魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】 作:萩月輝夜
誤字脱字報告感謝&申し訳ございません…!
不足していたエアリス幕間回です。
※原作カップリングが好きな人はご注意ください。
ラクスとキラがエアリスに良くない感情をぶつけます(その描写入れてたと思うけど唐突すぎたか?)
あとここである意味で伏線回収…
前回のコメントで結構クルーゼバイバイしたの賛否ありましたねぇ…自分でぶっこんでおいて最終話に向け大変だこれ…
其では最新話どうぞ!
静寂の刻の中で
「僕は先に艦橋に。後で”エターナル”と”クサナギ”からラクスとカガリが此方に来るそうです」
「ああ…うん。分かったよ」
”アークエンジェル”に着艦し皆に出迎えられたエアリスは艦橋へ向かうためにキラと一旦分かれ通り慣れた通路を通りロッカールームに入りパイロットスーツから懐かしい白基調の通常の連合制服に着替えようとした…着替えようとしたのだが…。
「あれっ…!?キツい…なんで…?」
入ることは入ったのだがスカートはパツパツで悲鳴を上げており酷いところでは胸のボタンが弾け飛びそうになって服が「タスケテ…」と訴え掛けているような状況だ。
「これは…想像以上に…キツい…!」
(可笑しい…多少の余裕は前あった筈なのに…!体重は…まぁ微増しただけで太るような食事はしてないし戦闘でエネルギー消費してるのに…くぅ…!?)
一方で自分が
パンッ。
「あっ…」
やっぱり俺って…不可能を可能に…。
ボタンは限界を向かえ遂にエアリスの豊満な女性の象徴を押さえ込むことが出来ず弾けてロッカールームの壁に無重力の慣性に沿って流れ当たった。
ボ、ボタンーッ!!
沈黙、それを数刻ほどに感じる時間が支配した。
「…………仕方ない…こっちの制服着用するか……太ってない…私は太ってないもん…」
そう自分に言い聞かせた。と言うよりも自分のスリーサイズが成長したことに気がついて、というか忘れているエアリスはその勘違いのまま”アークエンジェル”に置いていた制服を壊してしまい着用できなくなってしまった為に一旦脱ぎ下着姿に戻り戻した後に持ち込んで機体に乗せていたアタッシュケースを開き予備の制服を取り出す。
「よいしょ、っと…」
制服を着用し圧縮されていたオーバーニーブーツを広げ履いた後、唯一身に付けることが出来る白衣に袖を通す。サイズはピッタリだった。
「…元には戻れない、ってことか」
無情だな、とそう呟いた後に制帽を被りロッカールームから出ると外で待っていたミリアリアとフレイに声を掛ける。
「…ごめん、お待たせ」
「遅かったじゃない、エア」
「…!!?」
「…?どうしたの」
二人に声を掛けるとこっちを見たまま固まる。そして白目を向いてぶつぶつと呟いた。
「此が格差かぁ…」
「なにを食べたらそんな風に…艦長より大きいんじゃない…?」
「大丈夫よフレイ…あんたのは大きいから…」
「それを言ったらミリィだって脚からお尻のラインは一級品よ…?」
エアリスは何を言っているのか理解できなかったが直感で失礼なことを言われているなと感じ咳払いをして二人を現実に召喚した。
「んんッ!…それじゃあ艦橋にいこう…って何で二人して私の両隣を…?」
「(見た目が変わったとしてもこの天然さは私たちの知ってるエアリスね…)ほら、案内して上げる」
「(変わってない…ううん。私はこのままのエアリスが好きだもの)行きましょう?」
ハッと我に返った二人はいそいそとエアリスの両隣を陣取る。距離がやたらと近いのは何故なのだろうか?
