「……いつから、裏切ってたんだい?」
倒れ伏す黒髭を見つつ、膝を付いたままドレイクは尋ねる。
尋ねられたヘクトールはへらへらと笑いつつも
「最初からさ、別に上司が居てね。
その命令で動いててねえ、サーヴァントの辛い所だ」
と言いつつもヘクトールは槍で地を叩く、そうすればもう一人のヘクトール……フタゴキュータマの力で増えていたヘクトールは光の粒子へと還り、その粒子はドレイクの前に立っていたヘクトールへと吸収される。
「で、だ。
目の前にあるもう一つの聖杯……取らない手はないよな?」
【ウルフデカリバー50!】【レオンバスター50!】【ティラノハンマー50!】【ユニコーンドリル50!】
槍の切先がドレイクへと向けられた瞬間、サーヴァント含む全員がヘクトールの元へと迫る。
剣に銃に斧にハンマー、ドリルに矢に盾と多種多様な武器が迫ってくるにも関わらず、ヘクトールは冷静に周囲を見る。
「ひーふーみーよー、いつむうなな……其方の船長は随分と慕われてる様で。
だがまあ、手合わせして分かったけれど……」
ヘクトールの視線は、唯一船の奥に居る女神……エウリュアレへと向けられていおり
アステリオスがそれに気付いた瞬間、既にヘクトールはエウリュアレの背後に立っていた。
「アンタら全員、俺より遅いな」
「その上素直すぎる、オジさんの本命はこの女神でね」
エウリュアレが宝具を発動する前に背後から両腕を掴み、そのまま取り押さえてしまう。
「は、な、せえええええ!!」
「絶対……もう、誰も攫わせない!!」
アステリオスとその背に乗った角乃が迫り来るが、ヘクトールはエウリュアレを盾のように前へと突き出す。
そしてアステリオスが怯んだ一瞬の内に身体を槍で刺し貫き、アステリオス諸共角乃を遠ざければ
「その反応は予想付くし、次に来る手も読めてるさ」
迫り来るアルテミスとドレイク、陸王の銃撃を全て槍でいなしつつ余裕綽々にヘクトールは笑い続ける。
「んで最後は……あ?」
残る面子は藤丸とマシュと竜儀、それとアーチャー。
強いて言うならアーチャーくらいが遠距離攻撃を使うくらいで、後はいなせる……と見たのだが、藤丸の姿が何故か見えない。
「ダラダラダラダラと……」
「テメェは良い加減……」
背後に聞こえるのは二つの声、咄嗟に振り返れば──
「人の船で長話してんじゃねえよ」
「とっとと返せ!!」
確かに刺し殺した筈の黒髭と、前に居た筈だと言うのに背後に居た藤丸に思わずヘクトールは驚愕の声を上げる。
「オイオイ生きてんのかよ!?霊核ごと貫いただろ!?」
「知らねえよ!つかなにエウリュアレちゃんに触ってんだよ、趣味同じかあ!?」
「俺を無視してんじゃねえ!!」
ヘクトールは藤丸の背後……切り開かれた空間に舌打ちをする。
空間移動!!サーヴァントの宝具でも空間を斬れるのは滅多にねぇぞ!!
黒髭の鉤爪と藤丸のウルフデカリバー50を捌きつつ、初めてヘクトールの余裕が崩れ……顔に血管が浮き出る。
「黙れよバカが!とっとと死ねよ!!」
無数の刺突が黒髭を貫き、黒髭は半身を穿たれて今度こそ地へと倒れ伏す。
そのまま藤丸へと槍を放とうとし、その刺突は盾によって阻まれる。
「……ちぇっ、死に損ないにやられたよ」
既にエウリュアレの周りには総戦力が集っており、流石のヘクトールと言えどもあの中から女神を攫うのは不可能だった。
……黒髭は、地へと倒れて考える。
流石にもう無理だ、助からない。
警戒はしてたが見事にしてやられた、悔いも後悔もあるが……まあ、彼奴の前で死ねるなら悪くないか、とだけ思い──
黒髭が……やられっぱなしで消える?
