Fate/ No.1order!   作:飲み屋蹴り注ぐ

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怒涛の展開から一旦の休憩回


花は短し恋せよ乙女

「そ、敵のアサシンってアタシと同一人物なのよ」

 

何気ない事を答えるかのように、エリザベートは話す

ジャンヌに続いてエリザベートも2人に増えてしまったのかと思ったが

どうやら少し違うらしい

 

「正確に言うと未来の私なのよね」

 

未来。

そう言えばダ・ヴィンチちゃんから説明をしてもらったが

英霊というのは一側面を切り取った物、故に一つの英雄から複数の英霊が生まれるのは案外珍しくない──らしい。

エリザベートもその類なのだろう。

 

「ジャンヌが2人ならそれもアリだろう?

因みに僕達と交戦したもう1人の英霊の真名はシュバリエ・デオン

僕らと同時代の英霊で生前のマリアとも認識がある」

 

とアマデウスが言葉を付け足す。

戦闘後、馬車にて合流を果たし

今はそのまま馬車に乗っての移動となる。

 

「……因縁のある奴が多いんだな」

 

「と、言うより聖杯がカウンターとしてそう言う奴を呼んだんだろう」

 

藤丸は少し前に目覚め、こうして馬車へと座っている

メンバーは既に藤丸、陸王、マシュ、アマデウス、エリザベート、ジャンヌ、マリー、清姫と言う大所帯になっていたが

それでも誰か1人は横になれる位には馬車は広かった。

漸く戦闘も終わり、落ち着いた雰囲気が辺りを包めば

カルデアより通信が入る

 

《改めて皆んな、お疲れ様だ。

敵1騎を撃破、もう一騎も瀕死まで追い込み

更に2騎の真名も判明とはとっても順調だ。

テガソードロボの力も見たし、もう仲間集めなくても行けるんじゃない?》

 

管制室にて、ニコニコと饅頭を食べつつロマンは楽観的な言葉を伝える

実際テガソードロボがあれば大抵の敵……宝具でさえ倒せるのだから、案外行けそうな気はする

しかしてジャンヌは首を振り

 

「いえ、そう上手くは行かないかと」

 

後、食べながら話すのはどうかと思います。

とロマンに伝える

ロマンはんぐ、と食べ掛けの饅頭を持ったまま喉を詰まらせそうになり

 

《ほな回収しとくで〜》

 

《マナーが悪いのは確かだしね、後で食べなさい。》

 

ダ・ヴィンチちゃんがロマンの食べ掛けだった饅頭をひょいと取り上げ、そのまま食べてしまえば

巡の手によって箱に詰められた饅頭は回収されてしまった

 

《……取り敢えず、あの巨竜は何とかしなきゃだね。》

 

あぁ……とスタッフ達に配られていく饅頭を見つつも

気を改めるようにロマンはこほんと咳払いをしつつも話す

 

「それについてですが、マルタが最期に私に教えてくれました」

 

目を伏せ、聖女の事を思い出しつつ

ジャンヌはマルタに伝えられた事を話す。

巨竜の真名はファヴニールと言う最上級の竜種であること

竜の魔女はマジレンジャーのセンタイリングを持っていること

そして、彼女が遺した希望……邪竜を倒した竜殺しにしてドラゴンスレイヤー、ジークフリートがリヨンと言う街に居る事を。

そして彼女は

 

「罠の可能性もありますが、私は彼女の言葉を信じたいと思います」

 

「……俺もだ、彼奴は悪い奴じゃ無かったと思う」

 

ジャンヌの言葉に藤丸はこくりと頷いて金色のテガソードを握り締める

その表情には、決意が溢れていた

 

「じゃ、一先ずはリヨンに向かうとしようか」

 

と陸王が締め括れば、馬車はリヨンへと駆け出した。

 

そしてリヨンへと辿り着いた……のだが

竜殺しの姿は無く、また戦闘の痕跡も無かった事から何処かに移動した事が判明した。

流石に今から探しに行くのは藤丸や陸王の体力を考えるに厳しい

故に今宵は一旦休む事にして

 

「此処をキャンプ地とします!」

 

