魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】 作:萩月輝夜
コメントも一杯で嬉しいです!
今回も魔改造ダガーに付くストライカーが登場します。
戦闘描写で難しいですね。
※3/23エアリスの髪色と髪型変更しています。申し訳ない。
キラのヒロイン髪暖色多すぎ問題…仕方ないね。
エアリス達はアスラン達を退けアークエンジェルに戻ってきた。
第二戦闘配備のまま残っている資材を積み込んでいる作業が進むのを尻目にストライクとダガーはハンガーに固定されると整備兵が蟻のように群がる。戦闘が終わったとはいえ油断は出来ない。次の戦闘に向けメンテナンスを行うためだ。
エアリスはコックピットを出てブリッジへ向かう…その前にストライクの前に移動するとコックピットからちょうど出ようとしたキラに声を掛けた。
「エアリスさん…」
その表情は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
その顔を見てエアリスはフッと微笑んだ。
「多くは言わない、でも…ありがとう。キラ君のお陰で助かった。でも無茶はしないでね」
「あっ……」
コックピット内部に体を潜り込ませるようにし、座ったままのキラに近づく。
「今はしっかり休んでね。それとミリアリア達にちゃんと謝っておくんだよ?」
「う、うん…」
そう言ってエアリスはブリッジへ続くエレベーターへ歩いていく。
実年齢よりも幼いその笑みに見とれていたキラだったが先程まであのモビルスーツハンガーに掛けられていたモノに乗って戦っていた人物とは思えないほど穏やかなものだ、と感じていた。
“全く別の人物が戦っていたのではないか?”と錯覚するほどだった。
◆ ◆ ◆
ブリッジへ向かう前に近くにいた兵士に声を掛けて収容した避難民のデータを貰い確認して安堵した。
へリオポリス崩壊の危機で安否が不明になっていたのだが問題なく“収容されていた”ようだった。
ブリッジへ入るとラミアス達が出迎えてくれた。
「良く戻ってきたわ…エアリス少尉」
「やるなぁ嬢ちゃん!まさか二回目の戦闘であの黄昏の魔弾も撃墜しちまうなんてこりゃ勲章モノだぜ」
手放しで誉めらるのはばつが悪い…とエアリスは思ったが口には出さず協力してくれたキラを称賛する。
「機体の性能に救われたんです…それにコロニーに被害を出さずにというのは不可能でした。申し訳ございません。」
「拠点爆撃用の機体相手にコロニーが分解しなかっただけましさ。この状態なら幾らでも修復は出来る…まぁ向こう数年は人が暮らせる環境じゃないだろうけどな」
「大尉…」
ムウはブリッジの外を見る。崩壊しなかった、といっても被害は出てしまっていた。その事をムウが呟くとエアリスは目に見えて落ち込んでいた。その光景をみてナタルが少しだがムウを睨むとバツが悪そうな表情を浮かべた。
「…それに、あの場面でキラ君が割って入らなければ撃墜されてました。軍人でありながら民間人に助けられるとは…情けないにも程があります。」
その事を告げるとブリッジに集うラミアス達は苦い顔を浮かべる。質問…というよりは問い詰めるような声色だった。
「…一体誰が彼をストライクに乗ることを許可したのですか?」
その声色にマリューが回答する。
「私よ少尉…その、彼の力は必要だとそう判断して…彼から“乗せてほしい”と。彼はストライクに搭乗するのを許可したわ。」
ここで責めるのは御門違いだろうとエアリスは思った。
「……感謝こそすれど艦長に憎しみはぶつけません。その判断で私は死なずに済みました。ありがとうございます。」
事前に“キラをストライクに乗せないようにしてください”とエアリスからお願いされていたのにそれを違えてしまった事にラミアスは罪悪感を覚えたがエアリスは仕方がない、と内心一言で片付けた。
結果としてエアリスは生き残った。
エアリスはこれからの事を上位士官に問いかける…というよりもどうするのか、ということを誘導するために発言した。
「…艦長、これからどうしますか?」
「え?」
「この崩壊しつつあるへリオポリス、これ以上長居してザフトの攻撃を受ければ次こそは崩壊します。積み荷が終わったのなら脱出する必要があります。……当艦の目標は連合本部に向かうことです。」
「そうだな。嬢ちゃんと坊主が頑張ってくれたお陰でナスカ級の搭載機は品切れで動けない筈だ。が、ここに残るのは得策じゃないな。随伴の艦艇と合流されればまた襲撃を受けるだろう。それにへリオポリスの軍港が潰されていないから逆方向から脱出するか?」
崩壊したその責任は偉い人に取って貰おうとしよう。
エアリスはムウのアイディアをもらった。
「いや、堂々と正面方向から出ましょう。デコイを逆方向へ熱源を乗せて誤認させる…気を引き付けているそのうちに正面の港から脱出、ですね。そのまま月面に向かった方が良いですね。それに近くのアルテミスには寄らなくてもいいでしょう。」
