「成る程──ことはフランスだけでは無かったのね」
陸王と合流し、彼が来た経緯を説明した後
改めてカルデア側は自らの経緯を説明する。
マリーがこくりと頷けば
「人類史の焼却、改めて聞くと規模が大き過ぎるね」
予めテガソードに聞かされていたとは言え、改めて聞かされると途方もないスケールの出来事に陸王は苦笑してしまった。
「なら、ますます負けられないわね!」
マリーが一層張り切ったように手を握るが
《とは言え、戦力差が変わらないのが不味いんだよね……》
「ん?数の上じゃ負けてねえだろ」
相手は5騎、此方は藤丸と陸王含めれば7人。
寧ろ数では上回っている、とさえ言えるが──
「数だけはね」
やれやれ、とアマデウスが肩をすくめる
「君とマスターは先ず人間だ、幾ら何でも万全のサーヴァントと戦りあうのは難しい」
「その上で僕とマリーは戦闘向けじゃない、キラメイジャー……だっけ?
それ込みにしても相手は全員戦闘特化のサーヴァントだ」
「おまけで巨大ロボ級の竜と無数のワイバーンまで従えてると来た」
言われてみれば、王妃と音楽家が戦闘出来る事自体がおかしいとも言えよう。
そう考えるとやはり不利と言えてしまう、しかしどうするべきなのか……藤丸が頭を悩ませれば
「なら、仲間を探しましょう!」
ばっ、とマリーが手を挙げつつ笑顔で提案する。
仲間──?と藤丸が首を傾げるが、マシュが成る程と頷く
「マリーさん達が聖杯に呼ばれたのなら、他に聖杯に呼ばれたサーヴァントが居るのかもしれない」
「その方達と合流する事が出来たのなら、戦力差を覆す事が出来る……」
「そう言う事ですわ、マシュさん!
……それと、マリーさんってとっても素敵!!これからもそう呼んで下さる?」
「は、はい……!」
なんかキャピキャピしてるな……と藤丸は思ったが
まあ後輩が楽しそうなので良い事にする。
《とは言え、油断は出来ないよ藤丸君。》
ほっこりとマシュ達を見ていれば、ロマンから通信が飛んで来た
《竜の魔女だってその事は承知しているだろう、ひょっとしたら敵側のサーヴァントがユニバース戦士かもしれないし。》
《だから、彼女に倒される前にサーヴァントを見つけ出すんだ》
《そして、充分に戦力を集めたらそのまま決戦だ。》
《オルレアン……ひいては聖杯を奪還する。》
藤丸がはい、と返事をすれば
移動は一先ず明日からと言う事で、各々がテントを貼りそのまま眠りへと落ちていく。
そして夜、一匹の狼が起き上がって外へと出た
──あの時、もし陸王が居なければ街はなす術なく焼き尽くされていただろう。
俺が助けた人々も、きっと死んでしまっていた。
俺は、役に立てていない。
未だにテガソードに乗ったことさえ無く
この力はサーヴァントに劣っている。
謂わば中途半端な存在だ。
キングオージャーの指輪を見つめつつ、溜め息を吐けば──
「不用心ですよ、藤丸」
背後から掛けられた声に、慌てて振り返れば──ジャンヌが微笑んでいた。
「……悪いな、起こしちまったか?」
「いえ、私も眠れなかったので」
藤丸が申し訳なさそうに頭を掻けば、ジャンヌは微笑む。
「──こう、対面してみると分からなくなりますね」
「一体、何方が本物なのか」
心なしか、その笑顔に陰りが見えた。
不安……なのだろう、ひょっとしたら自分が偽物で
