最強キャラ、アポカリプス世界で自由に生きる   作:大抵序盤で死ぬモブ一般市民

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第二話

 ゾンビが出現したとはいえこの世界は以外にも一年程は奮闘していた。というのもゾンビが最初に発生したのはアフリカの発展途上国で起こったからだ。最初は人の理性を失わせ、凶暴にさせるという症状で知られるようになったこれは直ぐに医療チームが派遣され、詳しい原因を探るようになった。その結果として空気感染はせず、人との接触感染でのみ広がる事が判明、隔離される事で事態は一応収束した。

 その後、医療チームによりこれは一種の寄生生物によるものだと判明した。空気中で生きる事は出来ず、人の脳内が最も快適な環境とするこの寄生生物は規制されたら最後脳を食い荒らされ人を殺し、操って感染を広げる事が判明した。

 そのことが医療チームより知らされると国はその地域の殺処分を決定した。隔離されていた感染者は皆殺しにされただけではなく接触していた医療チームも一人残らず殺されたのだ。これによりその国は国際的非難を浴びる事になったが感染の拡大という観点から受け入れられる声もあり、世論は半々に分裂していた。

 しかし、その一月後に事態は大きく動き出した。何とアフリカの至るところで同様の感染者が現れたのだ。実は感染は人間だけではなく、ごく一部の動物にも感染していたのだ。ただし、その動物は感染したとは思えない程理性的であり、感染に気付かずにその動物の肉を食べた結果発症したのだ。その寄生生物は人間の中では活性化するがごく一部の適合する特異体質のような動物内でのみ仮死状態で生存出来ていたのだ。

 その後、1週間でアフリカ全土に感染は拡大。半月後にはほぼ全ての国が崩壊。無政府状態となった。アフリカ以外の諸国は感染拡大を阻止しようと軍を派遣するなどして対策を取ったが一歩遅かった。アフリカからの移民団に感染者が混じっており、感染はヨーロッパに拡大した。その後は感染を止めるには至らず、感染者は恐ろしい速度で増えていった。

 半年後には原因すらわからずにはアメリカ大陸に感染者が出現。8か月後には日本をはじめとする島国にも感染者が現れるようになった。そして、1年と2か月後、世界のほぼ全ての政府は機能を完全に停止し、世界はゾンビの世界へと姿を変えたのだ。

 世界総人口80億人のうち、感染者は60億人。19億人がそのごたごたで死亡したと考えられている。生き残った人類は500万にも満たないとされ、日ごとにその数を急速に減らしている。最早人類に抗う事は出来ず、ただ今日を生き残る事で精いっぱいという具合だった。

 しかし、それでも最初の感染者が出現して5年が経過した現在でも組織を作り、集団で生活する者達は多くいた。そういった者達は世界中の各地に存在し、何とか生き残り続けていたのだ。

 そして、それは中部地方のとある郊外の学校でも起きていた。

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 岸綾乃は本日何回目かもわからないため息をついた。この5年で癖になってしまったそれにかつて言われていた言葉を思い出す。「ため息をつけば幸せは逃げていく」と。

 

「幸せなんて、もうないわよ……」

 

 綾乃はふと、窓から見える眼下の景色に目を向けた。彼女がいる廃校を囲む塀の回りには多数のゾンビがまとわりつき、うめき声を上げながら人間を求めてうごめいていた。

 7年程前に廃校になったばかりのここを生存者たちは安全地帯へと作り替えた。ぐるりと覆う塀に鉄板を溶接して補強された出入口。突破されても大丈夫なように校舎と体育館を囲むように2mは超える堀が作られている。校舎1階の窓は全て内外から鉄板で防がれ、出入り口も同様の措置が取られている。

 校庭と屋上には菜園が作られ、プールには雨水が貯められ、飲料以外での用途に用いられている。貯水タンクを増設し、飲み水すら確保できるようになっているここはこの付近では最も安全な場所と言えるだろう。

 だが、それだけしても明日もわからない現状に絶望している者は少なくない。現在、ここに立て籠もっている人間の数は100人を超えている。数が多いと言えるかもしれないが避難当時は300人はいた。僅か5年で200人が死んだのだ。だが、ゾンビにやられたものはそのうち30人程度だ。それ以外の270人程は絶望し、自殺していた。生きる事に辛くなったゆえに。

 

「……」

 

 皮肉にもそのおかげで食糧不足は解消された。現在は一人一人が1日一食は食べられるようになった。1年前には2日に一食だったことを考えれば補給が追い付いたと言えるだろう。

 だが、そこまでして生きながらえて何になるのか。そう考える人は多い。もしかしたら来年には数は半分になっているかもしれない。綾乃はそれ考えてしまい、再びため息をついた。

 

「綾乃ちゃん」

「っ! 良助さん……」

 

 そんな綾乃に声をかけてきたのはここのリーダーである田辺良助だった。近くで金物屋をしていた彼は自らが中心となり、この安全地帯の溶接を積極的に行った。彼がいなければここまでの安全性を確保する事は出来なかっただろう。

 

「大丈夫かい?」

「はい、と言いたいですがもう駄目かもしれません……」

「……いや、聞いた俺も悪かった。こんな状況で大丈夫と言える方が無理だよな」

 

 リーダーとして綾乃以上に悲惨な状況を目にし続けてきた良助も大きく疲弊していた。それでも彼が自殺しないでいられるのはリーダーとしての責任感からだろう。もし、リーダーでなかったら今頃自殺していたかもしれなかった。

 

「今見回りをしてきたけど一部の塀が限界を迎えそうだ」

「っ! それはつまり……」

「ああ、外に出て周りのゾンビを倒さないといけない」

 

 良助の言葉に綾乃の表情は曇る。

 ゾンビは接触感染で感染を広げるがその倒し方は簡単である。頭、正確には脳を破壊するだけで活動を停止する。首を切り落とすことでも活動を止める事は可能だがその場合、頭部は活動するためそちらも駆除しないといけない。

 だが、ゾンビの厄介な点はその頭部を破壊する事が難しい事にある。何しろゾンビはふらふらとした動きで接近してくるため頭に攻撃を当てるのが難しい。更にそれなりの力でないと頭蓋骨に阻まれるために脳の破壊には至らない事が多い。そうなれば接近を許し、噛まれ、奴らの仲間入りを果たすことになるだろう。

 幸いな点はゾンビはどれだけ速度を出しても早歩き以上の速度を出すことは出来ない。決して走る事は出来ないのだ。更に言えば手を使い、壁をよじ登るといった動作は出来ず、ただ足を動かす事しか出来ない。これは寄生生物が体を無理やり動かしているせいだと言われており、彼らの力ではそれ以上人間を俊敏に動かすことが出来ないのだと推測されている。とはいえ現状においては逃げるわけではない為あまり意味があるわけではなかったが。

 

「希望者を募る。最低でも10人。それ以下の場合は強制的に戦える者を連れていくしかない」

「……」

 

 綾乃は良助の言葉を聞き、希望者が出るとは思えなかった。ゾンビとの戦いは生きるか死ぬかのものであり、気楽に行えることではなかった。だからこそ戦えない者を無理やりにでも連れていくしかない。

 

「綾乃ちゃん。最悪の場合、君も一緒に来てもらう事になる。それだけは覚悟しておいてくれ」

「……わかったわ」

 

 綾乃は力なくそう答えた。残された100人の中で最年少である22歳の彼女は同時に数少ない若者であった。彼女の次に若いのは35歳の良助なのだから。平均年齢45歳。それがこの安全地帯の現状であった。

 

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