「?アルテミスは友軍だろう。彼らを頼んで…」
援軍を待つ、ナタルがそう発言するのをみて遮るようにエアリスはキッパリと告げた。
「あれはユーラシア連邦。大西洋連邦ではないです。味方かもしれませんがあれは潜在敵性国家ですよ。そんな友軍の腹の中に【アークエンジェル】とMS…最高のエサです。それにこの艦船に地球連合の識別コードは発行されていません。」
「あ…」
エアリスに言われてハッとしたナタル。極秘に進行していた計画故にまだ連合軍の識別コードが与えられていなかった。その事にマリューはばつの悪そうな表情を浮かべムウも「仕方ない」という表情を浮かべている。
「嬢ちゃんの言う通りアルテミスに寄港するのは宜しくないかもな」
「基地指令のジェラード中将は…中々に、中々らしいですから。それに宇宙要塞という密閉空間に私はともかくとして艦長達のような若くて綺麗な女性が入るのは…口にだすのも憚られるような“代償”を請求されかねません。野獣のいる檻に入り込むようなものです。」
言葉を濁しているが所謂“アレ”の事を言っているのをここにいる女性士官は感じ取っていた。
ジェラード中将と面識のあるムウは苦い顔をしていた。と突っ込んだのはそこではない。
「そうか?嬢ちゃんもかわいい顔立ちして需要はあると思うぞ?」
エアリスの見た目は整っていて軍人にしては髪が長く栗色の柔らかいセミロングで美人、ではなく可愛いと評するのが正しいか。
「ありがとうございます。フラガ大尉もカッコいいですよ。…まぁセクハラですね」
「…っておいっ!お嬢ちゃんも一応上官侮辱罪だからな?」
「大尉にしかしません。」
さらり、と言い流した。
「なお悪いんだよなぁ、こんにゃろう…」
エアリスが無表情でそう告げるとハッとしたマリューとナタルは「十五歳の少女がそんなことを言うんじゃありません」言うな!」と怒られてしまったのだった。
アークエンジェルのブリッジから見える外の景色には先の戦闘で破壊された建物やシャフト、生活に必要な主要箇所が破壊されてしまっていた。
全くの無傷…というわけには行かず内壁は穿たれ空気が漏れ土砂が外へと散らばってしまっている。
その光景にマリューはその原因を作った一因として苦々しい表情を浮かべていたが…。
「今は後悔するよりも先に進みましょう。…ハルバートン提督もそう仰る筈です」
自分よりも年下の少女に案じられたことに大人としての不甲斐なさを感じたマリューであったが、それよりも自分の行動を肯定された、ということに安堵を感じていた。
「…そうね。先を急ぎましょう。これ以上物資を積む時間はない、早々にこのコロニーから脱出します」
話し合いが進みマリューがそう告げると士官達は持ち場に付く。
当分の目標が定まったアークエンジェルは動き出す。
「当艦はこれより地球連合基地本部へ向け発進する。デコイを発射後、本部へ向け軌道修正、メインエンジン噴射。噴射後直ぐ様慣性制御へ移行。索敵範囲抜けるまでそのまま!第二戦闘配備発令!艦内の制御は最小限に留めよ!」
こうしてアークエンジェルは連合本部へ向けて航行を開始するのだった。
◆ ◆ ◆
「まさか【ヴェサリウス】に搭載していたジン六機とミゲルを失うとは…」
一方その頃ザフト軍ナスカ級【ヴェサリウス】のブリッジでは艦長であるアデスが信じられない…と言わんばかりに先の戦闘での結果…というのも烏滸がましいほどの“惨敗”を喫して唯一生き残った機体を回収し、へリオポリス近くの宙域にて待機していた。
「アスランやミゲルがデータを持って帰ってくれて助かった、と言うべきかな」
【ヴェサリウス】のブリッジにてクルーゼが先の戦闘のデータを眺めていた。
ブリッジにはザフトの制服を着用した緑服や赤服…つまりはエリート部隊だが今はその人数はただ一人、アスランのみだけになってしまっていた。
アスランを前にクルーゼは語る。
「…私の機体が破損しジン六機とその部下の命が失われた、となれば私の命だけでは償いきれない失態だ……。だが、この映像を見えれば評議会も考えを改めるだろう…いや、違う。ここで散った部下の為に今ここであの戦艦と取り逃した【Xナンバー】…そしてあの【ゴーグル付き】を、こんなものを放っておく訳には行かないということははっきりしているだろう」
「………(キラ…)」
アスランは戦場であった友人のことを思い出していた。
「捕獲が出来ぬ、となればここで破壊する。ここで見逃せばその代償⋯我らの血で償うことになる。アデス、敵の新造戦艦の位置特定出来るか?」
クルーゼの言葉にアデスは驚いた。
「追うおつもりで?此方には機体が…」
【ヴェサリウス】自体は健在だが使える機体はクルーゼのシグーだけ…それも武装を失っている状態、それに先の戦闘で姿勢制御系統異常が見られ、使用するには時間が掛かるのである。
奪ったイージスも全力で戦闘できるほど万全の状態ではない。が…
「あるじゃないか。“四機”も」
その発言にアデスの困惑が更に深まった。
