魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】 作:萩月輝夜
地球軍艦隊と”プラント”との戦端は既に開かれていた。
出撃したイザークは”デュエルA・S”を駆って副官であるシホの”ゲイツ重装型”と共に既に数多くのモビルスーツ、モビルアーマーを屠り前線を押し返していく。
イザーク達の背後には自分達の生まれ故郷である”プラント”が控えておりここを抜かせてしまえば遮るものは何もない。イザーク含めザフトの兵士達は一歩も引くことは出来ない、いや…許されないのだ。
その間にも接近しようとしていた”ストライクダガー”と”01ダガー”をビームライフルで撃ち抜き周囲を確認するとその機影は直ぐ様自分達の驚異となった。
すぐ近くの友軍機が爆散する。
一般機の”ゲイツ”が真紅の機体が手にしているビームキャノンとガトリングで紙屑のようにズタズタに撃ち抜かれ近くにいる緑白の機体が変形し足裏に展開されたビームクローが”ジン”を捉えシールドを持たない其は回避することも出来ずに切り裂かれた。そしてもう一機の水色の機体は手にした斧槍を構えブースターを吹かし水中のように自在に動き回りドリフトすると”ゲイツ”達は迎撃しようとしてビームを放つが無力化されその勢いを殺すことは出来ず数機が犠牲となった。
あの機体達はL4宙域で確認した連合のエース部隊だ。
「ジュール様あれは…!」
「ッ!行くぞ!」
「了解ッ!」
イザークは怒りを覚え操縦桿を強く握り三機の元へシホと共に向かう。
手にしたビームライフルとレールガン、ミサイルポットを解放し放つと白緑の機体は推力にものを言わせ弾幕を回避し反撃と言わんばかりに腕部マシンキャノンを撃ち返す。
「くっ…!」
「これは…」
シホもまた手にしたライフルと肩部のビームランチャーを放つが水色の機体はその直撃をモノともせずに霧散させ手にした斧槍の開口部からビームの機銃をばら撒き襲いかかった。
「ビームを弾く!?」
対峙している機体は自分達の乗る機体よりも高性能のようでそうしている間にも真紅の機体は装備された砲門を開き強大すぎる火力は行く手を阻む此方の僚機を破壊し赤々と周囲を照らし出す。
「ッ!?あれは……!」
そのとき例の三機に護られるような形で後続から”メビウス”の部隊が”プラント”へ向かっているのが見えたのだ。
イザークはモニターを拡大させるとその積み荷を見て背筋を凍らせる。
「”核”か!?」
機体を翻し”メビウス”へ追い縋ろうとするがその進路を白緑の機体がモビルアーマー状態に変形し背面のコンテナが開き無数のマイクロミサイルが猟犬の如く追いかけるのを必死に回避と迎撃をしながら叫んだ。
「あのミサイルを落とせッ!”プラント”を撃たせるなぁ!」
その叫びに気がついた”ジン”と”ゲイツ”達は”メビウス”へ向けて飛翔したり銃を向けたりしたが水色の機体がビームガトリングで撃ち抜き真紅の機体が背面のレールガンと大型ミサイルで別方向から向かっていた”ゲイツ”を撃ち抜き進行を阻止する。
「邪魔をしないでッ…!」
シホも向かおうとするが別方向より現れた”01ダガー”の部隊が進行を許してくれなかった。
そして…遂に、先鋒を切る”メビウス”が下部に懸架したミサイルを放った。
「ああ…ッ!」
放たれたミサイルは吸い込まれるように”プラント”へ向かう。
阻むもののないミサイル群は其を皮切りに数発、数十発と数を増やし銀の砂時計を撃滅せんと群がった。
そして最初に放たれた一発が到達しようしようとしたーーーー
そのときだった。
無数の光条と飛来するミサイルの嵐が全ての”核ミサイル”を叩き落とした。
◆ ◆ ◆
「ぐっ………!?!?」
”ドミニオン”から発艦すると同時に全身に凄まじい衝撃と臓腑を締め付ける激痛が走る。
常人であれば気を失って戦場に散らばるデブリにぶつかり宇宙の藻屑の仲間入りするがこの程度の速度は彼女にとっては手慣れたものだった。
歯を食い縛り正面を見据え暴れる操縦桿を握りしめる。目前に広がる戦場には既に核ミサイルを装備する”メビウス”が跋扈しているのが視界に入る。
「システム確認…セーフティ解除…”クアドアプルランチャー”スタンバイ…!」
その速度は先んじて出撃した”フリーダム”と”ジャスティス”を追い抜いた。
暴れる操縦桿を制御し装備スロットの<ヴァリアブルケイン>の装備モードを変更する。
<クルーザー>から<シュート>へ。
切り替えエネルギーのバイパスを戦闘モードへスムーズに切り替えると其は”核ミサイル”への有効射程圏内へと入った。
そもそも”ディスペアー”は”フリーダム””ジャスティス”のザフトファーストステージのように<マルチロックオンシステム>は搭載されていない。
本来は”ディスペアー”へ<type2>と<バーストストライカーMK2>、そしてミサイルユニットを装備して出撃するつもりだったが其では速度が落ちてしまう、そのためにVOBと<パラディオンストライカー>を選択した。
しかし、其では
ではどうやって攻撃を?
