魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

48 / 53
前回の話賛否多かったなぁ…すみません。エアリスのキャラ崩壊とかラクスが若干別時空のキャラになってたりとかして味変わったからですかね?

感想高評価お気に入り登録ありがとうございます。
誤字脱字報告申し訳ございません…。

あと少しで完結予定です。
よろしくお願いします。

其ではどうぞ!!


悪夢は甦る

パトリックは頭を抱えていた。

重用していたクルーゼが”エターナル”追撃作戦中に殺害され、あまつさえ試験運用中だった”Pプロヴィデンス”が奪取されてしまった事だ。

 

「……」

 

不幸中の幸いだったのが”Pプロヴィデンス”はNJC搭載前のバッテリー駆動であるために連合に利用される心配は一先ず無い事だろうか。

しかし、まだ問題は山積みでありシーゲルとその娘は行方知れずであり”プラント”に残ったクライン派は拘束したため反乱は起こっていないが、英雄”クルーゼ”が死んだ、というのは軍兵士達の指揮低下が心配される…実際に其は引き起こっており戦局を不安視する声が上がっているが大々的なプロパガンダをエザリアに指示しなんとか持ち直していた。

 

そして…息子であるアスランも自分を裏切りクライン派に付いてしまった事に顔をしかめた。

自分が間違っていると言うのか?”ナチュラル”と手を取る?バカな!奴らは鬼子であり”ユニウスセブン”を…レノアを殺した…!許せる筈がない…!

 

ー地球にも”コーディネイター”を受け入れる”ナチュラル”はいます!その逆で”ナチュラル”を受け入れる”コーディネイター”がいることも!それら全てを滅ぼしてしまったら俺たちは分かり合えない!その事すら忘れてしまったのですか父上!!俺の母上が…貴方が愛した女性はそんな世界を望む筈がない!!ー

 

パトリックの脳内にアスランの言葉がリフレインするが眉間を指で押さえ霧散させた。

間違っているのはあのバカ息子だ…!”ナチュラル”を葬れば私やアスランのように親愛なるものを失わずにいられる世界が来る筈なのだ…だからこそ”ナチュラル”は滅ぼさなくてはならんのだ…!

 

思考を切り替え歩きながら秘書官の報告を受ける。再びパトリックの表情にシワが刻まれた。

 

(月連合基地に動きが…おのれナチュラル共め…!)

 

連合が有する月基地に活発な動きがあるのを報告を受けていた。

実際にビクトリアのマスドライバー”ハピルス”が奪還されてから続々と戦力が上がってきている。

そして再び其が活発になってきているのを確認したパトリックは防衛戦の一つである”ボアズ”へ防衛命令を出して戦闘配備を整えていた。

 

近い内に”プラント”を標的とした大規模な軍事行動があるとパトリックは踏んでいた。

不確定要素はあるが手は未だある…一部の将官にのみ伝えている”戦略兵器”…其を動かすことも厭わなかった。

 

勝つのは我々だ…野蛮な力を振りかざすナチュラル共…貴様達を葬り世界を導くのは叡知を集結した我々、”コーディネイター”だ…!

 

◆ ◆ ◆

 

「”ボアズ”への進攻が始まっただと…!?」

 

イザークは”エターナル”追撃”に失敗してから二ヶ月。プラント”本国のザフト軍司令本部の宇宙ステーションへ配置換えとなり新たに部隊を預けられ”ジュール隊”を結成し本国防衛のエース部隊として扱われていた。

知らせを受けブリーフィングルームへ飛び込むと部下の一人が「ジュール隊長!」と不安げな声を上げて迎え入れ近づいてきた。

 

”ボアズ”は元々は連合の資源衛星を奪取し軌道上に設置し改名されたもので今は”プラント”の”ヤキン・ドゥーエ”と並んでの二大防衛拠点の宇宙要塞として運用されていた。

そしてその”ボアズ”に対して今、連合宇宙軍が侵攻に向かっているとのことだ。

 

連合のプラント本国への侵攻は予てより噂されていたことだったが未だその機ではないと…その矢先にというその行動は浮き足立たせるのに十分すぎる動きだった。

 

「くそっ!ナチュラルどもめ…!」

 

「状況は…敵の規模はどのくらいなんだ…!?」

 

「隊長、我々も出撃ですか?」

 

隊員の一人がイザークに尋ねる。

 

「落ち着け。命令あるまで待機だ。未だ状況も分からんしな」

 

「ですが…!もし万が一”ボアズ”が落とされたりでもしたら…!」

 

「馬鹿者!そう易々と”ボアズ”が落とされるものか!」

 

入隊したばかりの新兵を思わず怒鳴り付けてしまったことに自らの短気さを後悔するが、既に遅く怒鳴り付けられた新兵はビクリ、と竦み上がっていた。

その事に対してイザークはリカバリーする言葉をぶっきらぼうに放った。

 

「ふん、”ボアズ”の連中は活きが良いからな。俺たちの援護など要らんと突き返されるかも知れんぞ?」

 

「ああ、そうですね!」

 

その言葉に後ろにいる兵士達が笑い声を上げると問い掛けてきた兵士はホッと胸を撫で下ろすように安堵していた。

”ボアズ”が陥落する筈がない…そう信じたい心と”メンデル”でクルーゼが乗っていた試作機体…あれにはテスト用の動力が積まれていた…と聞かされたが奪われ失ったことへの不安が彼の心を支配したが表情には出さずに”隊長”としての役割を演じることにしたのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「ザラ議長閣下!」

