花の魔術師もどきと英雄王もどき、神ゲーに挑まんとす   作:ロクデナシな文字書き

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弓使いのスキルが分からん……



変わった獣は逃してはならない

 

「できたら剣が欲しかったんだけど……まぁいいかな」

 

 ゆるりと微笑んで、目の前のゴブリンを見つめる。それをどう思ったのか、ゴブリンは「ギギャッ」と叫んで私の方へと突撃してきた。やだなぁ、私は彼みたく恐ろしくないからそんなに興奮しないでおくれよ。

 

幻術(ファントム・アート)

 

 ふわり、と私とゴブリンの周りに花が咲く。甘く心地よい香りがふわふわと漂い、ゴブリンの気を逸らさせた。

 ギルガメッシュは「ほう」と片眉を吊り上げて此方を見つめている。

 ……ううん、剣がほしいなぁ。あったらこんな事でいちいち魔力を使わなくて済むのに。

 

「あいにく私は剣を持っていなくてね。少々痛いかも知れないけど、我慢しておくれよ」

 

加算詠唱(アッド・スペル)

 

「ファイアボール」

 

 ぼう、と火の玉が生み出されて、それが呆然と突き立つゴブリンへと向かって放たれる。当たる寸前に、熱によってか、時間経過によってか、はたまた光によってかは分からないが、ゴブリンは気を取り戻した。

 

 けれど、もう遅い。

 

 ゴブリンはその身を火に包まれ、凄惨な叫び声をあげ悶え苦しんでいた。やっぱり即死性はない、か。しかしまぁ、やっぱり火系の魔法は苦手なんだよなぁ。こう、せっかくボクが作り出した花が燃えてしまうし。

 

 表情を無にしてぼんやりとしていると、ゴブリンが光のブロックを分散させながら弾けた。これがポリゴン、ねぇ。

 

「ふむ……貴様、本職……いや、本来はサポーターか。わざわざ動きを止めるとは、とんだ臆病者かと失望したが……」

 

「おや、やっぱり分かるかい。魔法オンリーは滅多にしなくてねぇ。剣さえあればもう少し戦えるのだけど、いつもの(フェイカ)だとサポーターだしねぇ」

 

 かつての、というか今なお続く地獄の周回の日々を思い出す。あの時だけマイロードたちって性格変わるんだよねぇ。あ、お腹が痛くなってきたような……絶対ギルガメッシュも仲間にしてやる(引きずり込んでやる)から、待っててくれよ。ははは。

 

「……なんだその目は、やめぬか」

 

「いやぁ、ただブラック企業(周回パーティー)を思い出してしまって、ねぇ」

 

 ははは、と死んだ目で答えて見せれば、にやり、とギルガメッシュが口角を上げる。おっと返答を間違えたぞぅ。

 

「ほう、それほど言うのであれば我が社に来れば良いものを。いつ来ようとも構わぬと言っておるだろうに」

 

「いや、君のところはちょっと……ボクには合わないだろうし」

 

 社長が過労死しそうな会社はちょっと……ボク働きたくないし。

 

「……フン、まぁいい。どうせ其の内泣き咽びながら(オレ)に縋るだろうな」

 

 嫌なこと言わないでくれよう、とギルガメッシュに訴えながら、ゴブリンのドロップアイテムを確認する。うわぁ、いかにも使えなさそうなアイテムばっかりだぁ。手斧とか私使わないよ?

 

「何をしている。疾くせぬか。(オレ)は待たん、置いてゆくぞ」

 

 もうこの場にいることに飽きたらしいギルガメッシュが、じとりと私を睨む。機嫌を損ねない内に今日を終えられるといいなぁ。

 

 ずんずんと歩きを進め、道中モンスターを弓で一発K.Oするギルガメッシュにドン引きしながらも、私達はさらに森の奥深くへと進んで行った。

 

***

 

「あのぅ、ギルガメッシュ」

 

「なんだマーリン」

 

「そろそろ街に……いや何でも無いよ!」

 

 未だに疲れた素振りを見せず、淡々と狩りを続けるギルガメッシュに、バフを延々とかけながらも、とぼとぼついて行く。これは、もの凄く楽しんで、しかも物凄く熱中してるやつだ。ああ、シャンフロの開発者さんドンマイ。目を付けられちゃって……いや、もしかして最初から目を付けていて、そのきっかけに私を使っていたのでは。

 

 はっと気付いてギルガメッシュに視線をやると、今更か、と言わんばかりに呆れた表情を作るギルガメッシュ。うへぇ、ますますドンマイだねぇこれは。

 

 次なる被害者に合掌していると、ふとギルガメッシュが立ち止まった。続いて私も立ち止まり、杖を構える。

 

「……マーリン、止まれ」

 

「ああ、分かっているよ」

 

 少し離れた木陰から、ゆらりと大型犬ほどの大きさのモンスターが現れる。そのモンスターはまっさらで美しい毛を靡かせ、紫色の瞳をこちらに向けていた。

 

「狼……だね。新しいタイプだ」

 

「ふむ……あの毛皮、目玉。中々に良いではないか」

 

