《アルゴノーツ……!船長、撤退すべきだ!!》
真名なんて探る必要もない。
アルゴノーツに乗っていたギリシャ神話……否、人類史においても最大の英雄。
その真名を──ヘラクレス。
「……どうする?」
今まで争ってきた特異点の首謀者達、それと比べても──同等、或いはそれ以上の力。
恐らくユニバース戦士では無い、と言うのにあの巨体からは果てしないプレッシャーを感じ取ってしまう。
「さて、漸く顔を見合わせる距離に来たか」
赤き獅子……シシレッドの装甲を解き、中から姿を現すはぱっと見は爽やかな印象を与える金髪の青年。
「随分と見窄らしい連中だな、こんな奴等に遅れを取ったのかいヘクトール?」
「ええ、面目ない」
口から溢れるのは相手に対する侮り、そして傲慢。それを一切隠そうともせずに男は偉そうにしていた。
「まあ良い、戻りたまえ。其処の悪党達に改めて自己紹介をしなければならないしな」
ヘクトールが跳躍し、金髪の青年達が居る船へと着地する。
青年が堂々と両手を広げれば
「初めまして、世界を修正しようとする邪悪な者達。
我々はアルゴノーツ、世界を正しくあろうとさせる正義の英雄達だ」
相手が悪で、自分達が正義。
そう断言しつつも、サーヴァントにとっては何よりも秘匿せねばならぬ真名を全員分、あっさりと露呈させていく。
「コルキスの魔女、メディア。
トロイアの守護者、ヘクトール。
世界最強の英雄、ヘラクレス。
知略のシャイニングナイフに夢想のスイートケーク。
そして彼らを率いるのがこの私、
アルゴノーツ。
アルゴー号に乗った英雄達。ヘクトールや明らかな異形であるシャイニングナイフとスイートケークとやらは違うが、メディアとヘラクレスは実際にアルゴー号に乗っており、イアソンがリーダーであった事も紛れもない事実。
「……だがまあ、物語以上に傲慢そうな男だねえ」
ドレイクはそう言ってイアソンを真っ向から見る。
イアソンはその視線を嘲笑うように胸を張りつつ
「傲慢な女達だ、王に対する敬意が足りない」
と言い放つ。
「何が王だい、どうせアタシの聖杯を狙ったチンピラだろ?」
と煽りつつ、自らの手元に聖杯を取り出して見せてやるが
イアソンはその聖杯を一笑すれば
「聖杯など一つで充分さ、私の狙いはヘクトールから聞いただろう?」
ヘクトールより捧げられた聖杯を掴み、イアソンは視線をエウリュアレへと向ける。
「それで?彼女を妻にでもするのかな?」
とアーチャーが尋ねれば何を検討違いな事を、とイアソンは嘲笑い
「まさか!それは捧げ物!
後は
「船長、それ以上は流石に優しすぎるかと」
「全部教えちゃうのはねぇ〜?」
契約の箱なる単語を口にしたが、それ以上の言葉はシャイニングナイフとスイートケークに遮られてしまう。
陸王はトキメキナンバーワンバトルの時に彼等彼女等を見た事から、ノーワン側であると理解し、どうやら彼方は今回首謀者側に加担したなと判断した。
「ハハハ!王たる者の慈悲が溢れてしまったか!」
イアソンは余裕そうに笑いつつも、既にヘラクレスを構えさせている。
何かあれば即座に大英雄は動き出してしまうであろう。
「……大体目的は分かったかな」
「私は寛大な王さ!君達が女神を渡すなら見逃してやっても良い!
怖いだろう?ヘラクレスは」
アーチャーの言葉を無視して、イアソンは警告をする。
実際ヘラクレスの放つ圧は凄まじく、英霊であっても冷や汗をかいてしまう程の物。
怖くない、と言えば嘘になるが──
「仲間を渡す訳ねえだろ!」
とゴジュウジャーの面子が金色のテガソードを構えて立ち塞がる。
「どうして……」
エウリュアレが藤丸を見てそう呟くが、ドレイクがエウリュアレの前へと立てば
「どうしても何も、アタシも含めてアンタが好きって事さ。
……よーし野朗ども!海の男の誇りある仕事だ!!
エウリュアレを守ってこの場を切り抜ける!抜かるんじゃないよ!」
船員達は即座に撤退準備へと取り掛かり、戦闘員達がエウリュアレを守る盾となって並び立つ。
「逆効果でしたねえ、士気が却って高まりやがった」
「……そうかそうか!彼等はとても勇気がある!まるで英雄のようで気に入ったよ!!」
ヘクトールが呆れたように槍を担げば、イアソンは満面の笑みを浮かべて拍手をし
「ゴミ屑風情が生意気だな、ヘラクレス!!」
苛立ちを隠そうともせずに即座にヘラクレスを出陣させる。
「先ずは力の差を見せてやるとしよう、お前達は何もしなくて良い」
共に向かおうとしたヘクトールとシャイニングナイフを押し止め、イアソンは既に決着が着いたかのように椅子へと腰掛ける。
「エンゲージ!!」
マシュが盾を構え、その間に各々が指輪をテガソードへと嵌め、変身を果たす
【クラップユアハン……
──それよりも前に、ヘラクレスは既に藤丸の眼前へと迫っていた。