魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい【完結】   作:萩月輝夜

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評価バーが3本埋まって色も付きました。誤字脱字報告申し訳ございません。

感想コメント非常にありがたくモチベーションが高いです。嬉しい…




敵軍の歌姫

キラは物資の補給作業を手伝うために外でMAの護衛をしていた。

その最中ストライクのコックピットで考え事をしていた。

 

(あの時のエアリスさん…)

 

キラの脳内には食堂でのエアリスが恥ずかしがっている様子が浮かんでいた。

 

(なんで隣に座っただけなのにあんなに顔を赤く…其にミリアリアとフレイに怒られたのは何でなんだろう…?)

 

腑に落ちないキラだったが…

 

(でも……あの時のエアリスさん……)

 

そんなことを考えていると“ストライク”のコックピットにアラートが鳴り響く。

ぼんやりと想いに耽っていたキラはその警報音によって思考を取り戻しモニターを注視する。

暗黒の宙域に蠢いた人影…モビルスーツであった。

その姿にキラの身体は一気にプレッシャーが襲いかかる。

 

「強行偵察型複座ジン…どうしてこんなところに!?」

 

キラは周囲を確認すると近くにはプラントが所有する民間船が攻撃を受けたのか破損し漂流している。

これを探しに来たのか…?とキラが思っているとギリッと奥歯を噛み締める。なにもこんなところで探し物をするな…と言いたくなった。

今此方は搬入作業中であり終わっていない。尚且つ隙を晒している“アークエンジェル”が見つかりでもしたら増援を呼ばれピンチに陥ってしまう。

そして今はエアリスはいない…ここでモビルスーツを相手に出来るのは自分しかいない…!

その想いからキラはコックピット内部の主動スコープを起動させ狙いを定める。

 

(気づくな…気づかないでくれ!行け、行ってくれ…!)

 

気づかずに何も見ないでこの宙域から立ち去ってくれ…とキラはトリガーに震える指を添えながら祈った。

祈りが通じたのか複座型ジンはバーニアを吹かしてその場を立ち去ろうとする…が。

 

「ッ!馬鹿野郎!どうして気付くんだよ!!?」

 

離脱しようした複座型ジンは“アークエンジェル”へ向かおうとする“ミストラル”が視界に入る。

ジンはその手にしている狙撃ライフルで狙いを定め撃った。二射目がミストラルが運ぶコンテナに当たり大きく揺れる。

 

キラは震える指に力を入れてトリガーを引いた。

 

「どうして…ッ!」

 

ストライクが装備しているビームライフルから緑色の収束した光が放たれジンの左腕をもぎ取る。続けざまに二射目を発射するとコックピットを貫き爆散する。

 

『助かった…』

 

『キラ助かったよ…』

 

ミストラルに乗るカズイとチャンドラより感謝を受けるが今のキラはそれどころではなかった。

返すこと無く通信を切ったキラは同胞達が眠るユニウスセブンを見つめる。

 

「殺したくなんか無い…ただ、守りたいだけなのに…」

 

そのキラの想いは誰にも届かずコックピットの中に虚しく響いたのだった。

不意にコックピット内部に再びアラートが鳴り響く。「敵か…!」と再びストライクはそちらの方向にライフルを構えるとそこにあったのは“敵”ではなく…

 

◆ ◆ ◆

 

「開けますぜ?」

 

キラが見つけたのは“救命ポット”だった。

それを発見したストライクが持ち帰りモビルスーツデッキに降ろし拾ってきた、と言うことをナタルが聞くと頭痛を覚えていたようだったが人命救助の観点からキラを責められないだろう。

マードックが外から操作しハッチを解放する。

 

「ハロ…ハロ…」

 

間抜けな声が聞こえてきた…と思ったら浮いて飛んで来たのはピンク色の球体…つぶらな瞳が付いたペットロボットのようだ。

 

「ありがとう。ご苦労様です。」

 

続いてハッチの中からこの空間には似つかわしい可愛らしい声がして全員がそちらに視線を向ける。

柔らかなピンク色の長髪、ふわりとスカートが翻りハッチの中から出てきたのはキラとエアリスと同じような年齢、白い肌、ほっそりとした腕、優しく愛らしい顔に浮かぶ笑みは見るものを幸せにするような笑みが讃えられて衣装も相まって天女のようだった。

