結局のところ、彼奴を魔女にしたのは俺だ。
国や家族を裏切った事じゃない。
国を追われ、恋の呪いが解けたってのに付いてきた。
長い放浪の末に辿り着いた国にて
最悪の決断をした。
俺は、メディアを捨てたのだ。
アイツとの間には子供も居たのに。
そこまでして叶えたい夢があったのか。
或いは他に考えがあったのか。
いずれにせよ、彼奴を裏切った事に変わりはなく。
国を、王を、花嫁を燃やし尽くされて
俺は──本当に、彼奴を裏切りの魔女にしてしまったのだ。
全てを失った俺の結末は、言うまでもない。
そんなつもりはなかった
そうさせるつもりも、そうするつもりもなかった。
そんな過ちだらけの人生で
だからこそ次があればと望んだ。
そうだ──それが、俺の願いだった。
次はちゃんとやる。
次はもっと上手く──大切にやる。
「イアソン様!」
しかし結果はこのザマだ。
ただの醜い化け物になって、英雄でも何でもない人間に討たれる。
──終わりか、これで。
……ああ、畜生!
俺らしくないんだ、そもそも。
ヘラクレスに、変な事を言ってしまって
不相応な力で、振るいもしない剣を振り回して
──メディアを、また裏切らせようとしてる。
眼前に立つ、赤き獅子の星座を背負う男。
宇宙の救世主。
お前に俺は認められないだろう。
だかな。
──恐らくこの英霊生二度とない、血迷った事だがな。
魔女の為に、俺は剣を取ろう。
「……アルゴノーツ、今こそ出陣の時、だ……!」
よく分からん巨大ロボに開けられた風穴が酷く痛む。
なんで生きてるんだ、と自重する。
魔神柱の醜い肉が──人間となる。
元々魂が捻じ曲がってるんだ、身体が捻じ曲がっててもさして変わりはしない。
俺は限界をどう考えても上回った。
──今こそ、星々を輝かせる時だ。
俺はどうしようもないやつだがな
彼奴等──アルゴノーツを率いた事は、紛れも無い誇りなんだ。
【キュウレンジャー!】
メディアの指輪が満点の星空へと飛び出して、イアソンの身体へと収まる。
星座は輝き、見果てぬ宇宙を切り拓く!!
「最期の航海に付き合え!!
星が煌めき、イアソンの船へと落ちる。
藤丸達と交戦していた影もイアソンの元へと戻り、総勢8人の英雄が集う。
たった8名。されど8人。
こんな船長に従う、船員が居てくれた。
「我等は導きの星、最後までお前を導こう」
「兄様、こう見えてかなり喜んでいるんですよ?」
双子の星々の影が、双剣を構えて船へと立つ。
「ハッ、随分と愉快な事になってんな!」
その身に怒りを秘めた戦士の影が、槍を構えて並び立つ。
「その身体、非常に気になる。事が事ではなければ解剖したかったが」
医神の影が、肩をすくめつつ影の蛇を呼ぶ。
「──ええ、我等は船長の号令に従いましょう」
因果応報の英雄が、棍棒を携え構えを取る。
「なんで私まで呼ばれたんだ。……まあ、アルゴノーツでもあるし仕方ないか」
獣の耳と尾を持つ狩人が、弓矢をつがえる。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎──!!」
狂気に犯されて尚誇りを捨てぬ大英雄が、吠える。
ああ、何奴此奴も何を言ってるかまるで分からない!
まあ影だから当然だ、だがまあ──言いたい事は伝わる。
「──シャイニングナイフ!スイートケーク!
テガソードとやらに対抗しろ!!」
ほう、と非常に興味深い様子を見せていたノーワンワールドの策士にも命令を飛ばす。
元々働いてなかったんだ、これくらいはして貰わねばなるまい
「──ふ、了解さ、キャプテン!」
「まあ何やかんや船旅も楽しかったし〜?」
海へと飛び出せば、シャイニングナイフとスイートケークはみるみると巨大化をし、テガソードと同格程まで大きくなる。
敵は人理を背負う英雄。
此方はもうどうやっても負けるとしか思えないし、その方が正しいのだが。
それでも俺は──願いを、追い求めたい!!
「イアソン、様──」
俺を刺した魔女が目を見開いて此方を見る。
「今の俺は心が広い、何故ならばこの海の王になるからな!
──だから、許してやる。
行くぞメディア」
魔女の目から溢れる液体を見ずに、シシレッドへとなった俺は剣を敵船へと向ける。
船が──海から、宙へと舞い上がる。
敵船も此方と同じようなセンタイリングを持っているし、どーせ追いかけてくるであろう。
最終決戦だ。
俺らしくない
「アルゴノーツ……出撃!!」
船長と共に、船員は敵船へと向けて駆け出した。