「あの…自分で歩け…ああ、もう…」
為すがままにされて連行(両腕にミリアリアとフレイが引っ付いている状態)され艦橋へのエレベーターに「どーにでもなーれ」の心持ちで乗せられるのであった。
◆ ◆ ◆
「よく無事だったわ…中尉、もう駄目かと…」
「いえ…此方も”JOSH-A”崩壊の知らせを受けた時は諦めていましたが…」
艦橋に上がり姿を現したエアリスの姿は彼女達の記憶の姿は大きく変化しており物理的に変わった見た目も相まって困惑する声が上がったがそれであっても目の前にいるのは
「ッエアリス!」
「このバカエアリスッ!」
「え、え?ラクス、カガリ!?ちょっ…おぼっ!?」
和やかな…雰囲気とは行かずにエアリス・A・レインズブーケは今ピンチに立たされていた。
何故か?それは”アークエンジェル”に到着したと同時に皆に見た目が変化してしまったことにも関わらず揉みくちゃにされながら帰還を歓迎され艦橋へ向かうと涙ぐみながらマリューさんに出迎えられノイマン少尉やパル伍長達にも「お帰り」といわれ此方も泣きそうになったのだが…。
到着したのを聞いたラクスとカガリがそれぞれの艦艇からすっ飛んできて艦橋へ続くエレベーターが開くと同時に泣きそうな表情になりながら突撃され抱きつかれた。
その際勢い余って艦橋のキャットウォークに激突して痛い…その後私の胸の中で泣いているラクスを抱き締めるようにしていると近くで離れようとしないカガリの姿をその光景を見てクルー達は生暖かい目で此方を見ていた。
「エアリス…」
「…ごめんねラクス。約束破っちゃったよ」
「いいえ…いいのです。貴女が…生きてくれていたことが…何よりも嬉しいのです…」
「…うん。また逢えて嬉しいよラクス…」
ラクスよりも大きくなった身体で抱き締める。胸の中で「あっ…」と言葉を漏らし為すがままにされているラクスを見て何時ものような”指導者”としての姿ではなく”ティーンエイジャー”としてのラクスをさらけ出していた。
人間らしい様子にクルー達は親近感を覚えていた。
「本当に…本当にエアリスなんだなッ!?生きてるんだよな!?足はついてるよな!?」
「だからそう言ってるでしょうが…カガリ」
「でもお前…その…見た目が…」
そして良くも悪くも捲し立てるように一本木感情火の玉ストレートな物言いは何時も通りのカガリへ逆に笑みを浮かべてしまう。
やっぱりその事を突っ込んでくるか…と説明しようにも少ししづらい理由があった。
「……」
キラの隣に立つパイロット…それがこの身体の成長理由でありヘイトが向けかねられない恐れを危惧したからだ。
視線を向けると会話から察した当の本人はばつが悪そうな表情を浮かべていたがここで説明しないわけにはいかなった。
「えーと…皆さん。この身体になったのには理由があるんです。…まぁ戦争だから仕方ない、ってことを念頭に聞いて欲しいんですけど…いいですか?」
そう告げるとここに集った四隻同盟のメインパイロット達は頷きエアリスの言葉に耳を傾け始めた。
◆ ◆ ◆
「…とまぁこんなものですかね?私が今ここにいる理由です」
何故見た目が変わってしまったのか?その理由を告げると全員が唖然とする。
ソロモン諸島での戦いの後
「だったら最初から言ってくれれば…」
「だから言ったでしょうカガリ…軍上層部は”ブルーコスモス”が発言権を握って為すがままになっている、って。それを阻止するために理事が極秘裏に動いてハルバートン提督に掛け合って【B.L.U.E.M】を結成したの。上を牛耳ってる奴の悪どい証拠を掴まない限り軍事法廷に持っていけない。極力知る人間は少ないといけないし」
「むぅ…」
納得の行っていないカガリであったがそれが彼女の良いところでもあり悪いところだ……それはさておき。
途中エアリスは最初アスランの事をボロクソに扱き下ろしてやろうか、と考えていたが彼の表情を見てそれが霧散した。
そもそも自分とアスランが戦ったのは
故に、「仕方がなかったのだ。戦争だから…気にする必要はない」と付け加えた。
”アークエンジェル”クルーはアスランに思うところが少なからずあるにせよその一言と”戦争”と言う舞台装置がそう言うものを引き起こしてしまったのだと理解していた為にチラリ、と視線を集めるだけでどうこうしようと言う反応はない。寧ろその一言がより強い結束に繋がった節さえ感じられた。