 

「あら…あらあらあら?」

 

飛び出した慣性でそのまま漂い壁にぶつかり掛けた彼女にエアリスとキラが同時に手を伸ばし手首を掴んだ。

 

「ありがとう」

 

引き寄せると間近で少女はにっこりと微笑む。その表情にキラは顔を赤くしてエアリスはまるで有名人に会うように少し驚いた表情を見せる。

 

「あら?」

 

少女の視線はエアリスの制服、階級章に留まっていた。

 

「…あらららら?」

 

少女は辺りをキョロキョロと見渡しこう告げた。

 

「まぁ…ここはザフトの船ではありませんのね?」

 

その発言にエアリスを除く上級士官、特にナタルが頭を抑えて溜め息を吐いた。

 

◆ ◆ ◆

 

アークエンジェルの最上級士官達はマリューの部屋に集まっていた。その中心には“ある意味でのVIP”がのほほんとした表情で座っている。が、其は表面上だけであり内心は不安で仕方がない状況にある。強い娘だな、と。

エアリスはそれを見ながら外の通路では学生と伍長達が興味本意で聞き耳を立てている事を知っている。

扉の前に立ち聞き耳を立てていた男衆をエアリスは業務的な視線を送った。

 

「皆さんは物資の積み込み作業が残っている筈ですね?急いで作業に戻ってください。バジルール少尉のお小言が飛ぶ前に」

 

「戻った方がよろしいですよ?」と告げようとする前に学生達は蜘蛛の子を散らすように逃げて逃げ遅れた伍長達はナタルの怒声が通路に鳴り響いた。

近くで野次馬に紛れずに見ていたキラは室内にいるラクスを見てひらひらと手を振ると顔を赤くしてその場を立ち去ってしまう。

 

(まぁラクスみたいな女の子に微笑まれたら恥ずかしくなっちゃうよな…)

 

そんなことを思っていると扉が閉まり静寂が戻る。場を整えるためにマリューが咳払いをすると会談が始まった。

 

「失礼しました。それでー」

 

「わたくしはラクス・クラインですわ。此方は友達のハロ」

 

ラクスはマリュー達の前にハロを差し出すと間抜けな声を出すのを聞いて士官達は頭を抱え調子が出ないようだ。

エアリスは主導し話を進めることにした。

 

「クライン…となればプラント最高評議会議長であるシーゲル・クラインのご令嬢ですね?」

 

「あら、シーゲル・クラインはわたくしの父ですわ!父をご存じなんですの?」

 

知らないわけがない。

ザフトの穏健派…ではあるが“オペレーション・ウロボロス”、“ニュートロンジャマー”…地球連合が核兵器を封じられ恐らく地球連合が真っ先に排除したいであろうプラントの現最高指導者だ。

…が、エアリスは其以外の事も知っている。コロニーメンデルから“特殊なコーディネイトをされたラクス”をブルーコスモスの襲撃から逃がし“ある意味”男手一つで育てたラクスの父親と言うことを。

その事を告げずに心の片隅に置いておいた。

 

「…ええ。まぁ…しかし、どうしてラクス様はこのような場所に?」

 

「ええ、わたくし“ユニウスセブン”の追悼慰霊のために事前調査に来ておりましたの」

 

その言葉に頭を抱えていたマリュー達はハッとして佇まいを正す。

 

「そうしましたら、地球軍の船と出会ってしまいまして。臨検する、と仰るのでお受けしたのですが…地球の方々にはわたくしどもの船の目的がどうやらお気に触ったようで…些細ないさかいから、船内は酷い揉め事になってしまいましたの…」

 

ラクスの眉が悲しげに寄せられそして救命ポットに押し込まれた理由を話してくれた。

 

「…わたくしは周りの者達にポットで脱出させられたのですが…あの後どうなったのでしょう。地球軍の方々がお気を鎮めてくださっていると良いのですが…」

 