 

「狼狽えるな!月艦隊の”ボアズ”侵攻は想定外ではなかろう!」

 

パトリックが自らの執務室に秘書官と側近を連れ入室すると動揺している評議会委員へ叱責の言葉をぶつける。

室内にはザラ派筆頭のエザリア・ジュールと他数名の評議会議員と死亡したクルーゼに代わり腹心もとい盟友でもあるヤキン・ドゥーエ第一防衛艦隊司令官でもあるメイア・シヴァがそこにいた。

 

彼女もまたパトリックと同じく”血のバレンタイン”で家族を失っておりナチュラルへの憎しみは深い。

 

「…全軍への召集は?」

 

「全軍完了しております」

 

「報道管制…」

 

「はっ、既に…」

 

問い掛けにきびきびと返答する管制官を見てパトリックは何もかも自分の()()()()であるなーー。

そう思い心を落ち着かせるとその姿に動揺を見せていたエザリア達も落ち着きを取り戻していった。

 

宙域図をスクリーンを出力すると月より出撃した連合の艦隊が第一次防衛ラインである”ボアズ”…そして最終防衛ラインである”ヤキン・ドゥーエ”が。そして最終防衛である”プラント”が示される。

 

「…ザラ閣下」

 

「なんだ、シヴァ?」

 

不意に信頼する同志へ視線を向ける。

彼女は彼の視線を受け遠慮がちに、しかし彼と彼女は対等であり臆すること無く口を開いた。

 

「…”ボアズ”侵攻が容易でないことを地球軍は承知の筈です…何の勝算もなしに侵攻を開始したりはしないでしょう…其に、”今”というのが気になります」

 

神妙そうな顔で執務室のデータスクリーンを見上げるメイアを見て弱腰と判断したエザリアが強い口調で言い放った。

 

「おおよそ例のモビルスーツ部隊と新型GATシリーズであろう?其で連中は陥とせると踏んでいる…”ボアズ”をな!」

 

ナチュラルをバカにした言い方でありその考えにはメイヤも賛同出来たが彼女は”軍人”であり最悪の事も想定しておかなくてはならない立場にある。

現場を見ないエザリアに若干の含みを持たせて返答した。

 

「そうであれば良いですがね…」

 

「何が言いたい。シヴァ?」

 

その発言にパトリックは眉をひそめる。明らかに不機嫌な声色だがあり得る可能性をここで飲み込むわけにはいかないのは全てが”手遅れ”になる可能性があるからだ。

 

「ザラ閣下。我々には幾つかの不安要素があります…」

 

周囲を見渡した後、声のトーンを一段落とし告げた。

 

「…”フリーダム”、”ジャスティス”…”Pプロヴィデンス”そしてクライン派閥…」

 

其に皆息を飲む音を聞くのと同時に彼女が仄めかした言葉にパトリックは自らの足元が崩れるような感覚を覚えた。

 

「まさか…!…奴らの手に再び核が戻ったと…そう言いたいのか!?」

 

そう問われメイヤは否定したかったが最悪のケースを想像できる”不安要素”が多すぎる。

核動力モビルスーツの奪取に最新の技術が盛り込まれた試作機…穏健派の離脱…それらが結び付き地球軍が再び”核”の力を手にしたのではないか、と……そして英雄クルーゼの死亡というザフト軍の士気の低下等…指揮官として懸念されていた。

 

「よもや、とは思いたいですが…最悪の事態、想定しておかねば…」

 

◆ ◆ ◆

 

<作戦行動エッジオブワン…展開フォーメーションはシシリアンスリー…以後指示は方面ガスト暗号によって伝達される。全機、ナチュラルどもの細胞を真空にぶちまけてやれ!>

 

とんがりボウシのような小惑星である”ボアズ”の前面は既にザフト艦隊とモビルスーツ部隊が展開し、月から出撃した地球軍艦隊は突破を目指し侵攻し始める。

連合軍艦艇より出撃した”ストライクダガー”と各種ストライカーパックを装備した”01ダガー”と前面に展開していたザフト軍と衝突し戦端が切って落とされた。

 

”ジン”、”シグー”…そして新たに配備された緑色を基調とした”ゲイツ”は装備したXナンバーより得た技術で製造されたビームライフルを放ち接近する”ダガー”と”メビウス”を撃墜していく。

同時に”ジン”が手にした<キャットゥス無反動砲>を”メビウス”に乗り掛かるように接射し撃墜していった。

 

<くっ…こんなちゃちな人形で…>

 

”ジン”目掛け”ストライクダガー”の持つビームライフルが放たれデブリの仲間入りを果たすことになり、逆に連合軍の艦艇は”ジン”と”シグー”の攻撃に晒されエンジン、艦橋を潰され艦艇が一つ、また一つと真空の宇宙へ炎の華を開花させ轟沈していった。

 

<パナマで散っていった戦友の弔い合戦だ!>

 

<くたばれ宇宙の化け物ども!!>

 

兵器の威力と数…其は連合軍のモビルスーツ”ダガー”達が装備するビームライフルと後方より援護する”01ダガー”隊が装備する<ランチャーストライカー>の威力は凄まじくザフト軍艦艇も大きな被害を受けていたがモビルスーツへの操縦へ一日の長があるのか突破しようとする連合軍モビルスーツを続々と破壊し通行を阻止するが数機の”ダガー”が隊列を抜けていき突き進む”ダガー”部隊は”ボアズ”の対空砲火とモビルスーツ達の攻撃に晒され宇宙の藻屑となる。