欲しい物は手に入ってねえ、このまま無様に不意打ちされて消える?
ああ、海賊には相応しい末路だろう
「……まだ生きてんのかよ」
ヘクトールが呆れたように、立ち上がった黒髭を見る。
「黒髭は、何度でも甦るんだよ……人間に悪の心がある限りなあ!」
【宝が欲しいか?】
ああ、欲しい!
宝だけじゃねえ、俺は全てが欲しい!
何でもかんでも全部欲しがって、何をされようが挫ける事なく大海原へと何度でも向かう!!
「俺はエドワード・ティーチ!!大海賊、黒髭だ!!」
大砲の輪より飛び出すは、黒髭の欲望に反応して現れたノーワン。
全員が呆気取られて彼を見て──それは成し遂げられる。
「
【トレジャー】【オタカラ】【一攫千金】【英霊】【ナンバーワン】
黒髭が自らノーワンの浮かび上がる両手両足へと腕と脚を突っ込めば、最後にノーワンの頭を掴んでなんと自らへと被せてしまう。
そうして生成されるは──
「我こそは、ノーワンワールド・トレジャーハントNo.1!with黒髭!
この力、示して見せよう!!」
本来、人間と融合して生まれるノーワンに自我が混ざることは有り得ない。
それは単純にノーワンの方が強いのもあるし、乗っ取っていると言うのもある。
しかし──英霊、人理に刻まれた存在と言うのはあまりにも強力であり
また強烈な自我があり、死にかけでも尚その欲望を燃やし続ける男にノーワンが付いた結果、半ば融合したようになってしまった。
「悪いな、BBA。
俺はまだ死にはしねえ!
生き汚い、往生際が悪い!何を言われようとも結構さ!!
俺は──まだまだ宝が欲しいんでなあ!!」
「んじゃさっさと──」
あまりにも異様な状況に流石のヘクトールもフリーズしていたが、再起動と同時に槍で再び黒髭を穿たんとして──槍が、一切通らずに弾かれる。
「ナンバーワンを掲げる我らには、そんな物は通用しない!!
俺を打ち破りたくば──トレジャーハントバトルで撃ち倒すんだな!!
それはそれとして拙者このままだと死ぬので失礼しますぞ〜!!」
あっさりと槍を弾いた黒髭……いや、トレジャーハントノーワンは黒髭の船へと乗り込めば、そのまま船は即座に動き出す。
「じゃあなBBA、次こそ決着着けようぜ」
「──はっ、さっさと傷治して来るんだな」
一瞬だけドレイクの方を見たトレジャーハントノーワンは、そう言い残し。
ドレイクは笑いつつも船ごと去っていく"黒髭"を見送った。
「……いやあ、ここまで上手く行かないのは流石に初めてだな」
頭を掻きつつ、ヘクトールは振り返る。
振り返った先には臨戦態勢の面々。
おっと、とヘクトールは再び笑えば
「今回はもうやめとくよ、上司の船も来たしね」
とだけ話す。
《魔力反応……聖杯があるわけでもないのに、なんだこの数値は……!?》
ロマンが管制室にてその船を観測したが、魔力数値がみるみると……それこそ聖杯級にまで上がっていくのを見て動揺の声を上げる。
「いいリアクションだ、紹介する甲斐もあるってもんだ。
アレはギリシャ神話にて金羊の毛皮を求め旅立った冒険者達の船だよ」
その言葉に管制室から動揺の声が上がる。
その特徴が当てはまる船と言えば、もう一つしかない。
「神話に輝く数多の英雄が集い乗り込んだ人類最古最強の海賊団……」
船に立つは巨人と見紛うほどの巨躯を持った、巌のような男。
杖を携えた、浮世離れした可憐な雰囲気を持つ少女。
そして1つの身体と2つの顔、2つの人格を持った異形。
──最後に、船頭に立つは
【キュウレンジャー!】
「彼の者達の名は、アルゴノーツ!!」
獅子の星座をその身に宿した、赤き戦士が銀色のテガソードを手に腕を組んでいた。
ヘクトールはユニバース戦士じゃありませんでした