悲しげに目を伏せるラクスを見てムウ達は黙ってしまう。そしてエアリスも口を閉ざした。

あのユニウスセブンの宙域で難破した民間船が砲撃によって大破したなどと告げることは出来なかったからだ。

 

◆ ◆ ◆

 

《ヴェサリウス発進は定刻通り。搭乗員は十二番ゲートより、速やかに乗艦せよ。カルバノグは定刻より数十分遅れ…》

 

プラント評議会から中立国であるオーブ連合首長国所有の資源衛星ヘリオポリスを攻撃したことと遭遇した連合のMSの情報を報告するために召還していたのだ。報告が終わり七十二時間の休暇を与えられていたが其が三十六時間に縮まり再び戦場へ向かうことになったのだ。

アスランは艦船ターミナルの放送を聞きながらヴェサリウスの搭乗口へ向かっていた。が彼の心は平常ではいられなかった。これから軍務に向かうから、と言うわけでは無い。ヴェサリウスに向かう途中で“ある情報”を聞いたからである。

その最中、向かうアスランは驚いた。搭乗ゲート付近にで父であるパトリックがいたからである。クルーゼと会話しており見送りに来たのではないと理解しているし今までそんなことは一度もない。公的な場であるためアスランは敬礼し乗艦しようとすると出し抜けに問いかけてきた。

 

「アスラン、ラクス嬢の事は聞いているな?」

 

「はい、ラクスがまさか追悼慰霊の最中に…本当なのですか?」

 

そうアスランが問いかけるとクルーゼが頷く。出港時間の短縮と搭乗口ゲートに忙しい父がいることを符合し事の真実が現実味を帯びてきていることを感じ取った。

 

「…まさか隊長、ヴェサリウスが?いや、しかし民間船ですし何か故障したとか…」

 

「おいおい、冷たい男だなアスラン。勿論私たちが捜索に出るのだよ。」

 

その回答に補足するようにパトリックが告げた。

 

「ユン・ロー隊の偵察型ジンが戻らぬのだ。」

 

偵察型MSが落とされた?アスランの中にある不安が一段高くなった。

 

「其に今ユニウスセブンは地球の重力に引かれてデブリ帯の中にある…嫌な位置なのだよ。」

 

確かに、とアスランは思った。

地球に近すぎる、かといって地球連合が彷徨き民間船を撃墜するとは思えないが彼の脳裏にはキラとあのゴーグル付きの姿が浮かんだ。考え込むアスランの思考を中断させるようにパトリックが話しかける。

 

「お前とラクス嬢が婚約者同士だとプラント全域の人々が知っておる。なのにお前がいるクルーゼ隊がここで休暇を取っているなどと言っているわけには行くまい」

 

そう告げてパトリックは踵を返してこの場を立ち去ろうとする。

 

「彼女は“アイドル”なのだ。頼んだぞクルーゼ、アスラン」

 

パトリックはクルーゼとアスランの敬礼を見て満足してその場を立ち去ったのを見送ると少しの嫌悪を込めて呟く。

 

「…彼女を助けてヒーローの様に助けて戻れ、ということですか?」

 

「…若しくは“彼女の亡骸を抱いて戻れ”ということかもしれんぞ」

 

その言葉にアスランはぎょっとする。この仮面を被った上官は優秀であるが時たま無神経…というよりも冷酷になるときがあるのだ。ぎょっと見ていたアスランにクルーゼは薄い笑みを浮かべ搭乗口へ跳ぶ。

 

「…どちらにせよ君が行かなければ話にならん、と考えているのさ。ザラ委員長はな?」

 

◆ ◆ ◆

 

「お部屋までご案内いたします。ラクス様」

 

「ありがとうエアリス様。……しかし、この戦艦には民間人が多いのですね?」

 

士官室での会話が終わりラクスを空いている個人部屋に案内することになったのだが其に志願したのはエアリスだった。ナタルは其を見て別の人員を宛がう事を推したがマリューはエアリスがコーディネイターに対して偏見と差別を持っていないことをクルーから聞いていたので部屋までの案内、護衛として彼女を指名したのだ。

 

