「怖い怖い、何奴も此奴も英霊か英霊級しか居ねえんだから」
と口では言いつつも、真顔でヘクトールは藤丸、マシュ、アステリオスの攻撃を槍で完璧に捌き切ってみせる。
「マジ・マジカ!」
陸王がマジレンジャーの力を纏い、エウリュアレ、アルテミスが矢を放つと同時に炎を放つ──が、ヘクトールは凄まじい勢いで槍を回転させ、船上に小さな竜巻を生み出して纏めて掻き消してしまう。
6対1と言う圧倒的な人数不利を背負っている筈、だと言うのに押し通ることさえままならない。
これこそが大英雄、守りにおいて比類なき力を持つ兜輝くヘクトールなのであった。
一方メアリーが交戦するのはアーチャー、角乃、そして竜儀の3人。
竜儀の怪力をサーベルで逸らし、角乃が心を読んで攻撃するのを速度で強引に上回り、アーチャーへと攻撃を繰り出す様は圧巻としか言いようがない。
「邪魔をしてくれるね、君一人で僕達の相手かい?」
「お前が加わるとヘクトールでも分が悪い、ていうかタイマン関係なく船長狙うだろ?」
「健気だねえ」
アーチャーの杖とサーベルを交差させ、一瞬の拮抗に迫るハンマーとドリルを避けてメアリーは再びサーベルを構える。
「察するに君と消滅した銃剣使いは運命共同体、二騎で呼ばれる代わりに片方が消えればもう片方も消えるのだろう?」
先程から宝具を使ってこないのがその証拠。
片方が消えてる時点で宝具を使ったとしても、最悪発動する前に消滅してしまうのがオチ。だからこうしてサーベル一本のみで此方と戦っている。
それでも最早退去を逃れる術は無い、数秒が数分に伸びる程度の違いだ。
しかしメアリーは引くことなく、アーチャーを睨み付ける。
「だからなんだ……勝つのは、僕達だ!!」
そうしてメアリーは、己の命を燃やして再びアーチャー達へと突撃していくのであった。
そして舞台は戦場の中央、船長達のタイマンへと移る。
無数の大砲が黒髭を穿たんと迫るが、黒髭の無数の船員が盾となってそれを防ぐ。
船の損傷を互いに気にすることなく、激突は次第に激しさを増していく。
英霊であり無限の船員を持つ黒髭。
ユニバース戦士であり無限の鉄火を持つドレイク。
最早戦いは個人の規模を超え、一対一の海戦へとなる。
互いが互いの襟首を掴めば、思いっきり頭突きをかましあい
互いに怯まず拳を放てば、お互い顔面に直撃する。
ゴーカイレッドへとなっているドレイクは5色へと激しく移り変わり、黒髭もまた一歩も引かずに鉤爪を振るう。
「ギリシャでももうちょい上品だったぜ?」
オリオンがやれやれと海賊二人を見るが、側へと降り立った藤丸を見れば
「まあ、それで良いのかもな」
アルテミスが不思議そうにオリオンを見るが、オリオンは静かに呟き続ける。
「周りにゃ目もくれず鉄火を撒いて、手段も自分も省みず欲しい物を奪おうとする──それこそが、」
「海賊の、闘い……」
藤丸は静かに、だが確かに。
戦場において──二人の海賊の戦いに目を奪われていた。
幾度目の激突を果たした二人が、再び着地をして互いに武器を構え直す。
「人間の割にやりますな、スペイン船を襲いまくってる経験は伊達じゃない」
「は?なんで知ってんの?気持ちわる」
黒髭が笑いつつもそう言えば、ドレイクが少し引いた顔をしつつしれっと言い放つ。
「べ、別にBBAの事なんて知らないですぅ!!」
若干ツンデレみたいな事を言う黒髭を気にせずに、ドレイクは己の拳をより強く握り締める。
「でもまあ良かったよ!タイマンなんて楽で良い!!」
「同感さ、話が早くて助かるぜ」
「まったくさ、テメェを殺せば」
「お前の死体から奪っちまえば」
「「お宝が手に入るからなぁ!!」」
二人同時に豪快に笑えば、ドレイクがセンタイリングを外して空へと突き上げる。
瞬間、センタイリングから放たれるのは五つの鍵……レンジャーキーと言われる大いなる力。
そしてドレイクが自らの周辺に大砲を展開すると同時に構えるは赤き海賊船をモチーフとした武器、ゴーカイガレオンバスター。
【レッドチャージ!!】
レバーを引くことで帆の部分がせり上がって照準器となり、4本のレンジャーキーが突き刺さる。
それと同時に自らの手元に収まった赤きレンジャーキーを後部のシリンダーへと装填し、鍵を回せば発射準備は完了。
それと同時に大砲より一才砲撃は始まる。
「自分の船だってのに本当におかまいなしですなあ!!」
黒髭はあのバスターが間違いなく切り札だと予想。
つまりこの砲撃の中放ってくる……それを如何にして防ぐか、と考えた時
眼前に広がった光景に、黒髭は思わず笑ってしまった。
「殺った……黒髭ェ!!」
砲撃の中を突き進み、黒髭の眼前でガレオンバスターを構えるドレイク。
自分の砲弾で死ぬかもしれないのに、わざわざバスターを抱えて突っ込んできたのだ。
それこそが海賊、そして近距離から放たれるブラスターを回避する方法は……無い!
【ライジングストライク!!】
ゴーカイガレオン型のエネルギーが、必殺として黒髭に放たれ──
「自由なる、嵐の王が命ずる」
その一撃は、メアリー・リードと言う海賊を確かに仕留めた。
「盾になれ、メアリー・リード」
数秒、戦場が沈黙し──メアリーへと注目が注がれる。
メアリーは溢れる血を見つつ、確かに笑って船長を見る。
「……良い使い方じゃないか、勝てよ……船長、僕達に勝利を……」
メアリーは光の粒子へと消え去って、ドレイクは黒髭を見つつ
「……やるね」
とだけ呟く。
「だろう?」
と黒髭は答え、鉤爪を振り上げる。
ゴーカイガレオンは本来5人で持つ武器。
一人で強引に運んで、無理矢理放った以上反動は当然あり
更には両手が塞がってる事で防御は不可能。
「船長!!」
藤丸達が一斉に駆け出すが、間に合う訳も無い。
ドレイクは目を閉じて黒髭の鉤爪を受け入れんとし──
【カメレオンキュータマ!】【フタゴキュータマ!】
全員が、その光景に目を疑った。
黒髭に突如透明な穴が空いたと思えば、溢れ出た血が透明な槍を彩っていく。
「……なんでだい、ヘクトール……!」
竜儀が咄嗟に振り返るが、ヘクトールは変わらず笑って眼前へと立っていた。
しかして黒髭の背後に現れたのも……また、ヘクトール。
「やっと隙が出来たよ、ずっと透明だってのにずっと警戒してんだから……ま、流石にその女に勝てるともなりゃアンタだろうと周りは見えなくなるよな?」
ヘクトールの槍が黒髭を切り裂き、黒髭は地へと倒れ伏す。
「聖杯、いただいたよ」
ヘクトールの笑みが、変わる事は無かった。