ぱちぱちと焚き火が燃えている。
現在は深夜、藤丸とマシュは既に眠りへと着いており
管制室も最も静かな時間帯と言えよう
そんな中、ジャンヌ・ダルクは焚き火を見つめつつ、藤丸とマシュに話された事を反芻していた。
「カルデア……焼却された未来を取り戻す為に、遣わされた子供達……」
「私の悩みなど、小さな物でしたね……」
憂いた顔をしつつ、裾を握り締める。
私の悩み、それは──
竜の魔女とは何者なのか?
そもそも、私は本当にジャンヌ・ダルクなのか?
全ては、もう1人の自分へと会わねば分からない。
明日から行動を始める以上、睡眠を取っておこう。
自身は英霊の筈だが、何故か睡眠が必要となっている。
これも何らかの影響なのだろうか……と思いつつも
敵の気配が無いことを確認しつつ、布を羽織って目を閉じる
私を呼び止めてくれた、私をジャネットと呼んでくれた。
少し痩せてしまっていた、母さんの顔。
いつか、全てが解決したのならば
貴女に会いに行きたいです。
そうして私は眠りに落ちた。
そして、夢を見た。
魔法、それは聖なる力
魔法、それは未知への冒険
魔法、そしてそれは勇気の証
溢れる勇気を魔法に変えて戦う、家族の物語。
私の前に、誰かが立っている。
顔を見る事は出来ない
秘めたる勇気を持った人。
貴方は──
「良い朝ね」
目を開き、咄嗟に旗槍を構える。
私と良く似た声、しかして私の物ではない声。
辺りを見渡す、誰も居ない
何より響くような声なのに藤丸とマシュは眠ったままだ。
「行きましょう、皆さん」
「朝が苦手な人が居るけれど、構わないでしょう?」
「本物の吸血鬼ならば関係ないのですから、でしたっけ?
違う?まあ何にせよ」
何者かの声が、直接脳内に流れ込んで来ている?
しかして何故。
相手が意図した物とは思えない。
──しかして、そんな事を考える暇は無くなった
「殺すのならば、この旗がよく見える時刻で無ければ」
あまりにも不穏で殺意の籠ったその言葉に
心臓が、大きく跳ねた
《2人とも!悪いが起きてくれ!》
カルデアからロマンの通信が入れば、藤丸とマシュが慌てて飛び起きる
慌ただしい管制室から、警告が飛ぶ
《数キロ先で巨大な生命反応を確認した!》
《近くにはラ・シャリテと言う街がある!行くにしても退避にしても気を付けてくれ!》
ラ・シャリテ──確か、砦の人々が言っていた。
其処まで落ち延びれば、と言っていた街!
「ジャンヌ!」
咄嗟に声を掛けるが、頭を押さえて顔を真っ青にしている彼女に思わず
「大丈夫か?」
と気遣いの言葉を掛ける。
しかしてジャンヌは緩く頭を振り
「──大丈夫、です」
「それより何が……」
ジャンヌに事のあらましを手早く話せば、即座にラ・シャリテへと走り出す
藤丸はゴジュウウルフへと変身し、サーヴァントの全力でも置いてかれない程に走り抜けた。
また、ドラゴンが人を──!
藤丸はそう考えていたが、ジャンヌは一つの、最悪の可能性を考えていた
「間に合って……!お願い……!」
必死に走り続け、森を抜ければ──その異様な光景を目視する
あまりにも巨大な、竜。
ワイバーンが小動物か何かに見えてしまうような…怪物。
《口腔部に魔力反応──!》
竜の口から、黒き炎が溢れる。
狙いは、街。
ジャンヌは咄嗟に駆け出そうとするが
それは自殺行為と変わらない。マシュが咄嗟に止めに入る
「やめ──やめなさい!」
「やめて……」
無慈悲にも黒き火球は放たれて
そのまま、街ごと全ての人々を焼き払わんと迫り──
【放て!吠えろ!ブルー!!】
無数の巨大な銃撃により、火球は空中で爆ぜる。
凄まじい衝撃が辺りへと広がるが──
街は、無傷であった。
「なっ──」
藤丸はその光景に目を疑う。巡より聞かされてはいたが
「青い、テガソード……」
【テガソードブルー!】
テガソードの右腕にはライオン型の巨大なガトリングガンを身に付け、青き顔が日光に反射して煌めいていた。
巨大な竜と同等、或いはそれ以上の大きさを誇るテガソード。
それに対してワイバーンに乗った黒い少女は舌打ちをすれば
藤丸達の前へと降り立った。
「……ほんと、最悪よ。
折角の炎を、あんな訳の分からないのに消されてしまったのだもの」
「けれど、貴女を見れば少しは気が紛れるわ。
ねえ?哀れでちっぽけな……もう1人の私」
青きテガソードは、黄金の粒子へと還り
青き指輪と共に消失する。
「ジャンヌ・ダルクが本当にもう1人……!?」
黒と白と言う違いこそあれど、同一人物と言っても良い程に
ジャンヌ・ダルクの要望をしている黒きジャンヌ。
「何その新しい小さいの、悪い趣味ね──ジルの変わりなのかしら?」
マシュとゴジュウウルフ……藤丸を見れば、黒ジャンヌは思わず笑ってしまう。
そうして手を掲げ──
「なら私も紹介しないとね。」
「来なさい、私の
周囲に隕石が落ちたかのように、4つの衝撃が辺りへと広がる
3人が咄嗟に背中合わせになりつつも、マシュがその正体を報告する
「新たな敵性反応を察知!しかもこれは──」
《其処に居るのは全員サーヴァントだ!逃げろ!!
