「……っ、撤退を!わたし達だけで戦うのは……!」
人さえ吹き飛ばせる程の雄叫びからかなりの力があるであろう事は容易に推測出来る。
しかも伝説の怪物の迷宮内……謂わば相手の手の内のような場所で戦うのは自殺行為には等しい。
故にマシュは盾を構えつつも撤退を進言したが
「落ち着きな!
此処がミノタウロス迷宮なら……アリアドネの糸もなしに脱出出来るかい?」
ドレイクは冷静に銃を構えつつもそう反論する。
ミノタウロスを殺した英雄、テセウスでも糸を辿らねば帰還する事は叶わなかった。
ならば自分達が撤退した所で外に出られる可能性は先ず無いと考えた方が良い。
ドレイクがゆっくりと呼吸をすれば、覚悟を決めたようにミノタウロスへと向けて銃を撃つ。
銃は見事に着弾し、ミノタウロスの身体から軽く血が流れるが本人は全く効いた素振りを見せない。
しかしその様子にドレイクは確かに笑って見せる。
「ビビってんじゃ無いよ藤丸!マシュ!竜儀!
弾は当たった!血も出た!なら……彼奴は倒せる!」
決して理不尽の化身では無い。
相手は確かに怪物だが、血肉はあるし攻撃も通るのだ。
ならば、決して絶望的な状況ではないとドレイクは藤丸達を奮い立たせる。
藤丸と竜儀は互いに視線を寄越せば、そのまま頷き合い自らのテガソードへと指輪を嵌める
「「エンゲージ!!」」
【クラップユアハンズ!】
軽快な音楽が辺りへと響く
顔の横でクラップを2回、迷宮内へと響き渡る
足のステップを2回、リズム良く鳴り響く
顔の横でクラップを1回、ミノタウロスが奇怪な動かに首を傾げる。
前方へと大きな円を描き、腰の横でクラップを2回鳴らす。
そのまま己を鼓舞するように軽快なステップを刻む。
頭上に円を描くようにターン
最後に、頭上にクラップを1回、高らかに鳴らす。
【ゴジュウウルフ!】
【ゴジュウティラノ!】
赤き狼と黄色の恐竜が姿を現し、赤き海賊と盾の騎士と共に並び立つ。
「アタシこの海から出たら、やるべき事があるんだよ!
世界一周!ゴールデン・ハインドで世界を巡る!
それまで死ぬ気なんてサラッサラに無いんだよ!
アンタらはどうだい?死んで満足か!!」
ゴーカイレッド……ドレイクは銃口を怪物へと向けつつ尋ねる。
藤丸達は海賊に応えるように笑えば
「そんな訳ねぇだろ!俺は……死にたくないから此処に居るんでね!」
「私も死ぬつもりは無い、テガソード様を世界に広めるまではな!!」
【ウルフデカリバー50!】
【ティラノハンマー50!】
ゴジュウウルフが剣を構え、ゴジュウティラノもまた自らのハンマーを構える。
マシュが盾を構え直し、ミノタウロスに向けて跳躍すると同時、各々も一斉に駆け出す。
「マシュ・キリエライト……ミノタウロスの迷宮を踏破します!」
ミノタウロスへと向けて盾を振り下ろす。
しかしてミノタウロスは二本の斧を交差させ、難なく盾を止めてしまう。
「喰らいなぁ!」
【ゴーカイジャー!】
ゴーカイグリーンへと姿を変えたドレイクが二丁のゴーカイガンにてミノタウロスの身体を撃ち抜くように連射する。
それに応えた様子もなくマシュを弾き飛ばし、ミノタウロスは大きく踏み込む。
「し、ねぇ!!」
巨大な斧がドレイクへと振り下ろされる。
マシュは吹き飛ばされた為間に入る事は不可能。
藤丸が咄嗟に間へと割り込み──
「……いやさか!」
ゴジュウティラノがティラノハンマー50で巨大な斧の刃を受け止めて見せる。
相手の巨体から繰り出される圧倒的な力にも負けず、床がひび割れるほどに拮抗する。
明らかに人間が出せる力を超えており、ゴジュウジャーとしての力を加味しても異常な力といえる怪力。
「これが……テガソード様の加護なり!!」
ゴジュウティラノがミノタウロスの斧をテガソードで弾き上げれば、藤丸が即座にミノタウロスの身体に向けて跳躍。
「行くぜ!」
【キングオージャー!】
オージャーカリバーとウルフデカリバー50の2刀流にてミノタウロスの身体に傷を付ける。
即座にミノタウロスが反撃の斧を振るうが、空間を切り裂いて退避。
今度は背後から現れて攻撃したかと思えば再び空間を切り裂き、横側に現れたかと思えば上から──とミノタウロスを翻弄して行く。
ミノタウロスが辺り一体を薙ぎ払うように斧を振るえば、上から現れてマントをミノタウロスへと巻き、背後へと大きく引っ張る。
無論怪力は無いが、それでも一瞬体勢を崩させる事は出来る。
「竜儀さん!お願いします!」
「いやさか!!」
【ティラノハンマークラッシュ!!】
マシュがゴジュウティラノに対して盾を横へとして投げれば、ゴジュウティラノはハンマーを握り締めて盾を思い切り打ち返す。
打ち返された盾は凄まじい回転を伴いつつミノタウロスへと迫り──
「……っ!」
身体を翻し、藤丸を吹き飛ばしたミノタウロスは床へ斧を突き刺せば、両手で盾を掴んで止めて見せる。
【ゴーカイジャー!】
しかしてゴーカイイエローへと姿を変えたドレイクがゴーカイサーベルから放たれたワイヤーによってミノタウロスを雁字搦めにすればカルヴァリン砲を展開。
「本命はこっちさ!奈落の底まで吹っ飛びなぁ!!」
カルヴァリン砲が火を吹き、ゴーカイサーベル諸共ミノタウロスへと直撃する。
流石にやったか?と藤丸達が煙が晴れて行く場所を見るが……
「ま……も、る……!」
ミノタウロスは健在であった。
顔を覆っていた仮面こそ割れて血が流れているが、それでも倒れる素振りはない。
守る?と言う言葉に藤丸が首を傾げたが。
依然やる気の相手に再びテガソードを構え──
「お待ちなさい!」
少女が眼前へと立ち塞がった事でドレイクと竜儀は咄嗟に手を止めてしまう。
「……ステンノさん!?」
「ステンノ……?」
その姿はローマで出会った女神そのもの。
多少口調が違うような……?と二人は首を傾げるが
少女はそんな様子に気付かずに口を開く。
「着いて行けば良いのでしょう!だからもうおやめなさい!
お目当ては私だけでしょう!?」
ミノタウロスを庇うように両手を広げる少女。
そんな少女を見て藤丸は一言
「いや……お目当てじゃねえけど……」
「……え?」
気不味い沈黙が、辺りを包んだ。