「地球軍から奪ったMSを全機投入すると?」
「データの吸出しも終わっているのなら問題あるまい。既にイージスは戦闘に出ているのだからな。逃がすわけには行かんよ。」
そう言ってクルーゼはブリッジに表示される宙域図を見ながら作戦を思案する。
「ガモフを呼び出せ。我らはあの戦艦を追う」
◆ ◆ ◆
アークエンジェルはへリオポリスの港を出た。
反対側から破損した鉄の固まりにロケットブースターを付け射出したことで此方を見張っているザフト側からは“正面から出た”と思うだろうがエアリスは「あのクルーゼなら直ぐに気づくだろう」と判断した。
ブリッジを出てMSのログ整備を行おうと思ったが一旦キラ達の様子を見に行くことにして居住区へと向かうと彼女は一安心した。
「ねぇこの艦って何処へ向かってるの?無事に帰れるのよね…?」
「大丈夫だよ“フレイ”」
キラ達がいる居住区へ足を踏み入れるとそこにはフレイ・アルスターがサイと隣り合って座っている。
彼女はどうやら救命ポッドには乗らずにアークエンジェルの避難民としていたようだ。これが流石に歴史の修正力か…と自分で納得させているとミリアリアが此方に気がついた。
「あ!エアリスちゃん!」
呼ばれたエアリスは「見つかったか…」となりながらもキラ達がいる空間へ足を踏み入れた。
「怪我はありませんでしたか?」
「エアリスちゃんのお陰で大丈夫だったよ。ありがとうね」
「いえいえ。軍人としての責務を果たしたまでです。」
「ねぇミリアリア、この子何で軍服を着てるの?コスプレ?」
エアリスとミリアリアが会話しているとフレイが割って入ってきた。自分よりも背の低い童顔のエアリスが「軍人として」「責務を」という言葉に引っ掛かりを覚えた単純な好奇心のようだ。自己紹介を兼ねて襟首をただしてだぼついた白衣から手を出して気軽に挨拶した。
「地球連合技術開発局第七技術班所属、エアリス・A・レインズブーケ特務少尉です。一応十五歳ですよ。」
「え、同い年だったの!?」
「年下かと思ったぜ…」
驚くミリアリア達を他所に敬礼を貰ったフレイも同じく驚いていた。
「え…本当に軍人さんなんだ…じゃあさっきの戦闘……MSに乗っていたの?」
「はい。乗ってました。」
それがなにか?と言わんばかりの回答に戸惑うフレイだったが突然サイの肩を掴んで隠れる素振りを見せ恐れる表情をエアリスに向けた。
「MSに乗れた…ってことは貴女コーディネイターなの…?」
「…っ」
「フレイ…ッ」
その言葉にキラがビクリと反応を見せサイがフレイを嗜めるがお構いなしにその偏見をぶつける。
「だって…パパが言ってたもの!MSって言うのはコーディネイターじゃないと扱えない…って」
「フレイさんそれは偏見です。私は貴女と同じナチュラルですよ?」
「そ、そうなの?」
「はい。(やっぱり父親にそう思い込まされているんだな…それなら幸いかな?)…まぁMSに乗れるのは私の才能…ギフテッドみたいなものなのであまり気にしないでください。それに貴女のお父様が事務次官を務める地球連合ですけど全員がナチュラルというわけではありません。コーディネイターの人達も協力しているのです。」
「……」
フレイは信じられない…といったような表情を浮かべているが事実だった。
実際にカナードやジャン・キャリー、ソキウスシリーズ…は刷り込み教育を施された彼らを含めて良いものか分からないが、目的があって協力しているのも事実だ。
「コーディネイターが全員“敵”、“分かり合えない隣人”と言うわけではないのです。」
「…でも貴女は地球連合の兵士でコーディネイターと戦って」
「私が戦っているのは“ザフト”です。コーディネイターとではありません。それに私は連合兵士ですけど“ブルーコスモス”ではありません」
フレイの前でそうキッパリと言いきったエアリスをみてカズイ達は驚いていた。
その表情をみてエアリスは一礼した。
「…私はただコーディネイターの中にも良い人はいると言うことを伝えたかっただけです。それに…」
そう言いながらキラを見ながらこう告げた。
「コーディネイターの人でも自らの同胞と戦うことを選択してくれた優しい少年は直ぐ近くにいますから。そんな子が戦わなくても良いように頑張るのがナチュラルとして、地球連合軍兵士としての私がいます」
「あっ…」
キラがなにか言いたそうな表情を浮かべていたがエアリスが踵を返す。
「私はこれから軍務がありますのでこれにて失礼します。」
そう言ってエアリスはキラを一瞥し少し微笑んだ後に立ち去った。
「コーディネイターは“分かり合えない隣人じゃない”……」
フレイがぽそり、と呟くとサイが問いかける。
「フレイ…?」
「ううん、…それよりキラ、いや、やっぱりごめんなさいなんでもないわ」
(キラが戦って…私と同い年の女の子が戦場に…)
(俺たちも何か出来ること…無いのかな。キラやエアリスちゃんだけに…)
(パパが言う…コーディネイターが怖い人達…って言うのは本当なのかな…?)
