魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】 作:萩月輝夜
使っていたタブレットのキーボードが壊れて執筆できなかった…。
あと三話ぐらいで完結です。皆さんついてきてくださいね…!
感想高評価ありがとうございます!
誤字脱字報告申し訳ございません。
”プラント”から攻撃によって地球連合軍と同様に戦域から離れた四隻同盟はデブリ帯へ移動し状況を注視しながら補給と整備を行っている。
連合とプラントが再び動き出すのに備えての為だ。
<放たれたのはγ線です>
”エターナル”の艦橋にエアリス、キラ、アスランが入って行くと”クサナギ”のエリカから”ジェネシス”について入手したデータから知り得た情報を説明していた。
<ーーーつまるところあれは巨大なγ線レーザー砲ですね>
既に艦橋にはマリューとアズラエル、カガリが来ておりエリカは一瞬躊躇った後に続けた。
<……地球に向けられれば…強烈なエネルギー輻射は地表を焼き払いあらゆる生物を焼き払うでしょう…>
「撃ってくると…思いますか?地球を」
まさか、と思いつつマリューは艦長席に座るバルトフェルドへ問いかけると少し唸りながら答えた。
「大量破壊兵器の本来の目的は”抑止”だ…」
その言葉に安堵を覚える前に遮る言葉を発したのはアズラエルだ。
「ですが…既に其を放ってしまいました…連合は”核”を…ザフトは”ジェネシス”を…クソッ!!」
吐き捨てるように告げるのはまさか…と思っていたが”核”を何の躊躇いもなく使用した同族に対しての苛立ちでありその表情はこの場に集う者達は見たことが無かった。其ほどまでにアズラエルは苛立っていた。
「……申し訳ない…少し頭を冷やしてきます」
我に返りそう言ってアズラエルは艦橋から退出していく。その後ろ姿を見送りつつバルトフェルドが言葉を引き継いだ。
「撃っちまった…だからどのみち躊躇わんだろうよ。”連合”も”プラント”も」
その言葉に一人の少女が反応した。
「……私も戦場で初めて敵を殺したとき吐きそうでした」
「エアリスさん…」
唐突な話題に戸惑うアスラン達であったが其を聞いたキラとマリューの表情は曇りカガリとアスランは思い当たる節があった。
「…”へリオポリス”で”ジン”をこの手で撃墜したとき…”とんでもないことをしてしまった”と思いましたよ」
その次に続く言葉はアスラン達をハッとさせた。
「仲間を”守らなきゃ”と言う義務感と自分が”生きなければ”と使命感があって直ぐに慣れましたがね…」
そう言って苦く笑うエアリスは儚ささえ感じさせていた。
キラもアスランもそうだった。初めは恐ろしかったのにいつの間にかトリガーを引くことに慣れ照準の向こう側にいるのが自分と同じ血肉を持つ”人間”であると言うことを忘れていった。キラはエアリスや大切なものを守るために必死だったことをーー。
「”あれ”と”核”のボタンも一緒…だと?」
「違うか?」
バルトフェルドはマリューの言葉を冷たく切り捨てた。
「人は慣れるものだ…戦い、殺し合いにな」
その言葉はこのC.E…人としての本性を現していた。が、だからといってお互いの指に掛けられた
「”核”も”ジェネシス”も撃たせちゃ行けない…そうなってはもう全てが手遅れになる」
自分と言う
アスランとカガリは言葉を聞いて頷くがキラとラクスはエアリスを不安げな表情で見ていたが当の本人は気がつかなかった。
◆ ◆ ◆
「ミラーブロックの換装は?」
「後一時間程で終了いたします」
パトリックが管制官に尋ねるとそう答えるのを確認し正面モニターを見据えると”ジェネシス”のミラーブロックを換装しているのを護衛する艦艇とモビルスーツの姿が見て取れる。