 

<調子に乗るなナチュラル風情がッ!>

 

<ボアズ守備軍を舐めるんじゃねぇ!!>

 

威勢良く吠え猛烈な攻撃を仕掛ける”ボアズ守備隊”。

 

<敵艦隊左翼に展開!>

 

<ムーア隊、チェリーニ隊より支援要請!>

 

<砲火を左翼に集中させい!支援にはネエル隊を…>

 

<ネエル隊、発進は五番ゲート…>

 

”ボアズ”管制室ではオペレーターによる報告がけたたましく知らされ基地司令である男性は的確な指示を飛ばす。

想像より早い侵攻に戸惑うものもいたが戦端が開かれればそうも言っていられない。

 

「このボアズ⋯討てるものなら討ってみろ…思い上がったナチュラルどもめ…!」

 

全体的に見てザフトが優勢の戦況ではあったがその姿を現した時、戦況が一変する。

前面に展開する地球軍艦艇の後方に位置する四隻のアガネムノン級と形状の異なる戦艦”セラフィム”より出撃した”聖女部隊”…【ネクロシス】。彼女らの前にはザフトの勇猛果敢な兵士は只の有象無象と化していた。

 

<X-299”レヴィアタン”発艦よろし!>

 

<続けてX-399”ハルピュイア”前進せよ…>

 

<第二カタパルトX-199”ファーブニル”カタパルト、エンゲージ!>

 

<続いて…GAT-X001F"ファントムダガー"発進どうぞ!>

 

”聖女部隊”全機が発艦した。

程無くしてその出撃は”ボアズ”にも伝わる。

 

「ッ!インディゴ十三ブルーアルファーに新たな敵モビルスーツを確認!数”四”!これは…クルーゼ隊より報告のあった例の四機です!」

 

「その後方アークエンジェル級一、アガネムノン級四。距離五〇〇!」

 

「アハハハッ!オモチャがいっぱーい!!」

 

凄まじい勢いで斧槍を構え突進する”レヴィアタン”に気がついた”ゲイツ”がビームライフルを放つがその全てが装甲に阻まれ無力化されてしまい数機まとめて貫かれ爆発し接近戦を仕掛けようとする”ゲイツ”と”シグー”を纏めて両断してしまった。

 

「あらあら…ここでは良い花火が沢山見れそうね?」

 

発進して直ぐにモビルアーマー形態へ変形した”ハルピュイア”はビームソードとビームクローを展開し圧倒的な早さで”ジン”と”シグー”の群れを続々と刈り取っていき、通り抜けた場所には大きな炎の花弁が華開く。

 

「いいねいいねぇ!戦争ってのはこのくらいドンパチしなくちゃなぁ!?」

 

無数の砲門が拓かれ進路を遮るモビルスーツと戦艦が無情にも撃墜されていく。其に気がついた”ゲイツ”部隊が押さえ込もうと接近するがその数より多い砲門が開きミサイル、ガトリング、ビームランチャーが容赦なく撃ち抜き有象無象へ変えていった。

 

「邪魔だ」

 

出撃と同時に”シグー”と”ゲイツ”が撃ち抜かれその間を抜けるとビームの嵐が殺到するがその間をすり抜け戦艦の艦橋を肩掛けしたバズーカで吹き飛ばす。

背面から襲いかかる”ジン”を振り向き様に抜刀したビームサーベルで両断し無力化するとスラスターを吹かし転進して正面に位置するナスカ級を改修された”ファントムストライカー”のビームキャノンで艦橋とエンジンを貫かれ爆散した。

 

その光景を”セラフィム”の艦橋で確認する艦長は今ごろ後方に位置するアガネムノン級戦艦”ドゥーリットル”の座席からサザーランドは上機嫌で見ているだろうな、と興味無さそうに感じていた。

最初の初陣から散々な結果であったが”エアリス”が駆る”ファントム”がビームランチャーを放ち一度に四機を撃墜する姿は規格外であり彼女を象徴として仕立て上げた”ブルーコスモス”達も満足していることだろう。

そして彼女以外にも性格には難アリの連中も規格外の強さで敵を屠っていく。

 

「艦長”ドゥーリットル”より入電です」

 

程無くして”ドゥーリットル”より通信が入ったのを管制官が報告する。

 

<道は開けたようだな>

 

モニターには厳つい顔をしたサザーランドが映っている。

 

「ええ。彼女達が頑張ってくれたようです」

 

実際に道を開いたのは彼女達で自分は後ろで砲撃支援しかしていない。

作戦の成否は彼女達に掛かっていると言っても良い。

 

<”ピースメイカー”隊発進する>

 

「了解しました」

 

後方に配するアガネムノン級”ワシントン”以下”ドゥーリットル”艦艇より数十機のモビルアーマー”メビウス”が続々と発進し四機の”D”が開いた道を一気に駆け抜けた。

”ピースメイカー”隊と呼ばれた”メビウス”達は下部武装ベイに巨大なミサイルを装備していた。

 

「あれは…ッ!」

 

その侵攻を見た察しの良い”ゲイツ”のパイロットが追いすがろうとしたが”ハルピュイア”のマシンキャノンによって破壊されてしまう。

 

