス”は船体を光条が貫き戦列を離れて脱落していき穴の空いた空間を”クサナギ”と”エターナル”が通り抜けていきその後に”アークエンジェル”と”ドミニオン”が続く。

脱落していく”ヴェサリウス”のその姿をアスラン達ザフト組は”アークエンジェル”の甲板上部へ着艦し嘗ての乗艦を見送った。このままでは撃沈は時間の問題だろう。

通りすぎる嘗ての乗艦の艦橋に人影があるのに気がつき目を凝らすとそこには艦長のアデスが直立不動で此方を見送るために敬礼をしていることに気がついた。

 

アスラン達は搭乗機体のコックピットで敬礼した。

自分達を知る存在に手を掛けた。もう後戻りは出来ない…死んでいったもの達のためにも自分達は生き延びやり遂げなくてはならなければ許されないのだ。

 

◆ ◆ ◆

 

「なんだろう…すごい憂鬱になってきた…」

 

<あはは…諦めてください…ほら、皆さん待ってますよ?>

 

”メンデル”の宙域を突破し追撃部隊を振り切った四隻同盟達…”アークエンジェル”の格納庫に”ディスペアー”が着艦していた。内装は”ドミニオン”で見慣れている筈なのに何故か懐かしい感じを覚えた。

着艦と同時に迎え入れられた機体は固定された。と同時に”アークエンジェル”のクルー達が”ディスペアー”の周りに集まっている。モニターで確認するとミリアリアやフレイは「早く出てきなさい」と急かしているようにすら見えた。

 

「……」

 

「…大丈夫です。見た目が変わっても…エアリスさんはエアリスさんですから」

 

「ッ…///なんでそういうことをさらっと言っちゃうのかなぁ…」

 

自分が不安がっていることを見透かされた上に歯の浮くような言葉を向けられ顔が赤くなる。

そういうナチュラルにイケメンムーブしてくるキラを見て少しだけ負けた気分になった…が少しだけ気分が落ち着いた気がして覚悟を決めてハッチを解放し格納庫の地面へ降り立ちメットを脱ぐ。

 

「ふぅ…」

 

無重力にたなびく亜麻色の髪がふわりと揺れ素顔が露になる。

隣に立つキラが自分の証明者になってくれるのだろう。私は…不安を押し殺して声を出した。

 

「…ただいま。皆」

 

次の瞬間に全員が驚いた表情を浮かべたが一人一人と…次第に騒ぎ始め包囲した。

 

「エアリスッ!」

「心配したのよバカァ!!バカバカァ…!このバカエアリスッ!」

「よく戻ってきた嬢ちゃん!」

「おかえりなさいっす班長!!」

 

ミリアリアの声を皮切りに揉みくちゃにされながら歓迎された。

 

「ね?言った通りでしょう?」

 

「うん…ありがとう…キラくん」

 

普通に感謝を述べただけだったのにキラに顔を背けられてしまった。

なにか気味の悪い表情を浮かべてしまっただろうか…?

 

「ッ…ズルいですよ…エアリスさん」

 

疑問に思っているとヤジが飛んでくる。

 

「うわぁ…エアリス…さらに人誑しに磨きがかかってるわね…」

 

「「「うんうん」」」

 

「えぇ…???」

 

変な反応を取られてしまったが一先ずそれを置いておこう…それよりも。

 

「(こっちから会いに行くよ、って言ったのに約束破ちゃったからなぁ…)はぁ…」

 

恐らく、と言うか必ず来るであろう親友達(ラクスとカガリ)に鬼詰めされる未来を思い浮かべた。

誰か助けて欲しい…なんて思うのを許してくれる時間があっても良いよねとエアリスは思うのだった。

 

しかしそれは…滅びへのカウントダウンを刻む針を進めるのと同義であった…

 

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