”ジェネシス”は絶大な威力を誇るが収束点となるミラーブロックは膨大な輻射エネルギーによってズタズタになり再利用が出来ない…即ちは”消耗品”となっている。
「急がせろ」
そう言い放ち後ろに控えるメイアに問いかける。
「地球軍に動きは?」
「今だありません」
「フン、月基地に戻らずにまだ頑張っているか」
「連中もあの威力を見た後では必死でしょう…恐らく月基地からの増援を待っているものか、と…」
メイヤは「此方から仕掛けますか?」と問いかけるがパトリックは「既に死に体の艦隊だ…放っておけ」と吐き捨てた。その後に彼は満足そうな表情を浮かべた。
「そのようなことをせずとも二射目で全てが終わる…」
勝ち誇った表情を浮かべ答えた。
「我らの勝ちだよ、メイア」
そうだ。漸く我らは救われる。産み出されてから既に半世紀以上…地上では謂れ無き理由で迫害されて宇宙に逃れてからも理事国からの傍若無人な要求に耐え続けた苦しき日々…そして妻レノアを失った”血のバレンタイン”…同胞を多く失った。彼らは我々を虐殺してきたのだ。
「では…次は?」
「月基地を撃ってこの戦争を終わらせる」
其を聞いていたメイアも同じだった。これで終わる…”プラント”の大勝利と言うその光景に。
しかしその次に続いた言葉にヤキンの司令官とオペレーターは背筋を寒くした。
「尚抗う、と言うのなら地球を撃つさ」
◆ ◆ ◆
「ああ、そうだ!月基地より増援を急がせろ!猶予はもう無いのだぞ!」
ザフトからの追撃を逃れた地球軍艦隊はデブリ帯の影に隠れ月基地への増援を”ドゥーリットル”の艦橋で語気荒くして要求していたのを同じ艦橋にいるクルー達は語気荒くする上官の姿を見てびくり、として緊迫した空気が流れていた…その一方で”セラフィム”艦長は他人事のように今の状況を見ていた。
手酷くやられたものだ…と先ほどの一射によって艦隊の半数以上が撃墜され残った艦艇も被弾し修理を急ピッチで進めたり戻ってきた”ストライクダガー”と”01ダガー”…そして支援機である”コスモグラスパー”も手足や頭部を失い収容される筈の母艦を失って近くの友軍艦の甲板に固定される始末である。
”セラフィム”搭載の三機のカスタムダガーと”01ダガー”は無事に戻ってきたが半数以上が被弾し修復作業を急がせているが作業員とパイロットのやり取りを聞いて絶望するような内容しか飛んで来ない。
”核ミサイル”に手を出した報いか、と心のなかで失笑する艦長は上層部が核さえ使えれば勝てる、と丼勘定で戦場を見ていたのだろうと机上で行われる戦略ゲームを行っていたのだろうか。
大きな力で対抗すれば大きな力で対抗される…戦争とはそう言うものだ。
「艦長。チャーチルより救援要請です」
ふと、思案しているとオペレーターからの報告がやってきて思考を中断する。
ここまで逃げ延びた近くに停泊している”チャーチル”であったが修復が追い付かない、と判断したのだろう此方に救援要請を送ってきていた。
「…工作隊を送ってやれ。だがこっちも所々に被弾箇所がある。労力を割いている暇はないぞ」
「了解」
そう伝えると”セラフィム”から工作隊が発進する。
恐らくウィリアムの事だ”無事な艦は全艦発進せよ、再攻撃だ”と言うに違いない。
半数以上は失った、と言ってもまだブルーコスモスシンパの将校は多く士気は高くあの巨大な建造物…情報部の情報ではあれは”ジェネシス”と呼ばれる兵器であり理論上あれは
地球連合としてはあれは無視できない⋯むしろここで増援を待つのがもどかしいほどであり、今すぐに攻撃に移行した方が英断だろう、と思っていた。破壊できるだけの”核ミサイル”は残っている…命中させられれば、の話だが。
しかし。
(まさか…とは思うが”プラント”を攻撃する…なんて事はないよな…?)