答えは簡単。
目標地点に到着し空欠になったブースター兼用のプロペラントタンクを切り離し、跨がっていた<ヴァリアブルケイン>から離れ脇に抱えてテールユニットが分離し砲身部分と合体する。
「いっけぇええええええええええええッ!!!!!」
烈迫した叫びと共にトリガーを引く。収束した光の本流が核ミサイル群を呑み込んだ。
◆ ◆ ◆
突如背後より無数の光条と膨大な数のミサイル、そして巨大なビームサーベルと見間違う程に太い粒子ビームが”プラント”へ到達する筈だった核ミサイルを撃墜し目も眩むような閃光を撒き散らして行き其は他のミサイル達へ誘爆しその輪を広げていく。
その爆発で白飛びしていたモニターが正常に戻ると視界の先に映る銀色の砂時計は一基も失われていなかった。
イザークはコックピットの中で息を吐き全身が弛緩していくのを覚えたがこの窮地を救ってくれた後方より飛来したビームとミサイルを放った正体を確認しようと背後を確認しようとしたがその瞬間に”デュエル”を追い越して一筋の彗星が戦場に飛び込んでいくのが視界に入る。その後に続くように小型艇のような推進部を持つ機体に目を取られたが戦場のど真ん中にいる機体を確認し目を見開いた。
「…ッ!?”ジャスティス”…アスラン!?其に”フリーダム”…?あれは…」
そして真っ先に飛び込んで来た機体を見て驚く。肩にはパーソナルマークなのだろう帽子を被った女性…魔女と八枚の白い花弁のマーキング…そして地球連合の軍章が印され機体の頭部は特徴的で忘れる筈もなく自分達ザフトへ煮え湯を幾度と無く呑ませた因縁深い機体であった。
思わずイザークはその名前を口に出す。
「”ゴーグル付き”…!?」
情報部からの調べで”ディスペアー”というコードネームを与えられた機体が自分の目の前にいる。
何故地球連合軍の機体…”彗星の魔女”が”地球連合”の邪魔をする?どうして”プラント”を救ってくれた…?