その後艦橋で事の経緯を語った後に格納庫へ向かう。
今艦橋ではマリューやナタル、そしてアズラエル達が今後の策について講じている頃だろう。
「懐かしいな…」
懐かしい、と思うのは”アークエンジェル”が自分の家のように感じているからだろうか”ダガー”が納められていたハンガーには今”ディスペアー”が収まり本来搭載される筈だったXナンバーも形を変え従来の運用想定の機体が納められていた。
視線の先には自らを撃墜した”イージス”と”M2アストレイ”のミキシング機体がありなんとも言えない気持ちになる。
「…ん?」
見上げていると誰かが近づいてきてるのを感じとり振り返る。
「すまない、少し…良いだろうか?」
「アスラン・ザラ…どうしたの?」
振り返った背後にはアスランがいた。彼の表情は苦々しくいて申し訳なさそうな雰囲気が漂っていた。
「話が…したい。エアリス・レインズブーケ」
やっとの思いで吐き出したであろう言葉を切り捨てるのは簡単だがそうはしない。
プライドの高い男の決断を…義に重い男の決意を無駄にはしたくなかった。
「…いいよ」
二人は”ジャスティス”の前に立ち会話を始める。
「アスラン…とエアリスさん…?」
その光景をエアリスを追ってきたキラが格納庫に入ったときに気がつき思わず物陰に隠れて様子を伺ってしまう。
彼女が生きていたことでアスランに対する憎悪は消え去っていたが先ほど艦橋で彼女が「許す」という発言をしていたがキラとしてはアスランに謝罪の一つでも…と彼は親友の行動に一言あったのだが。
対峙するその光景を見て邪魔するわけには行かないとキラはその様子を固唾を飲んで見守った。そして格納庫には不幸中の幸いか当直の保安兵と整備兵の姿は見えなかった。
「…………」
「なに?」
沈黙が支配していたがエアリスは耐えきれず…というよりもそちらから声を掛けたのに切り出そうとしないアスランへ苛立ちながら問いかけた。
「あ、ああ…すまない…その…」
エアリスは切れた。アスランのもどかしいその反応に。
「はっきり言う。後、目を逸らさないでくれる?」
「ッ…!」
格納庫に響く大きく…とは言えない粗雑にならない程度の少女の凛とした声色は身体に響くような芯の通った声でありアスランの迷いを吹き飛ばすには十分であった。
「すまなかった…キラと…ニコルやディアッカの件も…君に大ケガを負わせたことを…」
「ああ、その事…」
その言葉を聞いてエアリスは今までの出来事を文句言われるのかと身構えていたがそれではなく”謝罪”であり拍子抜けしてしまった…と同時に胸の奥にパチリ、と炎が弾けた。
思わず語気が荒くなってしまうのを自分でも認識していたが
「お前、何のために戦ってる?」
「え…?」
アスラン、とは呼ばず”お前”と呼ぶのはエアリスが
謝罪?それはさっき艦橋で「許す」と言ったばかりでありそれを蒸し返されるのは彼女にとって複雑で怒りを覚える。
選ぶ未来のために戦った”結果”がそのように行き着いただけでやりたいことをやった”結果”でその果てを他人に「ごめん」や「すまない」で現されるのは我慢ならなかった。此方は許しているのだ。さっさと受け入れろ、と…。
「自らの理想に殉じて戦ったもの…女や男…大切なものを守るために戦う戦士の”それ”をお前は”謝罪”という無礼な言葉で踏みにじるのか?」
「…ッ!」
突如として目の前の少女からは想像できないほどに強い言葉にアスランは愕然とする。
「お前も”その軍服”に信念に殉じて…同胞や”ユニウスセブン”を思って戦ったんだろう…?私もキラくんやアークエンジェルを守るために戦ったんだ。それに私はお前に討たれる理由があった。”敵だから”…お互いのエゴがぶつかり合うのは仕方ないんだ…”戦争”なんだもの。」
「君は…」
「当事者が許す、って言ってるんだ。それでいいじゃないか」
そう言ってエアリスは笑って見せてアスランに手を差し伸べる。
「それにもうこの”殺し合い”を止めさせようって此方に参加したんでしょ?それとも可笑しな真似したら討つって意味で連合所属の私の手は取ることは出来ない?」
そう告げるとアスランは強ばっていた表情を解きほぐし「参った」という表情を浮かべた。
彼女は敵も味方も越えて自らの限られた”世界”を守るために戦っている…それが結果的に世界全体に広がっているのだ、と…それは人の意思を動かしラクスと同じように同志を集わせた。
