これが!!シュナイダーACの力ァ!!   作:逆足はいいぞ

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息抜き


傭兵 出会い 密航

 

そこには、死体が墜ちていた。

 

……或いは、鉄屑と呼ぶ方が適切なのかも知れない。

間違いなく『それ』を構成する物質は金属なのだから、鉄屑、もしくはスクラップ、粗大ごみでも良いのかも知れない。

だが、今の僕には、人の形をしていて黒い血を流す『それ』を、鉄屑と形容するのはとてもではないが憚られる。

 

「……可哀想に」

 

エンジン部から激しく燃え上がる炎が晒す、見るも無惨なその有り様に覚えたのは、憐憫か同情か。

いずれにせよ、『この世界では』不要な感情だ。

一歩間違えれば、スクラップに成り果てていたのはこちらの方だったのだから。

 

……それでも、青い空を知る者として、同情も憐憫も、忘れるべきではないと信じている。

 

「……」

 

逃げるように見上げた空に、青は無い。

ただ、赤と灰が続くだけ。灼けた空とは誰が言ったか、まさに言い得て妙だと感心する。

 

「何度見ても、慣れないなぁ」

 

何気なしにぼやいた独り言。毎日その空を見なければならないとなると、文句の一つも言いたくなる。

しかし、そんなのは贅沢だと言わんばかりに、煤けた風がパイロットスーツの隙間を駆け抜けて、遥か彼方へ飛んでいった。

 

「うー寒、わかりましたよっと」

 

肌寒さに身体を震わせながら、いそいそと愛機のコアブロックに乗り込む。まあそろそろ奴の仲間が来るだろうから、帰るには丁度良い頃合いだろう。

 

僕は正真正銘の『独立』傭兵だからして、621のような迎えは来ない。オールマインドに頼めば話は別だろうが……あんまりアイツに頼み事をしたくはない。わかるだろ?

 

《メインシステム 戦闘モード起動》

 

現在地から拠点までの燃料が残っている事を確認して、ブースターを吹かす。正直大分残量がギリギリなので、あまり無駄使いは出来ない。

 

さて、ここから自分のガレージまでかかる時間は、並みの機体なら五時間は下らないだろう。

だが、この機体なら三時間と掛かるまい。

 

こういう時ばかりは、自分を買った組織がシュナイダー社で良かったと感じる。シュナイダー社に買われなければ、このACに乗る事も──盗む事も出来なかった。

 

 

ほんの少しだけあの頭空力企業に感謝しかけ───空力の為と言って吹けば飛ぶような脆さに自身の身体を調整したことを思い出して、感謝の気持ちは儚くも吹き飛んだ。

 

 

 

「……クソッ」

 

 

苛立ちと鬱憤と切なさを振り切るように、エンジンを深く踏み込んだ、そんな帰り道だった。

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

面白みもない廃れた市街地の風景を流しながら暫く上空を飛んでいると、モニター右端に小さく赤い表示が点滅しているのが見えた。

どうやら戦闘が起こっているらしい。

スキャンして情報を確認すると、一方がHELICOPTER、もう一方が……loader4?とかいうACらしい。なんとも拙い動きでヘリに翻弄されているのが分かる。

 

ヘリコプターは惑星封鎖機構の奴らの兵器の筈……つまり惑星封鎖機構がこの辺りに来ているということになる。

 

「あーらら、アイツらに見つかっちゃった奴がいるのか」

 

大方、あそこに落ちている機体のジャンクパーツを漁ろうとしてしくったジャンク屋か、酔いに任せて訳のわからねぇ場所に来ちまったドーザーか、まあその辺りだろう。

なんせこの辺りは辺境も辺境。

僕が奴らから身を隠すエリアに選んだのにはそれ相応の理由がある。

 

だからこそ、この辺りにまでわざわざ封鎖機構が来るのは相当珍しい。普段だったら見つかるような事は無かっただろうに、loader4とやらは恐ろしく不運だ。

 

「南無三~」

 

見つかって巻き込まれないように機体の高度を上げつつ、腕で十字を切る。僕はキリシタンでも仏教徒でもないが、まあ細かい事は良いだろう。

別に僕に何かしてあげる義理も義務もない。ただでさえ燃料が心許ないのだ、厄介事は御免被る。

 

それにしても、ヘリコプターか……

 

「あのヘリにはチュートリアルで散々殺られたなぁ……」

 

初のフロムのゲームでドキドキしていた自分を地獄に叩き落とした、通称ルビコプターを思い出す。確か、あのチュートリアルもこんな感じのシチュエーションで───

 

 

 

「───待てよ?」

 

 

 

なにか、なにか引っ掛かるモノを感じて、機体を急停止させる。本来近くにエネミーが存在する時に空中で停止するのは悪手だが、今回はそうも言ってられなかった。

 

もう一度、ヘリと戦闘している機体の名前をスキャンで確認する。

 

一文字の見間違いもないように、モニターを凝視して自身で読み上げる。

 

「ろ、お、だ、あ、ふぉー……loader4?」

 

確かそれは──621の初期機体の名称だった筈。

 

