これが!!シュナイダーACの力ァ!! 作:逆足はいいぞ
矛盾あったらスマソ
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
───後悔先に立たず、とはこの事か。
レイヴンとの出会いから1日経過した朝、僕はガレージの中のベッドルームにて、汚い呻き声を出しながらゴロゴロベッドを転がり回っていた。
薄暗いその部屋は、食べかけのレーションや飲みかけの冷却用飲料水、読みかけのアレな本等が散乱しており、お世辞にも綺麗とは言えない。というか普通に汚い。
だが、そんな事は昨日自らが起こした痴態と失態に比べれば、些事でしかなかった。
「なにが『男の子か女の子か』だよ!!戦闘終了後の雑談として最悪過ぎんだろ!!」
改めて振り返っても、昨日の自分はどうにかしていた。普段ならば極力厄介事や厄介ネタには手を出さないよう慎重に行動していた筈なのに。
あろうことかストーリーの『密航』に干渉し、さらには僚機申請までしてしまった。ついでにデリカシーの欠片も無い下心丸出しの質問まで……
「途中まで結構格好良くキメられてたんだけどなぁ……」
自分を調整した奴らの趣味だか嗜好だか知らないが、僕の声帯はやけに魅力ある低音ボイスにされている。このAC世界でこの声帯を手に入れたからには、やはり格好付けたくなるもの。
というかこの地獄のような世界で、前世と今世ともに成人を迎えられていないようなガキが正気を保つには、こうでもしないとやってられない。
格好付けた言動と、それに見合った実力で、子供だからと舐めてくる奴はほぼいなくなった。まあ、元々僕が未成年だと知っている奴は少ないが。
だが、それも最後のあの質問でパーになった。
「621とウォルター絶対ドン引きしてるよな……」
ああ……どうしてこうなったのか……いや、元はと言えば僕があの時621貧乳美少女概念に脳をやられてしまったからか……
「……案外、思春期の衝動って残ってるもんなんだな」
そんな自身の思春期脳ミソに辟易する反面───強化人間として転生し、命からがら脱走して独立傭兵として殺し合いの世界に身を投じても───未だ、年相応の夢と欲を抱ける自分に、なんとなく安堵した。
……もうやってしまったことはどうしようもない。マイナスになった信頼はいずれ来るかもしれない同行依頼の時に実力で取り戻すとしよう。
そう自分に言い聞かせながら、就寝前より三割増しで汚くなってしまったベッドルームを後にする。
さあ、今日も独立傭兵としての仕事が始まる。
「──今日届いているメッセージと依頼は、っと」
基本的に、僕は独立傭兵らしく受ける依頼は選ばない。アーキバスだろうがベイラムだろうが解放戦線だろうが、自分に利益があると判断すれば受け付ける。
……ある一社を除いて、だが。
「うわ、またシュナイダーから来てるよ……」
そう、一度アリーナ登録されてから毎日のようにシュナイダー社から依頼が届くのだ。その依頼は、どれも不自然な程に簡単で、不自然な程報酬金が高い。
300%罠である。連れ戻そうとする魂胆が丸見えだ。
だが、まあまだそれだけなら許容範囲だ。受けなければいいだけ。
しかし、毎日のようにメッセージボックスに怪文書を連投するのはマジで控えて頂きたい。
……厳密に言えばそのメールはシュナイダー社公式のものではないのだが、まあ実質公式といっても過言ではないだろう。
というのも、その怪文書群は──
シュナイダー社の幹部が直々に送ってきているものだからだ。
やっぱ頭おかしいって。
どうやら僕が任務で交戦・撃退したMTやACの残骸から、交戦データの映像を他のシュナイダー幹部より先回りして抜き取り、毎日私室で鑑賞しているらしい。狂気を感じる。
そこまで出来るのなら何故僕を捕らえないのかと、迂闊にも一度だけメールに返事をした事がある。
僅か2秒で千文字超の文章が返ってきた。危うく卒倒するところだった。
『空力の本質は人の肉体を陸や重力という枷から解放する力ということ───』
『シュナイダーという枷から解き放たれ、独立傭兵となった今の貴方こそまさに、『空力』の象徴───』
ああもう訳がわからない。怖すぎる。そのメールを開くまではまだシュナイダーに帰るかどうか一考の余地があったが、もう駄目だ。こんな奴がいる会社に帰れるものか。
さて、そんな怪文書や見え見えの罠依頼やらを流れるようにゴミ箱へシュートし、残った新着依頼は1件。メッセージに至っては0件まで減った。いつもなら5、6件は来るのが普通なのだが、今日は珍しく少ない。
そういう日もあるのか、と残った一件の依頼のブリーフィングを確認する。
『独立傭兵ヴァージル まずは昨日のレイヴンへの助力、深く感謝する』
『さて、本題に入ろう』
『明日、レイヴンが大豊からの依頼で解放戦線の移設砲台への襲撃を行うことになった』
『貴方には、僚機としてレイヴンと共同でその任務にあたってもらいたい』
『レイヴンにとってこれが独立傭兵としての初仕事だ。念のため、貴方の助力が貰えると有難い』
────待って?明日?早くない?