「…成る程な。此じゃキラやラクスがお前に夢中になるわけだ…」
「???」
「確かに俺は…仲間を討ち…キラを無理矢理戦わせている最悪のパイロット…”彗星の魔女”を憎んでいたでもそれは違った。君も理想や守りたいものの為に戦っていたことを俺は…自分の理想を君に押し付けていたようだ」
「だから言ったでしょ?”戦争なんだ”って」
アスランは真っ直ぐにエアリスの碧眼を見つめる。エアリスの瞳にもアスランの鮮やかな緑が映る。
「…”すまない”、じゃなくて”ありがとう”だな…よろしく頼む。エアリス」
「此方こそ。よろしくしてあげるよ。アスラン・ザラ?」
お互いに歩みより差し出した掌を交じり合わせ握手…
(アスラン…)
「心配は…無さそうですわね」
「ラクス?」
「ほんと…どうなることかと思ったが…心配いらなかったみたいだ」
物陰に潜みその一部始終を確認していたキラは事の成り行きを見守り円満に…と言った感じに満足していたのだがそれを除き見ていたのはキラだけでなくひょっこり姿を現したラクスとカガリも彼らの仲を気にしていたようだった。
…するかと思われたが、握られる筈の掌は拳となる。
笑顔でエアリスはアスランへ
「まぁ…それはそれとして一発殴らせろ。乙女の柔肌に鉄片刺さった治療費代わりに、ね♪」
「…え゛っ!?」
エアリスは腰を落としプロのボクサーも惚れ惚れするような左ストレートが炸裂し格納庫にはケジメの一発とは思えない程の綺麗な音が鳴り響いた。
それは
◆ ◆ ◆
「NJCのデータを入手した…というのは確かに大手柄だよウィリアム君…しかしだね…」
先の脱走艦追撃作戦にて思わぬ
地球連合軍は地上での総司令基地を失った後にグリーンランドに設置された地球連合司令本部の会議室で彼らは入手したNJCのデータの使用方法を話し合っていた。
「核で”プラント”を総攻撃…というのは…」
意見を求められた高級将校の一人は否定的な言葉を発し。
「其よりも深刻化している地上のインフラ復旧とエネルギー問題を解決すべきではないか?」
「このままではユーラシアでは凍死者が出てしまう。戦争をするのは良いが先ずは地固めが優先を…」
「国内の治安を安定させるが優先だろう…厭戦気分も出ている地域もある。そんな暇は…」
まるで問題を先送りにするかのように、ボソボソと議論を続ける彼らに対してサザーランドはバン、と机を強く叩いた。
「何を仰有っているんですか皆様は!この期に及んで!」
サザーランドは権力を貪る首脳陣の姿を一周回って見回す。皆愚図ばかりだ。撃てるときに判断を出来ずに躊躇い此方が敵に撃たれたらどうするつもりなのだ?人間同士が戦っているのならいざ知らず、我々が戦っているのは
「撃つべき時に撃たなければ勝てませんよ!敵は人間ではない。
「いや、あれは君たち
そう一人の将校が呟くとサザーランドは呆れたような表情を浮かべ手を上げる。
すると議場の扉が開き武装した兵士がその発言をした将校を乱暴に連行していってしまったその光景を見てしまったこの場に集う将校は口をつぐむ。
やはり、私が決断し撃たねば…この戦争は終わらない。そう自分がまさに全てを決定する万能の神にでもなったつもりのサザーランドは声高に告げた。
「核は持っていて嬉しいコレクションではない。撃つべき時に使う”兵器”です!高い資金を投じて作成した兵器をショーケースに飾っている場合ではないのです!」
躊躇う理由はどこにもないだろう?躊躇えば此方がやられてしまう…向こうは
「長引けばそれだけ国民の不満は高まります…さっさと討ってさっさと終わらせましょう…こんな戦いは」
議場に集う将校達は誰一人として反対意見を出さなかった。いや、
◆ ◆ ◆
「…」
「…」
”アークエンジェル”の展望台にて二人の少女は佇んで言葉を交わすこともなく外に広がる宇宙を見ていた。
静寂が支配していたが動いたのはピンク色の少女だった。
「ラクス…?」
突如として手を握られて驚くエアリスだったが次の言葉は予想だにしなかった。
「わたくし…エアリスの事が好きですわ」
「………えっ…?」
「親友として…一人の人間として……キラと同じくらいに」
「どしたの突然…?」
「キラから貴女が討たれた…と聞いてスゴく悲しかった…」
