藤丸立香は金色のテガソードを片手に嵌めれば、改めて自分の服装を見る
あれから普通の服だとまあボロボロになるので、カルデアの戦闘服に着替えたのだが……凄い格好である、良く言えば未来的、悪く言えば通報されそうなピッチリとしたスーツだ。
ぐるぐると肩を回した後、ゴジュウウルフの指輪を指へと嵌めれば
自室から外に出ると同時にマシュに出会う
「おはよう、マシュ」
「おはようございます、先輩」
「本日より人類の存亡を懸けた過去への旅、聖杯探索の始まりです」
「行きましょう、先輩」
マシュが管制室に歩き出せば、藤丸もその後に続く
体調は良好、二つの指輪も問題なく扱えた。
管制室の扉が開けば、ロマンと杖を持った女性が話し込んでいるのが目に入る
「向かうは第一の特異点、西暦1431年百年戦争の舞台"フランス"です」
カルデアスタッフ達の努力によって特定された時代と場所。
マシュが改めてそれを伝えれば、ロマンがくるりと此方を向く
「や、2人ともサイズはぴったりで何よりだ」
「そのレイシフトスーツ、良く似合ってるよ!」
にっこりとした笑みを浮かべれば
藤丸が自身のスーツを引っ張りつつ
「これ、本当に着なきゃダメだったのか?
俺の場合ゴジュウウルフの装甲があるし……」
「大丈夫だよ、レイシフト先では元の服装に戻っているし」
「それに物理的な問題じゃなくて、レイシフトの安全性を高める為に必要な事なんだ」
このスーツにそんな意味があるのか……?と内心首を傾げつつ
「冬木には行けましたよ?」
と、自らが特に何の準備も無くレイシフトした時のことを話せば
「あれが成功したのは本当に奇跡みたいなものだよ……
──っと、丁度良い。カレを紹介しておこう」
と苦笑しつつ、ロマンは杖を持った女性へと手を向ける
女性は絵に描いたような微笑みを浮かべていた。
「藤丸君、マシュ。
カルデア技術顧問のレオナルド氏だ」
何やら甘い匂いがする……と、表現するとえらく犯罪臭がするが、それでも実際に鼻が反応しているのだから仕方ない。何やら指輪を手に入れてから鼻が良くなった気がする。
美人な彼女を見れば、マシュが驚いたかのようにレオナルドをじーっと見つめる
「先輩!この方サーヴァントです!」
「……マジ?」
「はい、正解♪」
ふふー、とレオナルドは何処か嬉しそうにメガネを取り出し、すちゃっと掛ければ
「カルデア技術局"特別"名誉顧問、レオナルドとは仮の姿」
「私こそルネサンスに名高い万能の発明家、レオナルド・ダ・ヴィンチその人だとも!」
レオナルドの言葉に、藤丸は数秒フリーズする。
流石に知っている、何らかの本で見た事がある
……が、自画像はどう考えてもお爺ちゃんの物であり
間違ってもこんな美人であるとは考えられない
「……はぁ!?!?」
「うんうん、良い反応だ♪」
思わず素っ頓狂な声を藤丸があげれば、それだよそれと言わんばかりにレオナルドはこくこく頷く
「ダ・ヴィンチって男じゃねえのか!?
ほら、なんか……こう、絵描いてる奴!」
「君、歴史の授業とか寝ちゃうタイプだろ」
余りにも浅い印象にレオナルドはやれやれと肩をすくめれば
「ま、それはともかく男だの女だのは重要じゃない。
流石に私の描いたモナリザは知ってるだろう?」
「あ、まあ一応……」
絵描いてる奴、と言う印象もモナリザが記憶にあったからだ。
藤丸が一つ頷けば、レオナルドは眼鏡を外して服装を変えつつ言葉を続ける
「彼女は私にとっての理想の美だ」
「そして私は美を追求した」
うへ〜、と言わんばかりの苦笑を浮かべたロマンが、レオナルドの肩を叩きつつ藤丸に告げる
「そう、藤丸君。カレは──」
「モナ・リザが好きすぎるあまり自らをモナ・リザとした生粋の変態なんだ!」
「 」
藤丸は告げられた内容を必死に咀嚼する。
自分の描いたモナ・リザが好きで?