「あら、ダメよ?余所見して他に行くなんて。もっと楽しみましょう?」

 

「アレ、沢山壊せちゃうんだから」

 

「自分の手で殺せねぇってのは残念だが仕方ねぇ…仕事だからな」

 

ペロリ、と舌舐めずりして追いすがろうとする”ゲイツ”を破壊し巨大な斧槍で突き刺し壊し、無数の砲門が接近するモビルスーツを破壊し敵陣奥深くへ食い込む。

 

「”ピースメイカー”隊目標まで距離四〇〇!」

 

”セラフィム”の艦橋でオペレーターが緊張した面持ちで報告する。

その報告を艦長は何時ものような無関心とも取れる鉄面皮の表情を浮かべている。

そして遂に阻むものがいなくなった”ピースメイカー”隊は”ボアズ”への有効射程圏内へ入ったーーー。

 

「安全装置解除を確認ッ」

 

”メビウス”のコックピットでパイロットがミサイルの発射装置に指を掛ける。

 

「そぉら!くたばれ!宇宙のバケモノッ!」

 

「”青き清浄なる世界の為に”ッ!!」

 

後生大事に抱えていたミサイルが放たれ目標へ飛翔する。点火されたロケットエンジンはモビルスーツのスラスターの速度を凌駕し目標とする”ボアズ”へ最初のミサイルが到達した。

 

次の瞬間、光の奔流が目を潰さんばかりの目映い光が広がり着弾した部分を消滅させるがその場所を見る間もなく続々と放たれたミサイルが着弾し漆黒の宇宙を煉獄の色に染め上げていく。

岩盤は抉られミサイルが基地内部へ吸い込まれていくと駐機していたモビルスーツ、停泊していた艦艇を只の鉄屑に変え往来するコーディネイターを骨すら残さず蒸発させてその熱波は基地中央へ到達してしまった。

 

「この熱量は……か」

 

その言葉を発するより先に”ボアズ”司令室は膨大な熱に包まれ存在を消したーーー。

 

「流石だな。あの”ボアズ”も核の前には無意味、と言うことか」

 

その光景を見ていたサザーランドは満足げな表情を浮かべる。

流石は”核”…宇宙の化け物を退治するには持ってこいなその威力は彼の歪んだ心を満たしていく。

そうだ、これで良い…世界に仇なす敵を葬るにはこのくらいがちょうど良いのだ、と…。

 

「次は奴らの巣窟…”プラント”だ」

 

そう言い残し彼は目を細める。目の前には鉄塊とかした”ボアズ”…だったものが無惨に骸を晒していた。

 

◆ ◆ ◆

 

”プラント”本国で、パトリック達もまたその光景を見ていた。

彼らは愕然としてスクリーンに映し出された”ボアズ”の無惨な姿を見つめ身動きすることすら封じられたような感覚を覚えていたが次の瞬間にパトリックの身体に憎悪の血が通い炎が燃え盛りその表情は憤怒に歪んだ。

同時にメイヤの顔にも憎悪が浮かび上がる。

 

またしても貴様達は”核”を………!

 

「おのれ…ナチュラルども…!」

 

メイヤが言うよりも早く食い縛る歯の隙間からパトリックが怨嗟の声が漏れだし其を聞いたエザリア達は狼狽える。

 

「ザラ議長閣下…」

 

「直ちに防衛網を構築!”ボアズ”残存部隊の撤退援護にヤキン第七宙域艦隊を!生き残った部隊はヤキンへ集結せよ!」

 

「あ、…ハッ!」

 

今の彼には核ミサイル…連合にNJCが渡ったのはアスランとシーゲルが結託し裏切って流したのだ、と言うメイヤから示唆された情報で頭が占められていた。

彼の道筋は悉く外されていく。かつての盟友と息子…まるで自分が間違っていると言わんばかりにーーー。

 

違う…。

違うッ…!!!

 

私が間違っているのではない…貴様達が間違っているのだッ!!!私は正しい!!

 

「メイヤ!」

 

「はっ!」

 

「”ヤキン・ドゥーエ”へ上がる!」

 

議長自らが前線へ出る。その事に議員達はハッとする。パトリックの目は血走っておりその表情はこの世の全てを憎むような恐ろしいものだった。

 

「”ジェネシス”を使うぞ…!」

 

この場にいる全員が息を呑む…最終決戦兵器”ジェネシス”。エザリア達は其を実際に使う日が来るとは思っても見なかっただろう。

怯えた顔で黙り込んだ者達の中でメイヤ・シヴァだけが冷静な表情でその判断に付き従うのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

通信を受け”ユニウスセブン”から帰投したエアリスとアスランはL4宙域より離れデブリベルトへ身を隠した四隻同盟の元へ戻り、回収したレノアの遺体を第八艦隊所属の連絡艦へ移動したのち自らの乗艦である”ドミニオン”へ戻る。

 

「月艦隊が”ボアズ”に侵攻…?」

 

その知らせにエアリスが疑問を浮かべた。

どうして?連合にNJCのデータは渡っていない…そのデータを持っていたクルーゼが死んだ為に連合は核の力を解放することは出来ない筈だ。流れを知っているからこそ安心出来る筈なのに心がざわつく…なにか大切な事を見逃しているような…。

 

「ああ。第八艦隊からの情報だ。間違いないだろう。戦端が開かれているか、もしかして既に…だな」

 

「…了解しました。モビルスーツで待機して…」

 