信じられない…という想いと同時にメンデルでディアッカとニコルが告げた言葉に嘘偽りはなかったのだと自分の心が何かで溢れてきていることにイザークは不思議な気分になった。
そして戦闘宙域に新たな艦艇が出現する。
”アークエンジェル””ドミニオン””クサナギ”…そして”エターナル”だ。
<地球軍は直ちに戦闘を停止してください!>
ラクスの声が戦闘宙域に響き渡る。その声は鋭い糾弾であった。
<あなた方は何を撃とうとしているのか本当にお分かりですか?>
「その声…」
「ラクス様…!?」
耳馴染みのある歌姫の声にザフト兵士達は驚きの声があげた。
しかしその声に連合の部隊が耳を傾ける筈がなく地球軍は再び”プラント”へ攻撃を仕掛けようとしたがある声が遮った。
<此方地球連合副大統領のマクシミリアン・A・レインズブーケである。>
四隻同盟の後方より旗艦”メネラオス”率いる第八艦隊が現れ艦橋にノーマルスーツを着用すらしていないマクシミリアンが立ち上がり連合艦隊へ向け通達がなされる。
<貴様達の行為は連合議会と連合軍規定を大幅に逸脱した行為であると共に恥ずべき行動だ!>
突如として自分達のトップにいる人間が戦場に姿を見せたことに驚くが響き渡る重厚感のある声がサザーランド率いる連合艦隊と”ストライクダガー”と”01ダガー”の部隊は動きを止めてその声に聞き入っている。
マクシミリアンは毅然とした態度で言葉を続けた。
<直ちに戦闘を停止したまえ。意味もなく”核”を使用するということは我々は再び大量殺戮者の汚名を被ることになる。先人達の意味を破り捨てるのか?我々がその身に纏う軍服の意味と存在する意味を思い出せ!>
真空を揺らすような鋭い声が連合艦隊の将兵達に降り注ぐ。
モニター越しといえど彼の言葉は本物であり大小なりともその”意義”を見いだしてその軍服に袖を通した筈だ。
目に見えて動揺する声も多いのはマクシミリアンとハルバートンをシンパとする軍閥も多い…実際に攻撃を中断する艦艇も目に見えて存在していた。
実際にサザーランドに与していた地球軍艦隊の一部は既に離脱し第八艦隊旗下へ移動している。
其は既に手の内が知られていた、ということになる。
このまま…というのは問屋が卸してくれない。
その光景を”ドゥーリットル”の艦橋で見ていたサザーランドはアームレストを叩きつけた。
おのれマクシミリアンにハルバートン…!
サザーランドも反抗がでないように穏健派の排除を行おうとしたがその肝心の指導者…二名はビクトリアを奪還する前に姿を消していたのだ。第八艦隊も大半の戦力が消え少数だけを残していたのはこのためか、と憤慨する。
再編した第六、第七艦隊の中にも動揺するものが見ることが出来「我、正義のために離反スル」と通達する艦艇もあった。
こんなところで私の思いを終わらせてたまるものか…!
受話器を取り全域通信を行った。
「艦隊全艦へ告げる!我々地球連合は宇宙の化け物である”コーディネイター”を倒すために存在する!そのために我々は戦っているのだ!その地である”プラント”を護ろうとするマクシミリアン達は地球連合への反乱行為だ!これを敵として断定しザフト諸とも撃滅せよ!」
次の瞬間に離脱しようとした艦艇がサザーランド、”ブルーコスモス”のシンパの艦隊によって撃墜され漆黒の宇宙に炎の華が散った。
「味方を…!?愚かなことを…!」
「ちいっ…!サザーランドめッ…!!」
その光景を見てマクシミリアンは苦虫を潰した表情を浮かべハルバートンが奥歯を噛み締めた。
其を皮切りに再び戦闘が再開され、地球軍艦艇から核ミサイルを懸架した”メビウス”が発進し第二陣の攻撃が再開されたのを確認したイザークは”デュエル”を駆ってレールガンとライフルを連射するが、ミサイル迎撃を行っていたのが自分達ザフトの機体だけでないことに気がついた。
顔馴染みの武装全増しの”ストライク”、両腰の砲身を連結させ発射する”バスター”と展開式のライフルを連射する”ブリッツ”にモビルアーマー形態で飛び込んで変形しライフル狙撃する形が変わった”イージス”…連合の機体である”カラミティ”レイダー”フォビドゥン”もミサイル迎撃に加わり後から来た”オーブ”の機体であろうモビルスーツも手にしたライフルで打ち落とす。
巨大なモジュールを直結した”フリーダム”と”ジャスティス”が放った圧倒的な砲撃の嵐が飛来する核ミサイルを打ち落とした。
そして”ディスペアー”も手にした箒のような武装が火を吹くと空間を薙ぎ払うようにミサイル群を叩き落とし閃光の華が広がる。
アスランが、ディアッカがニコルが…自分達を裏切ったとされていた彼らが身を張って”プラント”を守るその光景にイザークの心に暖かいものが満ちていく、そんな感覚を覚えた。
◆ ◆ ◆
(”エターナル”だと…?いまさら何をしに来たシーゲル…!)