ラクスの目尻に涙が溜まるのを見て指で涙を掬い上げるとその手を取って頬に当てた。
「わたくしは…初めて人を怨みました…アスランを…」
彼女は自分の心情を吐露する。
こうして自分の心情を…醜い部分を晒してくれているのは信頼してくれている証拠なのだろうとエアリスは記憶にある彼女はこんなことを言ったことはなかっただろう。
「まぁ…戦争だし…仕方ないよ…まぁ…アスラン…だし?」
自分でも酷いこと言ってるなぁ…とは思うが仕方がない。アスランだから。と言い聞かせる。
しかしそう告げるとラクスはエアリスの胸に飛び込み顔を埋める。
「エアリスのせいです…」
「えっ…!?」
ぼそり、と呟かれた言葉に驚いたエアリスはすっとんきょうな声を上げる。
「わたくしが…こんなにワガママになったのは…エアリスのせいです!」
「何で!?」
がばり、と顔を上げて上目使いで続ける。
「エアリスも好きでキラも好き…両方を愛しているのに片方が悲しそうな顔をしているのは嫌です…両方ともわたくしのものになってください!」
実質告白だった。
「存外めちゃくちゃだ!?え、ラクス…?私達”女の子”同士だよ…?」
大胆すぎる告白は女の子の特権だった。
「構いません。」
凛としたその返答にエアリスは頬を掻く。同性であったとしてもラクスの美貌はドギマギしてしまう程には美しくそんなことを言われてしまえば自然に頬が熱くなる。
「そ、そんなこと言われても…ほら、女の子同士ってのは世間体が…」
「エアリスは…私の事が嫌いですか?」
そう問われてエアリスは否定する。嫌いな筈がない。
「き、嫌いなわけ無いじゃない!寧ろ…好きなまである…」
言葉尻が小さくなったのはそう宣言するのが恥ずかしくなったからだ。
ラクスの言っていることは即ち…。
「では…キラは?」
「えっ…?」
突然に差し込まれるキラの話に脳がフリーズを起こす。何故ここでキラくんの話を…?
「貴女にとってキラはどういう存在ですか?親友?戦友…?其とも…一人の男性として?」
「キラくんは…」
そこで言葉が止まってしまう。
考え事など無かった。
キラは自分が守るべき存在で戦いから遠ざけようとしていた…でも其は叶わず戦争に巻き込んでしまったことを後悔していた。
「キラくん…は…」
その後、戦場で再会し刃を交えることになって心が痛んだ。
そして”メンデル”で再会したとき…心からナニかが溢れだしそうになって泣きそうになった。
あの感情は「嬉しい」だったんだろう…と。
エアリスはいつの間にからか胸から離れていたラクスがいた場所に手を添える。
でもその感情を理解したその瞬間…エアリスの顔は瞬間給湯器のように真っ赤になり湯気が上がった。
「はぅッ………!?」
私が…キラくんの事が好き…?
その事実を飲み込むとラクスは微笑んで今度は逆に抱き締められた。そして爆弾発言である。
「この事は既にキラへ告白済みです。『後は貴女さえよければ…』とお話を頂いておりますし」
「外堀埋められている…!?え、待って?キラくんが私の事…好きなの?」
初耳だった。キラくんが私の事好き…!?
そう告げるとラクスは「え、マジかこの娘…」みたいな目で見てくる。いや、だって弟みたいに見てたし…えぇ…?
「気付いてなかったのですか…?」
「え、あ、ああぅ……!」
これまで行ってきたキラへの”慰め”…思い出すだけで顔から火を吹きそうになる。
(は、はずかしぃ…!?)
言葉にならない言葉を漏らし様々な表情を浮かべるエアリスを見てラクスは楽しそうにしている。
「勿論第一夫人はエアリスですが…」
「何でよ!そこはラクスでしょう!?」
「私はキラとエアリスがラブラブしているのを側で見ていたいのです!その間に入りたいので…キラが最初に好きなったのは貴女です。私はその後好きになったのですから二番目で…」
「なんでそこだけ律儀なの…!?ああ、もう…!」
「諦めてください。わたくしとキラは貴女を手に入れるために手段は選びませんので…」
ある意味で不毛な言い争いが続いたのちにエアリスは両手に花状態となった。
◆ ◆ ◆
”アークエンジェル”の嘗ての自室にて腰かけるエアリスは天井を見上げていた。
「……」
ー私は”エアリス”だ…!存在する限り…私は”貴方その者だ!”…だから姉さん、貴女を殺す…!私が私であるために!