艦長は再び思案する。
あの
そうすれば戦後の戦力保持にも繋がりブルーコスモス上層部とズブズブの将校達は一石二鳥だろうが今のこの状況で冷静な判断を下す…とも考えることも怪しいかもしれない
(ふっ…民間人を守るために軍に志願した筈が⋯とんだ貧乏クジだな…)
いっその事離反した先に就役した”アークエンジェル級”と共に軍を部下を引き連れ第八艦隊へ離反してやろうか、と考えたがこの男はそう簡単に自軍を裏切れるほど単純ではなかった。
「艦長、サザーランド大佐から入電です」
「了解した。繋げ」
オペレーターの声に再び思考を中止し正面に向き直る。
さて、どんな無茶振りが飛んで来るのか…内心で苦笑いを浮かべながら指示を受けた。
通信を終えた艦橋はドン引きするクルーの感情が伝わってくるが苦笑いを浮かべ真っ黒になった画面から視線を外すと後ろにいるオペレーターへ声をかけた。
「少佐の機体の調整は?」
無茶振りな指示に呆然としていたクルーだったが艦長の声で我に返る。
「…あ、先ほど完了した、と格納庫より連絡がありました」
「…そうか」
報告を聞いた後に短く呟き正面に向き直る艦長は心の中で一人ごちた。
(滅ぼすか、滅ぼされるかの最終戦争…くそったれの戦場だが…生きて戻ってこい)
部下でもある一人の少女の身を案じていた。
◆ ◆ ◆
沈黙が続いていた”エターナル”の艦橋でアスランがエアリスに声を掛ける。
「…エアリス」
決意の籠った問いかけに彼女は気兼ね無しにざっくばらんに返答する。
「どうした?」
「俺を…”ジェネシス”へ向かわせてくれ」
「アスラン…」
「父を…止めなくてはならない。息子である俺が…!」
アスランがエアリスに近づくとそう懇願するのを聞いてカガリも頷いた。
其を見て小さく頷いた。
「分かった…アスランのお母様のご遺体は”エターナル”へ移譲させた。そっちが一番安全だろうし…アスランとカガリ並びに合同部隊は”ジェネシス”のコントロールの制圧を。頭を押さえれば発射を阻止できるかもしれない…が…」
とそこでエアリスは言い淀んだのはその後の展開を予想したからだ。
「撃てるの?実の父親を」
「ッ…」
「エアリス其はッ」
「カガリは黙ってて」
ピシャリ、と締め切るとカガリは口をつぐんでしまう。
「世界が終わるかもしれない⋯その引き金を持つ父親を…お前は躊躇わず撃てるの?止めるために」
そう問いかけると目の前の男は揺るぎ無い意思をたたえた瞳でエアリスを見据えた。
「母と再会して…思ったんだ。もうこんなことをしている場合じゃない。奪って奪われてを繰り返したら取り返しがつかなくなる…そんな世界⋯母上も絶対に望んじゃいない!…だから父を…可笑しくなってしまった父上を
そう宣言するアスランを見てエアリスは小さく笑みを浮かべた。
同時に”エターナル”の乗組員も笑みを浮かべる。
「良い覚悟だ…おーけー…そっちは頼んだ。カガリ、アスランを頼む」
「ッ!ああ…!」
そう告げると同時に艦内に通信が響き渡る。
<地球軍艦隊動き出しました!>
「全艦発進命令!」
「行こう…皆」
”メネラオス”より全艦、四隻同盟にスクランブルが掛かる。
其を聞いたクルーとパイロット達は持ち場に就いたりモビルスーツへ搭乗するためにモビルスーツデッキへ向かおうとしてエレベーターに乗り込もうとして声を掛けられた。
「エアリス…」
キラとラクスが声を掛けてきたのを確認したエアリスはアスラン達へ一瞥すると「分かった」と頷いて三人を残しエレベーターの扉は閉じた。
困ったような表情を浮かべているとラクスがエアリスを見て胸元へ抱き寄せると驚く表情を浮かべるが振りほどこうとしようとはせずに受け入れる。
その腕に垂れ掛かる重さは想像以上に重いものだった。
「必ず戻ってきてください…わたくし達の元へ…それと…」
そう言葉を掛けるがその後に続く言葉をラクスは喉元につっかえたように言葉が出てこない。想像していることが本当になりそうで恐ろしかったのだ。
しかし、知ってか知らずかエアリスは抱き締め返した。
「あっ…」
「大丈夫…それにまだ、ラクスとお買い物、お話し、旅行…やりたいこと沢山あるんだから」
「エアリス…」
「それと…私の心配ばかりしないでキラくんへ励ましの言葉を掛けてあげて?」
茶化し気味に近くで見守っていたキラへ話題を振るとラクスは微笑を浮かべる。
「勿論です…キラにもわたくしの元へ戻ってきてほしい…三人がいる場所がわたくし達の”居場所”なのですから」
本来であれば送り出す役目を受けるのはキラであったのにいつの間にかその場所に自分がいることに苦笑してしまいそうになる。ラクスに”好き”と言われた時は動揺したけれども…それでも親友なのは変わらない。
「其はこっちの台詞だよ…ラクス。そっちも護衛があるとは言え鉄火場の中に入っていくんだからね?」