彼女に刷り込まれた父親からの教えに対して少しずつながら違和感を覚え始めているのと同時にエアリスの言葉にミリアリア達はその意識を変えることなるとはエアリス本人も思っていなかった。
◆ ◆ ◆
サイレントランから数時間…エアリスは【ダガー】のコックピットにいた。
一人呟く。
「このまま逃げ切れるか……?……【ダガー】のバッテリー容量がストライクと同じ…いや多いな。これだと作戦継続に時間が割り振れる…うーんPS装甲搭載したいけど落ちてないし…一先ず機動に割り振るとして…」
「嬢ちゃん!ちょっと良いかー?」
声が聞こえコックピットの外から顔を出すとマードックが立っていた。
一応階級的にはエアリスの方が上なのだがマードックにそう呼ばれるのを拒む必要はないかな?と思っていた。
「はい、どうしましたか?」
「嬢ちゃんが持ち帰ってきたMSのパーツだったんだが一応二機分あるみたいでな。形の出来上がっている緑色のフレームは調整が終われば出撃できそうだ」
「そうですか…緑、“グリーンフレーム”と呼びましょう。で、もう一機の方は?」
「緑…じゃ言いづらいしそうだしそうだなグリーンで良いか。んで整備はもうすぐ終わりそうだが……グレーは組み立てが難航してるし、今は第二戦闘だろ?物音が余り立てられねぇしな」
「…そうですね。完全に振りきるまでは持ってきた組み立て機材での作業は…」
言い掛けてアークエンジェル内部に警報が鳴り響いて遮られた。
『敵艦影確認!敵艦影確認!総員第一種戦闘配備!繰り返す第一種戦闘配備!パイロットは搭乗機にて待機せよ!』
「マードックさん!」
地面を蹴ってコックピットへ向かうとふわり、と白衣が翻る。
「あいよ!…って嬢ちゃんパイロットスーツは!」
「あれ重くて嫌いなんですよ!着ないまま出ます」
「はぁ!?」
そう言ってマードックをコックピットから遠ざけ”ダガー”のハッチをクローズするとブリッジからの通信が入る。
『少尉、聞こえる?』
「はい、一体何があったんですか?」
『ナスカ級とローラシア級…二つのザフト軍艦に挟み撃ちにあっている状況よ』
それを聞いてエアリスはハッとした。
「(あ、ガモフの存在完全に忘れてた…ヴェサリウスのジンを破壊したけど向こうは未だ残ってたんだよね…迂闊だったか…)向こうの指揮官には此方の思惑がバレていた、と言うことですね…流石、と言うべきですか」
感心している場合か!とナタルからお小言が飛んできそうだったがそれでも十分時間を稼いだと思う。既にへリオポリスから四時間以上が経過していたのだから。
それでも戦闘に突入してしまうのは自分の落ち度だ、と少しの後悔をしつつ、今やるべき事をする。
その後臨時戦闘部隊の隊長をすることになったムウから通信が入り原作通りの作戦を展開することになったのだが、此方は”一機”手数が多いので楽にはなるだろう。
ムウとの作戦を合わせ切った後に通信が入るとそこに写し出された人物は青色のパイロットスーツを着用していた。
「キラ君…」
『僕にも…手伝わせてください』
覚悟を決めた、と言わんばかりの表情にエアリスは少し戸惑った。何故、“その表情を自分に向けるのか”と
エアリスは困ったように笑みを浮かべ頷いた。
「…分かったよ。でも余り無理はしないで。自分の身を護ることだけ考えてね?」
『エアリスさんも自分の事を大切にしてください…ってパイロットスーツは?』
「え?着ないよ?邪魔だし」
『え、あ…はい………って着てください!危ないですよ!?』
「大丈夫。当たらなければどうと言うことはない、ってエライ人も言ってたから」
『誰ですかそれは!?』
そう言ってキラは少しだけ笑みを見せ恥ずかしくなったのか通信を切った。
キラもエアリスも行うことはアークエンジェルに近づく敵反応を迎撃することだ。が、エアリスが行うことはもう一つある。
『んじゃ嬢ちゃんと坊主、作戦通りに。よろしく頼むぜ!』
「大尉もお気をつけて」
『あいよ!頼んだぜルーキー達ッ!ムウ・ラ・フラガ。ゼロ、出るぞ!』
反対側のカタパルトデッキからメビウス・ゼロが熱源を探知されないようにカタパルトの勢いで飛翔し慣性で目的地に向かった。
それを見送りながらキラはコックピットで独白した。
「(僕に出来るのかな…でも)……」
エアリスの言葉が、自分をコーディネイターだと知っているのに嫌な顔せずに接してくれる彼女は母親以外に見たことがない。
そんな彼女が…もし、撃墜されることになったら?この戦艦は誰が護る…?