”ヤキン・デューエ”の司令室に詰めていたパトリック・ザラはメイヤの元に戦況がもたらされていた。
地球軍が放った核ミサイルを迎撃し、撃ち落としたもの達がまさかの地球連合第八艦隊と”アークエンジェル”そしてその中には”エターナル”、ラクス・クラインがいたと言う。
彼女が生きている、ということであればあの淡色の戦艦にシーゲルも搭乗していることは確実だった。
”プラント”…自分達を裏切っておきながら何食わぬ顔で此方の擁護に回っていることに思考が停止しそうになったが憎しみは彼の思考を正常に稼働させ笑い飛ばした。
あれはきっと自らの居場所を”プラント”内部に再び穏健派を復帰させるための
「ハッ!小賢しいことを…!」
茶番だ、と切り捨てた。それほどまでにお前はナチュラルを守りたいのか?
我々に苦汁を味あわせ大切な者を奪った者達と手を取り笑いあう世界が望みなのか…!
パトリックは吐き捨てる。
「構わぬ。放っておけ!此方の準備も完了した」
パトリックは皮肉な笑みを浮かべる。
シーゲルよ…貴様達が時間を稼いでくれたお陰で此方の準備も整った。
お前達の思惑通りに踊ってやるほど私も馬鹿ではない…時間を稼いでくれたことには感謝しよう。
「”ジェネシス”は最終段階に入る。全艦は射線上より退避!」
オペレーターからザフト軍全艦艇に警告が入る。
次の瞬間に”ヤキン・ドゥーエ”後域からまるで姿を消していたかのように突如として出現するパラボナアンテナのような巨大な建造物…。
パトリックは軍事衛星に詰めているエザリアへ指示を出した。
「部隊を下がらせろエザリア!”ジェネシス”を起動する!」
そう告げ通信を切る。薄暗い司令室の座席に座るパトリックは笑みを浮かべる。
「我らの真の力…見せてくれる…!」
◆ ◆ ◆
四隻同盟の機体と共にプラント前線で迫り来る”ダガー”タイプの群れと”メビウス”と数機の”コスモグラスパー”の編隊を迎撃していたエアリスは手にした<ヴァリアブルケイン>をロングライフルモードとライフルを発射し既にダブルスコア近い機体を撃墜している最中に背筋におぞましいほどの悪寒が広がり脳天に閃光のような光が走る。
「ッ!!」
敵機を撃墜しながら反射的に自軍の機体と艦艇に通信を飛ばす。
「全機!この宙域から退避!!急げッ!!」
悲鳴のように叫んだ。
「クソッ!!あれは…撃たせちゃならない破滅の光なのに…!!」
◆ ◆ ◆
”ドミニオン”の管制官が不審に思っていると突如として目の前の光景を報告する。
「ザフト軍撤退していきます…」
「このタイミングでか…?」
ナタルもザフト軍が撤退していくのを見て怪訝に思う。
体勢を整えるにしても妙なタイミングだし戦術的な引き際…とも思えなかった。
<全機全艦!この宙域から退避!急げッ!!>
「エアリス?」
<あれは…撃たせちゃいけない破滅の光だ…!!!>
突如として入ったエアリスからの通信にナタルは問いかけようとしたがそれよりも先にオペレーターからの報告によって遮られてしまう。
「ッ!?ヤキン・ドゥーエ”後方より巨大な建造物出現!」
突如としてヤキン後方に巨大な陽炎が実体化する。巨大な円形はパラボナアンテナの受信部のようで目視できる銀色の砂時計の一基よりも大きいだろう。
「なんだ…あれは…?」
ナタルが呟くのも無理はない。後方の場所からもあってその姿は巨大だった。
其は”アークエンジェル”でも確認が出来ており艦橋にいるマリューも言葉を漏らす。
「あれほどまでに大きな建造物…一体どうやって…」
粛々と司令室でオペレーターが発射シークエンスを続行する。
「”フェイズシフト”展開」
巨大な建造物は鉄灰色から磨かれた銀色と基部が白く色づいていく。
「…ッ!?まさか”フェイズシフト”と”ミラージュコロイド”を…!?」
マリューはその姿を”色を変えて””無かったもののように”隠している技術に心当たりがあった。
”ブリッツ”に搭載されてた”ミラージュコロイド”…特殊な粒子は完全なステルス状態へ移行させる新技術だ。其がザフトに奪われ利用されている事に表情が苦痛に歪む。
「Nジャマーキャンセラー起動。ニュークリアカートリッジを撃発位置へ」
