その日は、ブルーアーカイブ四周年のブルアカふぇす帰りだった。
人生初のリアイベ参加、人生初のオフ会、人生初のDJステージ
初めてが沢山で、ずーっと楽しかった。
二日目に備えるため、ホテルで休んでいるとスマホに通知が入った。
「......『連邦生徒会長』?」
通知画面にあったのは、『ブルーアーカイブ』の通知。
だが、その通知欄はAPの回復を知らせる通知でも、カフェが満タンになった時の通知でもなく、謎のメールが入っていた。
気になって通知を開くと、急に真っ白い画面が表示され_________________
『先生をよろしくお願いします。先生』
1行で矛盾した言葉を見た瞬間、俺の意識は途切れた。
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「.........う、ん?」
頭が痛い。
まるでアイスを一気喰いしたような頭痛がする
「......なんだ、ここ......」
細かい雨が降り、それが俺の頬に当たるが、なぜか冷たくない。
というか、雨の中寝ていたのに全く寒くない
どうやら俺は裏路地のような場所で眠っていたようだ。
「っ......酒、飲みすぎたかな.......」
頭を手で押さえようとした、その時だった
「......は?」
銀色の、鉤爪のついた掌
腕は、まるでコーンに乗ったアイスのようなものが付いていた
立ち上がり、体全体を見渡してみる。
足
腕と同じくアイスのようなものが付いている。
そして、アイスのコーンのようなローブが見えた
胴体
同じくアイス。
コーンも同じ。だが、腹部には見覚えのあるものが存在していた
「......ガヴ、か?これ」
腹から直接生えている獅子舞のような『口』
それは、紛れもなく俺が毎週日曜に鑑賞していた『仮面ライダーガヴ』の変身ベルトだった
「......アイ、ス......」
顔を、手で撫でてみる。
大きなツノのような感触と、複眼
その姿は紛れもなく_______________
「ブリザード、ソルベ?」
中間フォームの『ブリザードソルベフォーム』そのものだった
「は?いや、なんだ、これ」
焦った。
「はっ......はっ......本当に、なんで、何が......」
焦った
「変身、解かなきゃ」
こんな姿じゃ明日のふぇすに参加できない
そう思い、ガヴに装填されているであろう『ブリザードソルベェゴチゾウ』を取り出そうとする。が
「......無い?」
ガヴには、何も装填されていなかった。
嘘だ。
「どう、しよう」
ガヴにはゴチゾウがあってようやく変身機能を果たす。
だというのに、それを果たすための機材が存在しない
ふと、思い出してみる
この姿は、いわゆる主人公の本当の姿
もしや、俺は_______________
「......グラニュート?」
主人公のショウマは確かに人間だった。
だが、その半分はグラニュート
普通なら、怪物の姿で生まれてくるはず
だからこそ、普通のグラニュートは『ミミックキー』や『ミミックデバイス』でその姿を人間に変えていた。
そして今、俺はそれと同じ状況に陥っている。
ゴチゾウを使って変身するのではなく、まさかミミックキーのようにそれをガヴに装填することで人間に変身する?
