Fate/ No.1order!   作:飲み屋蹴り注ぐ

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王鎧武装


聖女

フランス、ロレーヌ地方ヴォークルールの砦

避難して来た民達が居る中、藤丸立香とマシュは情報収集へと励んでいた

当初はフランス語が話せない日本人とか怪しすぎないか?と思ったが

そこら辺はカルデアが上手くフォローしてるらしく、翻訳機能と魔術によるカモフラージュでなんとかなってるらしい、科学と魔術は凄い。

ロマンが言うには、聖杯によって歪められた……1431年に居なかった人物、起こり得なかった事象を探す必要があると言う。

半端崩壊した砦、人々が疲れ切ったように項垂れているが

それでもある程度話を聞く事は出来た。

一旦ロマンに話そうと通信を開こうとすれば──

 

《や、情報収集の成果はどうだい?》

 

と女性の声が耳に入る

コフィンに入る前に話をした……

 

「レオナルドさんか」

 

《私の事はダ・ヴィンチちゃんと呼びなさい。》

 

《彼は今休憩中だ、何か分かった事は?》

 

通信越しに人差し指を立て、自身の呼び方を訂正させつつ

何か成果が無いかをダ・ヴィンチちゃんは尋ねる

藤丸とマシュは顔を合わせれば、マシュが口を開く

 

「あまりにもおかしな点が一つ、死亡されたとされる人物が蘇ったとの事です」

 

《ほう、その人物の名前は分かるかい?》

 

「はい、その人物の名は──ジャンヌ・ダルク」

 

その名は、藤丸でさえ知っていた。

かの聖女……神の声を聞いたとされる人物。

最終的に、火刑に掛けられてしまった悲劇の少女。

周囲の人々に不審に見られぬように、ゆっくりと歩きつつマシュは報告を続ける

 

「砦の方々のお話によればジャンヌ・ダルクの襲撃によりイングランドは既にフランスから撤退、フランスも国王であるシャルル7世が殺され国家機能は麻痺。

オルレアンを占拠したジャンヌ・ダルクは其処を拠点とし各地を襲撃。

各地で抵抗はあるものの、一方的な虐殺に近いと──」

 

藤丸は思わず溜め息を吐いてしまう。どうやら歴史は大規模に捻じ曲げられているらしい。国王が死んだらそう易々とフランスも復興は出来ないだろうし

何よりジャンヌ・ダルクによって滅ぼされかねない

まあ良い事があるとすれば、ドン・レミ村の人々はほぼ全員此処に避難出来ていた事だろう。

 

《それで情報はお終いかな?》

 

「ああ、いやまだ有りますね」

 

物思いに耽るのは後にしよう、と今度はマシュの代わりに藤丸が口を開く

 

「そのジャンヌ・ダルクですけど……どうにも竜を従えてるみたいです」

 

《……其奴は酷い情報だ。》

 

まあ竜と言うファンタジーにしか出ないような存在を従えてるのだ、酷いかもしれないが、サーヴァントよりはマシでは無いか?と若干首を傾げれば

 

《竜に始まり、多くの伝説や神話に登場する生物を幻想種と言うんだけれど

竜と言う種はその中でも頂点に立ち、有名な奴だとサーヴァントさえ上回ってたりする……けれど、本題は其処じゃあない》

 

《本来の15世紀のフランスには、竜なんて存在しないんだよ》

 

其処で藤丸も漸く、何が酷い情報なのかを理解した。

存在しない筈の物が、存在している

そしてそれが成せるのは──聖杯のみ

 

《あぁ、ジャンヌ・ダルクは先ず間違いなく聖杯を持っていると見て間違いないだろうね。》

 

藤丸が理解した様子を察したのか、ダ・ヴィンチちゃんはこくりと頷いて見せる

マシュと藤丸はお互いに頷き合い

 

「では先輩、早速移動を」

 

と盾を背負う

そうだ、と藤丸はジャンヌ・ダルク関連では無いが

これもまた少しおかしな情報を伝えようとする

 

「あ、そうだダ・ヴィンチちゃん。伝えておきたい事が」

 

《ん?まだ情報があるのかい?》

 

「いや、たぶんジャンヌ・ダルクとは関係ねえと思うんだけど……」

 

何せ怯えた様子で話していたジャンヌ関連とは違い、人々……主に女性陣が、嬉々として伝えてきた情報である。

故に悪人では無いと思うが、伝えておいて損はないだろう

 