その部屋までの道中エアリスとラクスが会話していた。付近には民間人が多い。通りすぎる二人の少女に視線を向けるのも仕方の無いことだった。方や地球連合の軍服と珍しい服装だからだ。何気ない質問だったので回答する。

 

「…彼らは避難民です。ヘリオポリスがザフトに襲撃にあってそこから脱出を」

 

「そうだったのですね…」

 

再び眉がひそめられる。恐らくザフトがヘリオポリスを襲撃したことを聞いていたのだろうエアリスはその事にハッとして取り繕うように否定した。

 

「ラクス様が気にする必要はないですよ。戦闘を行ったのはあくまで“ザフト”ですので。“コーディネイター”ではありません」

 

「……」

 

そう告げるとラクスは「信じられない…」という顔を浮かべている。

宛がわれた部屋へ到着しラクスはベッドに「失礼します」といって腰掛けるのを確認した後、外で待機していようと思ったエアリスだったが呼び止められた。

 

「エアリス様?その…」

 

「ラクス様、その私に“様”を付けなくて結構です。気軽にエアリス、とお呼びください」

 

「其でしたらわたくしの事も気軽にラクス、とお呼びください。そうでないとわたくしエアリス様とお呼びになるしかないのです」

 

「えぇ…?」

 

強情だなこのお姫様!?とエアリスは思ったがこの鋼の意志持ちのお姫様を納得させるには自分が折れるしかない、と諦めた。

 

「…分かりました“ラクス”。此方で良いですか?」

 

叶わないな、と困った表情を浮かべるエアリスの砕けた口調に先ほどまでの困り眉が柔らかく笑みを浮かべるようになった。

 

「ふふふっ。其が本当の貴女なのですねエアリス。」

 

「これが素ですよ。一応これでもまだ十五歳ですし」

 

「まぁ!わたくしと同い年なのですね?……エアリス、少しお聞きしてもよろしいですか?」

 

「?答えられることであれば」

 

肯定、するとラクスは遠慮がちに質問する。

 

「…どうして先程通路でお話しした会話。コーディネイターのせい、ではなく“ザフト”のせいだと仰るのです?」

 

「あー…」

 

その回答にエアリスは「参ったな…」と言う表情を浮かべ少し迷った後、回答した。

 

「市民と軍属の人間を区別しなければ泥沼ですよ。実際に作戦行動したのは“ザフト”ですし…連合兵士としては“コーディネイター”が中立国に攻撃を仕掛けてきた、と言うべきなんでしょうが…その行動を起こしたのは一部の部隊です。プラントの一市民であるラクスには関係ないと思うのですが…まぁ私以外の過激派は“ザフト”も“コーディネイター”も一緒だ!と言われそうですけどね」

 

心底嫌そうに告げるエアリスを見てラクスは本心からそう思っているのだと感じ取って微笑んだ。

ナチュラルでありながらコーディネイターに偏見を持たない、むしろ友好的に何の打算もなく接しようとしている彼女の存在はラクスにとって貴重な存在だった。

 

「ふふっ……エアリスは大変な変わり者ですね?」

 

その反応にエアリスは肩を竦める。

 

「そういうラクスもナチュラルの私にこんなに話しかけるのは変わっています。」

 

「あら、ではわたくし達は“変わり者同士”ですわね?」

 

「…ぷっ、アハハハッ」

 

「うふふふっ」

 

顔を見合わせて個室に少女達の笑い声が響く。室内には種族を越えたナニかが充実していた。

少ししてラクスがエアリスに切り出した。

 

「エアリス」

 

「?なんですか?」

 

「わたくしと…お友達になってくださいませんか?お願いします」

 

頭を下げそうになっているラクスを見てエアリスは慌てて近づき其を阻止する。上目使いで見るラクスの表情を見て「あざとい…!」と思いながら仕方がない、と再び諦めた。

 

「あ、ちょっとラクスそんな……はぁもう、良いですよ。此方こそです。ラクス」

 

「はい!」

 

「あ」

 

「?どうしました?」

 

「ラクスに少しお願いしたいことがあったのですが…」

 

「なんでしょう?……これは、わたくしのCD?」

 

エアリスが少し申し訳なさそうに何処かから取り出したプラスチックに入ったCDケースが差し出された。

その中身はラクスのデビューシングルだった。

 

