魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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最終話です。めっちゃ長くなりました…それではどうぞ!


終わらない明日へ

「照準ミラーブロックの換装はまだか!?」

 

パトリックがイライラしながら怒鳴った。

”ヤキン・ドゥーエ”の司令室にモニターには今尚激戦が続く周囲の戦闘様子が映し出されていた。

 

「光軸偏差の修正値を転送。照準ミラーブロック最終撃発位置へーー。」

 

その間にも”ジェネシス”の発射準備は粛々と進んでいるのをザフト特務隊のレイ・ユウキはそれを見つめながら不安を募らせていた。

 

ーまさか、地球を撃つつもりなのだろうか?

 

そう思いながらモニターのひとつを見ると地球軍艦艇と此方から離反したと思われるザフト軍艦に混じって此方へ向かおうとしている”エターナル”の姿が視界に入る。

 

ーどういう、つもりなのだ?

 

先の地球軍艦隊から発進した核攻撃部隊を”プラント”へ攻撃目標に定めたときに”フリーダム””ジャスティス”そして地球軍の機体と共にそれを無力化していた。

それは良いが地球軍を無力化した後連合の艦隊と共に今度は此方へ向かってきている事の報告を受け混乱していた。

彼ら、彼女らは味方なのか?敵なのか?

その事を考えていると凛とした声が飛び込んでくる。

 

<ザフトは直ちに”ジェネシス”を停止しなさい!>

 

「ラクス・クライン…!?」

 

その呼び掛けに管制室の者たちは確かにざわつき始める。

 

<”核”を放たれ…その痛みと恐怖を知る我々がその同じことをしようと言うのですか!?>

 

その言葉にユウキを含めたザフトの者達は大きく動揺する。

 

<撃てば癒されると!?同じように罪無き人々や子供たちを!?これが正義と!?>

 

自分達がしていることはナチュラルと同じではないか?

祖国を守るため、と割りきってきた。撃たれる前に撃つべきなのだと…敵が”プラント”を撃とうとしたからその応酬が今、繰り広げられている事に誰もが理解しラクスの言葉はここにいる全員をハッとさせた。

 

<お互いに放つ砲火が何を生み出しているのかまだ分からないのですか!?まだ犠牲が欲しいのですか!?>

 

全てを滅ぼしたいわけではない。地球…そこには自分達と同じく”同胞(コーディネイター)”たちがいるのだ…それこそそんなことをしてしまったら”核”をプラントへ撃ち込んだナチュラルと同じではないか?

 

「議長…」

 

戸惑いの声が聞こえた振り返ったパトリックはユウキを嘲笑う。

 

「あんな裏切り者の言葉などに耳を傾けるでない!」

 

「しかしーー」

 

「ならば何故奴らは此方を攻撃する?!奴らは地球連合と手を組んでいるではないか!?」

 

「それは…」

 

「ぎ、議長!」

 

ユウキが反論しようか、としたとき司令室のオペレーターが驚くような声を上げた。

 

「なんだッ」

 

この最終局面であり得ないその報告にパトリックは目を見開いた。

 

「”アプリリウス・ワン”と衛星ステーションが制圧されましたっ」

 

そう管制官が告げると次にはモニターに議場の表明発表する場所でシーゲル、そして地球連合のマクシミリアン、そしてオーブのウズミが手を取り合うという衝撃の強いものが流されていた。

 

◆ ◆ ◆

 

「HQ、此方アルファ1議場を制圧。死傷者ゼロです」

 

『HQ、此方オメガ1、カナーバ氏らと協力して衛星ステーションを制圧完了』

 

激戦が続く最中”プラント”首都”アプリリウス・ワン”へ到着した第八艦隊旗艦”メネラオス”は【B.L.U.E.M】を引き連れて最高評議会ビル、そしてザフト衛星ステーションをシーゲルの腹心である捕らわれていたアイリーン・カナーバらを解放させて制圧していた。

 

「シーゲル・クライン!?なんの真似だ!乗っ取りに来たのか…」

 

評議会ビルに詰めていた議員の一人であるユーリ・アマルフィは突如として連合兵士と共に入ってきたシーゲルに強い口調で問いかける。その口調は穏やかなものから一変して強いものだ。

 

「ユーリ…我々は乗っ取りに来たのではない…戦争を終わらせに来たのだ。”彼ら”と共に」

 

戦争を終わらせる…?シーゲルのその宥めるようなその言葉にユーリは疑問を浮かべるが後ろから兵士を左右に囲まれながら出てきた二人の男性を見て驚く。その人物は彼らにとって無視できない発言力を持つ者たちだったからだ。

一人は敵対組織の長とも言える人物でありもう一人はコーディネイターを受け入れを表明している国家代表…生き延びていたとは思えずここにいる。

 

「ナチュラルをここに連れ込むとはな…墜ちたなシーゲル」

 

評議会席に座る男性がシーゲルを冷やかに虐げる。色黒で癖っ毛の長髪が特徴的なタッド・エルスマンだ。

エルスマンとアマルフィ二人に向け言葉を掛ける。

 

「君たちの娘、息子…ニコルくんとディアッカくんは生きている」

 

そう告げると二人が息を呑むのが聞こえる。

 

「ッ!?」

「!?」

 

「彼らは今、”戦争”を止めようと必死に戦っている。私の娘と共にな」

 

そういってシーゲルは端末を操作して議場のモニターに写し出されるのは”ヤキン”と”ジェネシス”の最終防衛ライン

でありそこでは”エターナル””バスター””ブリッツ”が”ジェネシス”を破壊するために進撃している。

 

「私は娘たちがナチュラルの人々と笑いながら語り合っているのを見たよ」

 

シーゲルは二人へ向き直る。

 

「共に同じ釜の飯を食べ泣き、笑い…自分達は彼らと同じなのだ、と共に戦って通じあった…彼らはこの戦争が狂っていると…そう知ってしまったからこそ銃を取り進むべき未来へ向かうために戦っている。それに比べ我々含む大人はなんだ?全てを滅ぼそうとあんなものを作っている!パトリックはあれを地球へ向けようとしているのだぞ…!」

 

そう告げ”ジェネシス”へ指を刺す。あれは創造の光ではない。終焉の光だ。全てを終わらせる。

言葉を受け継ぐようにスーツを着用した男…マクシミリアンが前に出る。

 

「だからこそあれを破壊する。無用なものだ。そしてナチュラルとコーディネイターは手を取り合わなければならないんだ」

 

「大人達が始めた戦争…責任を取らねばならんよ。この戦争を終わらせるために私の娘と彼の娘も貴方の娘も戦っている…」

 

ウズミはモニターに映る戦場を見て遠くを見つめように呟く。

 

「憎しみのままぶつかれば全てが終わる…このような悲劇を繰り返させて良いのか?」

 

その問いかけに評議会にいるメンバー達の動揺が広がっているのが見える。

そして同時にユーリ達は覚悟を決めてシーゲルを見据えた。

 

◆ ◆ ◆

 

一人の少年が街頭モニターを見上げる。

 

「親愛なる”プラント”国民の皆さん、そして両軍の将兵の皆さん」

 

突如として”プラント”国内に演説が放送された。

そこに映し出されていたのは嘗てのプラント最高評議会議長であるシーゲル・クラインだった。

 

「まずはその手にしている銃を置いて話を聞いてください」

 

優しく問いかけるシーゲルの声色は”プラント”国民の心に浸透していく…しかしそれは逆効果でもあった。

”プラント”へ再び核を放ったナチュラルに対して憎しみを燃やす者たちも多い。しかし、同時にその行動を食い止めるために立ち上がった勢力が存在していることも表沙汰になってはいなかったが周知の事実となりつつある。

”クライン派”、”オーブ”、”連合軍第八艦隊”という三つの色が混じり一つの色になることを。

クライン派、地球軍第八艦隊の情報機関が監視の目を掻い潜って放送を流していたからだ。

 

多くのプラント国民、そして地球にいる人々が今起こっている戦争を目の当たりにしている。

 

「このまま憎しみのまま囚われ戦い続ければ”ナチュラル”も”コーディネイター”も関係無くこの世から消え去り人類という我々が生きた歴史は消え去ります」

 

”血のバレンタイン”…そして”ジェネシス”による報復攻撃は記憶に新しい。

撃たれては撃たれ戦場は拡大していき犠牲も多くなっていく。

人々は疲れていった。狂気にさらされ突き動かされるように戦場に駆り出され思考を停止しながらただ命じるがままに”ナチュラル”を殺し逆もまた然り、”コーディネイター”を殺し続けた。

人が持つ倫理観は”戦争”が蝕み鈍らせていきだからこそ人は”核”を”ジェネシス”を持ち出し絶滅させようとする。

強い武器、より強い力を!それではいけない、と立ち上がったのはシーゲル達だ。

 

「一度私は”プラント”を離れ私はパトリック・ザラと袂を分かちました。売国奴、裏切り者、と罵られようと人類終焉を阻止するためにこの場に戻ってきました。この場に集った方達と我々が人類が再び誤った道に迷わぬように共に私、初代プラント代表のシーゲル・クラインと地球連合副大統領のマクシミリアン・A・レインズブーケ殿と元オーブ連合首長国首相、ウズミ・ナラ・アスハ殿と共に…」