ナタル…と言うよりか第八艦隊からの情報は信頼性は高いだろう。其を受けとり胸騒ぎを覚えつつ待機室へ向かおうとすると突如としてアラートが鳴り響く。

 

<総員第一種戦闘配備!第一種戦闘配備!各科員は持ち場につけ!全艦発進準備!>

 

”ディスペアー”のコックピットに潜り込むと”エターナル”より通信が入る。

 

「エアリス!」

 

「動きがあったの?月艦隊の”ボアズ”侵攻は…」

 

そう問いかけるとラクスはその表情に陰りをもたらし固い口調で答えた。

 

<事態の進展は早く…いえ、最悪の方向に進んでしまいました…>

 

「えっ…?」

 

どういう…と問いかける前に通信が切り替わる。

 

<お嬢さん、そこから先の事には俺が説明しよう…>

 

全艦のモニターにはマリュー達と同じ年齢程の美丈夫がビジネススーツを着用し高級そうな革椅子へ腰かけていた。其だけでなく隣に控えるのは第八艦隊司令ハルバートンとシーゲル・クラインそしてウズミ・ナラ・アスハが側に()()()()()のだ。

各国の代表と司令が立たせられているその光景に驚くラクスやカガリ、マリューとナタルであったがそれ以上に椅子に腰かける青年の姿を見てアズラエルとエアリスが驚きの表情を浮かべる…どうしてここにいる!?

 

その反応を見ていた青年は無視して言葉を続ける。

 

<さっき入った情報筋だ…既に”ボアズ”は陥落した>

 

「え…?」

 

全員が青年の言葉に耳を疑う。あの堅牢な”ボアズ”が陥落したーー?

戦力差はあったとしてもそう簡単に最終防衛ラインの一角である”ボアズ”がそう簡単に陥落する筈がない…そうアスラン達は思っていたが次の一言に信じがたい、いや信じたくなかった。

 

「……地球軍の()()()によってな」

 

核ーーー!?

あり得ない、と思っていたその単語を耳にしてエアリスとキラ、そしてアスランとカガリは背筋を凍らせた。

 

◆ ◆ ◆

 

「まさか…また核を使うなんて…」

 

「あんまり驚きはしないがな…”JOSH-A”の後だし」

 

”アークエンジェル”艦橋でもその知らせに驚愕していた。

その反応にムウは返答する。

既に”アラスカ”にて友軍を巻き込み敵を撃滅する戦略を取っていたことを知っている。

そして今回は敵地への核使用…汚染被害を考えなくて良いし地球軍が躊躇う理由はなかった。

 

(止められなかった…クソッ…!)

 

戻ってきた”ドミニオン”の艦橋でエアリスは拳を握り締める。

脳裏に思い浮かぶのは”メンデル”にて離脱する”エミリア”…その機体が抱えていた影が”プロヴィデンス”であることを思い出していた。

 

(私の…せいだ…!)

 

あの時…撃墜していれば…こんなことには…!

だがあの時、私は撃てていたのだろうか?肉親を、”妹”と告げた直感で信じた彼女を?

 

「エアリス…?」

 

其に気がついたナタルがハッとして声を掛けるが握りしめた爪が肌に食い込み出血していた。

 

沈黙の後、視線はモニターに映る男に集中する。

ムウが口を開く。

 

「で、所で貴方は何処の何方で?」

 

そう言われ男は視線が自分に集中しているのに気がつき面倒くさそうに口を開いた。

 

<…ああ、忘れていたよ。”エンデュミオンの鷹”…>

 

そう言われ男は面倒くさそうな表情を浮かべる。察しろ、と言いたかったがここにいる全員がモニターに映る男性を知らなかった。

 

<…『お前誰だ?』そう思っているだろうが自己紹介させて貰おう。俺はマクシミリアン・A(アハト)・レインズブーケだ。元地球連合議会議長…今は地球連合副大統領っていう貧乏くじを引かされた可哀想な男だ。以後お見知りおきを?三隻同盟と”ドミニオン”の諸君>

 

レインズブーケ、そのファミリーネームを聞いて全員が驚きの声を上げる。

 

「「「ええっ!?」」」

 

<……何だ?そこのバカ娘から聞いていなかったのか?>

 

バカ娘…レインズブーケ…彼ら彼女の想像は一致した。

 

「エアリスの…」

 

「お父さん!?」

 

ミリアリアとフレイが驚きの声を上げてサイが呟く。

 

「地球連合副大統領…って…」

 

男がそう告げると今度はエアリスに視線が集中した。

ムウは「あちゃー」と頭を抱えているのは目の前にいる人物が連合内部でもかなりのVIPであり()()()()であると同時にエアリスは地球連合政府のご令嬢と言うことになる。

マクシミリアンは元地球連合軍の第七機動軍所属の大佐であり、政治を志し軍属上がりで成り上がった政治家であった。

突然の情報に呆然としていたエアリスであったがじんわりと伝わる痛みに気がつき我に返ると自分に視線が集中していることに驚く。そして咄嗟に口を付いた言葉がこれだった。

 

「人違いでは?私は…」

 

彼の記憶にある自分の姿は幼年学校の頃で止まっているだろう。今の自分の姿は成人女性の其だ…しかし。

 

「娘の顔を見間違えるわけないだろう。何年お前の親をやっていると思う?幼稚な奴め」

 

「……」

 