「全システム接続オールクリーン」
「思い知るが良いナチュラルども!」
パトリックは勝ち誇った表情を浮かべ宣言した。
「この一撃が我らコーディネイターの
次の瞬間に”ジェネシス”は放たれた。
爆発した核エネルギーが鏡のように乱反射を繰り返し正面ミラーに集約しニュークリアカートリッジに束ねられ迸ると戦場に尋常でないほどに太い強烈な光が通過すると射線上にいた地球軍艦艇はその破滅の光に晒され、崩壊し、砕け散って爆発の炎を上げていった。
◆ ◆ ◆
「あああああッ!!?(これは…ッ!?)」
寸前で回避したエアリスだったがその閃光に巻き込まれ散っていたモビルスーツや戦艦の兵士達の思念が一気に襲いかかり頭が破裂しそうなほどの激痛が走り思わず意識が飛びそうになり下を向いてしまうが必死に奥歯を噛み砕かん程に食い縛り操縦桿を握り顔を上げた。
「こ、れは………」
顔を上げた先の映像は凄惨なものだった。
あれほどまでに大量展開されていた地球軍艦隊は先ほどの光条に飲み込まれそこにあった筈のモビルスーツ、艦艇とそこにあった宇宙デブリのひとつは塵となり焼き尽くされた。
光が去り後に残ったものは鉄屑と化したモビルスーツと戦艦…そしてその光を見て戦意を喪失した兵士達だけだ。
「こんなことが……」
ぎりり、と操縦桿を強く握りしめる音がコックピット内部に響いた。
凄惨な宇宙に四隻同盟と有志連合のクルー達は呆然としてしまう。
お互いを抑止するための”炎”の封をお互いに切ってしまった。
<こん、な…!?>
”ジェネシス”の攻撃から回避した”フリーダム”からキラの呻くような声が聞こえる。
そして同時に”ジャスティス”からアスランの声が聞こえたが其は呻くような声色だ。
<父、上…!>
当然だ。自分の肉親が作り出した悪魔の兵器…全てを無に還してしまうその威力を目の当たりにしたらそうもなる。
これが人類の叡知、人の夢だとしたら其は違う…これはただ屍の山を築くだけの
決して
エアリスもズキズキする頭で前方にある構造体を見据える。
あれは…存在してはいけないものなのだから。
◆ ◆ ◆
「”ジェネシス”は最大出力の六十パーセントで照射」
「地球軍艦隊はその五割を損失したものと推定」
自軍が放った”ジェネシス”の威力を目の当たりにして呆然としていたオペレーター達も我に返って報告するとその後ろに控えるパトリックが指示を出した。
「…ミラーブロック換装急げ」
「流石の威力ですね。ザラ議長」
パトリックがミラーブロックの換装を指示すると後ろからメイヤの声が届く。
その声は恐れや驚き、などが入ったものではなく”スッキリした”と言わんばかりの声色であり其を聞いていたザフト特務隊の隊長であるユウキが其を聞いてゾッとした。
「この一撃…群れるしか能の無い愚かなナチュラルを殲滅するには相応しいものです」
あの惨状を見てなぜそのようなことが言える?彼女は優秀な指揮官ではあるのは否定できないが時折見せるナチュラルへの憎しみは底知れないものがありゾッとする。
大打撃を受けたサザーランド率いる地球軍艦隊…クルー達は目の前で起こった光景を信じられずにいた。
ザフトが出現させた新兵器は鼻先に放たれた。
”セラフィム”でもその光景を見て浮き足立っていた。
「艦長!これは…!」
しかし”セラフィム”の艦長は冷静に指示を出した。
「浮き足立つな!残存艦の把握急げ!旗艦”ワシントン”はどうなっているか!」
鋭い声が艦橋に響くとオペレーター達は我に返って計器とモニターを確認し始める。
一人のオペレーターからの報告に眉間にシワが寄った。
「”ワシントン”識別コード消失しております!」
「”クルック”および”グランド”も反応ありません!」
艦長は内心呆然とする。旗艦、それに準ずる艦艇も軒並み消滅し残ったのはサザーランドの搭乗する”ドゥーリットル”のみだ。
それだけでなく此方の主戦力である味方艦も先程の光条に飲み込まれ五割を失っている。”全滅”、と言っても差し支えない状況であり指揮系統はズタズタだ。
艦長は「仕方あるまい…」と短く呟き指揮系統に口を出す。