 

同じ場面にパトリックによって娘ラクスと共に処刑された筈のシーゲルと地球軍の進行によって死亡したとされたオーブの代表…そしてそれを侵攻した地球軍の司令官が手を握り肩を組む。その傍らには第八艦隊司令ハルバートンとザフト最高評議会議員であるユーリ・アマルフィとタッド・エルスマンが控える。本気であることを窺わせた。

映像はまだ続く。言葉を引き継いだのはマクシミリアンだった。

 

「私は”地球連合”の一員として暴走した連合軍の今回のこの恥ずべき行動に遺憾の意を表明します。組織としての立場を越えても我々は成さねばならぬことがある」

 

そうしてモニターが切り替わり”ヤキン・ドゥーエ”すぐ近くに映し出される巨大な建造物の影を見て人々は息を呑んだ。恐ろしい、とその感覚が襲ってきた。

 

「核ももちろん恐ろしい。だがそれ以上にそれを消し飛ばすこの建造物は地球に照射されれば生命そのものが停止する」

 

誰も彼も滅ぼしたいわけではない。ただ、話を、意見を聞いてほしいから行動が過激になるのだ。

 

「真に分かり会うためにこのような武器は必要ない。ザフト・連合の将兵達よ。あの恐ろしき光を放つ構造物を私たちは破壊する!”コーディネイター”と”ナチュラル”(我々人間が)が迎えるべき明日(未来)を視るために…!!」

 

三名の最高指導者が手を取り合い宣言した。

その光景を目撃した後世の少年は老人になった後にこう告げる。

 

ー私はこの目で見た。あり得ないものだった、と…しかしその光景は現実であり”ナチュラル”と”コーディネイター”が手を握り肩を組み、戦争を終わらせるために頭を下げる…有史以来のその光景は歴史的に語り継がれるべきものである、と…。

 

◆ ◆ ◆

 

「なんだ…この感覚…」

 

”ジェネシス”へ”ジャスティス”と共に向かっていたキラは奇妙な感覚を覚える。

ざらつくような冷たい戦慄が背中を這うように伝わり気のせいだろう、と片付けたかったがあせる気持ちが彼の胸中を支配する。

先行して離れていったエアリスの件もある…しかし今は”ジェネシス”を止めることが先決だ。

道中で向かってくるザフト軍モビルスーツと艦艇を無力化しながら進んでいると突如として前方から()()()()を浴びせられた

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

突然の攻撃に回避する”フリーダム”達であったが間髪いれずにザフトのモビルスーツの部隊が行く手を阻んできた。

連合艦隊の戦力は殆ど死に体でありそれらと戦っていた有志連合は消耗している。

実際に戦える戦力は四隻同盟のモビルスーツだけだった。

 

<ちっ!急いでるってのによぉ!?>

 

<手早く片付ける!>

 

<了解ー!>

 

迫ってくるザフト軍のモビルスーツを排除するために”ドミニオン”所属のオルガ達愚痴りながら相手をするが前方からの砲撃は止まらない。

 

<お前らは行け!此方で抑えてやるよ!>

 

「オルガ、クロト、シャニ…分かった!気を付けて」

 

<此方の台詞だ!おらおらぁッ!!>

 

<そらぁあぁあああ!撃・滅!!>

 

<うわぁああああああッ>

 

三機達はザフトのモビルスーツ群と戦艦に突っ込み敵を蹴散らしていく。

 

<くっ…!?>

 

「アスラン!カガリ!」

 

一方で”ジェネシス”へ向かう三機は”ジャスティス”のリフターに乗っていた”ストライク・ルージュ”が離脱し回避に専念してアスランは砲撃地点へ攻撃をすると大破した戦艦の残骸からその破片を吹き飛ばしながら一機のモビルスーツが飛び出す。

”フリーダム”と”ジャスティス”のコックピットにはその正体を示すものが映し出されていた。

 

「その型式は…!」

 

"ZGMF-X14A ジャッジメント"と表記されたその機体…機体の型式からキラ達の”フリーダム”と同じく核動力の機体であることを示唆している。

そうこうしているうちに”ジャッジメント”は”ジャスティス”との距離を縮める。

 

「アスラン!」

 

<初めましてだな。アスラン・ザラ>

 

「女…?」

 

機体に備え付けられた砲身からビームを吐き出しながら接近し”ジャスティス”へサーベルを叩きつけると近距離からの通信が入る。向こうの機体は此方の周波数を知っているからだ。

アスランも咄嗟にマイクロミサイルランチャーユニットを展開し放つが六つの火砲によって阻止される。

煙から飛び出す”ジャッジメント”は”ジャスティス”へ迫る。

 

<残念だよ…アスラン・ザラ。君は母上を亡くしている。それを理解できるから戦っていると思っていたが…>

 

「誰なんだお前は…!」

 

<私はメイア・シヴァ…ザラ議長閣下の同志といえば言いかな?”ジャスティス”、”フリーダム”…貴様達を”ジェネシス”へ向かわせない!>

 

アスランはその名前を聞いて記憶を呼び覚ます。たしか第一防衛師団の司令官であり”ジン”のプロトタイプ…”ザフト”の基礎を作った天才技術者であることを。

 

重装備の機体は”ミーティア・ジャスティス”をじりじりと後退させる。

 

「くっ…なぜこんなものを守る!多くを殺すこの光を生み出すものを!」

 

対するアスランも反発するように叫びビームソードを振り払うように振るうが重装備の”ジャッジメント”はスラスター出力で強引に距離を取る。

それを確認したキラは砲撃を開始するが小刻みにスラスターを吹かし回避されてしまう。それだけでなく手にしている<ルプス・ビームロングライフル>を撃ち返してきたことに見たキラは目の前のパイロットがただ者では無いことを悟る。

 

(強い…!)

 

シールドで弾くが立て続けに放たれる()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()はキラ達を追い詰める。

 

「ええいッ!!」

 

後ろに回り込んでいたカガリの”ストライクルージュ”がビームライフルを放つ。

直撃か、と思われたそのとき背面のバックパックの一部がスライドした直後、放たれたビームが()()()()()()()のだ。

 

「っ!?ぐぅッ!?」

 

「カガリッ!!」

 

弾かれたことに驚くカガリだったがその直後に機体と頭頂部に備えられた砲門が”ストライクルージュ”の方に向き放たれるとライフルを狙撃されてしまい咄嗟に誘爆するのを恐れ手を離しシールドを掲げると直後爆発し衝撃がカガリを襲った。

 

「カガリッ!ビームを弾く…!?あの機体と一緒なのか…?」

 

その光景をエアリスがみたらこの世界に無い技術(Iフィールド)…!?となるがそれに近しい技術…”ブリッツ”のデータを解析してコロイド粒子を応用して作られた<ミラージュコロイド・ディフェンサー>と呼ばれるエネルギー屈折技術であった。

しかし膨大なエネルギーを消費する為か現行では核動力の機体でなければ実現し得ないものだ。

 

「ぐっ…!?」

 

アスランは一瞬の隙をつかれ”ミーティア”の片方の射撃ユニットを撃ち抜かれパージを選択せざる終えなかった。

その機動力は自分達の機体と同等…またはそれ以上であることを確認したキラは”ミーティア”をパージすることを選択したのはこのままでは”ジェネシス”を攻略するための火力が不足する、と感じたからだ。

一般的な機体であればビームや背面のプラズマ収束砲で用いれば一撃で行動不能に出来るが先ほどそれが通用しないとカガリが教えてくれていた。

 

(ビームが通用しないとなれば…ッ!これで…ッ)

 

判断は早くキラはライフルを腰にマウントしてサーベルを抜刀し腰部レールガンを放ちながら突撃した。

 

<ちぃ…ッ!来るかね…”フリーダム”!>

 

”ジャスティス”と”ジャッジメント”の間を高初速の加速弾丸が通り抜け二射目を直撃しないように盾で防ぐ。

キラはコックピットで自分の想像を張り巡らせ操縦桿を握る手が強くなる。

 

「アスランッ!」

 

キラの予想はあのビームを霧散させる防御と実弾を防ぐPS装甲を併用しているがビームサーベルはどうか?

放たれたビームは弾かれるが常時展開しているビームを防ぐ事は?

アスランもキラの意図を理解し”ミーティア”をパージした”ジャスティス”はサーベルを連結し反撃に転じる。

 

(接近戦に持ち込んでッ…!)

