花の魔術師もどきと英雄王もどき、神ゲーに挑まんとす   作:ロクデナシな文字書き

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 お久しゅうございます。我ながら改行多すぎん?となったんで今回からは控えめにいきます。
 その……エミュきつい……むつかしい……

※独自設定過多注意※



今は遥か忌まわしき記憶 其の三

 

「……ろ……ぉい……起きろ! 聞こえておるだろうがマーリン貴様!」

 

「あと三分……」

 

「たわけ二度寝するでないわ!」

 

「ひぎゃん!」

 

 ばしん、とお腹を蹴っ飛ばされて思わず声を上げる。いたた、結構ガチな蹴りじゃないか。お腹を擦りながらゆらゆらと起き上がると、フン、と鼻で嗤われた。

 

「ひっどいなぁ……で、どうだった(・・・・・)?」

 

「どうもなにも、見事なまでの惨劇よな」

 

「じゃあ同じだねぇ」

 

 おおよそ私たちが思い浮かべている事情は同じだろう。なるほど、確かにこれは初めのうちでも発生するシナリオな訳だ。戦闘じゃなく、精神面での試練。恐らくこの後、キャスパリーグとの対談次第で結末が変わるんじゃないかな。

 しかしまた、あの夢。考察班が大喜びしそうな内容だったぞぅ。まぁ、どうせ誰も来れない__実際これまで発見されていない筈だ。というかわかっていたらもっと話題になるし私たち(フェイカプレイヤー)とかがもっと食いつくよ__だろうし、話すつもりはないけど。私は慎ましくシャンフロしたいんだよね。……何にせよ、今はキャスパリーグかな。

 ちらとギルガメッシュの方を見てみれば、これまでに見たことのないような表情で肩を組んでいた。その瞳は、紅く、深く、鋭い。じっと、キャスパリーグを見つめている。恐ろしいまでに整った唇が開かれた。

 

「獣、貴様は何がしたい」

 

 その声色は、ひどく低く、冷たい。ああ、なるほど。

 これは、成熟した彼本人としての言葉だ。

 

「……ボクは、誰にも出会わない此処で暮らしていれば十分さ」

 

「いいや、嘘だね」

 

 間髪入れずに反論する。もちろん、それはボクだ。視線をギルガメッシュの方へと寄越せば、私に対して続けろと顎で指示された。ああとも、今こそロールプレイ(最も極めた特技)の出番だもの。

 キャスパリーグはポカンとボクを見上げている。バカだなぁ、自分が一番わかっているんだろうに。

 

「わかっているだろう? 本当はそんなこと思ってもいないんだよ」

 

「そんなことは……第一、あれを見ておきながらボクを再び放とうなんて……あれほど善性に満ちた街ですら、駄目だったのに」

 

 随分とまた、ネガティブなことだ。ふむ……なるほど、このキャスパリーグはカルデアの人々の旅(善き人々の戦い)に出会わなかったんだな。美しいものを知りきる前に、悪性に打ち破られた。それが、このキャスパリーグだ。だからこれほどまでに自分を閉じ込めたがる。中途半端に、知ってしまったから。

 

「何をほざいているんだ、君は。ボク達が聞いているのはそんなことじゃない」

 

 正直、私は苛立っている。この、キャスパリーグ(まだ何も知らない獣)に。望みを捨て、知ったかぶりで決めつけていることに。

 この世界のボクは一体何をしているんだか。キャスパリーグがボクを認知しているんだし、きっと何処かにいるんだろう。人に押し付けるとは、なんてやつだ。

 ボクとはタイプが違うらしいし、大方キャスパリーグがビーストになって世界を滅ぼさないようにするだけしておいて放置したんだろう。だからこんなにも中途半端になったんだろうな。まったく、我ながらロクデナシだ。

 

「ボク達は、キャスパリーグ自身が、何をしたいのか聞いているんだよ。本心を、本当にやりたいことを」

 

「……それは」

 

 キャスパリーグがもにょもにょと口を動かしながら俯く。しばらくの沈黙。誰かがふうっと溜め息を吐いた。

 わからない、のだろうか。

 じっとキャスパリーグを見つめていると、隣から底冷えた声がした。しかし、それは先程までの人を突き放すような鋭さを持たず、何処となく子どもを叱る大人のようだった。

 

「獣よ。面を上げんか」

 

 おや、とギルガメッシュを見れば、お前は黙っていろ、と手で払われる。

 その瞳は幾分か柔らかく、人を導く王のもの。

 

「貴様、誰にも出会わなければ良いなどとほざいたな。なれば、何故(オレ)達を招いた、何故(オレ)達にかの記憶を見せた?」

 

「……」

 

 じっとキャスパリーグを見つめる彼。目を細めて、口を開く。

 

「図星か……なら良い、貴様自身分かっておるのだろうが。貴様は(オレ)達に、自身を幽閉する最後の釘であれと望み、(オレ)達を招いた。たった一言、おまえは世に放されるべきでない、許されざる獣である、と言われるために」