その事を意識するとキラは操縦桿を握る手が強くなる。それにキラに取ってエアリスは“特別な存在になりはじめていた”…それは自分では意識していないのだが。
キラは発進までの自分を落ち着かせていた。「自分なら出来る、頑張らなくては」と。
◆ ◆ ◆
(結局彼女達を捲き込んでしまった……だけどこれは予想外だったかなぁ…)
通信の向こうには“見慣れた人物”と”見慣れない人物”が同じ画角いることに困惑していた。
『“ストライク”はエールストライカー、“ダガー”はバーストストライカーを装備!アークエンジェルがエンジンを吹かしたら一気に敵が来るぞ!いいな!』
CICにいるトノムラ伍長が言葉を飛ばすとキラはおどおどしながら、エアリスはしっかりと了承した。
『りょ、了解…!』
「了解」
モビルスーツがカタパルトに運ばれ接続、吊り下げていたクレーンが外れるとガントリークレーンが作動しストライクには大きな翼と四つのスラスターが特徴的な空間戦闘用ストライカーである“エールストライカー”が背面に接続、両サイドのパネルが開くと右手には57ミリエネルギービームライフルと左腕のラッチに耐ビームコーティングがされたシールドが接続された。基本的な装備だ。
(五番目の見たこと無いストライカー…外伝に出てきた“ヘイルバスター”みたいな装備か?)
続いてエアリスの乗る機体には、機体とは別のサブバッテリーとスラスターユニットが合わさった肩がけ出来るようになったレールキャノン“ゲイボルグ”と試作ビームランチャー【アーキバス】が装着された“バーストストライカー”が装備された。両手が空くため同じく横のパネルが開くと取り回しがしやすい試作ビームカービンが右手に装備され左腕のラッチに小型のシールドが接続する。右肩部分にはランチャー時と同じようなコンボウェポンユニットが装着される。背面の装備はMSVに出てきたバスターのライブラリアン専用機であるヘイルバスターに似ていたが此方の方が強そう、と思った。
次の瞬間アークエンジェルの城塞砲である【ローエングリン】が火を吹いてデブリを焼き払いながらナスカ級へ向けて飛ぶ。
次の瞬間にダリラ・ロラーハ・チャンドラ二世伍長からの通信が入る。
敵艦がMSを出撃させた、とのことだ。その事にキラは強張るがエアリスは平常を装う。
『エアリスちゃん!“ダガー”発進です!』
戦闘管制にはお馴染みと言うかやはりと言うべきかミリアリアが座り学生組がブリッジに連合兵士の制服を着用していた。しかし、ちゃん付けは如何なものかと思ったが訂正するのも惜しい、そのままにすることにした。
ブリッジで操作されたアークエンジェルのハッチが解放された。星の輝きが漆黒の宇宙を照らし吸い込まれそうになるがこの身体は既に慣れている。
「エアリス・レインズブーケ、“バーストダガー”行きますッ!!」
サンドカラーのストライカーを装備した“バーストダガー”が屈伸するように膝を曲げるとアークエンジェルより発艦し充電ケーブルを勢い良く切り離す。
エアリスはその衝撃を風を感じるように受け止めた。
スラスターを吹かしてAMBAC、慣性を利用し180度ターン、後方より接近するローラシア級【ガモフ】を視界に捉え次の瞬間三つの輝きが艦艇から射出された。
戦闘準備が整いその機種の敵性分析をしていたチャンドラが息を呑んだ。
『機種特定!…こ、これはっX102、X103、X207ですッ!』
『…奪ったXナンバーを全機体投入してきたと言うの!?』
マリューは凍りつくブリッジで絞り出すように呟いたのだった。
◆ ◆ ◆
「《ヴェサリウス》から既にアスランが出ている。出遅れるなよ?…それにしてもあれが連合の試作量産機…ふん、こっちのジンの方が強そうだな?」
ザフト軍艦ローラシア級【ガモフ】から発進した“デュエル”に搭乗したイザーク・ジュールはアークエンジェルから発進した“ダガー”を見てそんな感想を嘲笑うように述べた。
「確かに。ヴェサリウスの連中はあんなのにやられたのかよ?まぁ此方は三機だ。ナチュラルが操縦する機体なんかに…」
奪取した
「イザーク、ディアッカ!作戦中ですよ?…それにあの機体、はじめて起動したと言うのにクルーゼ隊長の“シグー”を撤退させてあのミゲルを撃墜させたんです…油断するには危なすぎます!」
同じくクルーゼ隊に所属する緑髪の少年、