「......いやっ......!違う!」
その事実を俺は受け入れない。
「なん、で」
受け入れてしまったら、俺は________________
「化け物に、なんて」
化け物になってしまうから
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「ねぇ社長、この記事見た?」
「ん?」
カフェテリアで2人の女子高生がコーヒー片手に雑談している。
赤毛の少女の方は、ホットミルクを飲んでいるが。
「最近噂のバケモノ事件。また生徒が失踪したんだって」
「バケモノ?」
「監視カメラに映ってるのが、こんなバケモノだからそう言われてるだけだけど」
前髪が黒、それ以外が白という珍しい頭髪の女子高生は赤毛にスマホを見せる
「......え、映画?」
「現実。実際に被害も出てるし、映像記録もしっかり残ってる」
スマホの画面に映し出されたのは、異形の化け物が同じく異形の化け物と戦っている様子だった。
「これは......仲間割れかしら......」
「さあね。でもゲヘナでは被害が出てないし、特段気にするようなことじゃない」
『鬼方カヨコ』はコーヒーを飲み干し、スマホの画面を消す。
「......もしバケモノがゲヘナに現れたとしても、カヨコは私が守るわ」
自信満々に『陸八魔アル』はそう言い放ち、同じくホットミルクを仰ぐ。
「あちゅっ!?」
だが、猫舌だったようで変な声をあげてしまう。
もちろん飲み干せてはいない。
「......ありがとう、社長」
カヨコはそんなアルを見て、少しの安心感で満たされる。
その表情は、どことなく嬉しそうなものだった。
「......そろそろ帰ろうか。日が暮れてきた」
「そ、そうね。真っ暗になる前に帰らないと」
さっきの話が少し怖かったのか、アルはいそいそと帰り支度を始める。
会計を終え、2人は薄暗い帰り道を歩き出す。
「うぅ......何もいないわよね......?」
「いつも通ってる道だよ。行こう」
少しへっぴり腰になったアルの前をカヨコが歩く。
確かにいつもの雰囲気と少し違うが、夕陽も見えるしそんなに人通りが少ない場所ではない。
だが、今日は特段人がいない
それでもいつも通っている道であることに変わりはないため、カヨコとアルはその道を通り抜ける
「ねね、おねーさんたち!」
「わ、私?」
「そうそう!そこの赤毛のお姉さんと白髪のお姉さん!」
ロボットの姿をした一般人が、2人に声を掛けてきた。
常に表情のモニターが『笑顔』を示していて、カヨコは少し不信感を抱いた。
こんな時間に、一般人がゲヘナで外出する?
「いやぁ、お姉さんたち可愛くてつい声かけちゃった!これからご飯でも行かない?」
「わ、悪いけど急いでるの。ごめんなさいね」
アルはその男のナンパを即座に断り、再び歩こうとする。が、
「待ってよぉ、冷たいなぁ」
男に腕を掴まれ、進行を阻まれる
「その手を離せ」
カヨコは即座に『デモンズロア』つまりホルダーに刺した拳銃を取り出し、その男の額に突きつける。
「...............」
急に、男は黙りこくる
だが、腕は離さない
「あーあ、『面倒な方』に引っ掛かっちまったかぁ......まぁ、渡しちまえばおんなじか」
急に訳のわからないことを口走り、男はさらに腕に力を込めた
「っ.......いい加減にして!!」
アルはその手をようやく引き剥がし、愛銃の『ワインレッド・アドマイアー』を向ける
「......いってェ......このクソガキが!!」
男は急に叫び、スーツの腹部を一気に捲る。
そこには_________
「く、口!?」
「......!社長、逃げるよ!」
カヨコは本能的に危険を察知し、戦闘を回避しようとするが、この一本道ではすぐに追いつかれるだろう
「逃す訳ねぇだろ......お前らを逃したら『闇菓子』をもらえねぇからなぁ」
そして男は『ガヴ』に装填された『ミミックキー』を取り除き、その姿を変える。
その姿はまるで、
街中で見かけるような犬の形をした人間ではない。
完全な、異形
「社長!」
「うぇ......?」
羽織ったコートをカヨコに引かれ、かろうじてバケモノの攻撃を避けることができた。
どうやら、放心したアルを狙ったようだ
「ちょっ、どこに!?」
「風紀委員会!あそこならきっとヒナが_________
自分たちはお尋ね者であるにも関わらず、カヨコは風紀委員会に向かって走る。
あんな化け物に殺されるぐらいなら、捕まった方が数千倍マシだ
「おいおい逃げんなよぉ、鮮度が落ちる」
「っ!!社長、耳!」
