魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】 作:萩月輝夜
「ん…」
僕はベッドから体を起こす。どうやら眠ってしまっていたみたいだ。
周囲を見渡すと自分の部屋ではない、直前までの記憶を思い出すとここが軍艦の居住区だ。
先程までの事が夢だったらな…と思ったけどここが現実、戦艦が揺れたのを体で感じてしまった。
「キラ!目が覚めたのね!良かった…」
起き抜けに近くにいたミリアリアが声を掛けてきた。
「ミリアリア…今どうなってるの?」
「ザフトがまた襲撃しに来たみたいなの」
「えっ?」
襲撃しに来た、となればまたあれに乗って戦わなくちゃならないのか…?と思っているとトールの声が聞こえた。
「目が覚めたんだな!あっちのモニターで外の様子が見られるぞ!」
僕は起き上がって皆と共に外の様子を見ることが出来るモニターに集まると、そこにはMS同士の戦いが繰り広げられていた。
僕を助けてくれたエアリスさんが乗っていた連合のMSがサーベルを抜刀して巨大なライフルを持つジンを撃破する…が余りにも取り囲む数が多すぎた。
別方向から肩に担いだ大型砲から緑色のビームが放たれると同時にスラスターを吹かしたエアリスさんの機体が回避する。でも、コロニーを支えるシャフトの一部に被弾し揺れが大きくなる。
「コロニーが…!」
その光景に誰かが言った一言に皆騒然とする。
確かにこのままでは被害が拡大してしまう、しかし此方は一機で向こうは未だ六機も残っている。エアリスさんはコロニーの被害を危惧してか防戦一方だ。
「………」
僕は画面から目を逸らして歩き出すとミリアリアが気づいて声を掛ける。
「キラ?何処へ行くの…」
「キラ、お前まさかまた…!」
これからどうするのか、ということに気がついたサイが声をあげるとミリアリアもそれを理解したのか止められてしまう。
「ダメよキラ!エアリスちゃんからあのストライクに乗っちゃダメだって…乗れば降りれなくなるってそう言ってたわ」
「え?」
「…キラ、エアリスちゃんも言ってたけどまた乗るようなことがあれば戦闘をさせられるぞ…?」
ストライクに乗ればこの状況を打開できるかもしれない…だけどそれは戦争の渦中へ足を踏み入れることを意味していることを分からない訳ではない…だけど
『ありがとう、君のお陰でこの人死なずに済んだよ。』
『銃を下ろしてください』
『もう君は戦わなくて良いよ。次からは私が戦うから』
自分をコーディネイターであることを知りながらも案じてくれた女の子が、一人で皆が居る戦艦を守ってくれていると言うのに見ているだけ何て言うのは自分でも理解していなかったけど我慢できなかった。
「…ごめん、僕行くよ!」
キラはそう告げてミリアリアとサイを振り切って格納庫へ走り出した。
◆ ◆ ◆
キラが覚悟を決めていた頃…。
「人が住む世界にそんなものを撃つな!!」
エアリスは操縦悍を握っていた。
発進して直ぐ様会敵してから数分後、エアリスは装備したシャドウストライカーの性能を確認しつつ防衛戦を繰り広げていた。
彼女は順応し“シャドウダガー”を乗りこなす。
「な、なんだこいつ…ぐわぁあああっ!!?」
「まずは一つ!」
ジンの【バルルス重粒子砲】が発射される前に背面のブレードスラスターを吹かして急接近し、背中のサーベルを引き抜き一機目を切り裂いた。
二機目の狙いを別のD装備のジンがアークエンジェル目掛け対艦ミサイルのロックオンをする。
他のD装備型のジンの対艦ミサイルを後方にいる戦闘準備を終えたアークエンジェルが【イーゲルシュテルン】と【バリアント】【スレッジハマー】で打ち落としていく。
ザフトのモビルスーツは崩壊しつつあるコロニーへの被害などお構いなしだ。
「させるかぁ!!」
『うわぁああああああっ!?』
飛来するミサイルを迎撃しようとするが進行方向に割って入るジンに邪魔された。
お構い無し、と言わんばかりにエアリスはスロットルレバーを押してスラスターを吹かし突撃する。
バルカンを発射し頭部を破壊、その隙に背面の対艦刀【ベシュヴィンクト】を抜刀し二機目を撃墜した。
「二つ目!!」
次…とおかわりと言わんばかりに残存するD装備ジンがアークエンジェルに狙いを定める。
「幾らなんでも多すぎっ!ザフトは物量作戦出来なかったんじゃなかったの?…ってあの機体は…!!」
「さっきの機体じゃないみたいだが…ナチュラル如きの機体が……そぉら堕ちろぉぉぉぉ!!」
「やっぱり出てくるよね!しかも専用機!?」
ミサイルの迎撃は後方にいるアークエンジェルへ任せ機動力のあるMSを撃破するためにエアリスは動くがそれをバルルスを構えた黄色に塗装したジン…【黄昏の魔弾】の異名を持つミゲル・アイマンが行く手を阻む。
