邪竜の炎と魔法の炎は昼夜を越え降り注いだ
少女の姿は既に無く
硝子の城は粉々に砕け散った。
街は滅んだ。
残された命は、魔女と邪竜の二つのみ
「──ふざけるな!」
マジレッドは、拳を崩れ去った建物へと叩き付ける
瓦礫の下には
流れた血も、零れ落ちた涙も無く
そして、失われた命も無く
希望は確かに、届けられたのだ。
藤丸達は合流を果たす。
其処に、マリーの姿は居ない
各々が会話を交わす中、アマデウスは1人その場を離れる
藤丸はそれを見送り──未だに姿が見えない1人の男を探す為に歩き出した。
アマデウスは、百合の花が咲き誇る場所で
一つの花を手に取り、そのまま口を付ける。
また、ピアノを聴かせられなかった。
そのままアマデウスは目を閉じ、暫し祈りを捧げようとして
「アマデウス」
その声に、目を開く。
バカな、有り得ない
けれど耳は確かに彼女の声を聞いて
目は確かに彼女の姿を見ていた
「ただいま!」
「──ッ……おかえり、マリア」
彼女は照れたように微笑んでいる
アマデウスは何かを堪えるように目を拭い
そのまま、彼女に対して微笑んだ。
そして、そのままマリーは藤丸達と合流を果たす
「──マリー!生きていたんですね……!」
ジャンヌとエリザベートは満面の笑みを浮かべ、マリーと抱擁を交わす
各々も顔には笑顔が浮かんでいた
するとマシュが当然の疑問を口にする
「マリーさん、生きていらしたのは大変喜ばしいのですが……その、どうやって生き延びたのですか?」
「それはね、マスターのおかげなのよ」
マリーは微笑みつつ、己が命を助けてくれたマスターについて話す
時は少し巻き戻り─マリーとジャンヌ達が別れて数分後の事
「……皆んなは先に行ってくれ、僕は少しやらなければならない事がある」
その言葉に、ジャンヌ達は彼の意図を察知し
「貴方が行くのなら、私達も──!」
と口にするが、まあまあと宥めるように陸王は話す。
「僕の指輪の恩恵は聴力の強化──つまり、隠れていても状況を把握出来るんだ、しかも相手を見る必要は無いからバレるリスクはほぼ無い
けれど集団だとバレるリスクも上がる。
どうか、此処は僕1人に任せて欲しい」
陸王の聴力。ファントムには思わぬ弱点となってしまったが──今こそこの力を活かす時だ。
尚も着いてこようとするエリザベート達に
「何かあればテガソードを呼ぶ、けど君達は乗れないかもだろう?
大丈夫、僕を信じて──決して危険なことは犯さない」
と言う言葉と──何よりマリーの安否を願い
陸王はジャンヌ達と別行動をした。
その後は街からは先ず見つからない程遠い草むらに隠れ、声を聞く事のみに集中
マリーとサンソンの戦闘や会話を聞き──
これは大丈夫だな、と迎えに行こうとした所で
竜の魔女の出現を察知
タイミングは一瞬。
マリーが死んだと相手に誤認させなねばならない。
そして相手は炎使い──つまり、自らの炎で相手を見失う一瞬に賭けるしかない。
だが、陸王は失敗する気はしなかった
何故なら
「彼女の輝きは、遠くからでも良く見えるからね」
竜の魔女達の炎によって、煌めきが見えなくなった一瞬──令呪の使い方は、竜の魔女が教えてくれた
「令呪を以て命ずる!我が元に戻れ、マリー!!」
完璧なタイミング──竜の魔女がマリーを殺したと誤認する程に正確に、陸王はマリーを自身の元へと呼び寄せる
そして現れたマリーの姿を見れば──
「令呪を以て命ずる!生きろ、生きてアマデウスのピアノを聞くんだ、マリー……!」
手を重ねるように握り、迷わず二つ目の令呪を切る。
光の粒子へと還りかけていたマリーの身体は元へと戻り、消えかけていたテガソードもまた元の姿を取り戻していく
意識を失い──しかして生きているマリーを見て、陸王はホッとした様子で微笑む
「──っと、こうしてる場合じゃ無いか」
令呪を二つ使い、尚持って行かれる魔力。
だが陸王は笑みを浮かべ、マリーを背負って立ち上がる
彼女を助けられた──陸王は疲労と共に充実感へと満たされていた。
そしてマリーが意識を取り戻してからはジャンヌ達の元へと向かい──
補足しておくと、通信を忘れたのでは無く
別れた際に通信器具をジャンヌへと渡していたので連絡が取れなかったのだ。
無事に合流を果たした、と言う訳だ。
「マスターには今度、本当に一曲作ってあげても良いかもね。
……その肝心のマスターは何処に?」
全員が辺りを見渡すが、陸王の姿は見えない
マリーはそれに微笑んで
「大丈夫、直ぐに来るわ!」
と答えて見せた
マシュはいつの間にか姿を消している先輩に首を傾げていた
「──おや、まだ休憩時間なんだけどな……」
地面へと倒れ伏して空を見上げていた陸王の隣に、藤丸が腰掛ける。
汗を流し疲労困憊の様子を見せつつも笑顔を忘れない陸王に
藤丸は笑って見せる
「なあ、陸王。」
「……なんだい?」
「カッコいいな、あんた」
藤丸は空を見上げつつ、本心からの言葉を伝える。
きっとマリーや皆んなにに自らの疲労困憊とした姿を見せぬ為に、少し離れているのだろう。
そして何気なく、何をしたでもないように戻るつもりだった──そんな陸王は
どうしようもなく、煌めいて見えた。
陸王は面食らった顔をした後
堪えきれぬように笑って見せる
「──今更?
けど、そうだね。いつだってアイドルは、カッコいいんだよ?」
陸王はマリーと良く似た……煌めく笑顔を浮かべつつ、パチンとウインクをすれば
じゃ、戻ろうかと立ち上がってみせる
「──おや、今夜の食事ではアマデウスがピアノを引いてくれるみたいだね」
近付いてくる……前聞いた時と一切変わらない人数の足音と、楽しげな会話を聞いた陸王は、穏やかに微笑んで──合流を果たした
皆んなもリクオニストになろう!