ジャンヌがキリッと引き締まった表情で、キャンプを宣言した。

キャンプ道具はカルデアからの支援物資として送られており

キャンプを手際良く張れば、一旦各々の休憩時間となる

 

《いやあすまないね、カルデアは今てんやわんやだから私が話し相手となるよ。》

 

ダ・ヴィンチちゃんがひらりと手を挙げ、通信越しに藤丸へと話し掛ける

 

「んなやべえ事態になってんのか?」

 

管制室が騒がしいのが通信越しにも伝わる。

にしちゃダ・ヴィンチちゃんは随分と呑気だな……と首を傾げれば

 

《いやあ、何しろ"魔法戦隊"と来た物だ。

もし魔術師……例えば魔術協会なんかが知ったら上の連中纏めてショック死しちゃうんじゃないかな?》

 

マルタの遺言から伝わった黒ジャンヌのセンタイリング。

その名を、魔法戦隊マジレンジャー

魔法というのは世界でのあらゆる事象の発生源であり、魔術師達が目指す最終到達地点である"根源の渦"から引き出された神秘の力の発現。

その時代の文明の力では、いかに資金や時間を注ぎ込もうとも絶対に実現不可能な”結果”をもたらすものを指して魔法と呼ぶ。

謂わば天の外の神の摂理。

魔術協会から正式に認可されている魔法はわずかに5つと言うことからもその希少性と凄まじさが伝わるだろうか。

そして、巡の口から飛び出したのはとんでもない情報

 

「せやせや、一応話しておくと魔法戦隊マジレンジャーは8人の家族で構成された戦隊でな、名前の通り全員が魔法使いの一家なんや」

 

饅頭を食べながら伝えられた情報に、管制室は静寂に包まれた後

阿鼻叫喚の事態になったのは想像に易くない。

何せ魔法使いが新たに8人!しかも家族と来た物だ!

巡教授は既にマジレンジャーが扱う魔法を調べるべく図書館へと缶詰め状態となり

ロマンはスーパー戦隊について理解する事を諦めて寝ていた。

ダ・ヴィンチちゃんも"たぶん理解するだけ無駄なタイプだな"と天才的なカンからマジレンジャーについては特に調べていなかった。

 

《ま、そんな事は置いといてだ。》

 

《慣れれば多くの英霊と契約出来るが、今は契約は最低後一騎にしときなさい。》

 

すっかり身体は完治し、元通りに動かす藤丸に

これもゴシュウウルフとやらの力なのか?、と思いつつも

アドバイスはしておく。

陸王も恐らく後1騎が限度と見て良いだろうが、彼はその辺りをしっかりと弁えているように見えたので特に警告はしないが

藤丸は別だ、彼は自己犠牲の傾向にあり

特にマシュの為なら自らが死ぬ選択だって平気で取れるだろう危うさがある

 

《後輩に心配させたくないなら、やめときなよ。》

 

案の定マシュの事を口にすれば、藤丸は言葉に詰まった様子を見せ

 

「……分かってるよ、つか疲れたし寝るわ」

 

と誤魔化すように横たわってしまった

 

《まあ待ちなよ、小話でも……早くない?》

 

ダ・ヴィンチちゃんはフランスに特異点が作られた理由、人権宣言の話でもしようかと思っていたのだが

戦闘やテガソードレッドの操縦に疲れたのか、藤丸は既に爆睡していた。

 

キャンプ地にて、陸王とアマデウスは食材取りや周囲の安全確認の為に少し遠くに散策へと歩いており

藤丸が寝ている以上、キャンプ地には実質女子しか居なかった。

マリーが嬉しそうに机へと座っているのを見れば

ジャンヌは嬉しそうですね、と声を掛ける

 

「清姫が料理を作ってくれてるの!とっても美味しいのよ?」

 

ふふ、と満面の笑みを浮かべつつ

マリーは清姫の方をチラリと見る

清姫は割烹着へと身を包み、料理へと励んでいた

 

「いつ理想の旦那様(ますたあ)に出会うか分かりませんからね。

家事力の向上には余念がありません。」

 

「理想のマスター……ですか?」

 