こんなの敵いっこない!》
「逃げろって言ったって──!」
ロマンが逃げろと警告を飛ばすが
自分達を囲うように、5つのサーヴァントが此方を睨んでいる。
全員が黒く染まっており、目に宿すのは──殺意。
レイピア、杭、拷問器具、杖、旗槍が此方へと向けられる
「もう1人の私も、小さな貴方も──笑い死んでしまいそうな程滑稽ね?」
「だから、その前に殺してあげる」
銀色のテガソードが嵌められた右手が、黒き炎へと包まれる
しかもテガソード持ちかよ──!藤丸は内心舌打ちをしたが
どうにかして戦闘を逃れる方法を思案する……が、何も思いつかない。
やるしかないのか、とテガソードを握り締める
そんな藤丸を
「ネズミが生き足掻いて──その小さな脳ミソで何を思いつくのかしら?」
と、黒ジャンヌが嘲笑うが
白ジャンヌは耐えきれない様子で尋ねる
「貴女は──本当に、私なのですか?」
私は、何故フランスを滅ぼそうとするのか理解出来ない。
そんな事を思いつくことさえ有り得ない
故に問う、黒きジャンヌは私なのか。
黒ジャンヌは心底呆れたように溜め息を吐けば
「こんなに鈍いとは思いませんでした」
「この国は私に唾を吐いて裏切った。故に滅ぼします」
「子供でも分かるでしょう?やられたらやり返す」
「私は、人類を救済します」
「人類種と言う悪しき種を根元から刈り取り、フランスを沈黙する死者の国へと作り変える」
「そんな事さえ、分からない貴女こそ私では無いのです」
「その残り滓のような身体が、何よりの証拠でなくって?」
黒ジャンヌは白ジャンヌを見れば嘲笑い、旗槍を構える
黒きサーヴァント達も、各々が構える。
「さ、問答は終わりです」
「──死になさい」
黒ジャンヌが一歩踏み出せば
「2人とも、来ます──!」
マシュが盾を、藤丸が金のテガソードを構える
全員が動き出そうとし──
「
光を乱反射して、煌めくガラスの馬車が空より姿を現す!
新たな敵?あまりにも眩く輝くそれに、全員が注目をする
「……マリー、何だい今掛け声」
「あら、こう言う時は名乗りを上げるものだと
「さあさ、行きますわよ、皆さん!」
ガラスの場所より溢れるは、重厚で濃厚で破壊的な歌声
黒きサーヴァント達が、その衝撃により弾き飛ばされる
衝撃波による物理的攻撃と歌声による魔術的な強制力!