そう告げるとラクスは目を伏せる。恐らく…と言うより恐怖なのだろう⋯其は先ほどの光線と核の光を目の当たりにしたらそう思ってしまうのは仕方の無いことだ。
これから数年後に”後ろで見ているだけ”と揶揄されるだろうが、そんなことはないと断言できるのは覚悟がなければこんな場所に好き好んでなどいないからだ。
覚悟はある⋯ラクスは平和のために戦っているのだ、と…。
「あっ…」
「気を付けて」
「はい…」
ラクスをエアリスは抱き締める。
小さく声が漏れたが直ぐ様其は霧散し黙り込んでしまうが心地の良い沈黙であった。
少ししてお互いは抱擁を解いて見つめ合い頷くラクスはキラへ向かい合い指輪を渡す…其を見てエアリスは後々の事を考えて内心で苦い顔を浮かべていた。
ラクスはキラを抱き締め頬にキスを交わして離れるとアスラン達を追いかけるためにエレベーターの扉が開いたのを確認し格納庫へ向かうためにその場を離れる。
「無事に…二人とも…」
祈りを捧げるようにラクスは戦場へ向かう親愛なる二人へ視線を向けた。
キラは格納庫にある”フリーダム”へ搭乗するため、エアリスは”ドミニオン”へ向かうために通路を進み分岐路に差し掛かった所だった。
「…キラくん?」
後ろに引かれるのを感じ取ったエアリスはキラが自分のパイロットスーツの袖口を掴んでいた。
袖口を掴んだ少年の顔を伺い知ろうとするが、前髪に隠れてその表情は見ることは出来なかったが、なにをされたのは理解できた。抱き締められたのだ。
「んっ…」
「……エアリスさん、僕は…」
困惑するエアリスは顔を上げるが拒否するような素振りを見せなかったのは流れに身を任せた…だけでなく受け入れ表情を赤く染めたキラの顔が近づきそして唇が重なった。
湿った柔らかい音が荘厳なまでに静まり返った通路にやけに響く。唇が離れキラが何かを言おうとしたが人差し指をキラの唇に当ててそこから先を言わせないようにした。
「…それ以上はダメ」
「えっ…」
「…きっと出撃できなくなっちゃうよ」
小さな呟きにキラは驚きエアリスの顔は前髪に隠れて表情を見ることは叶わないが頬を真っ赤にして俯いている。
「離れるのが…いなくなってしまうのが恐ろしくて…きっと」
顔をあげる愛しい少女の顔を見てキラは美しい、と思ってしまった。
揺れる碧眼が涙に揺れその表情…そしてその全てが芸術品のように美しくまるで壊れ物のようだ、と。
「その先の言葉は…全てが終わってから…だから…ね?」
キラは恐れていた。目の前の少女を失うことを…それだけではない。ラクス、カガリ、アスランも”アークエンジェル”の皆も…。
キラは優しく微笑みあの日、
「…僕が貴女を守ります」
キラの言葉にエアリスは笑みを浮かべ目を閉じる。
「…ん」
「………」
「………」
再び唇を重ね抱擁を交わす。
この戦いで死んでしまうかもしれない⋯そう考えると恐ろしくなるが、二人は近くに愛する者達がいることを考えると不思議と恐れは薄れていった。
◆ ◆ ◆
”ドミニオン”に戻ったエアリスは”ディスペアー”へ搭乗すると艦橋から通信が入る。
「艦長?」
<無事に戻ってこい。お前だけでなくサブナック少尉達も…>
そう告げるナタルの言葉に思わず虚をつかれそうになったが元々優しい人なのだから当然だろう…知らない人から見れば驚きもされる。
「勿論ですよ…ナタル。やることがまだ沢山ありますから」
<…ああ。絶対だぞ>
ナタル、と呼び捨てると驚いたがフッと笑みを浮かべ通信を切った。そして入れ替わるように通信が入る。其は予想外の人物であった。
<………>
「お父様…?」
<…やることは多い。両軍の大量破壊兵器阻止と戦闘行動停止…我々が失敗すれば人類は…>
尤もらしいその言い分にエアリスの眉間はピクリ、と動く。
「…もっと言うことはないんですか?」
強い口調で遮られたマクシミリアンは虚を突かれる。
<…ん?>
「『危ない戦場だから気を付けろ』とか『無事に帰ってこい』って言えないんですか?」
ああ、昔からコミュニケーションを取っておけば…と自らの行いに後悔する父親は目の前で不満げな表情を浮かべる娘に対して苦しげな表情を浮かべる。
本当であればこんな混沌とした戦場に娘を送り出したくない…がしかし其を口に出すことは立場と彼のプライドが許さなかった。
そして自分と妻の娘であるエミリアが連合軍側にいる…「無事に連れ戻してこい」とも言えなかった。
マクシミリアンは少しの沈黙の後にこう呟いた。
<…全てが終わったらオーブの高級店の寿司屋に行くぞ>
「は…?」
<私の奢りだ…だから…無事に帰ってこい>
それだけ告げてマクシミリアンは通信をアウトし画面に映るのはエアリスの顔だけだった
「………フフッ」
静かになったコックピットで小さな笑い声が響く。
「本当に口下手ね…お父様。帰るよ…エミリアも連れてお父様の奢りで皆で食べに行こう…」