マシュが戦闘服では無く、メガネをかけたいつもの姿で火に薪をくべれば

清姫は料理の味見をしつつこくりと頷く

 

「ええ、だと言うのに聖杯に召喚されるなんて……竜の魔女もマスターですが論外です、だから灼きます。」

 

「それが清姫さんの戦う理由なのですね……」

 

平然とした口調で告げられる割と物騒な言葉に

これがバーサーカーになった理由か……とマシュは内心思った、流石に言いはしない。

 

「エリザベートさんはやはり……」

 

鼻歌を歌いつつ、肉を消し炭にしているエリザベートを見つつ戦う理由を尋ねてみたが

 

「そりゃ〜未来のアタシをぶちのめすに決まってるじゃない!」

 

真っ黒に染まっても肉を焼き続けるエリザベートに対し、清姫は何をしてるんじゃいと言わんばかりに詰め寄る

エリザベートもそれに反発し、再び喧嘩が始まり掛けた所で……

 

「恋バナしましょう!」

 

ぱん、とマリーは煌めく笑みを浮かべて両者へと声を掛ける

2人は即座に頷き、嬉々とした様子でテーブルへと座っていく

案外この旅の面子で苦労しているのはアマデウスさんと陸王さんなのだろうな、と思いつつ

マシュも誘われたので一緒に座る事にした。

 

「その、女子会と言うのは初めてで……」

 

「ノン!大丈夫よ、楽しくお話しするだけだから!」

 

マシュが申し訳なさそうにすれば

マリーは笑って手を振ってみせる

そして各々の生前や英霊となった後の恋バナを聞いていく

エリザベートは此処ではない何処かでした恋について

ジャンヌは少しだけ戻った記憶から思い出した、とても恋しい人について

2人の照れたような、はにかむような笑みを見て

これが恋バナ……!これが女子会……!

とマシュは密かにドキワクの感情を覚えた。

しかして次の清姫の話にコレジャナイ感に支配される事になる

良く分からないが確実に違う、少なくとも殺しちゃうのは違う……

マシュとジャンヌは顔を覆っていた。

エリザベートがあまりにもあんまりな話に食ってかかれば

ジャンヌがよろめきつつ、マリーに恋バナを話すように頼む

マリーは少し照れつつも、思い出すように話す

 

それは初恋の話

マリーが6、7歳の頃に演奏会にて出会った男の子

緊張していたのか、床に滑って転んだ彼に手を差し出した時

彼はキラキラとした瞳を浮かべ、手を取りつつこう言った

 

「有難う、素敵な人」

 

「もし貴女のように美しい人に結婚の約束が無いのならば」

 

「──僕が最初で宜しいですか?」

 

あんなに胸がときめいたのはあれが初めてだった、とマリーは微笑んで話す

こう言うので良いんだよこう言うので、とマシュ達も再び盛り上がった

エリザベートが楽しそうにしつつ

 

「それでそれで?その彼とはどうなったの?」

 

「それっきり何も、7年後に私は結婚してしまったし……」

 

「けれど、彼とはもう会ったわ。

皆んなももう会ってると思うわよ?」

 

自分達が出会った男性、藤丸と陸王は現代人だから除外

ファントムやデオンもまあ除外で良いだろう

──と、なるとつまり

例の音楽家の顔が思い浮かび、辺りに驚愕の声が響き渡った。

 

「へぇ、凄いね」

 

日も完全に暮れ、夜となれば

アマデウスは感嘆したように声を出す

机へと並ぶは豪勢なフランス料理

自分達の時代の料理には流石に口笛を吹く程称賛せざるを得ない

 

「ボクとマリアの料理とは気が利いてるね、トマトやらはカルデアから持ってきたのかな?」

 

「マリア……マリーの事か?」

 

「ああ、その通りだとも。

それよりも少しばかり古めかしいが美味しそうだろう?」

 

よいしょ、とアマデウスが席に着けば

藤丸が地味に気になってる視線がする方へと向く

何やらアマデウスの事を生暖かい目で見るエリザベートと清姫

何だ?とアマデウスが首を傾げれば

 

「ごめんなさい、言っちゃった♪」

 