 

”フリーダム”と”ジャスティス”が”ジャッジメント”へ左右からサーベルを振り下ろす。

これで…と思ったその矢先であった。

 

「「なっ?!」」

 

<甘いなぁッ!!>

 

直撃であった筈の攻撃は防がれた…()()()()()()()()()()()によって。

 

「隠し腕ッ!?」

 

膝部分の砲塔の発射部分から掌からマニュピレーターが飛び出してビームサーベルを保持して切りかかる。

咄嗟に反撃に二人は距離を取ろうとするが背面のビームランチャーが二人を襲った。

 

「ぐぅっ…!?」

 

「くそっ…!」

 

「キラ!アスラン!このぉッ!」

 

咄嗟にシールドを掲げることに成功したが超高収束砲の威力により吹き飛ばされてしまう二機を見たカガリは”ストライクルージュ”を動かし攻撃する。

ここでもある意味での原作改変が起こっていた。

アスランとエアリスによってしごかれカガリの技量は向上し今背負っているストライカーパックは本来の歴史では扱いきれないために装備されていない<I.W.S.P>…を第八艦隊が改良し支給した<ヴァリアブルストライカー>を装備し背面のレールガンとビームランチャーで”ジャッジメント”を狙撃するが隠し腕がシールドを掲げ防がれる。

 

<進ませはせんよ。あの一撃が全てを変える…愚鈍なるナチュラルどもを滅ぼすのだからッ!>

 

立ち塞がる”ジャッジメント”は今キラ達の前に立ち塞がる。

彼女の言葉は祝詞ではなく呪詛のようだ。エアリス達はまだ目標地点へたどり着けていない。

”ジェネシス”が地球へ放たれるまでもう、猶予はないのだ。

 

「…アスラン達は”ジェネシス”へ!この機体は僕が押さえる!」

 

放たれたビームをシールドで防ぎライフルを撃ち返すが屈折し無力化されてしまうが”フリーダム”は一機で戦っているわけではない。

 

「ッ!任せていいかキラ!」

 

”ジャスティス”が躍り出て肩の<バッセル・ビームブーメラン>を投擲し”ジャッジメント”の<ルプス・ロングビームライフル>の砲身を切り裂く。

 

「お願いッ!」

 

「…分かったッ!行くぞカガリ」

 

”ジャッジメント”を牽制しつつ二機が”ヤキン”へ向け離れていく。

キラは目の前に立ち塞がる機体を前に”フリーダム”を操った。

 

◆ ◆ ◆

 

「くそっ…!こいつッ!」

 

「いいわね…良いわ良いわ!新兵だと聞いていたけどこれは楽しめるわね!」

 

「なんなんだ…お前はッ!!」

 

”アークエンジェル”防衛の為に残ったトールは残って迎撃していたイザークと共に迫ってくる連合艦隊の足止めを行っていたが白緑の機体がしつこく追いすがっていた。

補給のために戻っていたムウ達の隙を狙ってやってきた”ハルピュイア”は小隊を率いてきていたのだ。

迎撃に残っていたトールはイザークと共に”ハルピュイア”達を相手取る。

 

「さぁ…踊って見せなさい!」

 

「くっ…!」

 

背面の”ラファールストライカー”より放たれた数十発のマイクロミサイル。其は小規模な艦隊を殲滅できる火力を誇っていたが”アラスカ”・”オーブ”・そして”ヤキン・ドゥーエ”というこの世の地獄を潜り抜けエアリスからの(しご)きを耐え抜いたトールはモビルスーツ乗りとしての才能を開花させていた。

 

(………!)

 

迫るミサイル群を即時旋回しながら加速し急制動を掛け挙動を狂わせた上で<イーゲルシュテルン>で迎撃して変形し機首としていたビームライフルを手にして放つ。

 

「うぉおおおおおおッ!!」

 

「…ッ!やるわね…!」

 

抜けられるとは思っていないなかったジャンヌは驚く。が直ぐ様モビルアーマー形態に変更し回避、距離を取ってクローを展開した。

トールはその行動を見て疑惑から確信へ変わる。

 

(やっぱりか…!この機体PS装甲を搭載していない!)

 

極端な迄に実弾を回避する”ハルピュイア”に対してトールは勝負に出た。

今”デュエルA・S”と”ゲイツ重装型”は取り巻きの機体と戦闘を行っている為今対応できるのは自分しかいない…頼りになる上官も気の合う戦友も今はいない。

クローとシールドが激突し火花が散るが出力は向こうの方が大きく弾かれてしまい後ろへ後退、マシンキャノンとマイクロミサイルを放って来た事にトールは覚悟を決めて操縦桿を握りフットペダルを押し込んで前へ進んだ。

殺到するマイクロミサイルが爆発する光景を見てジャンヌはほくそ笑みイザーク達は表情を強張らせる…が其は逆転する。

 

「…なっ!?」

 

「う、ぉおおおおおおおおおっ!!」

 

所々の武装が欠けた状態の”イージス・カットラス”が煙の中からツインアイを輝かせ飛び出した。

両腕のビームサーベルを展開する勢いそのままに”ハルピュイア”のコックピット目掛け突き刺し振るうと避けきれず貫かれた。

 

「あぁ…!いい、わね…!」

 

”ジャンヌ・オルデイシア”は自らが死んだことに満足して散っていった。

他人の死を見て満足していた女は自らが死ぬことで心が満たされた…自分でも理解できぬままその言葉を発して。

 

◆ ◆ ◆

 

一方その頃”アークエンジェル”級の戦いは終わりを迎えようとしていた。

”セラフィム”は対峙する二隻の”アークエンジェル”に対して特装砲を発射しようとしたが”ドミニオン”から放たれた<ヘルダート>によって片方の艦砲を潰される。

随伴していた”01ダガー”と【ネクロシス】も殆どが撃墜され残った機体も身動きが取れずにおり”エアリス”も”ディスペアー”と戦闘しているためか通信が繋がらない…そして旗艦である”ドゥーリットル”や核ミサイルを搭載した艦艇は全滅している。もはや戦闘継続は不可能…状況は目に見えていた。

 

「艦長…」

 

艦長はその状況を確認し短く息を吐いて不安がるクルーへ告げた。

 

「総員退鑑命令を出せ…まだ生き残っている艦艇もある…拾ってくれる筈だ」

 

そう艦長が指示するとクルー達は戸惑った表情を浮かべたが彼の覚悟を感じ取って全員が脱出挺に搭乗し退艦していくのを艦長は見送った。沈没する艦にしがみつくよりもましだろう。

 

「…帰る場所を失わせるとは…これでは艦長失格だな」

 

三つの艦艇は深く傷つき美しい威容は影を潜め煙を吹き出し特に顕著なのは”セラフィム”であり既に多くの武装は破壊され配備されているモビルスーツ隊はほぼ破壊されていた。

艦長として多くの部下と艦艇を失ったとなれば軍人失格だろう…しかし。

 

「だが…ただではやられん…間違った任務だとしてもやり遂げる…」

 

艦長は一人艦橋に残り覚悟を決め兵器管理席に立ってコンソールを操作する。

 

「悪いが…一隻でも沈めさせて貰う…!」

 

此方が沈黙しているためか攻撃を停止している二隻の”アークエンジェル”級…脱出挺を隠れ蓑にその一隻に向け特装砲の狙いを定めた。

 

「敵戦艦より脱出挺を確認!艦を破棄するようです!」

 

「艦を捨てる…?」

 

艦橋でアズラエルが目の前の艦艇から数隻の脱出挺が出てくるのを確認するとナタルも怪訝な表情を浮かべる。

しかし、次の瞬間二人は目を見開くと同時にクルーから悲鳴が上がる。

 

「敵戦艦特装砲発射体勢!」

 

破棄する、と思われた艦艇の右舷底部の<ローエングリン>が目も眩むような閃光が放たれるナタルは思わず悲鳴を上げそうになった。

 

「「なっ!?」」

 

ーバカなっ!?この状況で発射だと!?味方を巻き込むかもしれないのに!?

 

しかし、”セラフィム”の狙いは”ドミニオン”ではなかった。

 

「”アークエンジェル”ロックオンされています!」

 

その報告にナタルはインカムを取って叫んだ。

 

「ラミアス艦長!!」

 

しかし、その願い虚しく”セラフィム”から放たれた<ローエングリン>は”アークエンジェル”目掛け伸びていく。

その光景を同じく”アークエンジェル”も確認していた。

 

「艦長ッ!」

 

サイが上ずった声で叫ぶとマリューも悲鳴のような指令が艦橋に響く。

 

「回避ーッ!」

 

「ダメです!間に合いまーー!!」

 

操縦桿を握っているノイマンが言い終えるよりも前に放たれた閃光が艦橋へ到達するーーー。

瞬きすら許されない速度が迫る。

 

全員がそれぞれ目を見開くか強く目を閉じ最後の瞬間を迎えようとしていたその時。

何者か”達”が間に割って入って遮った。

 

<うぉおおおおおおおおおッ!!マリューッ!!!>

 

<どりゃあああああああああッ!!!ミリィーーーッ!!>

 

遮った存在は”白と赤”。

補給のため戻り直前に間に合った五体満足な状態の”P(パーフェクト)ストライク”と”イージス・カットラス”が装備しているアンチビームシールドを掲げ真っ向から<ローエングリン>の一射を受け止めている。

ノイズ混じりに艦橋にいるそれぞれに愛する者へ声が届く。聞き馴染みのある軽口と真面目な声色だ。

 

<行けるな?新兵…!?男は愛する女を守ってこそ一人前だ…ッ!>

 

<行けますよ…!そっちこそ先に息切れしないで下さいよ…ッ!少佐!>

 

<<うぉりゃあああああああああああああっ……!!>>

 

本来の歴史であれば耐えきれず霧散している筈の”ストライク”…しかしここにはイージス(女神の護り)を冠する機体がいる。

二機の対ビームシールドが烈迫した気合いの声と共に弾き返す!