黒ジャンヌは新手のサーヴァント達の攻撃だと理解する。
ガラスの馬車より姿を見せるは
銀のテガソードを身に付けた赤い王冠を被った少女
バイオリンを奏でる華奢な男
2本の角が生えたゴスロリの少女
その3人が音楽の発生源で有り
その間にガラスの馬に跨って、角を生やした着物の少女が
「逃げます、呆けてないで乗って下さい」
と藤丸達をガラスの馬へと乗せる
「逃がさないわよ──!」
黒ジャンヌがその様子を見て、黒き爆炎を放つも──
その時には既に、自らの従僕以外の姿は無かった。
黒きジャンヌは舌打ちをすれば
「──興醒めです、帰りますよ」
ワイバーンに乗ってその場を後にする。
街を焼き払ってやりたいが、またあの巨大なロボが邪魔をしてきたら面倒だ。
次は、万全の状態で焼き払う。
こうして、一つの街と多くの人々
そして、聖女の母は救われた。
場所は変わって、ラ・シャリテより南東のジュラ。
王冠を被った少女がのびのびと肩を伸ばせば
「──あの、貴方達は?」
と藤丸が尋ねる。
ガラスの馬車に乗せてもらって、先程助けて貰った事から味方と言うことは分かっているのだが──
「気付かないかい?サーヴァントだよ」
「ご覧の通り竜の魔女と敵対している。それより──」
と、華奢な男が言葉を続けようとしたが
王冠を被った少女により遮られる
「ノン、ダメよアマデウス。
自己紹介も無しにお話なんて失礼です」
と言えば、藤丸達に各々の真名とクラス名を告げる
ライダー、マリー・アントワネット
キャスター、ヴォルフガンク・アマデウス・モーツァルト
アイd……ランサー、エリザベート・バードリー
バーサーカー、清姫
各々が名乗れば
藤丸がマシュにこっそりと
「……説明頼めるか?」
「はい、では軽くですが」
と耳打ちすれば、マシュは嬉しそうにしつつもそれぞれの説明をする
悲劇の王妃
偉大な音楽家
血の伯爵夫人
怒りで竜へと変化した女性
後半2人の説明で、若干藤丸が引いたのは言うまでも無い。
そして今のうちに、とマリーを見れば
「あんたも指輪の戦士なのか?」
と尋ねる
マリーは微笑みつつも頷いて
「ええ、実際に見せた方が早いかしら?」
ふふ、と楽しそうにセンタイリングを取り出せば、銀のテガソードへとセット
【センタイリング!】
そのまま舞い踊るように、優雅に手を叩けば──
【キラメイジャー!】
キラキラと煌めく赤き宝石がマリーの身体を包み
煌めく小さな消防車が彼女の胸へと収まり、一つの宝石へと輝く
マリー……キラメイレッドは輝くような笑顔を浮かべて
「改めて、皆様宜しく頼むわね?」
と優雅に一礼をすれば
流石に煌めきすぎて目立つのか、そのまま変身を解除した。
《此方でも確認したよ、彼らは間違いなくサーヴァントだ。》
《しかし……こうなってくると不思議だな。》
管制室でも確認したのか、通信が入ってくる。
しかしてロマンは腕を組んで悩んでいた。
聖杯戦争にしてはサーヴァントが多すぎる、7騎なんてとっくに超えているのだ。
むむむ……と頭を悩ませていれば
アマデウスが手を挙げて発言する
「それについては僕らから仮説がある」
「そもそも、聖杯戦争において聖杯を手にするのは最後の勝者のみ
けれどもあの魔女は既に聖杯を手にしている。
矛盾も良いとこだが、逆に謎が解けた」
「僕達は聖杯によって、その矛盾を是正する為に聖杯自身に呼ばれたサーヴァントなんだよ」
《バカな──そんな事有り得ない》
と、ロマンが思わず反論をするが
やれやれ、とアマデウスか頭を掻き
「有り得るよ、その証拠として僕達がマスターと契約したのはほんの数日前。
しかも召喚されておらず、旅の途中でばったりと出会って契約したんだ。
僕達には単独行動のスキルが無いにも関わらず、かなり長い期間行動出来た、これが聖杯が僕達を呼んだ証明」
《……マスターと言う楔が無くても、存在していた事が証明か、確かに聖杯ならば可能……なのか?》
ロマンは頭を抱え、スタッフの1人に休憩中のダ・ヴィンチちゃんを呼びに行かせた
あの天才無しだとたぶん行き詰まる、とロマンは予測していた。
藤丸はそー言えばジャンヌもそんな状態だったな……とジャンヌを見たが
肝心のジャンヌは首を傾げるばかりであった。
「まあ良いよ、取り敢えず次は君達の事を──」
「アマデウス、マスターである僕を省くのは良くないんじゃないかな?」
「別に、来ないようだし先に話しておこうと思っただけさ」
正面に、人影が見える
藤丸達は咄嗟に武器を構えたが
──その男の、金色のテガソードを見て武器を下ろす
アマデウスとその男は親しげに話せば
マリーが彼へと手を向けつつ、笑顔で話す
「あの巨大ロボを見たでしょう?あれは彼が操縦していたの。
見つかったら不味い、と言う事から此処で合流する事になっていたの!」
「僕抜きで話を進めているのが聞こえてたから、内心焦ってたよ」
青い指輪を身に付けた手で髪をかきあげつつ
アイドルのように爽やかな笑顔を浮かべて見せる
「紹介するわ!彼が私達4人のマスター……」
「百の夜を君と共に。言わずと知れた百夜陸王!
僕と会った事、周りに自慢していいよ♪」
百夜陸王は慣れたように自己紹介をすれば
パチン、と女性を虜にするようなウインクをした
ジャンヌの呼び分けは、黒ジャンヌの正式名称が出るまで
黒ウォズ白ウォズと同じ呼び分けをします。