船の修繕は順調に進んで行った。
欠けた部分に新しい木材を足し、ワイバーンを狩って鱗を切り貼りし、黒髭に対抗出来るような切り札だって搭載出来た。
この特異点に入ってからの激動と比べれば、ゆっくりと穏やかに、しかし退屈する事のないような日々の末に……
「船は完成した!明日には黒髭にカチコミに行く!
……けど、そりゃ明日の話だ。今夜は宴だ!呑むぞ野朗ども!!」
盃を打ち交わし、海賊達は好きなように酒を飲み始める。
アステリオスとエウリュアレもまた酒の席へと勧められれば、
「……一杯だけよ?」
と言いつつも海賊達の輪へと入っていく。
出会って交戦した時からは想像も出来なかった事だが、今はこうして和気藹々と酒を酌み交わすまでに至っている。
オリオンが角乃の側に寄っていって、アルテミスにエルボーを食らって潰されたりもしていたが、それでもまあ楽しい事には変わりない。
「で、アンタ結局なんなの?」
「僕は僕さ、それだけだよ」
あ、そ。と変わり映えのしないアーチャーの答えに角乃はやれやれと溜め息を吐きつつお酒を一口飲む。
別に心を読めば分かるのだが、前彼を詰問した時に言った台詞……明かさない事こそが最大の利益となる、と言う言葉を鵜呑みにする訳でもないが、探偵としてのカンからそれ以上追求してこなかった。
だがまあ気になるものはやはり気になる。故に酒の席で尋ねてみたが……まあ軽くいなされて終わった。
「……アンタ楽器も弾けるんだ」
「一番得意なのは違う楽器だけどね」
なにやら弦楽器を取り出したアーチャーに角乃は少し意外そうな顔をすれば、アーチャーはキザにウインクをした。
「や、竜儀。楽しんでるかい?」
「……陸王か、まあ楽しんでいる方だと思うぞ」
団欒を眺めていた竜儀の隣に腰掛けるのは陸王。
相変わらずの笑みを浮かべている陸王に、変わらんなと竜儀は肩をすくめて笑ってみせる。
思えば現在出会った指輪の戦士は基本的に初対面ばかり。
陸王と竜儀はこの特異点に巻き込まれる前に出会っていた数少ない顔見知りと言えた。
「……で、何の用だ」
「いやあ、楽しんでるか気になっただけだよ」
眼鏡を軽く押し上げる竜儀に、陸王は肩をすくめて答える。
数秒互いを見つめ合い、まあそれでも良いだろうと竜儀と陸王は盃を打ち合わせた。
「……さて、そろそろ僕のコンサートを開いてくるよ、アーチャーが楽器を持ってるらしいしね」
指輪の恩恵である聴力を発揮した陸王がその場から離れて少しすれば、歌と楽器が更に宴を盛り上げ始める。
人々は愉快に踊り始め、藤丸とマシュもまた手を取り合って不器用に踊っている様子が目の端に写った。
「……テガソード様。
これも貴方のお召しと言うのならば、見届け、守りましょう。
いやさか……」
楽しそうに笑う女神と怪物を見つつ、竜儀は手を合わせてテガソードへと祈りを捧げた。