復讐を望んでいるジャンヌが、本物のジャンヌ・ダルクなのかもしれないと。
──しかし、
「……マシュはきっと、あんたの事を尊敬してると思う」
「俺も、ジャンヌ・ダルクの事は何にも分からねえけど──」
「すげぇ人だって、俺は思うよ」
柄でもない事を言っている自覚はあるのか、照れくさそうに藤丸は頬をかく。
「……有難う、藤丸」
そう穏やかな笑みを浮かべれば、ジャンヌは立ち上がる
そろそろ戻らねばマシュに心配を掛けてしまうだろう
「2人とも、逢瀬の邪魔をするつもりは無いけれど──」
「近くで戦闘が行われています!」
陸王が申し訳なさそうに木陰から顔を出し、2人に声をかけるが
マシュが大きな声でそれを遮る。
ジャンヌと藤丸は顔を見合わせれば、そのまま陸王に案内されて駆け出す
陸王の奴なんて事言うんだ……と、藤丸は若干陸王を睨んだが
肝心の陸王は全く気にしていなかった。
騎士団を襲うのはワイバーンの群れ。
騎士達は背中合わせで防御の構えを取ってこそいるが、外側から少しずつ削られるように攻撃を続けられてしまう。
死者こそ出ていないが、それも後数分までだろう。
このままでは全滅──どうする。リーダーが必死に思案を働かせれば
「ごめんあそばせ、騎士の皆様」
【キラメイジャー!】
「──ちょっぴり、歌うわ」
煌めく宝石は、ワイバーンの目さえ奪う。
歌われる声は王権の象徴。
王が神の代行者だった頃の名残り、人を統べる力の具現化
その歌声、竜さえ跪く。
あっという間にワイバーンの群れを制圧すれば
変身したままの姿で
「──大丈夫ですか?騎士の皆様」
穏やかな雰囲気で尋ねるが、騎士達は現実とは思えぬ光景に口を開けて惚けてしまっており
リーダー格の男が、やっとの思いで言葉を発そうとすれば──丁度ジャンヌ達が姿を現す
あら、とマリーは変身を解除して彼女達の元へと駆け寄る
「マスターと……お三方、来て下さったのですね?」
「ああ、喧騒が良く聞こえたからね」
陸王が青く輝く指輪を嵌めた手で、自らの耳へと触れつつ微笑むが
マリーはそれよりジャンヌの手を取り
「アマデウス達は一緒では?」
「いえ、彼等はまだテントに」
「それよりも、民達が襲われていると知って来てくれたのね!流石は聖女ジャンヌだわ!」
と嬉しそうにマリーはジャンヌの手を握りしめる
ジャンヌは困ったように、何もしてないのに褒められるのは──と言おうとしたが
「ちょっと、男としてどうかと思うよ?」
いつの間にかジャンヌの前へと立っていた陸王が、一つの石を掴んでいた。
藤丸も金色のテガソードを握り──石を持ち、敵意を見せる騎士団達の前へと立ち塞がる
「ジャンヌ……ダルク!」
「お前の所為だ!」「お前が蘇った所為で国は滅茶苦茶だ!」「竜の魔女まめ……!」「故郷の仇だ!」「死ね!」「もう一度死ね!」
「死んでお前が殺した人々に詫びろ!!」
「お前達!やめろ!」
リーダーと思われる男が彼等を諌めんとするが、騎士達は次々と剣を抜き去っていく
藤丸と陸王は指輪を取り出し、いつでもテガソードへと嵌められるように構えるが、一人の女性の声と狂った男の声が、戦場へと響き渡る
「散々な言われようね、聖女様」
「歌え歌え高らかに、愛を、希望を、死を!」
「……何故この男と組まされたのかしら、私」
藤丸達が振り向けば、其処には