 

「……終わりか」

 

閃光が止んだ後に撃沈していた筈の”アークエンジェル”はそのままであったが目の前には二機のモビルスーツは無傷というわけには行かずに掲げたシールドを保持した左腕は吹き飛んでスパークしている。

 

「ムウッ」「トール!」

 

<大丈夫だ!>

 

<今だ!撃ってください!>

 

間髪いれずに二機は射線上より離脱し二隻の”アークエンジェル”は目標を定めた。

 

「”ローエングリン”照準…!」

 

「目標”セラフィム”!」

 

”セラフィム”の艦橋へ狙いを定める。

その光景を見た”セラフィム”艦長は立ち上がっていたその体を艦長席に滑り込ませた。

 

「…すまないな、”エアリス”」

 

「「てぇーッ!!」」

 

そう言い残した次の瞬間には二隻の戦艦から放たれた陽電子砲が艦橋を撃ち抜き艦長の肉体を蒸発させた後にバイタルパートに引火しアークエンジェル三番艦”セラフィム”は宇宙の藻屑へと消えた。

任務に準じた男は最後に()()()()()()()()()()()()を呟いたーー。

 

◆ ◆ ◆

 

「エアリスゥゥゥゥゥッ!!」

 

「エミリアァァァァァァ!!」

 

”ジェネシス”と”ヤキン・ドゥーエ”の宙域で既に”アヴァロン”は数基の<ドラグーン>を失い”ディスペアー”も増加装甲を失い対物対艦ライフルを喪失していた。

展開していた<ドラグーン>の包囲網を潜り抜け喉元まで接近しビームサーベルを出力しシールドにぶつける。

お互いに脳天に稲妻が走る。

エアリスは殺気を感じとり反射的に回避するがエミリアは自らの母艦と部下達が戦場で散ったことを認識すると表情を歪める。

 

「…ッ!ちぃ…!」

 

「もう母艦は沈んで部隊は全滅した…もう諦めて!」

 

心からの叫びをエミリアは嘲笑う。

 

「…それがどうした!まだ戦闘は続いている…勝ったつもりかぁ!!」

 

「ぐぅ…ッ!!」

 

複合武装のビームサーベルを大きく振るい”ディスペアー”を弾き飛ばした後に間髪入れずに<ドラグーン>を展開し包囲網を形成され放たれた荷電粒子の嵐を潜り抜けるために消耗しきった精神に活を入れて回避する、が…エミリアは<ドラグーン>に慣熟したのか死角、鋭角的な攻撃が多発しAMBACとスラスター、ビームサーベルを振るい切り飛ばしすが対に五体の一部と武装が破損する。

 

「ぐぅっ!?…このままじゃ…!」

 

<ドラグーン>の放ったビームがサーベルとシールドを保持していた左腕が吹き飛ばされ背面の<パラディオンストライカー>のビームキャノンを破壊する。

 

核動力とバッテリー動力では隔絶した差があり既に”ディスペアー”のバッテリー残量は予備コンデンサは既に使いきっておりメインコンデンサは半分を切っていた。

コックピットに届く戦況報告は絶望的で未だに主力部隊が”ジェネシス”と”ヤキン”に到達できていない事に。

操縦桿を握る手が強くなり最悪の結果を想像してしまう…世界が焼かれ混迷する世界に人々の涙と怨嗟の声が木霊する…愛するもの達が失われるのを想像してしまう。

 

遂に”アヴァロン”が操る誘導兵器からロックオンされてしまう。

どうにか抜け出そうとするが四方を囲まれ逃げ道には射線がある。

 

(逃げ道を潰された…!?ダメだ…ダメだダメだダメだダメだ…そんなことは…絶対に認めないッ…!!)

 

冷や汗が流れる。

まだ、やることが沢山ある。約束も果たせていない。

其にまだ、(エミリア)も説得できていないしあの正面に映る巨大建造物(ジェネシス)を攻略できていない…このままではダメだ、と息づかい荒く正面の”アヴァロン”を力強く見据える。

 

(まだ私は…やることが…あるんだッ!…だから…まだ、()()()()ッ!)

 

再び、エアリスの視界に映る宇宙は青さを増して()()()()()()()()()()()

 

◆ ◆ ◆

 

対面するエミリアは被弾した”ディスペアー”を見て勝利を確信する。

 

「終わりだな…エアリス!」

 

<ドラグーン>の銃口から臨界する燐光を前にして回避行動を取ろうとしない”ディスペアー”…そのコックピットを狙う。

遂にそこ目掛けビームが放たれた。

ようやく私は、私になれるのだ…此方が”プラント”を討てようが討てまいが関係ないのだから。

 

「…なに?」

 

すっとんきょうな声が漏れ出した。

放たれたビームが”ディスペアー”に到達…することはなかったからだ。

コックピットを狙って放たれたビーム…其は目前で突如として動き出した”ディスペアー”が保持するビームライフルが放ったビームと相殺したからだ。

 

「なっ!?」

 

その事を確認した瞬間に驚きはしたが素早く攻撃を続行する。

しかし死角に配置し、背後に存在していた<ドラグーン>の射撃を回転し避けビームを直撃させ背面撃ちで撃墜する。

 

「ッ!その力を見せつけるなぁ!!」

 

怒りを露にするエミリアをよそにエアリスは冷静だった。

 

(ゆっくりに見える…?これは…)

 

放たれる攻撃が()()()()()()()のだ。何処に配置して何処を撃つのか、次何処にどんな攻撃が来るのか…その直感のままに機体を動かし”アヴァロン”に到達するまでの最短ルートを辿る。

 

(抜けられる…!)

 

「貴様ぁ!!」

 

怒りに任せ複合武装出力し残ったドラグーンを展開する、がしかし其は自らも焼きかねなかった。

 

「この距離では自分もドラグーンで撃たれるわよ!もうやめて、エミリア!」

 

「ぐっ…!?そ、れがどうしたぁ!!」

 

距離を縮められ後方に展開した<ドラグーン>の砲が”ディスペアー”へ向けられるが今発射してしまえばビームの嵐に巻き込まれる…しかし彼女は其を選択した。

 

「…!!」

 

自らも省みない放たれた一撃必殺の嵐を”ディスペアー”はスラスターと武装を合わせて活用し潜り抜け懐に入って出力したビームサーベルを振るい複合武装と頭部をもぎ取った。

 

「ちぃ…武装が…!」

 

反撃で放たれたビームライフルの一撃が”ディスペアー”のメインカメラを吹き飛ばす。

 

「ぐっ…まだよ!たかがメインカメラが死んだだけよ!」

 

モニターが死ぬがエアリスはその()()を信じて突き進む。

後方へ飛ばされた”アヴァロン”はスラスターを吹かし戦闘しながら流されていたからか既に”ジェネシス”付近まで到達していたのかそちらへ逃げ込んだ。

 

逃げ込むエミリアを追いかけるためにエアリスも”ジェネシス”へ向かうが防衛していたザフト軍の機体が前に出て攻撃を仕掛けるが歯牙にも掛けず撃墜し爆発するその前に凄まじい速度で通り抜け後を追いかけた。

 

◆ ◆ ◆

 

「あの機体は…防衛部隊は何をしているか!」

 

一方で三つ巴の戦闘を繰り広げていたキラ達、そのなかでメイアは”ジェネシス”へ向かう二機をモニターに捉え舌打ちする。奪われた”プロヴィデンス”と”ディスペアー”と呼ばれる機体…両者ともに戦闘を繰り広げ所々破損している。

 

「させないっ!」

 

”ジャッジメント”はその二機を追うように動こうとするが”フリーダム”が割って入る。

キラは敵が見せた”隙”に対してチャンスだと判断した。

そう決意し今持つ武装と全力で”ジャッジメント”に対して<バラエーナ収束ブラズマ砲>を放つ。

その攻撃が<ミラージュコロイド・ディフェンダー>の切り替えに失敗した”ジャッジメント”の隠し腕に当たり破壊した。

 

「そこまでして世界の崩壊を防ぎたいか!怨嗟と憎悪が飽和するこの世界を!」

 

直ぐ様違いにビームサーベルを抜刀し”フリーダム”の左腕を切り裂く。

 

「”ジェネシス”が放たれれば愚かしいナチュラルは滅びる!滅びれば世界は平和になるさ!」

 

「どうしてそんなにあんなものを地球に撃ちたいんだ!人が沢山死ぬんですよ!コーディネイターもナチュラルも!沢山の人が!」

 

そうだ。あれが放たれれば世界は…そこに住む生き物達は全て死滅し死の星に変わる。

何故ソコまで”プラント”のコーディネイター達が駆り立てるのか…その理由がメイアの口から聞かされ絶句する。

 

「…私の夫と息子は”ユニウスセブン”にいた…これで理解できるだろう!」

 

「…っ!(アスランと同じ…!)」

 

「最初に引き金を引いたのはナチュラルだ!…その引き金を引くものがどれ程愚かか知らぬ君ではあるまい!」

 

彼女もまた”ブルーコスモス”の暴走によって被害にあってしまった被害者の一人という事だ。

 

