魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】 作:萩月輝夜
お気に入りすごい増えててビックリした(小波感)
感想もありがとうございます…うれしいうれしい…。
後最後オリジナル展開あり。
それではどうぞ!
「半径5000に敵艦の反応は捉えられません、ザフト軍此方を完全にロストした模様。」
トノムラの報告を受けブリッジにいるクルー達は安堵の息を吐いた。
「嬢ちゃん達が頑張ってくれたお陰で敵戦艦は航行不能…搭載MSは戦闘できない。追いかけられることは少なくともなくなった訳だからな。」
「敵部隊の追撃は無くなったのは幸いだけど…此方は問題が一つ、増えてしまったわ…」
「だねぇ…まさか補給庫にダメージ…食料と水がゼロ…という訳じゃないけど地球に行くまで非常に厳しいよな?」
マリューの悩みにムウが答える。
そう先の戦闘で戦艦の主砲が運悪くアークエンジェルの資材保管庫に被弾し食料含む生活に必要な物資が外へ放り出されてしまったのだった。取りに戻るということは出来ない。
最短で地球へ降りなければならなかったが、そう上手くは行かないようだ。
「おい、もっとマシなルートは取れないのか?」
航行予定のシミュレーションがブリッジへ表示されるがそれを見てナタルは不満げに告げた。
「無茶言わんでください。このまま行けばこの戦艦ごとデブリの仲間入りですよ?」
「デブリの中を突っ切って行けば良いのにね?」
苦笑気味にマリューが告げる。
「人類が宇宙に上がってから産み出し続けてきた人類の業ね……ってデブリ?」
その事にムウが反応し何かを思い付いたように閃いて艦長席に座るマリューへ向き直る、その表情は不敵な笑みを浮かべている。
「やっぱり俺は不可能を可能にする男、ってね」
◆ ◆ ◆
「マードック軍曹、そちらのスパナを取ってください」
「あいよ!しっかしあんだけ積んであった水がなくなるとは…」
「ええ、死活問題ですね。パーツ洗浄器が使えないので手洗いですか…(まさかここで皺寄せが来るとは…しかし実際手作業はキツいね…)」
先の戦闘が終了し安全圏に逃げ込んできたアークエンジェルだったが物資保管庫が攻撃によって流出してしまった為だ。
(物資がかつかつになるのは原作通り…か)
そんなことを思いつつエアリスは自機であるダガー、キラはストライク、そしてマードック達率いる整備班は“アストレイ”の整備を行っていた。
先の戦闘終了後、ちょくちょくではあるあるが地道に整備を続けていたお陰で今日稼働するまでに漕ぎ着けたのだ。
ムウ用にセッティングするためにOSの搭載はキラが主導で行っていたのだ。
作業を終えて先にエアリスが食堂へ向かう。
「これで戦力確保…って感じかねぇ?」
マードックの問いにキラが頷く。
「ええ。後はフラガ大尉用にOSを調整して…ですね」
「おう、此方はもう良いから坊主。休憩に行ってこい」
「分かりました。」
キラは作業を終え、汗を拭い消臭シートで体を拭いた後食堂へ向かう。働いた後はお腹が空くものだ。食料制限されているといってもパイロットの食事量は多い、そのためパイロットと軍人達、民間人達の食事の時間は分けられているのは量による差別だ、と言われない為の一種のポーズでもある。
食堂へ入ると先に食事を取っていたトールが気がつき声を掛ける。
「ようキラ。ストライクの整備終わったのか?」
「うん。水洗いが出来なくてもうくたくただよ…ってエアリスさん?」
「もう…だからちゃんと気を付けて作業して、って言ったのに…顔に汚れが付いちゃって」
「一人で出来ますから大丈夫…ってむごごごご…」
「もう女の子なんだからちゃんと気を使わないとダメよ?」
キラの視界の先にはエアリスとそれを取り囲む様に座るミリアリアとフレイがおり、彼女の顔を除菌シートで拭ってる光景が見えた。彼女の顔はMS整備用の重機のオイルで汚れてしまっていた。恐らく飛び散った油が顔に付着してしまったのだろう。揉みくちゃにされ、フレイには髪を弄られている。