杖を手に持ち、ボロボロの服……しかして荘厳にも見える雰囲気を持った女性と
髑髏面を被り、唄うように巨大な鉤爪を掲げる男が立っていた。
「改めて、こんばんは皆様。寂しい夜ね」
「許せとは言わぬ……決して許されぬ……
我が魂と声は永遠に囚われる……
ああ、クリスティーヌ、クリスティーヌ、偽りの狂気に呑まれようとも、その歌だけは──」
此方へと微笑む女と、明らかに狂ったように唄い続ける男
その異様な光景に、騎士達は完全に動かずにいた
「マシュ、テントに戻って──」
「いや、それは無理そうだ」
藤丸がマシュに援軍を呼ぶように耳打ちしようとしたが
それよりも先に陸王が首を振る
──テントの方角から、既に戦闘音が聞こえていた。
どうやら少し遅かったらしい。
「……まずいか?」
此方の戦力は5人。
相手はユニバース戦士では無く、また竜の魔女程では無いが──強い。
特にあの女性、自身を取り囲んだ一人……あの人物だけでも辛いと言うのに、更にもう1人敵が居る。
明らかな狂人である以上行動が読めないのも厄介だといえよう
そして……何より最悪なのが騎士達が未だに敵意を剥き出しにしている所
最悪仲間だと思われていてもおかしくない。
ジャンヌは彼等を守ろうとしているのに、一回殴り飛ばしてやりたいもんだ。
哀れな物を見るように女性は口を開く
「哀しい話ね、貴女はこの国を救うべく2度足掻いているのに、彼等は今度こそ貴女を敵と見做している。
聞かせて、ジャンヌ・ダルク。
貴女は今、どんな気分?死にたいの?
それとも、殺したいの?」
「美しき声を持つ聖女よ、汝の慟哭を聞かせたまえ──!」
女が狂気によって曇らされた瞳で
男が狂ったように聖女へと問い掛ける
藤丸達もジャンヌを見て──その、微笑みを見た
「普通でしたら、悔しくて絶望に縋るのでしょう。
自分が何者かさえ分からない、不完全な身なら尚更。
……ですけど、ええ。
不完全ついでに壊れているのか」
「彼等が私を憎む事で立ち上がられるのなら、それはそれで良いと思ってしまうのです」
「そう思えることこそが、私が何者かどうかよりきっと大切だと思ったのです」
彼女が、聖女と呼ばれる理由を見た。
彼女の後へと続いた、兵士たちの気持ちを知る事が出来た
その想いこそが彼女と言う人ならば
俺がやる事は一つのみ。
「私は好きよ、その答え。
──彼女は憤るでしょうけど」
「──その旋律もまた、美しいと思えてしまう」
女と男が各々の反応を見せれば
杖と鉤爪を向ける
「──魔力反応増大、来ます!」
マシュが身構え、陸王とマリーがテガソードに指輪を嵌めれば
「マシュ、陸王、マリー」
「──少しの間、俺とジャンヌを守ってくれ。
契約を、交わす」
契約、それはサーヴァントへと魔力を渡す回路を繋ぐ物
カルデアのシステムは少し特殊であり、カルデアが発生させた魔力を身体を通して提供している。
これによってマスターの素質が無くとも、契約は出来ると言うわけだ。
ただし、2騎以上となると話は別だ
理論上は可能なだけで、どんな影響をもたらすのかテストさえされていない
《無茶だ藤丸君!!》
ロマンが通信越しに思わず叫ぶが
ダ・ヴィンチちゃんは無茶ぐらいで止まる子じゃないよ、と首を振った
「──告げる」
【クラップユアハンズ!!】
召喚──いや、契約の詠唱!