彼は奪取作戦の際に専用機が調整中だったため通常型のジンで出撃していたがキラが操るストライクに撃墜、敵を前にして脱出するという屈辱を晴らすために彼は修理が終わった専用機、ミゲルジンで再戦をしに来たのだ。
目の前に現れた機体が【ストライク】でないことに不満に思った彼だったが次々と撃墜されていく仲間を見て【ダガー】を脅威だと、認めざるを得なかったのだ。
ナチュラルが開発しナチュラルが乗っている機体がコーディネイターが操る機体に勝てる筈がないのだと示す必要があった。
「ちょせい!!」
発射されたバルルスを回避…と思ったがシールドで受け止める。
自分が回避すればその分コロニーへのダメージが入ってしまうと考え防御を取る。しかしその隙に別のジンが放った対艦ミサイルが【ダガー】に迫る。
「ぐっ…!?不味い…」
PS装甲を搭載していない【ダガー】が直撃すればひとたまりも無い。
その状況はアークエンジェルのブリッジでも確認していた。
CICにいる兵士が座席に座るナタルに報告した。
『ダガーに大型ミサイル接近!並びにMS二機に囲まれています!』
『援護しろ!』
「下手したら味方の攻撃で撃墜してしまいますっ」
『くっ…!牽制で良い!……なんだ…!?』
『少尉!ハッチが解放されています!』
『なんだと!?』
事前にエアリスから強力な主砲を使わないように、コロニー内部の防衛に務めてほしいというものだった。
確かにそれは利にかなっている。アークエンジェルの主砲【ゴットフリート】はシャフトや内壁を破壊してしまう危険性があるのだ。
が、幾らエアリスが初陣でジンを撃退して見せた、とは言っても奪われたXナンバーとジン六機は幾らなんでも無謀すぎる、が状況が一転する。
「まずっ…!?」
PS装甲を例え搭載していても無力化出来るわけではない、迎撃してもその衝撃は凄まじいものだろう。エアリスは不味い…と思い状況を打開するために思考を張り巡らせた、その時だった。
「は…?」
飛翔するミサイルはダガーにもシャフトにもコロニーの内壁にも直撃せず電磁射出された弾丸によって二発とも破壊された。
爆発を皮切りに囲まれた状況を脱出し間合いを取る。
次の瞬間にダガーのコックピット内部のアラートが鳴り響く。
「(ロックオンされたか……)はい?」
味方識別のIFFが反応を示していたのを確認しエアリスは驚いた。飛翔する機影がアークエンジェルから現れた。
「ストライク!?待って一体なんで戦場に出てるの?!誰が乗ってまさか…キラ君!?」
そこには巨大な銃身とシールドを装備したストライクが【ゲイボルグ】を構えモニターに映る。今ストライクに乗れるのはキラしかいないはずだ。
コロニーの環境が崩れているのかストライクはふわりと飛翔し今まさに攻撃を仕掛けようとするD装備のジンへ飛翔する。
「あの人だけを戦わせない………当たれっ!」
今にも逃げ出したくなるがここで逃げることをキラは選択せずに操縦桿を握りしめ照準を定め引き金を引く。
次の瞬間に構えたゲイボルグから電磁加速の弾丸がダガーを狙っていたジンのコックピットを貫き爆散した。
「なんで…どうしてキラ君が戦場に…!ちいっ…!」
キラに人殺しをさせてしまった…とコックピットの中で後悔するエアリスであったが今はそんなことを気にしている暇はない。
すると先ほどまで動きを見せなかったイージスがストライクに接近しているのがレーダーに映る。
今ストライクは二機に囲まれる状態になる。エアリスはストライクの元へ向かおうとした。
「俺の事は眼中に無いってことかっ、舐めるなっ…さっさと堕ちろ!!」
が、ミゲルジンは進路を妨害するように割って入り装備したビーム砲を構える。その銃口から緑の粒子が累積し発射体制に入っていた。
「うわぁああああああああああっ!!!」
発射されるその直前に動いていた“シャドウダガー”は肩部の【シュマルツァクリンゲ】を解除し、投擲した。
「ぐう…っだが…破れかぶれの攻撃が俺に通用すると…っ!?」
突如としてビームの刃が投擲され驚くミゲルだったが彼もまたエースパイロット、危なげなく回避して見せた。
が、彼の幸運もここまでであった。
「なにぃ!?」
投擲した【シュマルツァクリンゲ】はビームの刃を持つブーメランだったのだ。
弧を描いて戻ってくる際に片足を切り裂かれ、抱えたビーム砲の重さと脚部を破壊されてしまったことで体勢が崩されてしまう。
大きく体勢を崩してしまったミゲルのジン目掛けダガーは背面の対艦刀【ベシュヴィンクト】をそれぞれに両手持って懐へ入り込む。
ビームの刃が胴体を捉えた。
「さっさとやられてしまええええええっ!!!!」
「うわぁああああああああ!!!」
切り抜けるように横一文字で切り裂かれオレンジ色のジンは1拍置いて爆発する。