「お前が俺に口勝負で勝とうなんて百年早い」

 

同じ色の瞳に射貫かれ黙るしかなくなったエアリス。其を見たマクシミリアンは無視して続けた。

 

<此方としても軍上層部が”プラント”へ攻撃を仕掛けようとするのを阻止するために地上のエネルギー復興を優先すべき、と言うのに持っていきたかったが…既に手遅れだった>

 

地上のエネルギー問題…と言う言葉を口にするとシーゲルは目を伏せる。

 

<こうならんように準備を進めてたが其を無視して軍部は強行した…其は此方の不徳の致すところだ>

 

マクシミリアンは頭を下げる。その光景にアズラエルは驚いていた。普段は頭を下げるようなことをしない彼がここまですることに事の重大さを痛感する。

 

<さて…我々は直ぐ様行動に移さねばならん⋯()()()()()()()()()()()…逆も然り()()()()()()()()()()()と言うことだ>

 

「「「「「!?」」」」」

 

全員の表情に驚愕と恐れの色が浮かぶ。

考えれば当然だった。その技術の流失元は?そもそもその”核”を封じる技術は誰が作ったのか?

 

……()()()()()()()()()()()当然の帰結であった。

 

その事にアスランが、ニコルが、ディアッカが表情を暗くする。

あのユニウスの件の後”プラント”は核を捨てた…しかし現に今”フリーダム”と”ジャスティス”にその技術が搭載されている。

 

<双方にリボルバー式の拳銃でないオートマティックの拳銃でロシアンルーレットを行っているようなものだ。一発必中のな>

 

マクシミリアンの良い得て妙な言葉。其は引き金を引けばお互いに”死亡する”遊戯である。

 

<だからこそ俺たちは止めねばならん。行きすぎた正義と憎悪…憎しみの連鎖…其が断ち切られなければ有史以来最悪の結果となる。>

 

立ち上がり宣言した。

 

<我々の敗北は人類終焉を意味する…我々は戦わなくてはならない。この歪みに対して、な…>

 

◆ ◆ ◆

 

「何でしょうか…お父様」

 

通信が終了した後にエアリスはマクシミリアンの残るように指示された。

アズラエルに宛がわれた士官室へ移動しモニターに映るであろう端から見れば無表情であるが不機嫌そうな表情を隠すことなく自分に向けることに父は表情を変えること無く向けた。

 

「そうクサイ顔をするな。お前は賢い子供だが…感情を隠すことは上手くないな…相変わらず」

 

良く言う…と思う。幼い頃から自分に興味など無かったくせに今頃になって何故姿を現した?

 

「今さら父親面ですか。この非常事態にどのようなご用件で?」

 

自分でも攻撃的な口調だとは思う。其を聞いているアズラエルも頭を抱えていた。

 

「…話しておきたくてな。もしかするとこれが最後の会話になるかも知れん」

 

「先生っ!」

 

あんまりな言葉に思わずアズラエルが噛みつくが其を手で制止する。「これは家族間の問題だ」と言わんばかりに。

思わずアズラエルも彼の眼光に黙り込んでしまう。

 

「…メンデルで…お前は…()()()()()()()?」

 

「ッ…」

 

この父親には全て見通す力があるのだろうかと錯覚してしまう程に的確な言葉に言い淀む。

そもそも自分達が”メンデル”へ行くことを伝えていない。

 

「そうか…知った、か…」

 

強い彼の表情に初めて”後悔”と言う色が滲む。知って欲しくなった、と言う風に…。

 

「既に過ぎた事だ…過去は今には還らない。お前が俺を責めるのは当然だ。だが…セシリアを…貶すことはやめてくれ」

 

「何を…言って…」

 

その瞳がエアリスを見る。何時ものような傲岸不遜ではなく慈しみの目だ。

 

「若さゆえの過ち…彼女の暴走を止めることは出来なかった。私も”エミリア”を失って残ったお前に愛情を注ぐことが出来なかった…その結果がこれだ…大切な娘を利用され荷担させられている」

 

「お父様…」

 

自嘲気味に笑う父は一瞬だけ小さく見える。

 

「だからこそ、だ……」

 

懇願しそう呟く父の姿へ静かに後ろを向ける。その後に続く言葉を聞かずに振り返った。

 

(わかっているよ…お父様。とっくに貴方たちに愛されていた、ってことは…)

 

”メンデル”での母の日記はエミリアも目を通している筈だ。

それでいて彼女はああ言った…アズラエルの部屋の扉の前へ立ち解錠し足を踏み入れる。

世界が……謝った道に進もうとする妹を助け出さなければならない…”姉”であるのなら。

 

◆ ◆ ◆

 

先程の戦闘で消耗し補充を終えた連合月艦隊は移動を開始したとの報せを受けた。

狙いは”プラント”本国だろう事は明白であった。

 

(”プラント”は”アレ”を撃ってくるのか…?)