ミゲルがやられたのは”運がなかった”のだと。イザークとディアッカはそう思っていた。その時までは。
「……ッ!うわぁぁああああっ!?な、なにッ!?」
次の瞬間にイザークの乗るデュエルが大きく揺れる。デュエルの左肩が抉られた。
その原因は前方より接近する“ダガー”が懸架した【350㎜レールバズーカ“ゲイボルグ”】が放たれた為だ。
体勢を大きく崩したそのタイミングで前方より実弾とビームの火線が飛んできた。距離にして照準補正が掛からない距離にあるに関わらずだ。先制攻撃を受けた、のだと。
「あの距離で撃ってきただと!?」
「イザーク!」
「…掠り傷だ!ナチュラル風情がッ!」
攻撃を当てられたことによってプライドを傷つけられた彼らは攻撃を開始、アークエンジェルに近づいてきた。
ナタルが迎撃指示を出す。
『ミサイル発射菅、13番から18番撃て!味方に当てるなよ?続いて7番から12番、【スレッジハマー】装填、19番から24番【コリントス】、てぇーっ!!』
ミサイルの弾幕を的確にXナンバーに搭載された【イーゲルシュテルン】で迎撃しその距離を縮めてくるが“バーストダガー”のレールバズーカと頭部バルカン、ビームカービンがその行く手を阻む。
「ちぃ…ッ連合のMS如きが…!ニコル!お前は艦を!俺とディアッカであの【ゴーグル付き】を落とす。ディアッカ!俺が接近して動きを封じる!狙い撃て!」
「分かりました!」
「任せな!」
通信を終了し作戦を続行する。ニコルはアークエンジェルへ向かいディアッカとイザークは接近する“バーストダガー”に接近する。
◆ ◆ ◆
エアリスは敢えてキラにアスランの事を聞かなかった。
正面からストライクが出撃しイージスとぶつかり合っても両者共に撃墜される可能性は低い。
そのことから敢えて放っておくことにしたエアリス、それにあの戦いでストライクはフェイズシフトダウンの危機に陥ったが此方があの三機を引き受ければその可能性は非常に低くなる。
「デュエルで接近戦に持ち込んでバスターで狙い撃つ…良く練られた作戦だけどっ!!」
スラスターを吹かし懸架したゲイボルグを背面に戻しビームカービンで牽制しながらデュエルへ近づく。
「はぁああああああっ!!」
「でぇぇぇぇぇいっ!!」
両者接近した機体、ダガーは腰部分に移動したサーベルラックから引き抜き、デュエルは背面からサーベルを引き抜き迎え撃った。
互いのビームサーベルはアンチビームコートされたシールドが弾きそれぞれの機体が押し込もうと出力を上げる…が。
「ッ!押されているだと!?」
「そっちよりも“ダガー”の方が出力が上みたいだね…ちぃッ!?」
受け止めたデュエルを押し返すダガーは装着したストライカーの出力も相まってデュエルを押し返すほどの性能を持っていた。そのまま押し返そうとしたエアリスだったがコックピットに表示されるアラートを確認し咄嗟にデュエルから距離を取るとビームの光条が自分がいた場所を通り抜ける。
「マジかよ!?今のを避けるのか…!うわっ!」
バスターが高インパルス長距離狙撃ライフルで狙い撃つが避けられてしまう。逆にゲイボルグで狙撃されガンランチャーが破壊されてしまった。
「そこが狙いどころッ!!そこだっ!!」
「ディアッカ!うわぁあああああっ!!!?」
その隙を付いてダガーはデュエルを蹴り飛ばした。咄嗟にシールドで受け止めるデュエルであったが勢いが乗った攻撃を殺すことは出来ず、体勢を崩しダガーが手にしていたサーベルで左腕を切り落とされてしまう。
「イザーク…ぐぅうううううっ!?」
飛ばされたデュエルの進行方向のバスターとぶつかり、きりもみ状に宇宙空間に転がる。
「…ッ!」
咄嗟にエアリスは【アーキバス】を起動させるがここで彼らを落とすわけには行かない、と思いだし肩部コンボユニットからライオットグレネードとミサイルを同時発射し頭部バルカンで着弾する寸前に爆破する。
視界を覆い尽くし装甲値は削られていく。
「「ーーーーーーーーーーッ!?」」
声に鳴らない叫びがコックピットに広がり宇宙には閃光と爆発が広がる。
「イザーク、ディアッカ…っ!くっ連合の戦艦なのに弾幕が厚い…!」
吹き飛ばされた二人を確認したニコルはアークエンジェルを離れる。ガモフからの艦砲射撃を受けるが攻めきれず、吹き飛ばされた二人を救助するためにダガーへ攻撃を仕掛ける。
複合装備【トリケロス】から出力されたビームが襲う。