「サインを…貰えたりしませんか?」

 

「ふふふふっ♪良いですわ。喜んで!」

 

敵軍の歌姫は大層嬉しそうな笑みを浮かべていたという。

 

◆ ◆ ◆

 

「本当に良いのですか?わたくしが艦内を出歩いても?」

 

「艦長からは許可を貰っています。私と一緒に行動していれば軍関係以外の場所に出歩いても良い、と其に…」

 

ぐぅ~、と可愛らしい音が鳴り響きその音の発信源である少女は少し顔を赤くして恥ずかしがっている。その表情を見てエアリスは小さく吹き出し笑ってしまった。

 

「ぷっ…お腹が空いている、ようですから?」

 

「エ、エアリスはイジワルですわ…」

 

「ごめんなさい。ラクスもお腹が空いていると思って…ちょうど良かったです。」

 

ラクスを連れだって食堂へ向かうとそこには丁度学生組に混じって食事をしているフレイ達が雑談に興じているのを確認した。

 

(ラクスに対してフレイが“あの言葉”を言わない…とは言い切れないから怪しいけど私の真意を汲み取るのならそんな言葉は言わない筈…)

 

二人で食堂へ入ると当然ながら視線が集まる。エアリスはともかくとして隣にいる少女に視線が集まり困惑する表情が見て取れた。特にフレイはその傾向が強い。

 

「ど、どうしてエアリスとそのコーディネイターの子が一緒にいるの?」

 

「食事を取るためだよ。フレイ。一応艦長から許可を貰っているから問題ないよ。…あ、ラクス、その食事の乗ったトレイを持ってソコの席に座って?」

 

「そ、其は…」

 

「はい。軍艦の食事はこのような形なのですね…はじめて知りましたわ!」

 

ラクスはまるでテーマパークに来たみたいだ、と少しはしゃいでおり食堂の兵士に「いただきますわ」と告げて料理が乗ったトレーを持ち隣り合うようにエアリスの側に座った。

 

「いただきます」

 

エアリスは食事の前に手を合わせる。

 

「いただきます!エアリスはニホンの作法をご存じなのですね?」

 

「うん、命を“いただく”ってことだからね。食事…食材に感謝しなくちゃ」

 

「ふふふっ!そうですわね。…いただきます」

 

その事にラクスは嬉しそうに微笑む。その事にエアリスはシーゲルが日本文化が好きでラクスも其に影響されていたことを思い出した。

そうして周りの事など気にせずに食事を取り始める二人の少女。

その光景を見てフレイは複雑な表情で見ていたのを感じ取ったエアリスはそのままスプーンで料理を掬いながらラクスとエアリスは何気ない雑談に興じていたのだった。

 

「本当にエアリスちゃんって凄いよな…」

 

「え?」

 

食事が終わり「ごちそうさまでした」と食事を作っていた兵士にラクスが「美味しかったです。ありがとう地球軍の兵士さん」とお礼を告げてエアリスと共に部屋へ戻っていったその後。

食堂に残った学生組達は先程の光景を見てそんなことを呟いた。

トールの呟きにキラが反応する。

 

「だってさ…あの子民間人って言ってもコーディネイターだろ?エアリスちゃんだって連合軍の兵士なのに良く仲良く出来るなーって思わない?あ、いやコーディネイターだからって訳じゃないんだよ。敵が属する組織の一般人の関係者…ってだけで、さ?」

 

「……」

 

その事にラクスと同じコーディネイターであるキラは考える。そもそもどうしてエアリスは自分を気に掛けてくれているのかと考え始め思考が深い場所へ向かう前にフレイがぼそり、と呟いた。

 

「同じ人間だから、って思っているのかも…」

 

「え?」

 

フレイの意外な言葉に全員が反応し視線が注がれるとビクリ、と震えたがそのまま言葉を紡ぐ。

 

「さっきの…ラクスって子がエアリスと楽しそうに私たちみたいに会話しながら食事してた。笑ったりちょっぴり悲しそうな表情をしてた…コーディネイターもナチュラルも彼女にしてみれば関係ない、のかも…」

 