 

「ウッソだろおい!!!」

 

 

思いがけない邂逅に、全身に鳥肌が──いや、そんな機能は既に無くしているが──とにかく鳥肌が立った。

しかし普通の人間なら取り乱している状況でも、脳内は極めて冷静だった。強化人間の処理能力を舐めてはいけない。この時ばかりは強化人間手術を受けさせてくれたシュナイダーに感謝。

取り敢えずloader4の状況を把握するべく、残りAPを画面に表示させる。

 

「残りAP……30%切ってるじゃねぇか!!リペアキットはぁ……やっぱり使い切ってるぅ!!」

 

 

恐らく未だ操作に戸惑っている初心者レイヴンが乗っている可能性がある。いや、この世界がゲームの中の世界かどうかは知らないが……

 

 

───どうする?

 

冷静に考えれば、ここでレイヴンが死んでくれれば惑星封鎖機構と表立って敵対する事もないし、少なくともコーラルリリースもレイヴンの火も直近で起きる可能性は無くなる。長期的には発生するかもだが、それは今は考えない事にする。

 

もしここでレイヴンを助ければ……当然その2つのルートがあり得る訳で、封鎖機構と表立って敵対する事になり、さらに色々と面倒事に巻き込まれるのは必至。

 

総合的に見れば、ここで見捨てる方が僕としては合理的だという結論に達し───

 

 

『───C-4 621女の子概念』

 

 

 

突如脳内に流れた、存在する怪文書。そして、pixivとTwitterに発生した貧乳621の画像の数々。

 

 

「───あり得るのか?それが───」

 

 

 

 

『ああ───あり得るとも』

 

 

 

 

───ならば───!!

 

 

 

 

180度の急旋回。右手武装をハンドバズーカ、左手武装をパイルバンカーに切り替える。

 

 

目標は───ヘリコプター。

 

 

 

アサルトブーストを惜しみ無く吹かして、急接近する。

 

 

「僕は───人間だ」

 

 

 

「人間で、男だぁっ!!!」

 

 

両肩のソングバードから、四発の砲弾が放たれて───ヘリコプターに直撃する。

 

《なにっ!?もう一つの機体反応!識別名は……独立傭兵ヴァージル!?》

 

 

ソングバード四発によりスタッガーしたヘリコプターへ、すかさずloader4がパルスブレードを振りに行く。

どうやら621も戦闘のコツが大分掴めてきた状況らしい。

 

 

 

『やあ、独立傭兵レイヴン。どうやら苦戦を強いられているようだね。』

 

ヘリコプターが硬直している内に、通信を開いて話し掛けてみる。

が、loader4からの応答はない。まあ予想通り。

 

『貴様は……独立傭兵ヴァージルと言ったな。アリーナ6位がなぜ手を貸す』

 

代わりに応答してきたのがウォルターパパ。いやー、アリーナ6位を達成してから知名度が上がっていて照れますな。

 

『なぁに、そんな大層な事じゃない。たまたま近くを通りすがっただけだ。同じ独立傭兵に恩を売っておいて損は無いだろう?』

 

『……そうか、助力感謝する』

 

そう言い残し通信は途切れた。まあ信用されないのは承知の上だ。この理由だって建前だし。まさか621女の子概念に脳を焼かれただなんて言ってもドーザー扱いされるだけだろう。

 

『さて、独立傭兵レイヴン。君は……』

 

──女の子か?

そう問おうとしてloader4に顔を向かせる。

が、それは叶わず。

 

背後で騒々しい爆音が響いた。どうやらヘリコプターがスタッガー状態から回復し、再度起動したらしい。

まあAPも残すところあと少しだろうし、手っ取り早く終わらせて───

 

 

《侵入者どもめ……っ!!》

 

 

 

──違和感。

 

この場において存在する筈の無い青い光が身を包む。

 

いや、正確には存在は出来る。誰でも、エキスパンションに設定すればそれを纏えるし、搔き消すことも出来る。

 

だが、この世界が『ゲームストーリー』に即しているのなら、それは存在しない筈だった。

 

 

 

なんで、なんで───

 

 

───なんでパルスアーマー纏ってるんですかアンタァ!?

 

 

嘘ですよね?チュートリアルの筈ですよね?

 

あとなんかちゃっかりリペアキット使って回復していやがる!どうして……?

 

 

……まあいい。相手がなんであれ、やることは一つ。

 

 

『……どうやら、今は君の答えを待つ余裕は無さそうだ』

 

 

 

 

『さあ、レイヴン。共に、あのデカブツを───』

 

 

 

 

『───撃ち墜とそうか』

 

 

 

 

 

───レイヴンが、弾けるようにアサルトブーストを吹かしてヘリコプターに突っ込んでいく。

 

どうやらもう既にコツを掴んだらしい。流石はレイヴンと言ったところか。

 

パルスアーマー展開時に距離を詰められる事が想定外だったのか、ワンテンポ遅れてミサイルを発射してくるヘリコプター。

 

しかし、クイックブーストを挟んで詰めるレイヴンにはまるで意味を成さない。悉くを華麗に回避されている。

 