「ジャンヌ・ダルクと敵対してる人が居るみたいなんですよ、助けられた人も多いみたいで──」

 

《ほほう、どんな人物か分かるかい?》

 

「はい、煌めく宝石のような赤い戦士と、青い指輪を嵌めた……えっと、()()()() が──」

 

《レオナルド技術顧問!!》

 

藤丸が報告をしようとすれば、通信越しに管制室の声がそれを遮る

 

《だからダ・ヴィンチちゃんと──》

 

やれやれ、とダ・ヴィンチちゃんは自身を呼んだスタッフを見たが

スタッフはお構いなしに報告をする

 

《1km先から大型の生体反応多数!》

 

藤丸とマシュがその通信を聞けば、即座にテガソードと盾を構え空を見上げる

そして、空を支配するように飛ぶソレが目に入った

 

《──ドラゴンです!!》

 

カンカンカン、とけたましく鐘が鳴り響く。

どうやら兵士たちもその存在に気付いたらしく、慌ただしく武装を始めていた

 

飛竜(ワイバーン)が出たぞぉぉぉ!!!」

 

「兵士と男は武器を!女子供は焼かれない内に城内へ避難を!!」

 

そう必死に叫んでいた兵士は、ワイバーンから放たれる火球に飲み込まれ──警告を発する事は2度と出来なくなった。

 

《話の途中だがワイバーンだ!》

 

藤丸がその光景を見据え、ダ・ヴィンチちゃんから通信が飛べば

 

「エンゲージ!」

 

【クラップユアハンズ!!】

 

即座にテガソードに指輪を嵌め、手を叩こうとし

マシュもまた動こうとするが

 

《ストップだ!》

 

とまさかの静止に、2人は動きを止めてしまう。

 

《残念だが、戦闘を行わずに速やかに避難しなさい。必要な情報は入手出来たんだ。》

 

余りにも非情な判断に、藤丸は咄嗟に反論しようとする

しかしてそれを遮るように、ダ・ヴィンチちゃんは言葉を続ける

 

《良いかい?特異点というのは他の時代から隔離されている。

そして、修復すれば全ては元に戻るんだ。死んだ人間でもね。

敢えて、断言しよう。

その場で死んではならないのは、君とマシュだけだ。》

 

合理的な判断だ。

寧ろ、そうでなくてはならないといえよう。

助けなくても良い人を助けて、死んではならない自分達が死んだらそれこそ本末転倒だ。

 

《キミの判断が私達を救う。その言葉の意味をもう一度考えてくれ》

 

人々がワイバーンから逃げ惑う。

助けようと助けなくても、特異点を修復すれば生き返る人々

そんな人々に対して、藤丸は

 

【クラップユアハンズ!!】

 

手を、強く叩く。

軽快な音楽が辺りへと響く

顔の横でクラップを2回、砦から空へと響き渡る

足のステップを2回、リズム良く鳴り響く

顔の横でクラップを1回、ワイバーン達が動きを止め、音の中心を見据える

前方へと大きな円を描き、腰の横でクラップを2回鳴らす。

軽快なステップを踏み続ける、ダ・ヴィンチちゃんの呆れた声が通信越しに聞こえた

頭上に円を描くようにターン

最後に、頭上にクラップを1回、高らかに鳴らす

 

【ゴジュウウルフ!】

 

「アオーン!!」

 

狼の遠吠えが、辺り一帯へと響き渡る

 

《──キミさあ、自分の命の重さ分かってる?》

 

やれやれ、と頬杖を突いたダ・ヴィンチちゃんが声を掛けるが

 

「俺だって死にたくはねぇよ」

 

「霊子筐体それでも、目の前で死なせてたまるか!」

 

「行くぞ!マシュ!」

 

「はい、先輩!」

 

一斉に向かってくるワイバーンに対して、マシュが盾を振るい

テガソードで藤丸がワイバーンに斬撃を叩き込む

 

《全く……オペ子ちゃん、藤丸くん周辺の魔力反応に──》

 

《もうやってます。》

 

《はっや》

 

《私は元医療スタッフなので。マシュが信じる子なら私も信じてます。

死なせませんよ。》

 

スタッフが淡々と魔力反応の測定を続けてる様を見れば

英雄は呆れたように呟いた

 

《全く、此処はお人好しばっかだ。》

 