「「「「………」」」」

 

学生達はフレイの言葉に黙ってしまう。その言葉はこの戦争に根付く深い問題に関係していることを知らずに触れていたことを後に知ることになったのだ。

 

◆ ◆ ◆

 

「え、ええ?どうして僕がここに呼ばれたんですか?」

 

「同じコーディネイター同士気が休まる事だってあるでしょう?ね、ラクス」

 

「まぁ!貴方様もわたくしと同じコーディネイターなんですのね?…?」

 

食事が終わってラクスを自分の士官室に連れ込んだエアリスは食堂にいたキラを一緒に連れてきた。

その経緯を告げるとラクスは可愛らしく首を傾げる。

 

「エアリスは本当はコーディネイターではないのですか?」

 

「ラクス…私はナチュラルですよ。言いませんでしたか?」

 

「そうでした(ニコニコ)」

 

「???」

 

そう告げるとラクスは驚いた表情を浮かべると同時に笑みを浮かべた。ナニがそんなに嬉しいのか?とエアリスは思ったが分からなかった。

其よりエアリスがキラをラクスと合わせたのはきっかけを作るためである。が、少しテンションが上がったラクスに両手を握られてしまう。顔が近く握られた手の柔らかさは気持ちが良い。

 

「まぁ!…ですけどエアリスはコーディネイターに偏見を持っていないのですか?」

 

「さっきも言いましたけどコーディネイターもナチュラルも()()()()()()()ですからね…争うより仲良くする方が生産的です。…ここにいるキラ君も私と一緒にこの船の乗員を守るために戦ってくれているのです。」

 

「そうだったのですね…お辛くはありませんか?」

 

気遣うようなラクスの言葉にキラの脳裏に先ほど撃墜したジンが浮かび開いていた手を思わず握ってしまう。

 

「仕方ない、ですよ…今は戦争中で…僕は今この地球軍の戦艦に乗っていて…友達がいますから…」

 

キラは何故目の前にいるコーディネイターの少女に自分がナチュラルの肩を持つような発言をしなくてはならないのか、と其でナチュラルの輪に入れるわけが無いというのに。

 

「残念ですわね……ですけど」

 

悲しそうな表情を浮かべるラクス、しかし其は同情ではなく心からのキラを案じている哀しみの発露であった。

その表情は直ぐ様包み込むような笑みに変わる。

 

「貴方は優しいのですね?」

 

その優しい笑みにキラは後ろめたくなってしまい溢す。

 

「僕も…貴女と同じコーディネイターですから」

 

その言葉にラクスは目を丸くし首をキョトンと傾げる。驚いたのだろうラクスは次の言う言葉が「どうしてコーディネイターが地球軍にいるのか?」という言葉を掛けられる覚悟をしていたキラだったがエアリスは知っている。

その予想通りラクスはキラの期待を裏切った。

 

「貴方が優しいのは貴方、だからでしょう?」

 

「君は一体…?」

 

「わたくしはラクス・クラインですわ。貴方のお名前を教えていただいてもよろしいですか?」

 

「僕は…キラ、キラ・ヤマト…です。」

 

「そうですか。ではキラさま、と。ありがとう。ふふふふっ…エアリスもキラさまをご紹介してくださってありがとうございます」

 

「お気に召したのなら何よりです。ラクス。」

 

ラクスは大変愉快そうに楽しく笑みを溢していたのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

ラクス達と分かれMSデッキにてエアリスがダガー用の装備を狂喜の笑みを浮かべながらマードックが若干引きながら手伝っている

一方その頃アークエンジェルのブリッジで歓声が上がっていた。

第八艦隊所属の先遣艦隊“モントゴメリ”、“ロー”、“バーナード”が此方を探しているという暗号パルス通信が届いた。

ヘリオポリスを出てから孤立無援で戦い続けてきたクルー達は一息吐ける…と気を緩める。が、宙域監視を行っていたパル伍長の表情がみるみるうちに顔を青くする。

 

ジャマー干渉、その言葉にブリッジは冷や水を掛けられたように静まり返り其がナニを意味するのか理解した。

 

先遣艦隊はザフトに見つかったのだ、と。

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