「君も我々と同じコーディネイターだ…この気持ちは理解できる筈だろう?其なのに君は同胞に刃を向け続けるのか?愚かな少年だ…君は…他人の”望み”を破壊したいのか!」

 

”ジャッジメント”の重装甲の脚部が蹴り出され激突し重い音を弾きながら装甲に激突すると同時に隠し腕が発動、脚部を切り裂く。

呻きながらキラの操縦桿を握る手が強くなる。反撃と言わんばかりに手にしたビームライフルが”ジャッジメント”のライフルを保持する腕を貫いた。

 

「(僕は…!)ッ!」

 

キラは”へリオポリス”から”ヤキン・ドゥーエ”まで数多の同胞を討ってきた。

理由はあった。しかし其は機体の向こう側にいる”同胞”も同じだ。守りたいものを守りたいだけで…その意思を打ち砕き生き残るために必死だった。

自分に彼女の言葉を否定する権利など無いように思えてきた…しかし。

 

ーお父様が昔、言ったことがあってね。『自分の自由は他人の不自由だ。』って。自由を勝ち取るために他人を不幸にするのは人間の原理…戦争ってのは意見のぶつかり合い…”自由の押し付け”って私は思うよ。だからキラ君が”デュエル”に対して怒りを見せるのは自分の”自由”が侵害されたって考えたからでしょ?反撃するのは仕方ない…ー

 

”ジャッジメント”が放ったビームがビームライフルを保持した腕を貫き爆発させる。

 

揺らぎそうになる意思を愛する人の言葉がリフレインし補強する。

 

そうだ。自分は既に”銃”を取ってしまった。守りたいもの(覚悟)を、守りたい人(エアリス)たちを守るために。

キラは勇ましく叫ぶ。

 

「それでもッ!」

 

”フリーダム”は体勢を直し残った左腕でサーベルを抜刀し<アンビテクスト・ハルバードフォーム>で”ジャッジメント”へ突撃した。

 

「護りたい、世界があるんだッ!!」

 

残ったビームキャノンが”フリーダム”を襲い直撃し大爆発を引き起こす。

煙の中から飛び出す”フリーダム”は頭部が吹き飛ばされ胸部左側を破壊するが勢いを削ぐことは出来なかった。

 

躍り出た”フリーダム”の光刃は”ジャッジメント”の<ミラージュコロイド・ディフェンダー>を貫き下半身部分を破壊した。

 

◆ ◆ ◆

 

「”ジェネシス”射的距離に入ります!」

 

”エターナル”の艦橋にダコスタの声が響く。後方より進撃していた有志連合はようやく到達した。

 

「フェイズシフトと言えども無限じゃない…!」

 

しかしこれからが本番でありバルトフェルドは一息吐くまもなく指示を出した。

 

「主砲発射準備、てぇーッ!!」

 

砲撃主であるアイシャが狙いを定め共に進んでいた”クサナギ”と共に<ローエングリン>を放つ。

同時に連合のネルソン級やドレイク級、そしてナスカ級とローラシア級以下の主砲とミサイルを発射し座礁していた戦艦の残骸を破壊しながら”ジェネシス”を目指すが自動迎撃システムがミサイルを撃ち落としミサイルも防がれはしたが多くの火線が基部とミラーに直撃したものの大質量の”フェイズシフト装甲”に阻まれ決定打を与えられていない。

 

「くそっ!厄介なものを…!」

 

「このままじゃジリ貧ね…アンディ!」

 

「だが諦めるわけには行かん!撃ち続けろ!」

 

ビームは戦艦のエネルギーがあり続ける限りは撃てるがミサイルは有限だ。そして時間もあまり猶予はないのだ。

 

「”アークエンジェル”と”ドミニオン”より入電!間もなく”ジェネシス”への有効射程圏内に入る、とのこと!」

 

ダコスタの声色が明るくなる。嬉しい報告だった。

単純に特装砲を扱える頭数が増えることになる。そして彼女達がこちらに来るということは連合の”アークエンジェル”級を撃沈したという証拠だからだ。

 

「皆さん!こちら側に機運が巡ってきています!このまま”ジェネシス”を!」

 

ラクスの声が艦橋に木霊する。艦橋のクルー達は落ち込み気味だった心を奮い立たせた。

その直後に足止めを食らっていた”ジャスティス”と”ストライクルージュ”が追い付く。顔は見えないがその声色に気迫が宿っていた。

 

<…”ヤキン”に突入してコントロールを潰す!>

 

”ジャスティス”は破損している”ミーティア”をパージし飛び去っていく。

 

「アスラン!?」

 

<行くぞカガリ!>

 

<うん!>

 

”ストライクルージュ”も追いかけるようにスラスターを吹かし光の尾を引く。

 

「アスラン!カガリさん!」

 

<大丈夫だ!任せろ!そっちは”ジェネシス”を頼む!>

 

「アサギ機とキクチ機、ナガト機はカガリ様の護衛を!」

 

キサカが素早く指示を出す。指示を出された”M2アストレイ”と”M1アストレイ”の1小隊が随伴すると共に攻撃していた第八艦隊の艦艇二隻が突出し”01ダガー”と共に”ジェネシス”へ向かう。

 

◆ ◆ ◆

 

”ヤキン・ドゥーエ”を守っていた”シグー”と”ジン”、”ゲイツ”が接近する”ジャスティス”達に気がつき迎撃しようとするが其よりも早く武装とカメラを撃ち抜かれ無力化されてしまう。

”ストライクルージュ”もストライカーと受け取った”M2アストレイ”のライフルを放ち砲台を潰す。

しかし如何せん数が多くアスランと”ジャスティス”の相性があったとしても困難を極める…この混乱に乗じての四人で基地制圧は現実的ではない。

現にわらわらと沸いてくる敵モビルスーツ…アスランは対応しようとしたその時だった。

 

「なんだ…!?」

 

次の瞬間に”ヤキン・ドゥーエ”から出撃したモビルスーツが後方からのビームに撃ち抜かれた。

新手か…!と思ったアスランだったが其は違っていた。

連合軍の”ネルソン”級と”ドレイク”級が”ヤキン”へ向かっているのを確認すると通信が入る。

 

<此方第八艦隊所属”モントゴメリ”艦長トム・コープマンだ。基地制圧をするには四名ではきついだろう…【B.L.U.E.M.】の選りすぐりを連れてきた…援護する!>

 

同時に左右翼には”バーナード”と”ロー”…本来の歴史では撃沈していた筈…敵対していたアスランとはあり得ない組み合わせであったがこれもまた必然なのだろう。

必死に基地を防衛する対空砲火を潜り抜け宇宙ドッグへ滑り込むように取り付くとアスランとカガリの目の前に被弾したモビルスーツが係留されパイロットが負傷しているのか運び出されている光景が飛び込みカガリは痛ましい思いでそれを見ていた。

自らも戦い撃墜し戦ってきた相手の姿がそこにあったのだから。

 

<総員白兵戦用意!決戦だ!>

 

同時にモントゴメリから発進したランチから黒を基調としたパイロットスーツを着用した特務部隊装備の連合兵が続々と現れ動力部、セキュリティ、工廠部を制圧するために動きだし残った小隊はアスラン達を護衛する。

その他は”ジャスティス”達と退路を確保するために残った。

 

混乱する基地の中を進むアスラン達は彼の着用するザフトのパイロットスーツが隠れ蓑になっていたため発見が遅れていたが流石の最終防衛ライン基地の警戒は緩く無かった。

 

『地球軍が基地内部に侵入した!保安要員は対応せよ』

 

直ぐ様アラートが鳴り響きドアから飛び出す兵士達が彼らを視認し銃を撃ち掛ける。

 

「応戦する!」

 

連合兵士は反応しアスラン達の前に出てザフト兵士へ撃ち返した。

倒れるザフト兵を他所にアスランが気がつかない死角から別のザフト兵が狙うが其に気がついた連合兵が庇うような形で前に出て数発撃ち込むが前に出た兵士も銃弾を喰らい倒れた。

 

「おい、しっかりしろ!」

 

アスランは倒れた兵士を物陰に引き込むが既に虫の息であった。自分よりもすこし年齢が上の青年は振り絞るように声を上げる。

 

「あんなもの……地球に撃たせてたまるか…残してきた…娘と……」

 

そう言い残して青年は絶命する。硬直を起こして伸ばした手が宙に留まる。

その姿を見てアスランは青年の目蓋を閉ざして地面に横たわらせた。

銃撃が続いていたが指揮官がポーチから手榴弾を手にとってピンを抜いて投げつけた。

爆発が起こってカガリ達は身を竦めるがアスランは散ったザフト兵と連合兵を見つめると部隊指揮官の男が呟く。

 

「…悲しんでいる暇は無いぞ」

 

その言葉を受けたアスランは顔を上げる。

 

「…分かっている。行こう」

 

アスランは立ち上がって司令室へ続く道を行く。

そして奥の通路にある司令室へ続くエレベーターへ数名と共に乗り込むアスラン達。

 

(父上…)

 

向かう先にいるのは自分の父親でありザフトの最高指導者の姿を思い浮かべ胸が苦しくなる。

何故、そこまでしてナチュラルを滅ぼそうとするのか…父親の狂気を必ず止めなければ、と拳を握った。

 