「ミゲルを撃墜した機体…甘くは見ませんよっ!!」
「ブリッツ…!アークエンジェルから離れてくれたのならありがたい…よっ!!」
ビームが二機の間に割って入り防御に回るエアリス。腰に懸架したカービンを手に取り反撃する。
射撃は互いのシールドに当たり、もしくは横に擦れ逸れていく。
「あれほどビームを撃っているのに…どれだけエネルギーが持つんだ…!」
ニコルは機体のエネルギー残量を確認し焦っていた。
機体のエネルギーは未だ半分以上あるが戦艦への帰還を考えれば考え無しに撃つことは出来ない。
それは向こうも同じことだが手にしたライフルは連続射撃を此方に向けている。
ビームに合わせ実弾を織り混ぜ此方の電力を削ってきていた。戦い慣れている…!とニコルは感じていた。
「…本当にあれに乗っているのはナチュラルなのか…?」
戦いの最中ニコルは今自分が戦っているのはナチュラルではなくコーディネイターでは…?と思いながら吹き飛ばされた二人を援護する為に牽制する。
しかし。
「バッテリーの容量は向こうの方が上なのか…?うわぁああっ!?」
ダガーが持つビームカービンをトリケロスで防御していると視界が狭まっている状態で意識外よりレールバズーカの弾丸が着弾し機体が揺らされる。
「ぐぅううううううっ!?ば、バッテリーが…!?」
「ニコル!下がれっ」
「サンキューニコル!命拾いしたぜ!下がっていろ!」
バズーカが着弾し電力が大きく削られる。このままでは…と思ったニコルだったが復帰した二人が入れ替わるように立ちふさがる。そのまま攻勢が逆転する…かに思われたが。
「イザーク!ヴェサリウスが!」
「なんだと?ヴェサリウスが被弾!?」
「俺たちにも撤退命令かよ!…うわっ!?」
「ムウさんがどうにかしてくれた…なら此方もヤっちゃうぞ!!」
同時にニコル達にもクルーゼの乗る母艦が被弾したことを知る。その動揺を感じ取ったエアリスは“バーストストライカー”に搭載されたもう一つの砲門を起動させる。
「これ喰らって…さっさと帰りなよ!これで言い訳が付いちゃうでしょ!!」
懸架された試作ビームランチャー【アーキバス】が収束した赤と白のビームを三機のXナンバー…ではなく後方にいるガモフの艦橋を狙って射撃する。
次の瞬間、狙い通り…とは言えずガモフの装甲上面を蒸発させその後ろにあったスラスターが破壊され爆発を引き起こし艦内では衝撃とアラートが鳴り響く。
「ガモフが…!」
「MSにあれ程の威力を持つ砲を…マジかよ!?それじゃバスターが形無しじゃないか…!?」
「くっ…バッテリーも残り少ない…こんな屈辱が許されるかぁ!」
「イザーク!撤退しましょうこのままじゃ僕たちも危ない!ディアッカ!」
「ああっ…このままじゃ此方がやられちまう」
「クソッ…覚えていろ!『ゴーグル付き』!」
その威力を見せつけられ母艦が撃墜の危機に直面したニコル達は撤退を選択する。
イザークは今にもダガーに襲いかかろうとするがブリッツとバスターに押さえられスラスターを吹かして後退していった。
その後ろ姿を見ながらエアリスはコックピットでひとりごちる。
「【アーキバス】…威力は大きいけど消費が大きすぎるな…」
今の戦闘で【アーキバス】は不調をきたしてしまったようでスパークを散らしている。
コンソールにはバッテリー残量が表示されているがストライカーに搭載されていたサブバッテリーが一瞬で空になり本体バッテリーも二割ほど消費してしまっていた。“ダガー”は元よりビーム兵器の試作運用するため元よりバッテリーが増設されていたのだがそれを一瞬で消費してしまうほど【アーキバス】の消費量が大きい。その分威力も高いが。連続射撃はできない…百式のメガ・バズーカ・ランチャーのようだ、と。
「狙いの補正値が甘かったのか…ガモフを沈めれば大気圏突入の際にメネラオス生存が引き上げられるだけどな…」
そんなことを呟いているとアークエンジェルから通信が入る。
『エアリスちゃん!キラが敵モビルスーツに!』
直ぐ様思考を切り替え正面の戦闘宙域へ向かう。
「フラガ大尉は!」
『今向かってる!決定打を与えられるのはダガーだけだ!』
「了解!」
スラスターを吹かし現着するとストライクはイージスのMA状態に拘束されていた。
案の定ストライクはPSダウンしてしまっていた。
(頼むから変な動きをしないでくれ…そこだっ!)