父なりのエールだった、と理解し正面を見据える。
この戦いで絶対に犠牲は出る…ひとつでも取りこぼさない為に全力で事に当たるのだ、と機体を起動させる。
命が震えた。
[MOBILE SUIT OPERATION SYSTEM]
『General
Unilateral
Neuro - link
Dispersive
Autonomic
Maneuver
(Synthesis System)
【GAT-RX08/1A Despair】 standing by
慣れ親しんだOSが立ち上がる。この戦場、世界を脇役である”ダガー”で駆け抜けてきた。しかしOSは主人公機であるG.U.M.D.A.M.と言うのは何とも言えない偶然を感じてしまう。
”ディスペアー”のバイザーの奥のツインアイが緑色に輝く。”ダガー”という機体に乗って随分と遠いところまで来てしまったなと郷愁を感じてしまい苦笑する。
エアリスはコックピット内部の広域通信を起動させた。
自分でも柄じゃない、と思いながらも伝えなくてはと思ったからだ。
『…私は地球連合軍特務部隊【B.L.U.E.M.】所属エアリス・A・レインズブーケ特務少佐です』
静かなる決意を秘めた凛とした声が四隻同盟の艦艇とパイロット達に届く。
『地球連合の”核”、ザフトの”ジェネシス”…双方の破滅の光を阻止するというミッションに全てのクルーの命を掛けて貰うことに心苦しく思います』
青い真空の宇宙に浮かぶ巨大な建造物を守るためにザフト艦隊と連合艦隊が既に戦端を発している。
『ですが…ここで我々が引くことを選択してしまえば世界は…私たちの未来は暗闇に閉ざされ光を見ることさえ許されなくなります』
その言葉にクルー達は息を飲む。
『
兵士達はそれぞれに故郷に残してきた親や兄弟…愛するもの達へ思いを馳せた。
エアリスは正面を見据えて宣言した。
『だからこそ…私たちはその手に銃を持ち矛盾を孕みながら戦うのです…人の未来を、希望を繋ぐために…!』
その言葉を皮切りに一斉に連合ザフトの同盟艦隊と四隻同盟のモビルスーツ、モビルアーマーが出撃する。
”アークエンジェル”からは四機のXナンバー、”クサナギ”からは”M1”と”M2”、そしてカガリの”ストライクルージュ”、”エターナル”からは”フリーダム”と”ジャスティス”が発進する。
”ドミニオン”から既に三機のXナンバーが出撃していた。
<APUオンライン…【GAT-RX08/1A】カタパルトへ!>
オペレーターからの指示で”ディスペアー”はカタパルトに運ばれて装備を装着していく。
<アーマメントシステムはtype1とtype2を
Type1とType2のアーマメントシステム、追加増設ブースターとアンチビームコートが施されたクロークアーマーを同時装備し手持ち武装を装備した”ディスペアー”…もとい、最終決戦仕様となった
「宇宙が…青い…」
恐ろしい光景なのにエアリスの心は凪いでいた。安心さえ感じさせる宇宙の抱擁をその身に感じながら言い慣れた言葉を告げた。
「エアリス・A・レインズブーケ、”ダガー”行きますッ!」
電磁カタパルトより射出された”
”絶望”何て縁起の悪い機体名ではあるが其はこの世界を覆う暗闇を払い飛ばすために自分に与えられた力なのだとエアリスはそう思ったのだ。
◆ ◆ ◆
「照準ミラーブロックまもなく換装終了します!」
一方で”ヤキン・ドゥーエ”の司令室で待ちわびた報告を受けたパトリックは立ち上がり素早く指示を出した。
「目標地点入力!座標、月面”プトレマイオス・クレーター”、地球軍基地!」
そう指示するとオペレーターは素早く入力する。
「目標地点入力。座標、”プトレマイオス・クレーター”」
「奴らの増援部隊の位置は?」
「グリーンアルファ五マーク二であります!」
そう報告を受けパトリックは勝ちを確信し笑みを浮かべた。
「我らの勝ちだな…!ナチュラルども」
「第七宙域、突破されます!」
「持ちこたえろと伝えろ!後僅かだ!」
パトリックは怒鳴り付けた後に後ろにいるメイアが動いた。
「わたくしも出ましょう。折角の機体温存させておくわけには行きません」
メイアはヤキンの格納庫にある
その申し出にパトリックは頷いた後に視線を向ける。
「もう少しだ。我々の悲願が達成されるのは…その後の事がある。つまらんことで負傷してくれるな?」
「分かっております…パトリック。しかし…」
美しい女性士官は踵を返してパトリックに顔を向ける。その口から問いかけられた言葉に思わず男は表情を強張らせた。
「盟友と御子息…シーゲルとアスランを撃つ事になりますが宜しいですか?」
その問いかけにパトリックは強張るように見えた。あの”エターナル”に盟友であるシーゲル…そして最愛の息子
あれが裏切ったのだ…!私を…!