 

”ディスペアー”のコックピットでエアリスはザフトが次撃ってくる反撃の手段を知っていた。

”核”と共に共倒れしてくれれば良いだろうと言う考えは当の昔に消え去っていた。

放たれる絶望の光はまるでソドムとゴモラだ。

 

「艦長。第八艦隊合流します。その左翼からザフト軍艦艇です。」

 

デブリ帯を抜けた四隻は合流した第八艦隊と離反したクライン派のザフト軍艦艇が集結する。

アガネムノン級旗艦”メネラオス”の司令席に座る男がマイクを取る。

 

<第八艦隊司令デュエイン・ハルバートンである>

 

各艦艇にハルバートンの声が響いた。

 

<世界は今破裂寸前の爆弾だ。連合軍は解禁された核兵器を既に放ってしまった…同じく”プラント”も核を使用することが出来る状態でありこの戦争は全面的な終局戦争へ転じるだろう…其を阻止するために先ずは”プラント”へ向けられる”核武装部隊”の迎撃及び排除だ。

 

双方矛を納め終戦協定にまで持っていけるか…そこが最終地点である。

 

一つ、侵攻する連合艦隊の”核ミサイル”の破壊と壊滅、そして艦隊の制圧。

二つ、ザフト軍の攻撃停止の呼び掛けとプラント過激派の拘束。

三つ、ザフトと連合への停戦協定及び終戦協定へのテーブルにつかせること。

 

一つ目は第八艦隊と”アークエンジェル”と”ドミニオン”そして”クサナギ”が戦列に加わりサザーランド率いる連合艦隊を制圧する。

二つ目はクライン両名と”エターナル”がザフト軍への呼び掛けをして貰う。この状況だ呼び掛けに応じてくれるのは難しいかもしれないがやるしかない。

三つ目は”プラント”へシーゲル氏らを送り届ける。少々強引なやり方だがそこでコーディネイターとナチュラルが手を取り合う姿は痛烈な印象を与えるだろう。だが、やり遂げねばならん>

 

後のいざこざは政治家であるマクシミリアンとアズラエルがどうとでもする。手を取り合うことが大事なのだ。

ハルバートンは一拍置いて続けた。

 

<各員、両軍の猛烈な反撃が予想される…だが我々は、この場に集う同士達よ…ここで諦めるわけには行かない。我々が諦めてしまえば人類終焉を意味する…しかし同士達よ⋯恐れず進め!我々には”蒼い彗星”がついている!希望ある未来を守るために…!その胸に灯される勇気を火を絶やさぬためにも!全艦発進せよ!>

 

うぉおおおおおおおおおッ…!!

 

ハルバートンが鼓舞しそれぞれの艦艇が揺れるほどの錯覚を覚える。

第八艦隊の軍人達はエアリス…蒼い彗星に救われたものも多い⋯自陣に彼女がいると言うことで士気が上がっていた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

「提督め…完全に私の事を戦意高揚に利用したな…?」

 

”ドミニオン”の格納庫にある”ディスペアー”のコックピットへ潜り込み発進準備を整えいる最中であり”カラミティ””レイダー”フォビドゥン”も既に戦闘準備を終えてコックピットで待機していた。

 

<しっかし…話が壮大になってきやがった>

 

<やることは変わらないんでしょ?>

 

<単純明快。敵を倒す。勝つ、終わり>

 

<お前らは良いよなぁ…単純でよ…ってなに笑ってんだお前?>

 

相談したのが間違いだったとオルガは顔をしかめるその光景を見て思わず笑みを浮かべてしまう。

 

「いや、ずいぶん変わったんじゃないかな、って」

 

そう言われオルガは顔を背ける。

全く調子が狂う…自分とほとんど同じ年齢の筈なのに見た目は大人っぽく中身は餓鬼…其なのに見せる表情は大人と言う…ああったく…

 

<うるせーよ…>

 

<素直じゃないねぇ…オルガは>

 

<ツンデレ、乙>

 

<うるせーっ!!ぶっ殺すぞ!?>

 

最終決戦、と言っても差し支えない状態で普段通りなのは寧ろ都合が良いのは気を張りすぎてミスを犯す、と言うのはどの世界でもあり得ることだからだ。

普段通りの様子を見せる三人を見てエアリスは笑みを浮かべた。

 

「……最終決戦装備ね」

 

”ディスペアー”の宙域戦闘用の装備は間に合わなかったらしい。

しかしその専用装備だけが届き装備されている。

 

<アーマメントシステム>はtype1を装備し背面には<パラディオンストライカー>を装備している”ブルーティアース”と呼ばれる形態である。

そして”ディスペアー”本体は”メンデル”戦闘後に修復ついでに改造を受けて背面部分は前期型から大きく変更されている。

決戦装備…と言うこともあり腰椎部コネクターへ宙域強襲突撃用ブースター…VOBを装備する。

此方はエアリスが以前に使用作成したテールブースターをブラッシュアップしたもので最高速度はマッハ5に相当する、が当然中に乗っている人間はミンチ…もとい中の人間は大変な事になるが…エアリス専用装備だ。

 

推進材が無くなれば自動的にパージされデットウェイトされる。

 

(杖…いや箒?かこれ…)

 

背面に装備された追加装備として杖…いや箒のような見た目のマルチウェポンである<ヴァリアブルケイン>はSFSとしても利用することが可能で火力不足と速度を補うために用意された。

エアリスは脳内で浮かび上がったモビルスーツのシルエットとザフトからつけられた渾名を合体させ苦い顔を浮かべた。

 

(彗星の魔女かぁ…)

 

実際問題化け物揃いのこの局面で堅実すぎる装備では()()()()()。その為この追加装備は有り難かった。

装備の接続が完了するとラクスの声が通信回線を通じて全艦へ届く。

 

「…核を…たとえ一つでも”プラント”に落としてはなりません…」

 

凛とした決意を込めた美しい声が響き渡る。

 