「君まさかシェーンブルンの事を……!」

 

てへ、と舌を出して謝るマリーに

まさか、とアマデウスが椅子から立ち上がる

ひゅーひゅーと冷やかすような声に対して

 

「茶化すんじゃあないぞドラサーヴァンツ!」

 

と言い返す事しか出来なかった。

 

「見えるかい、藤丸くん……あれが女の食い物にされる男の姿さ……」

 

はは、と愉快そうな物を見る目で陸王は藤丸の肩を叩く

藤丸もあわれだと思いつつも少し笑い、そのまま席に着いた

 

「大体なんで広めるんだ……君が断ったじゃないか」

 

「だって嬉しかったんだもの、それに私のその後の人生を知っているでしょう?……断って良かったの。そうじゃなければ貴方は多くの人々にされる音楽家にはなっていなかったわ」

 

「……それで良かったと?」

 

アマデウスとマリーが席に座れば、マリーの言葉にアマデウスは顔を顰める

マリーは微笑みつつ

 

「私は人々ではなく、フランスと言う国を愛し、恋していたと思うの。

そんな風に思い上がったから……最期はあんな風に、国民達の手で終わったの」

 

マリーがそう話せば、ジャンヌは思わず口を開こうとし──

 

「何だそれ、馬鹿じゃないのか君」

 

頬杖を付いたアマデウスにその言葉は遮られる

 

「馬鹿なの?私?」

 

何か言い掛けたエリザベートを遮るように手を上げれば

そのまま首を傾げつつアマデウスへとマリアは尋ねる

アマデウスは一切表情を変えることなく

 

「君はとんでもない勘違いをしている。

何せ……僕は知ってるからさ。

君が何を愛そうと……

民の歓待を、君に振り回させた愉快な宮殿を、君の民への献身を、そして君を殺した民の憎しみを──

だから、違うのさ」

 

「君がフランスに恋をしたんじゃない

フランスが君に恋をしたのさ」

 

「……貴方の励ましはいつも分かりにくいけど、有難うモーツァルト」

 

アマデウスの言葉に、マリーは微笑んだ後

少しだけ頬を膨らませてみせる

 

「けれど、憎しみは余計じゃない?恋をしてくれたのでしょう?」

 

「だからこそ、だ。愛憎は簡単に切り替わるし──

君は愛されたこそ憎まれた、人間というのはそういう物さ」

 

愛されたからこそ憎まれた、マシュが繰り返すように呟けば

アマデウスは指を鳴らし、楽器を展開する

 

「さあさあ難しい話は此処までだ、食べようか!

お詫びに食事に合うBGMも付けよう!」

 

「アマデウスの音楽は本当に素晴らしいんだ、僕の曲も作って欲しいくらい」

 

アマデウスの楽器に対して陸王は微笑めば

そのまま賑やかな食事は幕を開ける

美味な食事をお腹いっぱいになるまで取り

楽しく愉快に食事会は終わった

 

草原にて、藤丸はキングオージャー……巡が言うには王様戦隊のセンタイリングを弄っていた。

 

「此方に居たんですね」

 

とマシュが歩み寄ってくれば、そのまま藤丸の隣へと座る。

藤丸とマシュは互いに星空を眺め、決して不快ではない沈黙へと身を委ねる

ふと、藤丸が口を開く

 

「不思議な気分だよな、教科書に載ってる偉人と話して世界を救う旅をしてるってのは」

 

「……はい、昼間に皆さんとお話を……半端聞いてただけですが、不思議でした。

皆さんの事はテキストで知っていたのですが、知ってる事も知らない事も沢山あって、皆さんをとても身近に思って……

きっと、いけないんです。今も多くの人々の命が奪われていると言うのに

だから、駄目なんです。それなのにわたしは今夜を……」

 

「ああ」

 

「……楽しかったよな」

 

藤丸はそう言えば、頬を掻きつつマシュへと微笑む

マシュもまた、笑顔を浮かべて答えた

 

「──はい!」




いよいよ奏章Ⅳが公開されますね、ジャンヌ書いてる時に新しいジャンヌ来そう。
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