拳銃に取り付けられたサイレンサーを砕き、素の銃口を露わにする。
そして、化け物に向かって銃弾を放った
「うおっ!?」
辺りに響く轟音と、銃弾を受けて吹き飛ぶ化け物
「こんのっ......クソガキがァァァァァァァ!!」
激昂した化け物が2人に飛びつこうとするが____________
「命中よ!!」
追加で、アルの弾丸を受ける。
「ふぅ〜っ.......」
「ありがとう社長。助かったよ」
「社員を助けるのは、社長の役目よ」
未だ震える膝を無理やりに動かし、アルは立ち上がる。
「倒せない敵じゃない。このままヒットアンドアウェイを意識して__________
「......カヨコ?」
突如、カヨコの姿が消えた。
からん、と何かが落ちる音が響く。
アルの足下に、何かが落ちていた
「何、これ......?」
あったのは、まるでアクリルスタンドに紐を巻きつけたような形の何か。
そこには________________
「カヨ、コ?」
さっきまで一緒に戦っていた、課長がいた
「ははっ、忘れてた忘れてた......」
化け物はゆっくりと立ち上がり、アルに向かって歩き出す。
「あーあー、だいぶ品質が悪くなっちまって......素直に闇菓子にされとけば、幸せなままスパイスになれたのにな!」
アルは理解が追いつかず、カヨコの『人プレス』を持って座り込んでしまう
「安心しろよ。お前もそのお仲間のところにすぐ行けるからなぁ」
バケモノの『ガヴ』から、何か舌のようなものが伸び、アルをゆっくりと取り囲む
「づあっ!?」
「下がってろ」
だが、次に聞こえたのはどこか冷ややかな男の声と、バケモノの苦悶の声だった
アルはゆっくりと目をあけ、目の前に立つ人影を見据えた。
そこには、またバケモノがいた。
だが、その化け物からは全く敵意を感じない
「.......!もしかしなくても、陸八魔アルか?」
それどころか、どこか敬愛や尊敬の念を感じる
「え?そ、そうだけど......」
「......まじか......あの、握手してもらっていいですか」
目の前のバケモノはなぜかアルと握手し、再び赤色の剣を握る
「てんめぇっ!何すんだ!」
「......人助け?」
「何をしてるか聞いてんじゃねぇんだよ!!なんで『グラニュート』のくせに邪魔してくれてんだ!」
「......俺は、生徒の味方だからな」
唐突に訳のわからないことを呟き、その異形は剣を構える。
「ほら、来い」
指をくいくいと動かして犬の化け物を挑発する。
「調子!こいてんじゃねぇぞ!!」
だが、剣持ちは爪や牙の攻撃を易々と避け、その間に攻撃を叩き込む
「どりゃ」
「あがっ!!?つめっ......!?」
『ハウンド』に食らわせた膝蹴り。
その場所は、なぜか凍っていた
「これで、フィニッシュだ」
『GO!』
剣___『ガヴガブレイド』に取り付けられた『ブレイポン』を押し込み、その刀身にエネルギーを集める
青色の刃がエネルギーによって形成され、その複眼にも蒼い光が灯る
「ま、待て!!話し合おう!な?そ、そうだ!俺の人プレスを半分分けて________
ハウンドの弁解を聞く前に、バケモノはその剣を振り下ろした。
「あ“」
容赦のない一撃によって、ハウンドは真っ二つに両断された。
鮮血が飛び散る前に、凍らせて砕く。
死体の処理も完璧
「......えーと......もしかしてだけど、誰かこんなふうにされてない?」
ハウンドに攫われたであろう生徒の人プレスをアルに見せてみる。
「そ、そう!これ!」
慌ててアルは握りしめていたカヨコの人プレスを渡す。
「......この人、鬼方カヨコ......さん?」
「え、ええ、そう、だけれど......」
「......幸運だなぁ......」
「えっ?」
「あ、いや、なんでも」
そう言って化け物は人プレスに巻き付いた紐のようなものをブレイドで断ち切る。
「っ......しゃ、ちょう?」
「カヨコっ!よかった......!」
アルは元に戻ったカヨコを抱きしめ、その無事を確認する。
どうやら本当に無事のようだ
「っ......!あの化け物は!?」
「それなら、
アルは再びお礼を言おうとバケモノの方を向くが、すでにハウンドに攫われていた生徒を残して、化け物は消えていた。
次回、『ソルベ・デ・ベンリヤ』
「あの人、どこに行ったのかしら……」
アル、化け物を捜索
「もうあれには近寄らない方がいい」
正論のカヨコ
「化け物でも、人間でも、関係ないわ!」
「俺は、氷河ソルベ」
『ブリザードソルベ!』
「社長の部下だ」
『ヒエヒエ』
第三味『アイス・ブレイク』