エアリスはイージスの四肢に狙いを定めレールバズーカを発射する、寸分違わずクローの拘束が外れた。
「ぐっ…!キラ…!」
「坊主掴まれ!」
拘束が外れストライクが放り出される。再びイージスはMSに変形…したのだが頭部、サーベル発振器、シールドが破損しておりダメージを受けていた。
ストライクを持ち去ろうとするが戻ってきたムウのメビウスゼロがガンバレルの弾丸を吐き出し赤い装甲を叩き出す。
フェイズシフトダウンしたストライクを下部のワイヤーアンカーで掴みアークエンジェルに帰投したのを確認したエアリスはイージスに向け実弾をばら蒔き追ってこれないようにした。
「くッ…キラ……!!!」
遠くに去っていくストライクを見送り無意味、と分かっているがアスランはコンソールに拳を叩き込む。
視線を此方に向け去っていくダガーを怨みがちに見送るしか出来なかった。
◆ ◆ ◆
戦闘が終了し航行が不能になった【ガモフ】から【ヴェサリウス】へ移動したアスラン達はパイロットルームで先程の戦闘に関しての怒りを露にしていた。
「クソ!こんな結果が許されてたまるか!」
「イザーク…落ち着いてください…」
「落ち着け?落ち着けだとぉ!?俺達赤服が四機で掛かったのに一機も仕留めきれなかったんだぞ!?それもナチュラル風情に…!こんな屈辱あってたまるか!」
イザークはニコルへ怒鳴り同じことを思っていたディアッカと共に部屋を出る。
部屋に残ったアスランも作戦を遂行できなかった悔しさからか俯き拳を握っているのを見たニコルは声をかけようとしたが今はそっとしておくべきだ、と考え床を蹴って外を出る。
ニコルはあの『ゴーグル付き』を相手にどう対応するかを考えるべく割り当てられた部屋へ戻った。
「…くそ!」
いなくなったパイロットルームでアスランはロッカーを叩く。
また邪魔された、あのゴーグル付きのMSに。
説得し一緒に来るように告げたのにキラは付いてこなかった、だから無理矢理にでもつれていこうと思ったのに阻止されてしまった。同じコーディネイターなのにどうして連合に協力している…?
「…ッ!まさか無理矢理協力させられているのか…!」
そうすれば合点が行く。
アスランの脳裏に映るのは幼い頃のキラ、面倒くさがりでやれば出来るのにやろうとしない。夏休みの課題だって自分を頼ってきた手の掛かる弟のような存在がそんなことをするのは連合に脅されているに違いない。
そうでなければ俺と戦う理由など無い筈だ!
「俺が必ず取り戻す!キラ…待っていてくれ!」
アスランは怒りを決意に代えてパイロットルームを後にする。が、その後クルーゼと共にプラント本国へ召還されるのだった。
アークエンジェル追撃は修理が完了したガモフとイザーク達が引き継ぐことになる。
◆ ◆ ◆
この戦闘でアスラン達はアークエンジェルを討つことは出来ず戦艦二隻中破、そして一隻が自力航行出来ず、搭載しているMSは中破してしまう結果を残してしまう。
追うことは出来ずにその隙にアークエンジェルは戦闘宙域を離脱し見失ってしまう…が、全てが悪い結果と言うことではなかった。
この戦闘でアークエンジェルも無傷、という訳ではなく艦も少なからずダメージを受け予定していた航路から外れてしまったのだ。白亜の大天使は導かれるように”デブリベルト帯”へと進むのであった…。