「エミリア…」
”メンデル”で妹…という存在である”エミリア”から告げられたその言葉が脳内でリフレインしている。
「そんなこと…突然…言われたって…」
自分と血を分けた存在…というよりも”自分自身”である者が妹の記憶を引き継いでいるということを考えれば考える程に憂鬱に、悪い考えに走りそうになってしまう。
「どう考えたって…私の言葉が伝わりそうにないんだよなぁ…」
自分の半身、と言うわけではないが性格は恐らく
「双子の妹…らしいからね。はぁ…全く」
イヤになる。くそったれな世界だな、とは……言えなかった。ぐるぐるし始めた思考を唾棄させるようにその事は頭の片隅に追いやって秘めておくことにして別の考えようとしたその時丁度中断するように備え付けのブザーが来客を知らせる。
<エアリスさん…いますか?>
聞きなれた声…キラの声が室内に響くと先程ラクスの話を聞いて心拍数が上がるのを感じて声が上ずった。
「え…!?ああ、うん。ちょっと待ってて…!」
制服を着崩していたので襟首を止め直して「…どうぞ」と促すと自室の扉が開く。
そこには声を掛けてきた人物がいて招き入れベッドに腰かけるように勧めるとキラは自分の近くに腰かけた。
「…どうしたの?」
「……」
なかなか話そうとしないのに痺れを切らした…訳ではなく話の導入のために声を掛けると切っ掛けが作られてキラが口を開いた。
「…僕は…生まれてきてもよかったんですか…?」
「キラ…?」
「キラくん突然何を…」
唐突な発言に困惑するラクスを他所にエアリスは”メンデル”でのクルーゼとの会話を知っている。
しかし、それを指摘するのではなく彼の口から語られるのを待った。
知っている知識は”テレビ”で見るようなものであり実際に本人から語られる”事実”は感情が籠っていた。
キラの口から語られる”真実”。
自分が”クローン”…数多の犠牲、失敗の末によって産み出された”スーパーコーディネイター”…自分がそんな屍の上に立っていることに悩んでいるようだった。
「……」
確かに…とエアリスは思う。
彼の両親であるユーレン博士は自らの子供に”最高の才能を発現できるようにコーディネイター”に仕立て上げた…それは子供の未来を思っての事だし悪いことだとは思えない。寧ろ素晴らしいことだ、とは思うが…”時代が悪い”とし
か言い表せないだろう。
現実は非情である。
眠っていたキラの才能は”戦争”という極限状態でその”種”が芽吹きその成長性は著しく”戦闘”におけるスキルツリーが伸びてしまったのだ。
平時であれば”学業””技能””科学”…と全てにおいて頂点を目指すことが出来ただろうがそれを”世界”が許してくれない。
殺戮という一点にその力は振るわれる…キラの力は平時…いや
自分の存在が”呪われている”と告げたあと項垂れるように視線を膝に落としているキラの握りしめている拳にそっと手を重ねながらエアリスは自嘲した。
(ずるいなぁ…私…傷心に漬け込むとか悪女のやることだよこれ…)
掌を重ねられて顔を上げるキラの表情を見てそう思う。
成長し確かに強くなったとは言え突然の真実を突きつけられ飲み込めるほどまだ成長しきっていない少年の顔はまだまだあどけない。キラへ対して込み上げてきた想い…それがなんなのかエアリスは分からなかった。
「私はさ…キラくんに生きていてくれて嬉しい、って思うよ」
「えっ…?」
”アークエンジェル”から離れ生活しているときに皆の事は片時も忘れたこともない。
一際逢いたい、と強く想っていたのは”キラ”であり”メンデル”で攻撃を受けて救われたときに一層それが強くなったのを感じてまるで試すような言葉をキラへ向けてしまう。
「キラくんはどうだった?…私が生きていてくれたこと………その……嬉しいって思った……?」
エアリスは頬を少し紅く染めながらそう問い掛けるとキラも当てられたのか顔を紅くして微笑みながら回答した。問い掛けられたその質問を意図を理解して。
「あの時…アスランに討たれた時スゴく悲しかった……でも”メンデル”で生きて戻ってきてくれた時…僕は…スゴく嬉しかったです」