マシュが盾を全力で振るい、ワイバーンに傷を付けるが、それでも致命傷には至らない。

炎を放たせぬように、蹴りで顎を砕いて漸く墜落していった

硬い、冬木の骸骨とは比べ物にならない強度だ。

わたしと先輩2人では、あの群れ全てに対応しきれない

せめてもう一騎、英霊が居れば──と歯噛みつつも

マシュは新たなワイバーンへと盾を振るう

 

「此方だ!」

 

子供を食らわんとしたワイバーンに飛び蹴りを合わせ、強引にヘイトを買いつつテガソードを振るう。

しかし、やはり致命傷には至らない。

そも飛べない自分達にとっては、ワイバーンを捉えるのさえ一苦労だ。

其処で、ふと閃いたように藤丸は一つの指輪を取り出す

 

「使わせて貰うぜ!」

 

【センタイリング!】

 

激戦を制して手に入れた、キングオージャーのセンタイリング。

それをテガソードへと嵌めて、手を軽快に叩きつつもワイバーンの攻撃を回避

 

【キングオージャー!】

 

赤き宝石がゴジュウウルフを包み、クワガタがワイバーンを蹴散らしつつその宝石へと飛び込む

現れるは、ゴジュウウルフの胸部装甲を身に付けたクワガタオージャー。

 

「行くぜ!」

 

マントを伸ばし、滞空していたワイバーンを掴めば

そのまま自らを引っ張り上げるように、空へと跳躍

ワイバーンの背へと降り立てば、暴れ出すワイバーンの翼を切断するように斬撃を振るい

空へと落ちる前に次のワイバーンへとマントを伸ばし、再び背に乗って巧みにワイバーン達を地上へと落としていった。

そうして数分、減ってこそいるがワイバーンの群れは依然健在。

辟易とした様子でクワガタオージャーが一旦地面へと降り立てば

何やら喚いている兵士が居ることに気付く

 

「これは当然の報いだ!

俺達が聖女様を見捨てた所為だ!

あの方は竜の魔女となって、俺達を──この国を根絶やしにするつもりなんだぁぁ!!」

 

何なんだ彼奴、と思いつつも

藤丸は再び迫って来たワイバーンの対処へと追われてしまう

そんな時、1人の女性が喚いている兵士へと近づけば

 

「そこの兵士さん」

 

「あ"ぁ?」

 

バチン、と兵士に対して綺麗なビンタをお見舞いしてみせた

 

「どれ程あの子の事を知っているか分かりませんが、人の娘の事を好き勝手言わないで……!」

 

人の娘、藤丸が思わずその女性の事を見つめる

ダ・ヴィンチちゃん達もその人物について気付いたのか、まさか……と声を漏らす

 

「あの子は決して、こんな事をする人間じゃないわ!!」

 

「ふざ、ふざけるなよこのババア!」

 

激昂した兵士が刀を抜こうとしたが

その前に、マシュとクワガタオージャーの間をすり抜けるようにワイバーンが迫り

その首を、もぎ取ってしまった。

不味い!と藤丸は走り出そうとするが、他のワイバーンに阻まれてしまう。マシュもまた同様だ

 

「キ、きゃぁぁ!?」

 

女性が悲鳴を上げる。

そんな女性に、ワイバーンは牙を伸ばし

旗槍が、ワイバーンを貫く

その槍を持ちし人物は、上半身を布で覆っており顔を見る事は叶わない

しかして女性だけは、何かに気づいたようにその人物を見つめる

 

「あ、あなた……もしかして」

 

【キングオージャーフィニッシュ!】

 

マシュが盾を、藤丸がオージャーカリバーを取り出して必殺の斬撃を同時に振るう事で

ワイバーンの群れは爆発四散する。

藤丸が変身を解き、マシュと共に旗槍を持った人物の背後へと立つ

その人物は振り返れば

 

「着いて来てください」

 

と、足早に歩き出し

藤丸とマシュも慌ててその人物を追って走り出した

数分掛けて郊外まで歩けば、漸くその人物は歩みを止める。

一体何者なのか。

この人が居なければ、恐らく砦の人々を守り切る事は出来なかった。

しかしてマシュとゴジュウウルフでさえ一撃で葬らぬワイバーンを葬ってみせたことから、恐らくこの人は──

と、考えていたが。

 

「此処まで来れば、安全でしょう。

すみません、言うがまま着いて来て貰って──」

 

「故あってあの場で姿と真名を晒せませんでしたが、他の人が居ないこの場から大丈夫でしょう」

 

そう言えば、その人物──少女は身体を隠していた布を脱ぎ捨てる

輝くような金髪、全身を包む銀の鎧

 

「改めて自己紹介を。」

 

「サーヴァント、裁定者(ルーラー)、ジャンヌ・ダルクです」

 

ロマンが言っていた、聖杯を持っている人物!