そうして完全に注意がレイヴンに向いた所で───ソングバード四連発射。ついでにハンドバズーカも一丁。

 

爆音と共にぶっ飛んでいった五つの砲弾がパルスアーマーに着弾、砲弾が搔き消されると同時にその青い装甲は脆くも色を失った。

 

『パルスアーマーを突破されただと……?』

 

───当然、その隙を逃すレイヴンではない。

 

パルスアーマーを失い体勢を崩したヘリコプター、その機関部に飛び込み、煙を引き裂きパルスブレードを叩き込む。

 

パルスアーマーでは相殺しきれなかった衝撃も相まって、ヘリコプターはスタッガーに陥った。

 

『やって見せたな……レイヴン!』

 

その羽ばたきに応えるように、僕もアサルトブーストを吹かして突っ込む。

 

当然、パルスアーマーを破られパルスブレードを叩き込まれたヘリコプターのヘイトは、完全にレイヴンに固定されたようだ。残りAPも少ないレイヴンだけでも落とそうという算段だろう。

レイヴンもどうやらパルスブレード直後にEN切れを起こし、ミサイルを避けきれなくなっている。

 

『こちらを──忘れて貰っては困る!!』

 

そのままやらせるわけがない。アサルトブーストでレイヴンとヘリコプターの間に機体をねじ込む。

 

そこで───アサルトアーマー発動。

 

『ぐっ……!!』

 

一瞬動きが止まった所に、とびっきりのパイルバンカーを思いっきりぶちこむ。

 

『ぶっ飛べ……っ!!』

 

破裂するような衝撃に、ヘリコプターはACS負荷限界に陥り、スタッガー。

同時に、ENが回復したレイヴンが飛び込んできて───

 

 

『決めろ──先輩っ!!』

 

 

───一閃。

 

 

そうして遂には、ヘリコプターはその形を保つ限界を迎え、爆音を轟かせて爆発した。

 

 

 

 

 

 

『惑星封鎖機構SG 大型武装ヘリの撃墜を確認した』

 

『621、今日の仕事は終わりだ』

 

『そして、独立傭兵ヴァージル。貴方の助力に感謝する』

 

ウォルターからの感謝の言葉。これまでも合同ミッション完了後などに感謝の言葉は何度か貰った。

しかし、ウォルターパパから伝えられるとなんだか温もりを感じて、目頭が熱くなる。

 

『こちらこそ、今日は良い傭兵に巡り合えた。』

 

『独立傭兵レイヴン……いや、先輩。貴方に僚機申請を送っておく。力が必要な時は、いつでも呼んでくれ。』

 

『また会う時があるとしたら、その時も共に肩を並べていたいものだな』

 

 

 

……621からの返事は無い。分かっていた事だが、やはり寂しい。ただ無口なのか、それとも言語機能が……いや、考えるのは止そう。

 

 

そうして、暫くの沈黙。

 

 

 

ウォルターの迎えが来た。

返事は無いことは分かっていても。最後に、一番聞きたかったことを口に出してみた。

 

 

『……先輩は、自分が男の子なのか、女の子なのか、分かるかい?』

 

『…………』

 

 

『……すまない、余計な事を、聞いてしまった』

 

 

 

『…………おんなのこ、』

 

 

『て、おるたーがゆってた』

 

 

 

『……っ!!』

 

 

レイヴンが、口を開いてくれた。男の子だとか、女の子だとかもはやどうでもよくて。ただ、無言のレイヴンが僕な口を開いてくれたことが、なんだか無性に嬉しかった。

 

『そうか……!!これからよろしく、レイヴン!!』

 

 

 

 

その後、レイヴンがウォルターの所に帰るのを見送った。そして、自身も拠点に戻るべく、愛機『CARPE DIEM』のブースターを吹か───せなかった。

 

「ん?」

 

 

なんだなんだと、燃料の表示を見てみれば……そこには、『残り燃料0%』の文字が。

 

 

「あっ」

 

 

 

 

 

この後メチャクチャオマちゃんに頼んで家まで送って貰った。

《全く、しょうがない傭兵ですね》

と、オマちゃんに軽く呆れられた。なんか嬉しそうでもあった。解せぬ。

 

 

 

 

 

 




オリ主:転生者かつ第九世代強化人間のガキ

空力狂いのシュナイダー社の上層部の調整により空力適性に全振りさせられた哀れな奴。
少しでも空力を上げるため身長や体重はもちろん骨密度まで大幅に減らされた過去を持つ。

その代わり空中戦に置いてはアホほど強く、軽四近接特化とかいう頭おかしい戦法が可能。
ある日シュナイダーからACを盗んで脱走し、現在は逃亡生活を送っている。

AC:CARPE DIEM

シュナイダー社で秘密裏に製造されていた試作ACパーツ『WANDERFALKE』を一式装備した四脚AC。

ラマーガイアーにそれなりの理性と近接武器適性を足して倫理観を引いた感じ
コクピットがかなり狭くなっていて、装甲分の重量をそこで減らそうとしている。つまり子供しか乗れない。



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