キラはエアリスの問い掛けに対してちゃんと答えた。
『生まれたからこそ望まれているのではない。望まれたからこそ生まれてきたのだ』
お互いがお互いを望み望まれて生きている。優れている劣っている関係なく不要な存在などいないのだ、と…。
例えキラはエアリスがコーディネイターだとしても必要とするしキラがナチュラルだとしてもエアリスは必要とするのだから。
「そ、そっか……ふはは…あははっ」
「ぷっ…はははっ」
お互いが顔を見合わせて笑い出す。確かに世界があるべき理想の姿は二人が示していた。
ナチュラルがコーディネイターも関係なく手を取り合いお互いが尊重しあう…そんな世界を。
◆ ◆ ◆
一隻の民間船がデブリベルトへ向かい航路を取る。
操縦席にはエアリス、そしてアスランがいた。
潜伏している四席同盟の艦艇から離れた民間船が目的へ向かい航行する。
少し、付き合ってくれない?エアリスのその一言から始まったそれはアスランを引っ張り出した。
「何処へ向かっているんだ?俺たちはこんなことを…」
している暇はないだろう?と不満げなアスランを宥めるようにエアリスが返答する。
「良いから。アスランに会わせたい…人がいる」
「会わせたい…?一体どういう…」
意味が分からない、といった感じなのは仕方がない。その事情を知っているのは自分だけで数年後”それ”が地上に落下する、何て言ったら頭の病気を疑われてしまうだろう。
…この行為も既に頭が可笑しい案件だろうけど。今回は完全に自分のエゴだ。
「…正直。余計なお世話だとは思うけど。今のうちに会っておいた方が良い。必要ならこっちで手配するから」
「???何を…」
「見えてきたよ…」
そう告げ窓の外を指差す。それを確認したアスランは目を見開いた。
コーディネイターにとっては墓標でありモニュメント…全ての
「”ユニウスセブン”」
◆ ◆ ◆
画面の向こうにいる女の意図が分からなかった。どうして今ここに俺を連れてきたのか。
その理由を考えれば考えるだけ分からなくなり苛立ちが募っていき粗雑な問い掛けになる。
「どういうつもりだ?俺をここに連れてきた返答次第では…」
只じゃおかないぞ、と言い切る前に通信越しに伝わる此方の明らかな不愉快そうな声にエアリスは平坦な声で中断させ返答する。
<来れば分かる。…大切なことだ>
共に”ディスペアー”が索敵をしながら進み”ジャスティス”のレーダーには熱関知するものはなく周囲には撒き散らされたデブリが広がっているだけで敵の反応はない。眼下には自分達コーディネイターの生まれ育った大地が朽ちて広がっているのを確認しアスランは顔をしかめた。
ここに母が…同胞が眠っている…
そう考えるだけで胸が締め付けられる。
事実崩壊した母なる大地に近づき周囲を警戒しながら着陸すると亡骸が漂っているのを確認しそれが強まる。
ふと、”ディスペアー”の動きが止まり通信が入る。
<謝罪しておく。すまない…>
「なに…?」
<覚悟をしておいてくれ…お前にとっては辛い再会になる。でも…ここの寂しい空間に取り残しておくのは私は…出来なかった>
「何を…言っている?」
<行こう。”彼女”が待っている。>
そう告げ通信を切られると”ディスペアー”バックパックの一部がパージされ人一人が入れるような容器が下ろされその後ハッチが解放され宙間制御用のスラスターを装着し降ろされた箱を持っていき眼下にある建物内部に入っていく。
「ちょっと待てッ…なんなんだ一体…!?」
先導する彼女を追いかけるために急いでスラスターを装着し念のために持ってきたアサルトライフルを装備して”ジャスティス”のコックピットを開き建物内部へ入っていく。
「………」
ひどい有り様だった。
”核”での爆発の衝撃で建物内部は破壊され嵌め込まれたガラス、備え付けられた戸棚やロッカーからは物が飛び出し壁や床が崩壊している。
その中に浮かぶのは白衣を着た研究員が物言わぬ置物と化しているのを見て思わず拳を握りしめてしまったいた。
「着いた。ここだよ」
いつの間にか先行していたエアリスに追い付いたらしくとある一室の扉の前で立ち止まっていた。