 2人でその獣を見つめていると、突然獣が走り出した。獣の道中にあった草花はバキバキにへし折られ、その足を踏みつけるたびに砂埃が舞う。

 

「随分と好戦的な犬……だねぇっ!」

 

「ハンッ、それでこそ獣よ!」

 

 私は横へ、ギルガメッシュは真上へと飛びその突進を避ける。ビュンと片耳から風が入り込み、大きな音を鳴らす。うひょう、アレが突進した後にもの凄く風が来たんだけど。獣が突進した先の木は、見事に折れていた。

 

「あれが当たったら私死ぬかも」

 

「たわけ! 当たらねば良いだけであろうが!」

 

「分かっているよ、夢幻の導き」

 

 ほい、と杖を一振りして、ギルガメッシュにクリティカル補正のバフを与える。フハハ、と上機嫌に笑うギルガメッシュに、獣はグルル、と唸りながら突進した。私はなるべく気配を消して、木陰で彼らを眺める。獣の足元に時折杖を引っ掛けて動きを止めつつ、ギルガメッシュの合図を待つ。ううん、剣があればボクももう少し派手に暴れられるのになぁ。

 

「ハハハ! 所詮は獣、突進することしか出来ぬ無能よ! 速射(クイック・ドロー)!」

 

 獣が先ほどとは比べ物にならない速度で突進する。その獣の通り道はまるで、台風が過ぎ去った後のようにアレていた。その時を待っていたと言わんばかりに、ギルガメッシュは再び真上に飛び上がって避け、そのまま獣の背中に即座に矢を打ち込む。ひゅう、流石王様。命中率凄いなぁ、クリティカルじゃないか。

 

 きゃうん、と声をあげて身を震わせる獣を前に、私は再び杖を一振り。花びらが、風に乗ってふわりと舞う。動きが止まった的ほど、都合の良いものはないからね。

 

幻術(ファントム・アート)

 

 矢が刺さった痛々しい姿の獣の瞳が、虚ろに揺れて動きが止まる。花が、獣を癒やすかのように咲き誇る。大丈夫、痛覚は無いからね。

 弓を限界へと引き終えたギルガメッシュに視線をやる。

 

「マスター、トドメを!」

 

「いちいち言わずとも分かるわ! 連続射撃(チェイン・アロー)!」

 

 糸がはち切れんばかりに引いた三本の矢が、一斉に獣を目掛けて飛び出す。矢は空気を裂き、時を裂き、音を裂くような勢いで突き進む。数秒も経たないうちに、それらは深々と獣へと突き刺さり、クリティカルの表示と真っ赤なポリゴンを発生させた。

 

 白い獣がばたりと倒れ、ポリゴンへと変化していく。その場所には、真っ白な毛皮とアメジストの眼球が落ちていた。

 

「ええと……ギルガメッシュ、どうしようか」

 

 恐る恐るギルガメッシュに声を掛ける。まぁ、多分どっちも欲しがってたし全部ギルガメッシュのものになるかな。

 

「ハ、仕方あるまい。貴様にその毛皮をやろう。それでローブでも作ってくるが良い。今のその姿、余りにも見ていられんからな。とっととまともな装備でも作って、そのウザったらしい戦い方をやめよ。だからグランドクソ野郎などと呼ばれるのだぞ」

 

 暫く沈黙した後に、私の全身を見て口を開いたギルガメッシュ。なな、なんてことを言うんだ!

 

「ええ、そんなに似合わないかい?! というかなんでその名称知ってるのさ?!」

 

「貴様がそれになるから事前に調べた為に決まっておろうが、たわけ! 少なくとも貴様も感じておろうに、何を言うか」

 

「そうだけど……」

 

 確かに私からすれば、マーリンが白以外のローブを着るのはおかしいけど、まさかギルガメッシュがわざわざ宝をくれるだなんて、考えてなかったぞ。それにあの戦略、確かに隠れてたまにちょっかいだしては良くないと思うけど、仕方ないじゃないか、私紙装甲なんだよ?! ……まぁ、もらえるものはもらっておこう。

 

「……ううん、じゃあ有り難くもらうとするよ」

 

「ハッ、せいぜい(オレ)のために励むことだな」

 

「ああとも、今後もよろしく頼むよ。マスター」

 

 なんやかんやで機嫌のいい、ギルガメッシュ(マスター)を前に、私はにんまりと微笑むのだった。

 

「貴様、その胡散臭い笑みをやめよ」

 

「酷い!」

 





幻術(ファントム・アート)
相手を惑わす魔法。その幻影は発動者が選べる。対象を一定時間行動不能にする。

加算詠唱(アッド・スペル)
原作でも出てるやつ。魔法の効果を上昇させる。

ファイアボール
火の玉。ふつうに火の魔法。

夢幻の導き
バフ。対象にクリティカル補正を与える。

速射(クイック・ドロー)
そのまんま。リロード時間なしで最大威力が出せる。要するに弦を引かなくていい。

連続射撃(チェイン・アロー)
矢を三本まで同時に放てる。
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