◆ ◆ ◆

 

”ヤキン・ドゥーエ”の司令室では”ジェネシス”を攻撃する”エターナル”を軸とした有志連合の姿を捉えパトリックの苛立つ声が響いていた。

 

「あんな小娘どもの艦とっとと叩き落とさんか!」

 

その命令に困惑する兵士達も生まれ始めていたがパトリックはそれを無視し遂に命令を下した。

 

「急げ!目標地点入力!北米大陸東岸地区!」

 

「ぎ、議長…!」

 

側近のユウキはたじろぐ。

まさか、本当に撃つのか…!?そんな当惑を同じくパトリックの言葉を受けたオペレーターも動揺しながら兵士は目標地点を入力する。撃つ筈がない、と驚異に対する示威行為なのだと、しかし…

 

「目標地点入力…地球…大西洋連邦首都、”ワシントン”…」

 

オペレーターも不安になりながら辿々しくキーボードを入力する姿を見て一喝するようにパトリックが怒鳴る。

其は肯定するものであった。

 

「何をしているか!これを撃てば全てが終わる!」

 

「議長!」

 

その言葉にハッとしたユウキは前に出る。

 

「この戦争我々の勝利です!今撃てば地球上の生物が死滅します!地球にいる我らが同胞も!」

 

彼は必死にパトリックに呼び掛けるがそれを聞いた本人は呆れと侮蔑の混じった溜め息を漏らし座席の影に隠れ胸元からとあるものを取り出していることに気が付かなかった。

 

「もう、これ以上の犠牲はーー」

 

そう言い終える前に振り向いたパトリックが手にした拳銃の引き金を引いて発砲した。

頭蓋と頭部に放たれた弾丸はユウキの意識と命を奪う。最後に彼が見た光景は表情一つ変えずに自軍の指揮官…いや反論する”邪魔者”を排除する者の褪めた目だった。

 

「ふん…奴らが…敵がまだすぐそばにいると言うのに何故、撃つな、と言う?」

 

静かな声が”ヤキン・ドゥーエ”の司令室に響く。パトリックの行動にオペレーター達が恐怖に満ちた目で最高指揮官を見上げる。

 

「ー撃たねばならんのだ、撃たれる前に!」

 

パトリックは立ち上がり発射シーケンスのコンソールに突撃しオペレーターを退かし操作を始める。

 

「ぎ、議長!まだ射線上にはまだ我が軍の味方が…!」

 

その行動に気がついた指揮官の一人がパトリックを制止するがその言葉に心動かされた様子もなく直ぐ様反論する。

 

「勝つために戦っているのだ!そのぐらいの覚悟は皆、あるであろう!」

 

その言葉に指揮官は驚きすくむ。もう既に彼の目の色は敵への憎悪と勝利への執着しかなかった。

パトリックが”ジェネシス”発射のための最後のエンターキーを押され破滅の光が地球へ降り注ぐーーーー。

 

その時だった。

 

「がッ…!?」

 

パトリックが吹き飛ばされるのをオペレーターと止めに入った指揮官が目を丸くする。

”ヤキン・ドゥーエ”の司令室に少年の怒鳴り声が響き渡ると同時に赤いパイロットスーツを着用したザフト兵士がパトリックの頬…顎を左ストレートで撃ち抜き吹き飛ばしていたのだ。

 

◆ ◆ ◆

 

司令室の扉が開いた瞬間に聞き馴染みのある声…その声で怨嗟の雑言がアスランの耳に入り彼は後先を考えずに飛び出し暴走する父親へ拳を振るった。

 

「このッ…馬鹿野郎ッ!!!」

 

その拳は父の顎を捉え一瞬にして意識を刈り取り吹き飛ばす。

司令室には慣性のまま浮き上がった二人の人影に愕然として目を奪われており物音は断続的に入ってくる戦闘の報告のみであり人々は呼吸を忘れたかのように静かだった。

保安要員が侵入してきた外敵に対応しようとして動き出すが別行動していた特務部隊によって銃を突きつけられ身動きを封じられた。

 

連合式のパイロットスーツを着用した指揮官が天井に向け自動拳銃の弾丸を発砲し木霊した。

 

「動くな!この基地は我々が制圧した!逃げたいものは逃げろ!抵抗するものは相応の対応をさせてもらう!」

 

そう告げると兵士達は蜘蛛の子を散らすように司令室の外へ駆け出す。数名の兵士が持ち場に着くように命令するが其は意味を既に持たず一人が出口へ向かうとまた一人、と出て行く。

人波を掻き分け宙に浮かぶ人影を見て驚いた。

 

「ユウキ隊長…!?」

 

見知った人物が事切れていることにアスランは驚く。

どうして彼がここで…と想像も及ばなかった。一先ず彼の開いた瞳孔を閉じて宙に浮かび気絶する父親をカガリと共に下ろした後に連合の指揮官はアスランの手を優しく触れた。

 

「君が父親に手錠をするのは酷だろう…私がする」

 

彼なりの優しさに止めるとは言え父親を殴ってしまった罪悪感と一緒に込み上げるものがあった。

 

「アスラン…」

 

「其にな…君がもし殴りかかっていなかったら君の父上は誰かに撃たれていた…いいね?」

 

「はい…」

 

アスラン達はパトリックを捕らえ”エターナル”へ向けて準備を進めるのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

もぬけの殻となった”ヤキン・ドゥーエ”の司令室から拘束したパトリックを”エターナル”へ移送する準備を進めて最後に残ったアスランはすぐ横のコンソールがアラートを発している事に気がつき確認する。

そこには”ジェネシス”の発射シーケンスが途中で止まっていた画面が切り替わり基地内部に人工音声が響き渡った。

 

<自爆装置が作動しました。繰り返します。自爆装置が作動しました。停止することは出来ません。爆発まで六〇〇秒です。総員は速やかに艦艇ドッグより避難挺にて脱出してください。繰り返しますーー>

 

”ヤキン・ドゥーエ”が破棄されることにはどうでも良いと感じたが嫌な予感を感じ取ったアスランはコンソールを操作すると後ろから残っていたカガリが覗き込む。

詳細を確認すると飛び込んできた情報に目を疑った。

 

「”ヤキン”の自爆に”ジェネシス”の発射が連動している…!?」

 

「ええッ!?」

 

「くそっ…!父上…!何故こんなに…!」

 

「おい、待てよアスランッ!」

 

驚くカガリを他所にアスランは連動解除を試みコンソールを操作するが”連動解除不可”と表示されるとキーボードに拳を叩きつけた。

父を止めなければ、とその思いでここにやって来て其が叶った、かと思えばそうではなく父は憎悪のまま全てを滅ぼそうとしていたことに止めなくては…とエレベーターへ飛び込み扉が開くど同時に”ジャスティス”へ飛び込みドッグから飛び出す。

あとに続いてカガリの”ストライクルージュ”が後を着いてくる。

 

「お前、どうするつもりだ!?」

 

「”ジェネシス”をーー”ジャスティス”を内部で核爆発させる」

 

「そんなことをしたらお前!?」

 

「もう、これしか方法がないんだッ!沢山の他人を殺した…俺の父親の罪を…俺が清算する!」

 

「アスラン!」

 

”ジェネシス”へ向かい”ジャスティス”を用いて破壊する。父の罪を…息子である自分がどうにかしなくてはならない、アスランはそう思っていたがそう簡単に事は進まない。

”ジェネシス”を防衛していた第一師団の艦艇とモビルスーツが襲いかかる。護衛で残っていたモビルスーツ達はパトリックを護衛するために”モントゴメリ”と共に随伴している。恐らくザラ派であり父を奪い返そうと躍起になっている筈だ。

 

<行かせん!>

 

<この光は我々の希望なのだ!愚鈍なナチュラルどもに鉄槌を下す!!>

 

<メイア様の意思…我々が引き受けるのだ!>

 

数十機が”ジャスティス”と”ストライクルージュ”へ襲いかかり”ジェネシス”への道を閉ざす。

 

「くそっ!?こんなときに…!邪魔をするな!!」

 

残りカウントは”一ニ〇”を既に切っていた。

 

◆ ◆ ◆

 

”ヤキン・ドゥーエ”から続々と脱出挺と戦艦が離脱していく。

”ヤキン・ドゥーエ”へ突入した部隊より司令官と基地機能を掌握したことを確認しラクスは安堵の息を吐くが未だその胸騒ぎは止まなかった。

 

(キラとエアリスは…無事なのでしょうか…?)