 

「……確かに、ボクは君たちに望みをかけた。どうしても、独りになれる勇気がでなくて、背中を押して欲しくて。許されざる罪を犯してしまったから、そうだと信じたいから」

 

 顔をゆっくりと上げて彼を見つめるキャスパリーグ。しかし、その瞳はどことなく揺らいでいて。

 次の瞬間、彼の言葉で揺らぎは増した。

 

「でないと彼らの命は何だったのか、わからなくなるから?」

 

「!」

 

「フ、フハハハ! 傲慢よな、たかが獣が命を背負おうなぞ! いつから貴様は人を憐れみ、見下す上位者であると考えたのか!」

 

 心底バカバカしいと言わんばかりに腹を抱えて笑う。ぐっとキャスパリーグは睨みつけた。

 

「そ……んなこと……っ! ただ、ボクは彼らに償いたくて……! だから、ボクは閉じ込められるべきで……!」

 

「それが屈辱であると言っておるのだ、たわけ」

 

 一転して、酷く落ち着いた、体の底から響くような低音。しかしそれは、耳障りの良いものだ。

 キャスパリーグはその変わり様に目をひん剥く。

 

「なっ」

 

「良いか、貴様は何を見てきた、何を知ってきた。これまでに共に過ごした者の顔をどうだった、最後の顔はどうだった」

 

「……笑っていた、幸せそうだった……けれど、ボクが全てを壊した……! 彼らは、泣いていた、苦しんでいた……っ」

 

「そうか、そう思うか。では、何故貴様は壊した。奴らが嫌いになったから? どうでも良かったからか?」

 

「そんなわけ、ない! ボクは、ボクは!」

 

 錯乱しているらしく、キャスパリーグは口早に否定した。それを見た彼は、そっと視線を落とす。

 

「……哀れなものよ」

 

「貴様は、意思を持っていなかった。自然と、いや正確には悪意を喰わされてそうなった。それ故に貴様はああも醜く壊れた。」

 

「なら、なら! 悪意がなかったからって、許されていいと思うのか?!」

 

「無論、許されるわけがなかろう。だが、今の貴様はより醜い。いいか、貴様の言う事は驕り高ぶったそれそのものだ。『罪を償う為に閉じこもる』? 冗談はよせ、それが最も罪深いことであろう!」

 

「罪深い……?」

 

「そうだ。貴様は己の罪を悔み、償おうとしているのではない。罪を理由に、楽をしようとしているだけだ。貴様が望んでいるのは償いではない。罰だ。罰こそ、何も考えずに済むものだからな」

 

「……そんな」

 

 口を開こうとして、しかしそれは彼に遮られる。次の瞬間に述べられる言葉は、キャスパリーグを鋭く抉るものだった。

 

「貴様が幽閉されるべきだと望むのは、その身を懸けて一生償う勇気がないからだ」

 

「罪を犯した、だから世界からは目を逸らし、命を消費していくことを放棄する。それが正しいことであると? そのような思考こそ、最も罪深いであろうが!」

 

「じゃあ、ボクは……」

 

「聞け、獣よ。無知なる仔よ。貴様は、焦がれておるのだろう?」

 

 キャスパリーグが目を見開く。

 

「それでもなお、貴様は罪があるからと現実から目を伏せるか?」

 

「罰に、甘えるか?」

 

 ぱくぱくと口を動かして、けれど音は出さない。まさにぐうの音も出ないと言えよう。キャスパリーグは、呆然としていた。

 数秒の沈黙の後に、彼は再び言の葉を紡ぐ。それはまるで、獲物を逃さぬ獣のように。

 

「まぁ、貴様の罪が許されるか否かはさして問題でない」

 

「え?」

 

「許されることを望むな。生きろ。世界を、未知なる領域を、許されないまま進め」

 

 キャスパリーグを、追い詰める。

 

「罪とは、何時までも消えぬ枷であり、刻印。なかったことになどできぬ。だが、故に貴様は歩む他ない。ちっぽけな貴様のその背中に乗ったそれを、振るい落とすな。」

 

「そして、知れ。貴様はまだ何も知らない。人を、世界を、全てを」

 

「知り尽くして初めて、貴様は己の真なる罪を知れよう。己が為すべきことを知れよう」

 

「……ボクは、歩めても良いのだろうか。歩めるのだろうか」

 

「それを決めるのは貴様ではない。世界だ。そして貴様は世界を知らない。故に、歩むほかないのだ」

 

「……」

 

「来い、獣よ。貴様はまだ、己の罪を知り尽くしていない」

 

 キャスパリーグは未だに顔を伏せている。彼はただ、目の前の獣を見つめるばかり。

 ふむ……ここは。

 

「……いやぁ、全部ギルガメッシュに良いところを持ってかれちゃったなぁ!」

 

 ボクの、出番だね?

 





 今回の『彼』は賢王に近いです。ただし、あくまで彼は『彼』です。
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