いや、そんなものか……?
まあいい、取り敢えず今回の依頼はきっとアレだろう。僕の人格や実力、そして近付いてきた意図を探るのが目的なのだろう。
報酬金もそんなに悪くない。よし、受けよう。
ここからコツコツ信頼を積み上げていかなくては……
取り敢えず装備を護衛ミッション用のものに替えておこう。あとはブースターやらエキスパンションも替えて───
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──翌日。
ヴァージルと出会って、二日が経った。
私とウォルターは、一足早く指定された場所でヴァージルの到着を待っていた。時間を見ると、そろそろ来る筈だけど───
『───機体後方から機体反応を確認。識別名……CARPE DIEM。来るぞ、621』
ハンドラーの通信が告げると同時に、紅の四脚ACが音もなく静かに地を削り、私の前方に舞い降りる。
『やあ、先輩。どうやら僕は遅刻してしまったらしいね……すまない。』
『いや、定刻通りだ、独立傭兵ヴァージル。此方がレイヴンに一足早く到着するように指示した』
『そうか。だが待たせてしまった事には変わりない。この遅れは、今回の任務で取り戻させてもらうとしよう。』
『……これで、揃ったようだな。出発しろ、ヴァージル、621』
「りょーかい。」
『了解した。』
ハンドラーからの指示と同時にアサルトブーストを吹かす。集合地点から解放戦線の拠点までは、まだ少し距離がある。この移動時間の間、ウォルターが色々話しをしたいことがあるそうだ。
『……すまないが621、秘匿通信を使わせてもらう』
「わかった」
───そうして、30分程経過した頃だろうか。
ヴァージルとウォルターの話が終わり、幾分かウォルターの態度が柔らかくなったのを感じた。
『空力に関して並外れた熱意を持つと聞いてはいたが、まさかそれほどとは……』
と、ウォルターが呟いていたが、何があったのだろう。
ぼんやり考えていると、いつの間にか彼の駆るCARPE DIEMとの距離が大きく離され、遠くなっている事に気付いた。此方もブースターや機体構成はかなり速い物を使用しているのだが、彼にはとても追い付けそうにない。
『っと、少し速度を落とすか?先輩』
「だいじょーぶ。」
『そうか、もうそろそろ到着する筈だからそれまで耐えていてくれ。』
……此方を気遣ってくれているようだ。
なんだか、雰囲気がラスティと似ているようで……全然違うようにも思える。
「ばーじる……」
『どの周』でも、聞いた覚えの無い名前。密航後に思い出される記憶の中に、彼は影も形も居なかった。もしかしたら、今までの周では密航前になんらかの要因で死んでいたのかも知れない。
だけど、彼は、密航時に軽量4脚でパイルバンカーをチャージして当てたり、咄嗟のアサルトアーマーで私を守りつつスタッガーを決めたり、アリーナ6位に相応しい強さを持っている。
そんな彼が、そんな簡単に死ぬのだろうか?
それに、彼が乗っているシュナイダー製らしいパーツも見たことが───
『621、間もなく解放戦線の拠点に到着する。準備しておけ』
ウォルターの言葉に瞬時に思考を切り替える。
今は、猟犬としての役目を果たすだけ。
[企業の傭兵が来たぞ!一機は無名の独立傭兵だが、もう一機は……アリーナ上位ランカーのヴァージルだ!]
[もう情報が流れたのか!?しかもアリーナ上位ランカーだと……!?クソッ、耳聡い奴らめ…!]
