復讐の夜~マージ・マジ・マジーロ~
魔法、それは邪なる力
魔法、それは人々へ向ける刃
魔法、そしてそれは復讐の証
溢れる怨念を、魔法に変える。
1431年6月2日
フランス、オルレアンにて
1人の赤き戦士が、言葉を紡ぐ
「告げる」
「汝の身は我が元に」「我が命運は汝の剣に」
「聖杯の寄りべに従い、この意この理に従うなら答えよ」
「誓いを此処に」
赤き外套が、風に乗って揺れる
銀色の右手が、光を反射して輝く。
「我は常世全ての悪を敷く者」
「──されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし」
「汝狂乱の檻に囚われし者」「我はその鎖を手繰る者」
「ジルマ・マジカ・マジーロ・ジジル」
それは英霊を召喚する為の魔法陣
しかして、その魔法陣には本来描かれぬ筈の5つのエレメントが刻まれていた。
それぞれが紫に光り輝けば、雷が爆ぜるように魔法陣から溢れ出す。
幾重にも重ねたローブと貴金属に身を包み、眼を広く剝く蛙顔をした不気味な巨漢が無表情でその光景を見つめていた。
「汝三大の言霊を纏う七天」
「抑止の輪より来たれ」
「天秤の守り手よ──!!」
光が満ち溢れ、魔法陣が爆ぜる。
光が収まれば、魔法使いの元に5騎の英霊達が跪いていた。
誰も彼もが狂乱へと目を曇らせ、しかして英雄足る力を持っている。
赤い戦士……魔法使いのマジレッドは満足そうに笑い
「よく来ました、我が
私が貴方達のマスターです」
と告げれば巨漢……"ジル"に対して
「さ、彼を連れて来て頂戴、ジル」
「畏まりました」
ジルは一礼をすれば、ゆっくりと歩み出し
1人の男を引き摺り出す
豪華な衣装を纏った男は、マジレッドの前へと投げ捨てられる
「な、なんだお前は!!」
男は尻餅を付いて後退りつつも、赤き魔法使いを指差す
赤き魔法使いの装甲が光となって散り、彼女の元の姿を露呈させれば
男は、声を失ってしまう
「ば、バカな……お前は3日前に」
ドスリ。
銀色のテガソードが、相手の肩へと突き刺さる。
銀は赤へと染まっていく
男は悲鳴を上げようとしたが、その前に少女に顎を掴まれてしまう
「いけません……いけませんわ、ピエール・コーション司教。
現実を見つめなさって?」
鋼鉄の、真っ黒な槍が地面から突如生えれば
司教の四肢を突き刺し、完全に固定してしまう
「此処に、居るのですよ私は」
「3日前に貴方が火にかけた、私が」
司教が助けて、とみっともなく命乞いをする前に
黒き少女はテガソードを引き抜き、司教の口へと突き刺せば
──魔法を振るう。
【マジレンジャー!】
「マージ・ゴル・マジカ」
炎の竜巻が、司教の体内から巻き上がり
地獄のラッパのような悲鳴が辺りへと響き渡る
「ダメですわ、命乞いをしようとするなんて。
私を火炙りにした貴方が、まさか同じ結末を迎えないと思っていたのかしら?」
「──私、悲しくて哀しくて──笑ってしまいそう」
血は乾燥し、パラパラと砕け散る
テガソードを振るって血を払い、
ある種光悦とした、狂気的な笑みを浮かべて司教を見続ける
「私が聖なる炎で焼かれたのなら、貴方は地獄の炎で焼かれると良いわ?」
その言葉に司教がありったけの怨嗟を込めた声で、眼前の少女に叫ぶ
「まじょ……!魔女、めぇ……!」
「ジャンヌ・ダルクゥゥゥゥゥ!!!」
炭となった四肢を動かし、拘束から抜け出した司教は腕をジャンヌへと伸ばしたが
「ジルマ・マジーロ」
鉄から油へと変わった槍によって炎の勢いは更に増し、そのまま司教は焼き尽くされた。
「──あぁ、楽しみすぎたわね。まだ先は長いと言うのに……」
ふふ、と先程の司教を思い出したのか楽しそうに笑いつつも
自身の召喚に応えた英霊達を見据える。
「改めまして……貴方達のマスター、
黒き旗を地面へと突き刺せば、紋章は広がる。
「私が下す命令はただ一つ」
「この国を……フランスという間違いを一掃します」
「刈り取るような蹂躙を!」「一切の区別なき殺戮を!」
「どんな英雄であろうとも、壊れた
「人類に存在価値はありません。故に、一片たりとも生存は許しません」
そう言い放てば、ジルは感極まったように涙を溢れさせる
「おぉ……!帰ってきた!私の、光が!!」
「貴女は本当に、蘇ったのですね……!」
「新たな
腕で飛び出している目から溢れる涙を拭うが、それでも止めどなく涙は溢れ続ける。
「人々に担ぎ上げられ」
「人々の旗にされ」
「人々に利用され」
「人々に見捨てられた」
「──貴女が!!」
ジルは神の啓示を受けた司教のように、高らかに両腕を上げる
「だからこそ、正しいのだ!!」
「この地上の誰もが!何もが!」
「貴女のその本心を裁く事など出来はしない!!」
ふふ、とジャンヌは微笑めば
竜の紋章を掲げて歩き出す
災禍の象徴たる邪竜達は空へと舞い上がり
この世界を焼き尽くさんと、竜の魔女は笑い続ける
彼女は、宣言した
「さあ、真の百年戦争──邪竜百年戦争を始めましょう?」