【黄昏の魔弾】と呼ばれたエースパイロットは連合の試作量産機によって戦場に散った。
◆ ◆ ◆
キラの前でエアリスの操る【ダガー】が黄色に塗装されたジンを破壊する。
ついでにと言わんばかりに四機目のジンを手にした対艦刀で切り裂く。
「エアリスさん…」
エアリスが人を殺してしまった…ということにキラは深い罪悪感を覚えた。
僕が…迷ってしまったからなのか…?と考えてしまい操縦桿を握る手にも力が入る。
「えっ…?あのモビルスーツは…!」
突然モニターには赤いモビルスーツ奪われたX-303【イージス】が目の前に現れる。
同時にその機体に乗っている親友の顔を思い出した。
あの燃え盛る工廠でナイフを突きつけられヘルメット内部にあるその表情が驚きに染まっていることを。
通信で入った来た声は数年前に月面で分かれた最後に聞いた声にそっくりだった。それを否定しようとキラは首を横に振る。
「違う…あれはアスランじゃない…!」
そう否定したかったが入ってきた声色に否定できなくなった。
『キラ、キラ・ヤマトか…!?』
「アスラン?…アスラン・ザラ!」
『やはりその声はキラなんだな!?』
「なぜ君がこんなところで…そんなモビルスーツに乗って僕の前に現れたんだっ!?」
『それは此方の台詞だ!何故…何故お前がそんなものに乗って俺たちザフトと戦っている!?』
お互いの機体は装備を構え一触即発の状態…に見えた。
『キラ君!!』
「……エアリスさんっ」
アスランとの会話をしていると突如としてエアリスからの割り込み通信が入る。
割って入ったダガーはアスランの乗るイージスへ攻撃を仕掛ける。
『ぐっ…!連合のMSめ…!キラっ…!』
「アスランっ…エアリスさんやめてくれっ…それにはっ」
エアリスはサーベルを引き抜きイージスへ攻撃を仕掛ける。対するイージスはサーベルをシールドを受け止める。
イージスはシールドを弾きながら頭部バルカンで牽制するがバックステップを踏んで後退したダガーは距離を取る。
「お仲間さん達は全員いなくなったんだ…とっとと母艦に帰りなよっ!!」
エアリスはビームブーメランを投擲した。
『うわぁぁぁあああっ!?…ぐぅ…ッ、キ、キラァッ!!』
次の瞬間イージスが大きくのけ反りコロニーの内壁部分に吹き飛ばされる。
そしてタイミング良くアークエンジェルからの攻撃が放たれた。
『【バリアント】、【スレッジハマー】照準…てぇーっ!!』
寸でのところで体勢を整えたイージスであったがアークエンジェルから飛来する艦砲射撃によりコロニー外へ押し出されてしまう。
既に状況は悪い。ヴェサリウスの搭載していたジン全機体を喪失してしまいこの状況ではアスランは自らが乗る【イージス】すら失ってしまうことになることを覚えた。
吹き飛ばされへリオポリスの外付近に移動したアスランは“撤退”を選択する。
非常に心苦しいものだった。あの戦場に親友がいるのに手を伸ばせない…それがアスランに重くのし掛かった。
『くっ…キラ…それにあのゴーグル付き…覚えていろ…!』
生き残ることを優先し仲間達…ミゲルを倒した【ゴーグル付き】を睨み付けながらイージスはスラスターを吹かして戦闘宙域を離脱したのだった。
◆ ◆ ◆
イージスを外壁へ押し出し撤退したことを確認し一息吐いた。
(はぁはぁ、はぁ…危うくアスランを殺すところだった…でもまぁ、これでへリオポリス崩壊は防げたね…)
これからの事を思案する。
(飛ばしても良い箇所は飛ばすか…アルテミスは…やらなくて良いかな?)
へリオポリスが崩壊していないので積み込み作業をすることができる。食料、水は避難民へ分ける分も十分用意できるし、今のでヴェサリウスに搭載していたジンを全部撃墜したので身動きが取れない筈だ。アルテミスへ向かう必要もないし理由もない。彼がジェラード中将に嫌味を言われるイベントは起こらない、ならばこのままハルバートン提督率いる第八艦隊と合流し【ストライク】と【ダガー】のデータを渡して量産化を早く進めてもらった方が余計な被害がでないで済むかな、とエアリスは思った。
(だけど…)
…が、本来キラを戦わせない予定だったのだが何が原因で戦うことを決意したのか分からないが此方の戦力はMAを含めて三機、十分奪われたXナンバーと戦闘できるだろう。可能な限りイザーク達を殺したくはない…が、それを許してくれるほどこの世界は甘くない。
エアリスは死にたくなかった。
「…ままならないもの」
エアリスは隣に立つストライクを見る。
やはり、戦いから遠ざけることはできない、であればキラとラクスを合わせる必要がある。
…が、合わせる状況を作り出さなければならない。
「一先ず、キラ君を連れてアークエンジェルに帰投しよう」
着地したアークエンジェルに向かい帰投するのだった。