怖かった。初めて戦った時から。
怖くて怖くて逃げ出したかった。
けど、先輩が居た。
私と共に戦ってくれる先輩。
サーヴァントとだって互角に戦えて、諦めることを知らない先輩。
盾が、押し込まれる。
極光の奔流が、全てを飲み込まんと迫る。
そんなものを、受け止め切れる訳がない。
かの騎士王と、スーパー戦隊が融合した存在。
サーヴァント以上の存在から放たれた、宝具。
誰か、だれか──助けて。
目頭が熱くなって、視界がぼんやりとする。
けれど、確かに見えた
わたしの盾を支えてくれる、先輩が
そうだ、先輩ならわたしを助けてくれる。
先輩ならわたしを支えてくれる。
スーパー戦隊の一人、サーヴァントと同じような力を持つ人。
どうか、わたしを──
「死んでたまるか、死んでたまるか──!」
目に入るのは、今にも涙が流れだしそうな、先輩の姿。
……わたしは、何を勘違いしていたのだろうか。
この人は、ただの人間だ。
例え特別な力を手に入れても
怖くない、筈が無いんだ。
昨日まで一度も戦った事がない一般人が
ただ、その場に生き残ったから。
力を持っていたから、戦っているだけで。
先輩は間違っても英雄じゃなく、一般人なのだ。
わたしのために、勇気を振り絞ってくれてただけなのだ。
──英霊でも無い、その身体で
わたしを、守ってくれてたのだ
どうして、先輩に頼ろうとしたのだ?
本来立ち向かうべきは、わたしの筈なのに!
立ち向かえ!
──立ち上がれ!
例え宝具の名前さえ知らなくても
わたしは、藤丸立香のサーヴァントなのだから──!!
使え、叫べ。
今だけでも良い、先輩を守る為に
わたしに託してくれた英霊よ
皆んなを守る為に、その宝具を使わせて下さい──!
「宝具、展開──!!」
淡く輝く水色の光が、極光の奔流さえ押し除ける。
洞窟へと向かうキャスターが、誰にも向けずに呟く
「この衝撃、宝具を放ちやがったか……」
「ま、あの嬢ちゃんなら防げるだろ」
「あの嬢ちゃんは戦う側じゃねえ、謂わば守る側の人間だ」
「即ち、エクストラクラス──」
「やり、ました……宝具展開をッ、確認……!」
「せんばい、わたし……は……」
マシュが盾を構えたまま、地面へと崩れ落ちる。
藤丸は咄嗟にマシュを支える。
生きてる、疲労からか気絶してしまっただけのようだ。
「たぶん魔力が切れたのね……あの宝具を防いだんだもの、当然よ……」
所長が信じられないような物を見るような目をしていたが
軽く顔を振れば慌ててマシュの元へと駆け寄る
「──あの老人め、つくづく余計な物しか残さないな……
ハッ、己が執着に傾いた挙句のこのザマか」
アルトリアの変身が解け、地へと片膝を突く
──そのアルトリアの背後に立ち、杖を向けるはキャスター。
「……私を嗤うか、アイルランドの光の御子よ」
「んな趣味ねぇよ。俺はとどめ役だ」
「良いでしょう、好きに──」
アルトリアの魔力は既に尽きており、キャスターに勝つ事は不可能
キャスターも杖に刻まれたルーンを行使しようとし──
「待て!」
藤丸が、それを止める
ギョッとした様子を見せている所長にマシュを預け、藤丸は立ち上がる
「──何故止めた?慈悲を掛けようと言うのなら」
騎士王が睨むように藤丸を見据えるが
藤丸は、金色のテガソード、その刃を向ける
「……お前は、俺の獲物だ。
指輪のもたらす戦い、だったか?
後輩1人に任せっぱなしで終われるかよ!」
結局、俺はマシュに頼り切りだった。
此処でクー・フーリンにとどめを任せてしまえば
俺はずっと、この先も誰かに頼り続ける
ただのエゴだろう、それでも──それでも俺は
この世のはぐれ者で、1人でも生きていける力を
後輩を守る力を、求めていた。
「キャスター」
「……ま、坊主が負けそうなら割り込ませてもらうぜ」
やれやれ、と肩をすくめれば
キャスターは所長の元へと移動する
騎士王は銀のテガソードを握り、刃を藤丸へと向ける
「「エンゲージ!」」
【クラップユアハンズ!】
軽快な音楽が辺りへと響く
顔の横でクラップを2回、洞窟内へと響き渡る
足のステップを2回、リズム良く鳴り響く
顔の横でクラップを1回、騎士王も同じように手を鳴らす
前方へと大きな円を描き、腰の横でクラップを2回鳴らす。
地獄の町には似合わないような軽快なステップ。
頭上に円を描くようにターン
最後に、頭上にクラップを1回、高らかに鳴らす
【ゴジュウウルフ!】
【キングオージャー!】
お互いが赤き鎧に身を包むと同時、舞台は洞窟から2人きりのリングへと変わる。
【いざ掴め!ナンバーワーン!】
クワガタオージャーは、空へと剣を掲げる。
クワガタオージャーのリング外に立つのは背を向け、泥と血に塗れた5騎のサーヴァント。
その内の1人、鷹の目を持つ男が
背を向けつつも目を騎士王へと向けていた。
「邪悪の騎士王、アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕」
「この身が闇に堕ちようと
我が身に残りしたった一つの願いを叶える為ならば
全ての英雄を殺し、頂点へと立って見せよう」
英霊の命とも言える真名を告げ、聖剣の切先を向ければ
ゴジュウウルフもまた、指を掲げる。
「はぐれ一匹、藤丸立香!」
「例え時を越えようと、見つけてみせるぜ俺の願い!
一匹狼を慕った後輩の為にも……
なってやるよ、ナンバーワン!」
ゴジュウウルフのリング外に立つのは応援団とそれにギョッとしている所長
そしてゴジュウウルフを見つめるクー・フーリンに未だに眠り続ける後輩。
しかして薄く目を開いた後輩が、先輩を見ていた。
【レディー……】
【GO!】
「アオーン!!」
狼が遠吠えを上げると同時
最後の決戦が、幕を開けた