マシュが盾を構え、藤丸が再び変身せんとするが──

 

「お待ち下さい!構えるのは当然ですが──話を、聞いてもらえないでしょうか……」

 

敵意がない事を示すように両手を挙げ、困ったような表情を浮かべる聖女。

マシュと藤丸は顔を見合わせ

敵意はない、と判断してそれぞれの武器を下ろした。

そして近くの木々へと腰を下ろし

話を聞いた、のだが──

 

「ジャンヌ・ダルクがもう1人?」

 

「恐らくは。そもそも私が現界したのが数時間前で、物理的に竜の魔女として行動するのは不可能ですし──そんな事をした記憶もありません」

 

と言えば、ジャンヌは少々自信なさげに言葉を付け足す

 

「──その、私の記憶が正しければ、ですが」

 

「……曖昧な言い方だな?」

 

《そりゃ彼女の霊基──存在が不安定やからやな。》

 

「巡?」

 

通信から聞こえる、スーパー戦隊について調べていた教授の声を聞けば、思わず彼の名前を呼んでしまう。

てっきりロマンが話しかけてくると思ったのだが──

 

《すまんな、光帯についての記録は無かったわ。

一応ジャンヌ・ダルクと関わりがあったスーパー戦隊、 太陽戦隊サンバルカンについて調べたけど、あんま意味なさげやったわ。》

 

あのジャンヌ・ダルクと関わりがあったスーパー戦隊が居たのか……と思ったが

肝心のジャンヌが首を傾げているので、あまり当てにならないかもしれない

何せ「やっぱあれ亡霊やしな……」と巡は呟いていたのだから。ジャンヌ・ダルクの亡霊って何だ。

 

《それよりダ・ヴィンチちゃんが意地悪な事言うてたんやろ?》

 

「ああいえ、正しい事を言ってたんで気にしてませんよ。」

 

巡が何やら申し訳なさそうに笑ったが

話を戻そか、と軽く手を叩く

 

《ジャンヌさん、貴女のステータスは軒並み低くなってるらしいねん。

本来持ってる知識や能力なんかも使えへんのやろ?》

 

と、スタッフが伝えてくれた情報をさも自分が見つけたかのようにしれっと伝える教授。無論悪意はない。

ジャンヌはその言葉に頷けば

 

「理由は分かりませんが、その通りです」

 

「お恥ずかしい話ですが、自らが英霊と言う自覚さえ薄く──例えるなら、英霊の新人のような気分です」

 

マシュがサーヴァントの新人、と言う言葉に若干反応する。

自身も英霊なりたてなので、親近感が湧いたのかもしれない

 

「ジャンヌさん、貴女はこれからどうするつもりなのですか?」

 

もう1人の自分が祖国を滅ぼさんとしている、と言う奇怪な状況

しかしてジャンヌは、はっきりと断言する

 

「再びオルレアンを解放し、竜の魔女(ジャンヌ・ダルク)を排除する。

啓示は無く、手段は見えず、ただの1人であろうとも──

目を背く事はしません、それだけは決まっています」

 

その、決意に満ち溢れた目を見れば

藤丸は立ち上がって、手を差し出す

 

「今度は、俺達の紹介を」

 

「藤丸立香、ゴジュウウルフ」

 

「マシュ・キリエライトと言います」

 

「新人のマスターとサーヴァントだ、宜しく頼むよ」

 

「話を聞いて信用して貰って……良ければ何だが俺達に──」

 

そう言って微笑む藤丸に対してジャンヌは微笑み返せば、その手を握る

 

「信用ならば、砦で共に闘った時から」

 

「此方こそ、宜しくお願いします。藤丸、マシュ」

 

「貴方達のお話を、聞かせてくれますか?」

 

こうして、藤丸とマシュは新たな仲間……オルレアンの乙女にして聖女、ジャンヌ・ダルクと出会った。




巡教授は割と出番あります。
そしてあのアイドルと煌めく戦士の出番も直ぐ其処に
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