「あーもうこんなに汚れて…」
「わ、髪キシキシ…どんなシャンプー使ってるの?」
普段頼りにしている少女が年相応の姿をしているのを見たキラ達男衆は珍しいものを見るような目で見ていた。
キラは料理のトレーを受けとりエアリスの隣に座った。
「……え?」
隣に座ったキラだが距離を取られてしまう。
「…///」
そのエアリスの露骨な反応にキラは言葉を無くしてショックを受けていた。
「あ、キラっ!ダメよ乙女に近づいちゃ!」
「キラ…貴方、乙女心を分かってないわね!」
そして女子二人に怒られる、という始末。キラは分かっておらず他三名は「あー…」と反応を見せる。
俯いていたエアリスは顔を上げ恥ずかしそうにキラにその事情を告げた。
「その…ごめんなさいキラ君…あの…実は昨日水制限掛けられたせいで…シャワー浴びれなかったから…出来れば余り、近づかないで欲しい…匂うから…ね?」
「え、あ、その…ごめん、なさい…」
顔を真っ赤にしてもじもじしているエアリスを見て庇うように立ちふさがるミリアリアとフレイに気圧されるキラであったと同時にキラの中で何かが目覚めそうだった。
◆ ◆ ◆
艦内放送で呼び出されたエアリス達はブリッジに集合していた。
「補給を」
「受けられるんですか!?」
「一体何処でそれを受けられるんですか?」
学生組の回答にムウは歯切れの悪い回答しか出来なかった。
「受けるって言うか勝手に行うというか…な?セルフサービス的な?」
「「「「「???」」」」」
「私たちは今“デブリベルト”に向かっています。」
「デブリベルト…?」
その言葉にサイがハッとしたように顔を上げる。
「まさか…!?」
「お、君察しがいいねぇ」
重い空気を紛らわす為におどけるような声色で告げるがマリューは重い声色で説明した。
「…デブリベルトには宇宙空間を彷徨う様々なものが集まっています。無論そこには戦闘によって破壊された戦艦も有るわけで…」
「まさかそこから『補給』しようって…?」
信じられない、といった表情を浮かべる学生組にエアリスが声を上げた。
「無論私たちは墓暴きをしたいわけではないですよ。ですが、今生きる私たちはどうしてもそれが必要なのです。誰もが見つかってよかった!と喜んでいるわけではないのはお分かりいただけますか?」
「「「「「………」」」」」
「今ここで生きるヘリオポリスの避難民と私達…生きるためです。ご理解願います」
エアリスが頭を下げる。
彼女の言葉が詭弁だったとしてもそれは紛れもない”真実”だった。
その事を受け入れ少年達は物資の運び入れ、ポットでの船外作業を手伝うことになったのだった。
◆ ◆ ◆
「(実際に目の当たりにすると…正直キツいな…)これは…」
外船作業を行うために連合MAである“ミストラル”にトール達が搭乗し、エアリスとキラは機体に乗って“エールストライカー”を装備して作業を手伝っていた。
デブリベルトに入り墓荒し、もとい作業を行っているとそこには砲撃によって沈んだ連合の艦艇にザフトの軍艦が紛れ込んでいた。
ミストラルに搭乗するサイとチャンドラ達は最初こそは抵抗があったものの未知の光景と宝探しめいた行動に罪の意識は薄れていった。
それはエアリスも同じだったようで連合艦艇を覗き“お宝”を見つけてしまった。
「こいつは…!」
連合のアガメムノン級が転がっておりバイタルパート、ブリッジをやられてはいるようだが形を保っていた。
穴の空いた艦搭載機スペースには無傷の“メビウス”六機、そして新品同様の“メビウス・ゼロ”が転がっていた。
それを見たエアリスは悪魔の発想を思い付き悪い笑みを浮かべた。
「…艦長、技術班の投入を。新品の“メビウス・ゼロ”と“メビウス”六機を確認。アークエンジェルへの搬入許可を」
マリューはエアリスのその表情を見て少し恐怖した、という。
ミストラルを護衛し弾薬、物資を運び入れていると“それ”は突如現れた。
凍りついた大地、農作物を育てていたであろうそこは取り囲む水はうねりを上げ真空によって凍りつきまるで時がそこだけ止まってしまっているような錯覚すら覚える。