”青い彗星”…今回は機体の最終調整の為に出撃はしていないが彼女が搭乗している艦の艦長である自分が口を出しても問題ないだろうと判断して通信を行った。
「信号弾撃て!残存部隊は現宙域を離脱する!本艦を目標に集結せよ!”ドゥーリットル”の援護を!」
この声が地球軍の兵士達に届くことを祈って。
◆ ◆ ◆
<我らが勇敢なるザフト兵士諸君…>
戦場にパトリックの声が響く。
その放送を聞きながら四隻同盟の艦長達…”エターナル”のバルトフェルドの声によって我に返った。
<これ以上ナチュラルどもの暴挙を許してはならない>
<ラミアス艦長!此方も一旦引くしかない!部隊を一旦下がらせろ!>
<ラミアス!先程の攻撃で此方も二割が破壊された…建て直すしかない。一時撤退だ!>
「ッ了解しました…ミリアリアさん、各機体へ撤退指示を!」
”メネラオス”からハルバートンの声が届くがその内容に呆然としそうになる。しかしマリューは毅然とした態度でミリアリアに部隊の帰投指示を出すように命令するがその間にもパトリックの演説は続く。
<”プラント”に放たれた核…これは最早戦争ではない!>
エアリスは”ディスペアー”のコックピットでパトリックの勝ち誇ったような声を聞いていた。
<虐殺だ!>
頭に血が上る感覚を覚える。お前が其を言うのかーー?
貴様達が放ったその光は一体なんなのだ?
<そのような行為を行うナチュラルどもを決して許すことは出来ない!>
一方でその光景を軍事衛星で見ていたエザリア達は我に返った。
味方が凄まじい威力の兵器を放ったことへ驚き戸惑ったがそれよりも”プラント”へ核を放ったその事実はザフトの兵士達の憎悪を燃やし怒りへの原動力へ変えるのは簡単なことであり直ぐ様地球軍への追撃命令を出した。
それに煽られたザフト軍兵士達は”ジン””シグー””ゲイツ”を駆って撤退しようする”ダガー”部隊を追撃する。
彼らは目の前の惨状に怯えきって戦意を失い逃げ惑う子羊でしかない。
ザフトの兵士達はそれらを無視して煮えたぎる憎悪を燃やし追撃した。
「よせッ!戦意無きもの達を!」
”フリーダム”は思わず”ミーティア”をパージし続々と”ダガー”達を追撃するザフト軍の機体へ向かい”ジャスティス”、そして”ディスペアー”が続く。
「やめろぉ!」
キラは襲いかかろうとするザフトの機体を四肢やメインカメラ、武装を狙い撃つ。同時に”ジャスティス”も”ミーティア”を装備し複数機をロックオンし戦闘能力を奪っていくのと同時に”ディスペアー”も手にした<ヴァリアブルケイン>で攻撃し戦艦の航行を止めるが、焼け石に水といわんばかりに傷付いた戦艦はモビルスーツによって撃墜され動ける戦艦によってモビルスーツは撃ち抜かれ爆発する。
(私たちが全て救える筈がない…だけど…!)
全てを救う、そのために所属している場所を離れこうしているが現実は非常であり全ては救えないのだ。
トリガーから指を離し戦闘を続ける僚機へ通信を繋げる。
「”フリーダム””ジャスティス”!もう無理だ、戦闘を中止し集結地点まで撤退する!」
<でもッ>
「見ても分からないの!?今ここで被害を食い止めても大元をたたなきゃ意味がないって事を分かって!」
<…了解した。帰投する!>
<…ッ了解…!>
「殿は私が務める!先に撤退して!」
アスランはすんなりと納得しキラは不承不承、と言わんばかりに頷いて”エターナル”へ帰投する。
その背後を敵として見なしたザフト軍機か襲いかかろうとするが”ディスペアー”が気がついて撃ち抜き攻撃を警戒しながら後退する。今は引くしか出来ないのだ。
「よくもこんなものを……ッ!」
接近するザフト軍機を撃墜し<ヴァリアブルケイン>をクルーザーモードに変更しスラスターを吹かし飛翔し戦場を離脱した。
撤退する地球軍艦隊と四隻同盟と有志連合艦隊の姿を見てパトリック・ザラは立ち上がった。
<この”
うたいあげると司令室にいるオペレーターや艦隊の兵士達は【ザフトのために!】と次第に輪唱は盛大なシュプレヒコールへと変化する。
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