 

ラクスの心配を他所にクルーからの報告にバルトフェルドは耳を疑う。

 

「”ヤキン”の自爆に”ジェネシス”の発射が連動している、だと…!?」

 

驚くのを尻目にようやくその宙域に”アークエンジェル”と”ドミニオン”が傷だらけになりながら航行し先導するのは五機の”Xナンバー”達。目の前の状況に戸惑うマリュー達は問いかける。

 

<バルトフェルド隊長これは…!?>

 

<”ヤキン・ドゥーエ”は破棄されたのか…?>

 

「自爆装置を起動して破棄した…”ジェネシス”の発射と連動してるっている最悪の置き土産と共にな…!」

 

<なんですって!?>

 

<くそう…!>

 

巨大な建造物に視線が集中する。アズラエルはふと気がつく。

 

「…エアリスは何処に?」

 

戦闘が開始されてからエアリスの”ディスペアー”を視認していない。

そう呟くとクルーもその姿を確認できていなかったが”ドミニオン”の管制官が彼女の現在地を確認し驚きの声をあげた。

 

「…ッ!”ディスペアー”のシグナルを確認ッ!これは…!?」

 

「どうしたっ」

 

ナタルが声をあげる。その報告に通信をきいていた全員が驚愕する。

 

「前方の構造物…”ジェネシス”内部ですっ!」

 

「内部、だとぉ…?!エアリスッ!!今すぐ脱出しろぉ!!」

 

インカムを引ったくりアズラエルが叫ぶ。しかし無情にも返ってくるのはノイズだけだった。

 

◆ ◆ ◆

 

”ジェネシス”外縁で戦闘を続けていた”ディスペアー”と”アヴァロン”。

”アヴァロン”は”ジェネシス”の内部へ突入し追跡していた”ディスペアー”は遂にその姿を捉えた。

 

「うぉおおおおおおッ!!」

 

「なっ!?ぐぅううううううッ…!?」

 

既にその道中で<ドラグーン>は全て破壊され唯一残った手持ち武装である<ユーキディウム・ビームライフル>も腕事切り裂かれ爆発し通路に激突し動きが止まる。

逃げるように”アヴァロン”は先へ進むと発射口付近の大きな空間に出る。

 

「舐めるなぁ!!!」

 

「ーーーーッ!!!」

 

”アヴァロン”は反転し”ディスペアー”に激突した。

PS装甲同士がぶつかり合い火花が散って互いのコックピットが凄まじい振動を襲う。唯一残っていた胸部バルカン砲が火を吹き残り少ない電力を奪い去る。

接近した状態で”ディスペアー”の<アーキバスMk-Ⅱ>が機体の左足を奪い取るがバルカンの引き金を引き続ける。

遂にPS装甲の維持値が限界を向かえアラートを吐き出す。

 

「うぁああああああッ!!」

 

エアリスは叫びながら残った最後のエネルギーを使って背面のマルチプラットフォームにビームサーベルが突き立てる。

 

スパークを起こして爆発しエネルギー伝達に異常が発生したのか”アヴァロン”PS装甲は鉄灰色へ変色し沈黙し”ジェネシス”内部の地表へ激突し機能を停止する。

”ディスペアー”エネルギー残量もレッドゾーンに入りPSダウンを引き起こし掛けており稼働限界であったがまだ武装を残しており”アヴァロン”へトドメをさせる状態であった。

 

詰み、だった。その事実にエミリアは表情を歪ませ涙を溢す。

 

「…………負けた…」

 

結局は自分は”何者にも”なれない中途半端な存在なのだ、とーーーー。

 

「エミリアッ!」

 

コックピットハッチを解放して”アヴァロン”へ近づきひしゃげたシャッターを解放しエミリアを引っ張り出す。

彼女は抵抗するつもりはないのかなすがままに引き摺り出される。

治療のために空間内の重力ブロックのある場所へ移動させた。

反応の薄いエミリアを見て心配そうな声を掛けた。

 

「エミリア…」

 

引き摺り出されたエミリアは膝を抱えて俯き少しして顔を見上げて呟いた。

 

「……どうして…殺さなかった…?」

 

「…?」

 

「さっきの背面での攻撃…サーベルをもう少し出力上げて貫けば殺せた筈だ…」

 

確かに其は出来ていた。しかし攻撃を受け出力が下がっていたサーベルを突き立てるしか方法がなく最初から害するつもりで攻撃していたが…こればかりは運が味方したからだが…と其を言葉にするほど余裕がなかった。

 

「…どうして姉妹で殺し合わないと行けないのよ…」

 

「違う…私はお前の妹ではない…お前の影」

 

「違うッ!」

 

遮るようにエアリスは叫ぶ。

びくり、と反応するエミリアの側へ近づいて跪いてその胸に抱き寄せた。

 

「例えその身体が自分の物でないとしても…その心はエミリア…あなただけのものでしょう…?」

 

「わ、わたし…は…わたしの…存在は…」

 

子守唄をきかせるようにエミリアを抱き締めながら呟く。

 

「もういいの…戦わなくていいの。武器を捨てて生きていい…エミリア。あなたはもう私になろうとしなくていい。貴女は貴女。私が貴女の存在を認める…貴女は私の妹…”エミリア”・A・レインズブーケだよ」

 

そう告げるとメットのバイザー越しの険しい表情が和らぎ”エミリア”は涙を溢し笑った。

 

「あぁ…完全にわたしの一人試合…おねえちゃんには敵わないなぁ…」

 

分かれていた双子は奇妙な出会いを経て再び一つになったのだ。

 

全てが終わった…かに思われたが”運命”は残酷だった。

施設内部が大きく揺れる。その直後エミリアは脳天に浮かぶ稲妻に反射的に弾かれ突き飛ばす。

 

「ッ!?おねえちゃん危ないッ!」

 

何事か、と思ったが次の瞬間に崩落してきた部材が煙を上げ落下し視界を覆う。

 

「…ッエミリアッ!そんな、ウソ…ウソッ!」

 

「ッ……」

 

思わず腕で視界を護るが隙間から地面から赤いものが流れているのに気がつき駆け寄る。

視界に映るのは瓦礫によって下半身を潰され身動きが取れないエミリアだった。

 

「まって、ダメ…そんなのダメよ…!まっててすぐにモビルスーツで…」

 

あせるエアリスであったが直ぐ様モビルスーツを用いて瓦礫を退かそうと動くがエミリアに止められる。

 

「無理だよ…下半身の感覚がない。それにこれを潰そうと外で攻撃が続いてる…巻き込まれるのも時間の問題…」

 

「煩いッ!こんなところで…諦めちゃダメよエミリアッ!」

 

エアリスは理解していた。明らかな”致命傷”であることを。

だとしても頭ではその理解を拒んでいた。

 

「…おねえちゃん…お願いがあるの」

 

「ッ…!?」

 

アヴァロン(あれ)を…自爆させて…”ジェネシス”を破壊する…」

 

「何を…ッ」

 

「きいてッ……わたしが…エミリアが生きた証を…残して…おねえちゃんに覚えていて欲しいの…”世界を護った”って…いうことをーー」

 

それは即ちここでエミリアを置いていく、と言うことになる。

 

「それは…ッ…エミリア?…エミリアッ!?」

 

駆け寄り揺さぶるが既に事切れている。返ってくるのは無音と施設内の鳴動だけだ。

エアリスはエミリアの手を握り返した後に立ち上がる。

 

「忘れないから…!」

 

直ぐ様近くのコンソールを確認し状況を確認する。

”ヤキン”の自爆に”ジェネシス”発射が連動しているのは当然だったがカウントがエアリスの知識より()()()()()()()事に。

 

(どういうこと…アスランはパトリックの銃撃を…死亡を止められなかった?)

 

このタイミングでアスランとカガリが来ていない、と言うことは”ジェネシス”の外で足止めを食らってると言うことだ。このカウントでは”ジェネシス”に間に合わないだろう。

 

「やるしか…ない」

 

表示されているカウントを腕時計に同期させ(エミリア)から託された願い…反故にするつもりはなかった。

素早く”アヴァロン”に取りつき火を入れ機体の出力を過剰超過(オーバーロード)させる。

 

<機体の出力が限界を向かえます。直ちに緊急停止してください。繰り返しますーー>

 

「まさか私が破壊するとは…」

 

アナウンスを確認し待機させている”ディスペアー”へ飛び移り機体を浮かび上がらせ武装を立ち上げる。

PS装甲を落とした状態で残りエネルギーは<アーキバスMk-Ⅱ>一発分だ。

 

「…忘れないよ。エミリア」

 

<アーキバスMk-Ⅱ>を”アヴァロン”のコックピットに狙いを定め引き金を引いた。

砲撃はコックピットに吸い込まれ貫き機体がスパークするのを見届ける前に”ディスペアー”は機体を翻しシャフトの中に飛び込んだ。

 

後悔と懺悔を噛み締めながら。

 

◆ ◆ ◆

 

<ごふぁっ…ふふっ…ふははっ…!>

 

下半身が吹き飛び爆発の影響でメイアは既に死に体だった。通信越しにメイアの笑い声が響く。

 

<全ては無駄だ…私とパトリックが無力化されたら…”ヤキン”は自爆し…連動して”ジェネシス”は発射される…>

 

どうやっても彼女達が勝利するように仕組まれていたのだ。

 

「なっ…!?」

 

<君のように全てのコーディネイターが…ナチュラルと…共存は出来ない…君が…私に啖呵を切ったその言葉…実現できるか……ははっ…あの世で視させてもらうよ…>

 

「ッ!早く脱出を!」

 

<ふふっ…あはははっ…!!>

 

”ジャッジメント”のコックピットの中でメイアは笑っていたが一筋の涙を溢す。

言葉は途切れ半壊している”ジャッジメント”は残った腕を動かし”フリーダム”を機体から遠ざけた。

機体を翻しスラスターを吹かし次の瞬間に”ジャッジメント”のNJCが制御不能とな一拍の閃光を煌めかせた。

 