農業用コロニー“ユニウスセブン”がそこにいた。
その人工の大地に降り立ったエアリス達は近くにあった建物をナタルの指示で捜索するために開ける。
「「キャアアアアアアアッーー!」」
捜索に同行したミリアリアとフレイがそこは衝撃の光景、日常生活では見ないだろうものだった。
そこには幼い子供を守るために抱き寄せ真空の宙に晒されたそれは凍りつき、物言わぬ骸と化す。
ミリアリアとフレイをトールとサイがそれ以上見せぬように抱き締めた。
「あそこの水を…!?本気なんですか!?」
アークエンジェルのブリッジに戻ってきたキラは驚愕の声を上げた。
「あそこには1億t近い水が凍りついているんだ。」
農業用プラントであるユニウスセブンには大量の水を保有していた。が、ナタルの物言いはリアリスティックなものだった。人の血が通っているのか…とキラは思っているだろうがエアリスは無理してるな…と。
「バジルール少尉だって見たでしょう!?あそこには何千人というコーディネイターの人たちが亡くなって…」
キラは必死に抗議する。当然だろう⋯キラはコーディネイターであり、生まれ育った場所ではないが特別な場所、という意味を持つ。彼以外の同行者もあの場所を見て心理的に抵抗を覚える…がそうせざる得ない状況だった。
「水はアレしか見つかっていないの…」
キラ達はハッと息を飲む。
「誰だってあそこに踏み込みたくはないさ…誰も『水が見つかった!よかった!』」って…俺達は生きなきゃなんねぇんだよ!」
ムウの表情と声色に学生達はハッとする。そう、自分達は生きねばならぬのだ、と。
◆ ◆ ◆
ユニウスセブンでの水の回収作業が始まった。
ストライクとダガーがそれぞれ周囲警戒を行っている。その前にキラ達は避難民の女の子と一緒に慰霊を込めた折り鶴を作っていた。
その際にエアリスが一番折るのが下手で少女に笑われていたが。
(祈ろう…私は地球連合の兵士だけど祈りを捧げても問題ない筈だ…死者達に“要らない”って怒られそうだが)
エアリスはコックピットで両手を合わせて頭を下げる。せめてもの手向けであった。
作業を進めエアリスは一番大きい氷塊の付近にあった研究所のような場所を発見しキラに周囲警戒を引き継ぎその場所を捜索することにした。
(何故だろう…無性にここを捜索しないと行けない感じがした…)
ダガーを膝立ちさせてコックピットから降り空間移動用のスラスターを装着し研究所内部を捜索する。
電源が当然ながら死んでおり見ることは叶わないが紙媒体の書類が収まっているのが見えたので一冊確認してみるとここは品種改良する野菜を試験的に育てる場所だったらしい。本を戻し奥へ進む。
「…ッ!!」
扉を開け、ソコには見たことのある亡骸がそのままの姿であろう形で部屋に漂っていた。
濃紺の髪色、品の良さそうな貴婦人…といった感じの女性。キラの友達であるアスラン・ザラの母親…レノア・ザラがそこにいた。
エアリスは近づき宙に浮いているレノアを地面に、近くにたまたまあったマットレスに寝かせる。
「こんなところ…いや、ここで眠っていたのですね貴女は…」
寝かせた後、エアリスは墓標代わり…と言うわけではないが花のようになっている折り鶴を近くに備え体にシーツと顔に布を掛けて手を合わせて拝む。
遺体を持って帰るわけには行かない、がもし再び宇宙へ上がることになってアスランと味方になるのなら回収できるかもしれない、と。
「貴女と息子さん…逢わせられるように頑張ります」
この混沌とした世界にも少しは救いは逢っても良いのではないか、と誰もいない虚空の墓標にてエアリスは思った。
踵を返してその場を立ち去る。この場所を再び訪れることが出来るようにビーコンを置いておく。
『有り難う…名前も知らない優しい女の子…』
「えっ………?…………………失礼します。」
踵を返しその場を立ち去ろうとしたエアリスの耳に空音が入る。それは優しい女性の声色だった。
作業に戻るためエアリスは床を蹴りダガーへ向かうのだった。