「…構わん!メイア、お前も情に流されて”討てなかった”とは言うな?」
パトリックの覚悟を受けメイアはなにも言うまいと決意を固める。
「無論です…では」
そう告げ司令室を出ていくと扉がしまった。
◆ ◆ ◆
「私の機体はハーシェス大尉に渡しておけ。扱いきれるだろう」
戦端が切られる少し前、”セラフィム”の格納庫で一機のモビルスーツに近づく”エミリア”の姿があった。
「了解しました。理論は既にお分かりかと思いますが…」
「ああ。既に機種転換と適性テストは終えている」
「少佐はテストでも適正値を優にクリアしていますので問題無いとは…」
「敵から奪った機体を整備したのは君たちだろう?心配はしていない。あとは私の腕次第だ」
そう少女が告げると技術士官は満足げな表情を浮かべる。”彗星の魔女”にそうも言われれば多くは言えないのだろうそれを彼女は利用した。
「少佐なら…上手く扱えますよ」
「ふっ。そうさせて貰う(煽てて使わなければ行けないとは…面倒だな)」
本心を隠しながら心配そうにしていた技師を遠ざけコックピットに滑り込みハッチを閉じた。
”GAT-RX00/1A”…この機体はザフトから奪取した機体に地球連合が新たに型式を与えた機体で末尾の”A”は核動力を意味するものであり元々の型式は”ZGMF-X13A【プロヴィデンス】”だ。
破損が酷かったこの機体はデータをサルベージし連合の技術を投入し再生された。
左手に装備される肩掛の大型ビームライフルは改良された”アーキバスMk-Ⅲビームランチャー”、左手には一体化するように装備された複合防盾システム、これには二門のビーム砲と大型のビームサーベルを出力することが出来る。
そして背面のX字のスラスターユニットは変更されデータを元に作成されたマルチプラットフォームに置き換えられそこから突き出す砲門を備える円錐上の突起物を突きだし神の後光のようにも見えるそれと腰部にも同様な筒状の砲門が装備されている。
これらの武装は防御的にも改良を加えられていた。
しかし、それらは固定式の装備ではなくムウが操った”メビウス・ゼロ”の”ガンバレル”のように機体から分離し敵機を攻撃する…が有線ではなく量子通信を行い機体を中央として紐付けし自在に飛び回る無線誘導兵器…本来であれば”ドラグーン”と名付けられたこの兵器は”ファンネル”と呼称された。
制約の無いオールレンジ攻撃を可能とするがより強力な空間把握能力を必要とされるが”エミリア”はシミュレーションで軽々と扱って見せていた。
(血は争えんとは…この事か)
高度な空間認識能力は元軍人でパイロットであった父親のマクシミリアンの才能を受け継いでいる為であった。
その事を自覚すると苦虫を噛み潰したような表情をコックピットの内部で浮かべた後、”エミリア”は恐怖を感じさせるほどの美しい笑みを表情に張り付けた。
”ジェネシス”も”核ミサイル”も関係ない。両方とも消し飛んでしまえ、と自分が”理想郷”へ辿り着く為の礎として精々利用させて貰おう。
「
狂気の”夢”を携え新たな獲物を手に入れた”エミリア”は高らかに告げた。
「
機体が銀灰と青に色づいて”セラフィム”から射出されたもう一人の”彗星の魔女”が操り発進する機体のツインアイは世界を憎まんばかりに蒼く輝いた。