「撃たれる謂れの無き人々の上に、光の刃が突き刺されば、其はまた果てしない涙と憎しみを呼ぶでしょう…」

 

撃っては撃たれての繰り返し…嘗てエアリスが告げた『血反吐を吐きながら続けるマラソン』そのままでお互いに滅びの光を放ちながら戦えば最後に残るのは屍の山である。

先んじて”エターナル””フリーダム”と”ジャスティス”発進シグナルが出て出撃する。

その後ろ姿を見てラクスは祈るように目を閉じた。

 

「私たちは…間に合わなかったのかも知れません…」

 

実際に”ボアズ”は核で殲滅されてしまった。集ったこの同盟も無意味だったのかもしれない…とそう考えるとラクスは胸を締め付けられてしまう気分になる。しかし、()()()()と抗う。

 

「平和を叫びながらもその手に銃を取る…其もまた悪しき選択なのかもしれません…」

 

ラクスの言葉を聞きながらバルトフェルドが指示を下す。

 

「”ミーティア”リフト・オフ!」

 

号令と共に”エターナル”の艦首先端に取り付けられた砲台のカバーが開き戦艦より離れた”ミーティア”と呼ばれた二つの砲台は自動変形をして出撃した”フリーダム”と”ジャスティス”を迎え入れ腰椎部に接続した。

”ミーティア”…数で劣っているザフト軍が膨大な物量を誇る連合軍に対抗するためにモビルスーツに戦艦の火力と推力を増設するために設計された強襲プラットフォームであり運用には核エンジン搭載機のみとなっているがその威力凄まじく高エネルギー収束砲二門と各所に備え付けられた多弾頭ミサイルランチャーで一機で大隊、一個師団を撃破できるポテンシャルを持つがこれもまた核エネルギーでなければ実現できないと言う皮肉だ。

 

「キラ・ヤマト”フリーダム”行きますッ!」

 

「アスラン・ザラ”ジャスティス”出る!」

 

先んじて”ミーティア”を装備して飛翔する二期のモビルスーツは大推力スラスターを吹かし戦場へ加速する。

断ち切るその力を宿し、悲劇を二度と繰り返させない為に。

 

其を皮切りに四隻同盟の搭載モビルスーツがカタパルトより弾き出され発進した。

 

「ムウ・ラ・フラガ”P(パーフェクト)ストライク”出るぞ!」

 

「トール・ケーニヒ”イージス・カットラス”飛翔する!」

 

「ディアッカ・エルスマン”バスター”発進する!」

 

「ニコル・アマルフィ”ブリッツ・エクレール”発進しますッ!」

 

”アークエンジェル”より四機のXナンバーが姿を、パイロットを変えて飛び立つ。

 

「絶対に生きて戻ってこい…死んだら許さないからな!」

 

「生きて帰ります!ジュリ機”M2アストレイ”行きます!」

 

「当たり前でしょ!マユラ機”M2アストレイ”行きますッ!」

 

「生き残って見せる…アサギ・コードウェル”M2アストレイ”出るわ!」

 

カガリから激励を受け”クサナギ”より三人娘が勇ましく飛翔した。そして…。

 

「あー⋯みんな?必ず生きて戻ってきてください?良いですね?お金が掛かっているのですから」

 

「ッたく素直じゃねーなおっさん?…俺新しい小説まだ途中だからな」

 

「忘れてます?僕たちあの人の部下なんですよ?其に新しいゲーム対戦しないと」

 

「死ぬつもり無し。帰って新譜聞きたいし…」

 

相変わらずの様子にアズラエルは頭を抱えるがエアリスは笑みを浮かべる。そうしているとアズラエルが真面目な表情で此方へ言葉を掛けた。

 

「良いですかエアリス。死ぬことは許しません。必ず帰ってきなさい」

 

「…未だ死ぬつもりもないですよ。未来を見届けるまでは」

 

そうだ。守るものがある。其を蔑ろにするつもりもないキラ、ラクス、カガリ、アスラン…其と仲間達…この世界を壊してなるものか!

 

<管制室から【B.L.U.E.M】各員へAPU分離を確認!進路クリアー発進どうぞ!>

 

「おっしゃあ!ブルーム1、オルガ・ザブナック”カラミティ”行くぜぇぇ!!」

 

「ブルーム2、クロト・ブエル”レイダー”行きますよ?」

 

「ブルーム3、シャニ・アンドラス”フォビドゥン”出るよ」

 

三機のXナンバーが戦場を目指し”ドミニオン”から飛び立つ。

 

開かれたカタパルトの先には既に戦端が切って落とされ、散っては咲き、散っては咲いての繰り返す戦闘の光と砂時計が広がっている。その先には絶望と憎しみが散らばり絡め取ろうとしてくるだろう。

 

操縦桿を強く握りしめた。

 

「ですが…今…」

 

ラクスが祈りを込める。この戦いへ赴く戦士達の無事を祈ってーーーー告げた。

 

「この果てない戦いの連鎖を…断ち切る力を…!」

 

「ブルームリーダー、エアリス・A・レインズブーケ”ディスペアー”行きますッ!!」

 

”ドミニオン”より発艦し手にした<ヴァリアブルケイン>をクルーザーモードに変形させ股がると後方より広がる四対のスラスターが展開し機体に取り付けたVOBが起動する。

 

今、エアリスは一筋の彗星と化して戦場へ飛び込んだーーーー。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。