おそらく生前は男なのに自らの肉体を弄ってモナ・リザに性転換した?
────良し
「うっし、じゃあレイシフト行きますか」
「うん、思考のシャットアウトは正しいと思うよ」
藤丸に同情するようにロマンは何度も頷いていた
「今回、カレには直接コフェインの調整に入って貰っている。
なのでここからはカレの指示を聞いてくれ!」
ロマンはそう言えばスタッフ達が集まってる場所へと去って行き
レオナルドは早速レイシフトの開始準備を行おうとしたが
「じゃ、そう言う事だし早速準備を──」
「ちょーっと待ったぁ!」
一冊の本を抱えた男が、自動ドアから勢い良く飛び出して来る。
「ま、間に合ったわ……!
文書解析は空き時間にするもんじゃあらへんわ……」
ぜぇ、ぜぇと肩で息をしていたが
数秒掛けてゆっくりと深呼吸をし、帽子を被り直せば関西弁の男はぽかーんとしているマシュと藤丸に笑って見せる
「取り敢えず自己紹介からやな!」
「俺は往歳巡、戦隊考古学者をやっとるもんや!
よろしく頼むで、ゴジュウジャー!」
人当たりの良い……関西人らしい、と言える笑みを浮かべれば、藤丸に向けて手を差し出す
藤丸は一先ず握手をしつつも
「ゴジュウジャー?」
と首を傾げる、確か自身の名はゴジュウウルフだったが……
「──せやな、先ず其処からや。
ダ・ヴィンチちゃん。すまんけど最低限の知識だけは教えさせてくれや」
「……全く、終わったら呼んでおくれよ〜」
手を合わせつつ、巡がダ・ヴィンチちゃんへと謝れば
やれやれ、とダ・ヴィンチちゃんはロマン達の元へと歩き去った
巡は何処からか持ってきたホワイトボードと黒ペンを取り出せば
「すまんな、レイシフト前に最低限のスーパー戦隊の知識について教えさせてくれや!」
藤丸はえぇ……と言いたげな視線を向けたが
いつの間にやらマシュが机と椅子を用意していたので大人しく座っておく。
「ほんまは色々話したいんやけど、それはレイシフトしてひと段落着いてからやな。
最低限の事だけ伝えておくと……先ず、ゴジュウジャーは5人揃ってゴジュウジャーや。
名前にゴジュウ〇〇が着くのが特徴……とこの本にも記されてある。
最も、追加戦士はその限りやあらへんかもしれへんが」
ホワイトボードへナンバーワン戦隊ゴジュウジャーと書き記せば
赤、青、黄、緑、黒と色を変えて書き込んで行く
「本来なら、指輪に導かれて出会ったりするかもしれへんけど
いかんせん状況が状況や、最悪ゴジュウジャーは揃わへん可能性もある。
ほんま悲しいわ……」
事態は人類滅亡にまで及んでおり
カルデア外に出れない以上、他の4人と会える可能性は先ず無い、と巡は断言する。
「スーパー戦隊については……指輪の戦士と出会ったやろ?」
「アレらを自分はユニバース戦士と呼称してる」
藤丸の脳裏に浮かび上がるのは、所長のゼンカイザーとアルトリアのクワガタオージャーの姿。
あれがユニバース戦士か、と一つ頷く
「そのユニバース戦士達の力の元となった人物……言わばオリジナルが、スーパー戦隊や」
「スーパー戦隊の詳細は後でな、語ると一週間は拘束してまうし……」
出来ればそのまま語らないで欲しい、と藤丸は言いかけたがギリ飲み込んだ
「こっからが本題な、ゴジュウジャーには他のユニバース戦士には無い特殊な力がある。
指輪の恩恵とはまた別枠や、そーいや自分何か変化あったりせえへん?」
「……言われてみれば、鼻が良くなったような?」
「それが指輪の恩恵やな、たぶんな」
嗅覚の発達が指輪の恩恵……らしい。
戦闘には使えないだろうし、何に使えと言うのだろうか……良くわからないがまあ貰えるだけ損はしないだろうと割り切っておく
「あかん話逸れるわ、もう言うが……」