銃口を此方に向けてくる解放戦線のMT二機を、ヴァージルがエツジンで一掃する。
『先輩、僕が攻撃を引き付けよう。先輩はその隙に手薄になった移設砲台を破壊してくれ。』
そう言うと彼は上空に上がり飛行形態に変化した。
左肩にはアーキバス製らしきシールドバックラーが装備されており、IGの自信が伺える。
その提案を引き受け、私は地上から移設砲台を狙うべく地を滑るようにブースターを吹かした。
『……やはり、こんなものか』
「くそっ……増援だ!!増援を呼べ!!」
どうやら空中で目立つ軽量四脚ACかつアリーナ上位ランカーという肩書きは囮としてとても効果的らしい。
MTや砲台の攻撃が殆ど彼に集中している。そのおかげで、目に見えて私には攻撃が飛んでこない。
『……流石に、アリーナ6位の名は伊達じゃないらしいな』
なんとなくモヤっとした感情を抱えたまま、入り組んだ拠点の中を滑走する。
そうして道中、ヴァージルに気を取られているMTらを不意打ちのように撃破していき、何事も無く一つ目の移設砲台を発見した。
……どうやら、移設砲台もヴァージルの方に照準を合わせているようで、楽に背後を取ることが出来た。
「…………」
『621、それが砲台だ。破壊し……621?』
行き場の無いなにかを発散するように、背後からパルスブレードで移設砲台をぶった切る。
爆音と共に移設砲台は脆くも崩れ落ちていく。
[なにっ、移設砲台が……!?バカな、いつの間に回り込んでいた!?]
『ナイスだ、先輩!その調子で他も頼んだ!まだ此方は余裕があるから、焦らず確実に破壊して欲しい!』
「…………」
『……気にするな、621。これから傭兵として実績を積み上げていけば、嫌でもお前の名は広まるだろう』
──その後も、殆どの攻撃をヴァージルに向けていた解放戦線のMT舞台が、攻撃対象をすぐに切り替えられる筈も無く。私は殆ど被弾無く、残りの移設型砲台を破壊する事に成功した。
『任務終了だ、621』
『お前はこれからヴァージルと共にこちらが指定した安全地帯まで移動してもらう。暫くしたら、此方が手配した迎えのヘリが来る筈だ。』
『それまで、その場所でヴァージルと共に待機しておけ』
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『───この辺り、で合っているな?』
『……うん』
アサルトブーストを止め、機体を急停止させる。
合わせるように、ヴァージルも機体を急停止させ、二機は同時に地面に降り立った。
『ミッションお疲れ様、レイヴン。』
彼からの労いの言葉。通信越しではあるものの、本心からそう思っている様子が声から伝わる。
けれど、その言葉、その思いを素直に受け取る事が出来なかった。
こんな気持ちは、今までで初めてだった。
「──つぎは……まけない」
──いつもなら、口に出すどころか心にすら浮かばない言葉が、自然と口の中から抜け出していた。
『……何か、気に触るような事をしてしまっただろうか……?』
通信越しに、彼の困惑したような声がコクピットの中に響く。普通ならここで固く閉ざされる筈の私の唇は、未だ開かれていた。
「……つぎは、わたしがおとりになるばん。こんどは、ばーじるがわたしのついでだから。」
心の中でゆらりと浮かんだ言葉が、介すべき数々の壁をぶち破って次々と口から飛び出していく。
不思議な感覚だったが、それがどこか心地良かった。
『ああ、成る程……つまり、ライバルということだな?』
「うん。……たぶんあってる」
ライバルとは、たしか、共に力を競い合って成長する人の事だと、ウォルターが言ってたような気がする。
『ならば、先輩という呼び方は合っていないな。これからは……そうだ、その、盟友と呼ばせて貰っても、良いだろうか』
「……?」
『ライバルと書いて友と読む。そして、僕とレイヴンは僚機契約という同盟を結んでいる。それはつまり、盟友と読んで差し支え無いだろう?』
「……えっと、」
わからない言葉ばかりだ。ライバルと書いて友と呼ぶ?どういうことなのだろうか、さっぱりわからない。後でウォルターに教えて貰おう。
『まあ、つまるところ友達だ。競い合うライバルでもある。……良いだろうか、レイヴン……?』
友達……ラスティの言っていた、『戦友』ともまた違う響きがする。
なんだか、その響きが心地良く、心の奥底から無性に嬉しさが込み上げてくる。
「……うん!!」
『やった!!それは良かった!!これからもよろしく頼むよ、盟友!!』
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「おるたー」
「どうした、621」
「つぎのにんむも、ばーじるをつれてきていい?」
「ああ、大丈夫だ」
・オリ主
初めての友達が出来た
ウォルターに自身の出自から傭兵になった経緯まで全て吐いた
・621
初めての盟友+目標が出来た
・ウォルター
621……お前にも……友人が出来た……(機体の通信ログを見て)