次の瞬間に全てが大爆発を引き起こした。

 

”ヤキン・ドゥーエ”の司令室が、動力部があらゆる施設が吹き飛び湾口から炎を吹き上げ迸る。

”ジェネシス”も臨界状態だったのを”アヴァロン”が自爆したことで内部が破壊され行き場を失ったエネルギーは外部のミラーを砕き閃光に飲み込まれ前面にいた”ジャッジメント”の爆発と連鎖してさらに大きな爆発を引き起こし撤退しようとしていた”フリーダム”を彼方へ弾き飛ばし膨大なエネルギーは装甲を焼いてPSダウンを引き起こした。

 

その光景を四隻同盟の艦達が呆然としてみていた。

生き残った前後期Xナンバー達、M2アストレイ…そして連合とザフトのパイロットにクルー達。

機体はボロボロで万全な機体はどれも見当たらない。

 

”エターナル”ではラクスが二人の名前を呼びながら指揮官席から立ち上がり窓へ近づく。

 

「キラ!エアリス!」

 

次第に爆発の光は落ち着き巨大なミラーの残骸と基地跡を見つめ張り詰めていた緊張の糸が緩まり息を吐く。

 

発射されることはなかった。世界は明日を向かえることが出来たのだ。

地球に生きる全ての生命が明日へと進むことが出来る。

 

止まった時間が動き出すように周辺宙域にマクシミリアンとシーゲルの声が響き渡り慌ただしくなった。

 

<宙域のザフト軍、ならびに地球軍に告げますーー>

 

ボロボロになった双方の艦艇の中でクルー達はその言葉に困惑を覚えつつも耳を傾けた。

 

<現在”プラント”は地球連合ならびに”プラント”理事国との停戦協定に向け準備を進めていますーー>

 

その表明を聞いて憤慨するもの、憤りーー又は安堵する声が溢れた。

 

<それにともない、”プラント”臨時最高評議会は、現地点における全ての戦闘行為の停止を地球軍に申し入れます…>

 

終わったのだ、とそれを聞いた”エターナル”のクルー達は立ち上がり肩を組んで喜ぶ。

 

”ブルーコスモス”が指揮していた旗艦は潰され月基地は失われた。

今はマクシミリアンが実質の最高権力を握り停戦を受け入れシーゲルが臨時の議長としているためもう、戦闘は起こらないだろう。

長かった戦争がようやく終わるーー。

 

だが為政者達が手を組んで戦争を終結させたとしても”ナチュラル”と”コーディネイター”はまた何時か、争いを始めるだろう。完全な終結など自分達が死ぬまであり得ないかもしれない。

 

だが、今は一時の休息だとしても力を抜いてもいいかもしれない、とバルトフェルドは砲撃長席に座るアイシャへ視線を向けると気がつき流石の彼女も疲れたような笑みを向ける。

愛した女と歴史的な瞬間に立ち会え生き延びたのは幸運だったな、とーー。

 

<こちら…フリーダム、キラ・ヤマト…”エターナル”聞こえますか…?>

 

「キラ!」

 

<ラクス…それに”エターナル”も無事で良かった…>

 

キラからの通信にラクスの表情が少しだけ明るくなる。

モニターに捉えた”フリーダム”は見る影もなくボロボロだ。

 

<エアリスさんは…>

 

キラが問いかけるよりも先に”ドミニオン”から通信が入る。

 

「全艦へ通達…”ディスペアー”シグナルロストです…」

 

「くそっ…!」

 

「エアリス…」

 

”ドミニオン”の艦橋では管制官の呟いた言葉が空虚しく響く。その言葉を聞いたアズラエルが悔しそうにアームレストを叩くとナタルは制帽を目深にかぶる。

 

戦争は終わった…しかし、失ったものは大きい。

宙域には戦艦やモビルスーツの残骸が散らばり今日でどれほどの命が失われ奪ったのか見当もつかないほどだ。

マクシミリアンとシーゲルの表明が空気になるほどの静かな艦橋で管制官は表示されたデータを見て声を上げた。

 

「ッ!艦長!」

 

「どうした?」

 

「特務少佐のIFFを確認!これは…”ジェネシス”跡地からこちらへ向かっています!」

 

その報告にアズラエルは立ち上がって喜びを表しクルー達も歓声を上げてナタルは深く息を吐いた。

同時にこちらへ向かってくる光を確認し指示を出した。

 

「座標特定急げ!動ける機体はエアリスの救助へ!」

 

<僕が行きます!>

 

「だが、お前の機体では…」

 

キラが向かおうとするが機体の状態を見て口ごもる…しかしその報告を受けたナタルは指示を飛ばすとそれを聞いたマリューが素早くマードックへ指示を出す。

 

「マードック曹長!type”RD”の準備を!」

 

「ッ!了解でさぁ…さぁ坊主!受けとれよ!嬢ちゃんを迎えに行けッ」

 

”アークエンジェル”から射出された機体を見て目を見開く。あれは、失われた筈では…だが今はそれは関係ない…彼女を迎えに行くには十分すぎる機体だったから。

 

「…これは…了解…!」

 

被弾した”フリーダム”から乗り換え光の方向へ向かっていく。

 

「キラ・ヤマト…行きますッ!」

 

◆ ◆ ◆

 

「何の真似だ…アスラン…」

 

「父上…会わせたい人がいます」

 

一方で”エターナル”に着艦したアスラン達は拘束されたパトリックと対面する。

対面する父は先ほどまでの狂気は鳴りを潜めたがその言葉に帯びる気配は隠せていなかった。

アスランは室内の機材を操作してしばらくしてクルーがストレッチャーを運びパトリックの前で停止するとその内部で眠るように安置されている人物を見て目を見開き嗚咽を溢し崩れ落ちた。

 

「未だ…この母上の安らかな顔を見て…ナチュラルを滅ぼしたい、と本当にそう思うのですか…父上…?」

 

柔らかにアスランは問いかける。

 

「あ、ぁあ…レノア…」

 

安らかに眠り今にも起き上がりそうな妻レノアの遺体を見てついぞパトリックはその棺に抱きつく。

彼を覆っていた狂気は消え去っていた。

 

「すまない…すまない…レノアぁ…」

 

止めどない涙が宙に浮かび嗚咽を漏らす。

棺に抱きつく父を見たアスランは近づき先ほどまで大きかった父の背中をさする。

 

「…お前もすまなかった…アスラン…」

 

「父上…」

 

「さぁ…お前も一緒に…」

 

「ッ…はいッ」

 

三人で抱き合うそれは嘗てのザラ家の光景が広がっていた。それを遠くでカガリは見つめる。

 

「良かったな…アスラン…」

 

アスラン…この人を…よろしくね…それとお嬢さん…うちの息子を…よろしくお願いします…

 

「えっ…?」

 

「母上…?」

 

ほんの一瞬だったがアスランとカガリには優しい女性の声色が届いていた。

 

◆ ◆ ◆

 

(死んだかな…私…)

 

”ジェネシス”の爆発に巻き込まれ”ディスペアー”は全壊していた。

機体が分裂する寸前に”ディスペアー”に搭載された”コア・ジェッター”が起動し脱出装置として作動して難を逃れたのだった。脱出装置の”コア・ジェッター”も破損がひどく航行すらままならない状態で多くの機能不全を引き起こしていた。

 

落ちているのか上がっているかも分からない。救難装置も起動できず広大な宇宙では死を待つのは時間の問題だった。

 

「…ごめんね…エミリア…」

 

戦争は終わった…しかし最愛の妹を助けることは出来なかった。

後少し、手を伸ばして、離さなければ掴めた筈の”未来”が、目の前で失わせてしまったことに自然に涙が溢れヘルメット内部を埋め尽くす。

 

「お姉ちゃん…約束護れないかも…」

 

託された”願い”…それを果たせそうになかった。

しかし、それは裏切られた。”良い意味で”

 

一つの星が落ちてくる。

エアリスはキャノピーが破壊されたコックピットの上から見上げるとそれが星ではなく”モビルスーツ”であることを理解した。

 

「あ、あぁ…!」

 

太陽光に照らされ次第に全貌が明らかになる。

それは嘗て自分が激戦を戦い抜いた”愛機”だったからだ。

コックピットが開かれ乗っている人物の姿が露になる…キラが操縦桿を握りヘルメットに涙の粒がキラキラと輝く。

 

「エミリア…未だ私は生きていくよ…貴女の事を胸に刻んで…」

 

始まりは巻き込まれたのが発端だった。

随分と遠くまで来てしまった…と他人事のように感じてしまう。

だが傷つき、涙を流し…感情をぶつける…私はこの世界に”生きている”のだ、と実感する。

 

戦争は終わったーーーー。

 

後の事は棚に上げておくとしよう。

今はただ…目蓋を閉じ一時の安らぎと未来を夢見て…。

 

 

 

【 魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい 】 fin




此れにて【魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい】完結です!
作者の拙い文章を長い間ご覧頂き誠にありがとうございます。

感想評価頂けると嬉しいです。ではまた新しい作品でお会いしましょう!!
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