「ゴジュウジャーは"人神一体"っちゅうテガソードと一つになれる力がある」
「スーパー戦隊が扱う巨大戦力……"巨大ロボ"を扱えるっちゅうわけやな、今呼んだら普通にカルデア崩壊するから呼ぶなよ?フリちゃうからな?」
へえ……と金色のテガソードを見つめていれば、何を勘違いしたのか巡は多少慌てて静止をかける
流石に巨大ロボをカルデアで呼ぶ気はないのだが……まあ良いか、と割り切った。
「とりまヤバい敵に出会ったり囲まれたらしたらテガソードを呼ぶとええ、巨大ロボなら大抵の敵なんてワンパンやで!」
何とは言えないがそれってセオリーから外れてね?とも思ったが
まあ此方は人類を救わねばならないし、セオリー云々言ってる場合じゃないか……と納得した
「よーしまだまだ語りたいが……バトンタッチや、ダ・ヴィンチちゃん!」
「お、今回は短いね!巡は話すと長いから正直1時間は覚悟してたよ」
「そ、そんな信用無いんか……」
若干肩を落として巡がダ・ヴィンチちゃんと入れ替わるように立ち去れば
「じゃ、始めようか2人とも!」
ダ・ヴィンチちゃんの声に
椅子と机とホワイトボードを片付けたマシュと、いつテガソードを呼ぼうか考え始めた藤丸が頷いた。
数分経てば、2人はコフィンの中へと入っていた。
中は液体で満たされているが、不思議と呼吸は出来る。
《どうだい?
ふむ、と藤丸はテガソードで傷付けないようにコフィン内を見渡せば
「狭いっすね」
と通信越しにダ・ヴィンチちゃんへと話しかける
あはは、とダ・ヴィンチちゃんは笑えば
ふと顔を引き締め
《……藤丸君、此処からは君が中心となる物語だ。》
《英雄ではなく、ただの人間として星の行く末を定める戦いが、君に与えられた役割だ。》
《スーパー戦隊と言う力を持っていても、それは変わらない。》
「──それってどう言う?」
《キミの判断が、我々を救うと言う事さ!》
《まぁ逆も然りだけど。》
ダ・ヴィンチちゃんが何故この話をしたのか。
何となくだが、理解した気がする。
藤丸は、黄金のテガソードを握り締めた。
「藤丸立香、マシュ・キリエライト。両者のコフィンへの入棺を確認しました」
淡い桃と水色が混ざった髪色の女性がそうロマンへと話せば
ロマンは意を決したようにスタッフ全体へと話す
「よし、それじゃあ皆んな……始めようか」
スタッフ全員が機敏に動き出す。
巡は邪魔にならないように、遠くの床へと座り込んで藤丸達の様子を見守りつつ
書きかけだったユニバース戦士のゼンカイザーとキングオージャーの記録を書き進めた
《アンサモン・プログラムスタート》
《第1
ダ・ヴィンチちゃんは、コフィンに入る際に大まかな概要を藤丸へと伝えてある
まあ、魔術を知らず、頭も天才よりは劣る藤丸からしたらほぼ理解出来なかったのだが…
《全パラメーターの定義を完了しました。》
《術式起動》
《形成完了しました──》
「第2
霊子変換、開始します」
スタッフの1人がキーボードを鳴らし、電子画面を見つつも処理を始める
カルデアの膨大な魔力と電力を消費し、観測を続ける
《補正式、安定状態へ移行》
「──第3
レオナルド!カルデアスは!」
ロマンが忙しなく画面を確認しつつ、天才へと尋ねれば
「落ち着きなよ、全てまるっとお見通し」
「我が叡智、我が万能。遮る物は無しさ!」
眼鏡を掛けたダ・ヴィンチちゃんがくいっと眼鏡を押し上げた
「全
アーキマン司令官代理、指示を!」
ロマンは汗を拭うように髪をかきあげる
全ては、此処からだ。
「
ロマンが号令を掛ければ、装置は稼働し、光は満ち溢れる
全ては計算通りに!
此処に
「グランドオーダー、実証を開始する!」
最初の聖杯探索の幕が開けた
巡教授、現状生死不明なので生きてて欲しい