部屋の主を示すネームプレートは風化してしまっている為か消えて分からない。
「……」
到着したのを確認したエアリスは扉を開き室内に入っていくのを着いていくと外と同じく荒らされていた。しかし一区画は少しだけ片付いていた。その奥に敷かれたマットレスの上によく知る人物が横たわっていた事にアスランは目を見開きその言葉は震えていた。
「はは、うえ……………!」
目の前には眠っているかのように見える安らかな死に顔の実母レノア・ザラが横たわっている。
その見姿は記憶にある優しく美しい当時のままだ
アスランは横たわる母へ近づくと後ろに控え”ディスペアー”から降ろした機材の操作をしながら説明し出した。
「…彼女を見つけたのはお前達が襲ってきた”へリオポリス”から出港した後攻撃を仕掛けたとき食料庫を壊されて私たちは資材入手の為にデブリベルトへ逃げ込んだんだ」
”へリオポリス”襲撃時にそんなことをしていたのか…?とアスランは驚く。
資材を失って補給するために破棄されたものが集まるデブリベルトに…?と思っているとエアリスは「お前達が攻撃を仕掛けてきたからだろうが…」と突っ込まれ黙ってしまう。
「その際に水は見当たらずにデブリの仲間入りしていた”ユニウスセブン”が見つかった…あそこには1億トン近い水が凍りついていたから」
「墓荒らしか…」
「否定はしないよ。でも…私たちはあの時必死だったから」
アスランの辛辣な言葉をエアリスは「そうだな」と言って肯定する。実際に自分達もその状況に後がなければそうしていたかもしれない。
「そこで私は周囲を捜索していたとき……ここで彼女を見つけた。”ザラ”なんてファミリーネーム早々居ないしそこにある写真立てを見て後で分かったことだけどお前のお母さんなんだ、って理解した。………お前の事はキラくんから聞いていたしそうなんだろうなって」
エアリスは咄嗟に最後に一文を付け加えた。その頃キラからアスランの事を聞いていない為でありその事に対して反応していないようで胸を撫で下ろす。
しかしアスランは別の疑問を浮かべる。
「何故…そこまでするんだ?」
単純な疑問だった。
当時敵同士で”殺し合う”仲だった筈で其の親族の亡骸を見つけたところで無視している筈で其をどうして今合わせるような事をさせたのか?
その回答をエアリスは告げた。
「?そうしたかっただけだけど?」
「は………?」
「だからそうしたかっただけだって。この時代、遺族の元に”遺体”が戻らない事が多いんだから。戻せるなら戻した方が良いでしょ」
何を言ってるんだお前?と少し小馬鹿にされた感じがしたアスランだったが「確かに」と納得してしまう部分もあったのは自分の何時敵の攻撃でその身をこの世から物理的に”消え去る”可能性もある。
彼女の言い分はもっともだった。
「どうする?彼女のご遺体…回収してお墓に納められるように此方の方で手配するけど」
「…ああ。頼む」
この寂しい場所で母を置いていくことは出来なかった。
其に今暴走している父を…母と一緒なら止められるかも知れない。
眠っている母をエアリスと共に運び込みコンテナに収容していると最後に彼女が呟いた言葉はアスランの頭の片隅に引っ掛かった。
ー…声が聞こえたんだ。其はもう見知らぬことは出来ないじゃないか
声が聞こえた…どういう、と問い掛けようとしたが彼女の雰囲気に当てられてアスランは声を掛けることが出来なかった。
レノアを乗せたコンテナを”ディスペアー”の背面バックパックに搭載し機体を起動させ停泊させているシャトルへ向かい飛翔する。
その道中でアスランはエアリスへ通信を繋げた。
「…ありがとう」
「…きにするな」
短い言葉を交わしシャトルへ帰投すると通信機のランプが点滅しているのに気がつき機材を操作するとアズラエルの声が入る。
ー連合軍が進行を開始した。
即ち、束の間の平穏は終わりを告げるを意味していた。
急ぎ二人は四隻が集う場所へのランデブーポイントへ急ぐ。
最終章への幕が上がる。
終焉の光が世界を照らし人類終了のカウントダウンが刻まれるのだった。
物語は最終章へ…!