即座に相手の行動を察した女が杖を振りかぶり
狂気に呑まれた男が駆け出す
「させません!」
しかして、杖は盾によって塞がれ
【ゴジュウレオン!】
【キラメイジャー!】
鉤爪は銃弾によって弾かれ、煌めく剣によって男は吹き飛ばされる
「ワイバーン!」
女が号令をかければ、空から無数のワイバーンが現れる
「──やらせませんわ!」
キラメイレッドが硝子の馬へと跨り空へと駆ければ、歌声と共にワイバーンを地へと落としていく
「唱え!」
「今度、僕のライブに来てくれるのならね!」
突如現れたシャンデリアがレオンの頭上へと落ちてくるが
ノールックでシャンデリアを撃ち砕き、そのままテガソードによる斬撃を再び男へと食らわせ男が進む事を許さない。
「汝の身は我が元に」「我が命運は汝の元に」
「聖杯の寄るべに従い、この意この理に従うならば応えよ──!」
ゴジュウレオンが何とか男と渡り合い
キラメイレッドが歌声を挙げつつ、マシュへ援護すべくキラメイショットを繰り出すが女は杖を巧みに操り、弾丸を防げばそのままマシュを蹴り飛ばしてしまう
「先輩ッ──!」
「杖を掲げる隙を作り出してしまった、貴方達の負けよ」
マシュが盾を構えて再び駆け出すが、女の攻撃を邪魔する事は叶いそうにも無い。
空間が歪み、魔力が溢れ
藤丸を殺さんと迫る──が
それでも藤丸は目を閉じて、言葉を紡いだ
「我に従え!さすればこの願い、この命!!」
「────汝が旗に預けよう!」
ジャンヌ・ダルクの身体が淡く光り輝けば、その旗は振るわれる。
それだけで殺意の魔力は消え失せる
今此処に、ジャンヌ・ダルクの真骨頂が発揮された。
「隙あり!」
全員が惚けた隙に、ゴジュウレオンが男を蹴り飛ばし、再び藤丸達が側に集まる時間を作り出す
「ルーラーの名に賭け、誓いを受けます」
「貴方を我が主として認めましょう、藤丸立香!」
ジャンヌが微笑めば、藤丸もまた笑って隣へと並び立つ
「改めて、宜しく頼むぜ!ジャンヌ・ダルク!」
「感謝を、マスター。身体に力が漲ります。
──これならば、遅れを取ることもありません!」
女は無表情だったが、何かを決意したように拳を握り締め
男もまた、顔を押さえて何事かを呟く
「……信じます、きっと私はこの為に遣わされたのだと」
「クリスティーヌ……全てはこの時の為だけに」
大仰な、舞台の主演かのように男が両腕を広げて唄う
「我が顔を見る者は恐怖を知ることになるだろう!!
我が真名はファントム・オブ・ジ・オペラ!
狂気に犯されし我がクラス、バーサク・アサシン!!
さあ、開演の時だ」
女が、杖を地へと突き立てて宣言する
「戦いましょう、ジャンヌ・ダルク!!
我が真名はマルタ!
狂気に犯されし我がクラス、バーサク・ライダー!
最早祈る事も出来ぬ身なれど、杖を振るって見せましょう」
《オペラ座の怪人に──マルタは聖女マルタか!?》
《だとしたら気を付けろ、皆んな!!》
その真名を聞き、ロマンは咄嗟に警告を飛ばす
聖女マルタは竜種を祈りだけで屈服させた。
その逸話が示す事は──
《彼女は、ドラゴン・ライダーだ!!》
その場に現れるはリヴァイアサンの子、悪竜タラスク。
大鉄甲竜の異名を持つ、驚異的な硬さを持つ竜を前に
藤丸は思わず身震いしてしまうが──
「大丈夫です、マスター」
ジャンヌがそっと、その手を握る。
「皆んな居ます、恐れる必要はありません」
そう言われれば、藤丸は辺りを見渡す
マシュ、陸王、マリー、ジャンヌ。
はぐれ者の俺の周りには──志を共にする仲間が立っていた
「──そうだな、恐れてる暇なんてねえよ!」
藤丸はそう吠えれば、ゴジュウウルフの指輪をテガソードへと嵌める
そして、ジャンヌは旗を振るって見せる
「さあ、戦いを始めましょう──マスター!」
【クラップユアハンズ!】
戦闘の開始を告げる、拍手が高らかに鳴り響いた
要所要所は変わっていきます。
藤丸達がスーパー戦隊と言う力を持ち、戦力として動けるようになってますからね。