「おやおや……制御を終えた所で来てくださるとは手間が省けましたな」
海魔と一体化したジル・ド・レェが藤丸達を見下ろす
ジャンヌが旗槍を構えつつ
「私達を探し殺す手間ですか?」
と尋ねればジルは頷き
「左様、我が聖女の願いを叶えねば。
ですが我らの邪魔をしないと言うなら争う必要もない
いかがですか?共にこの国を──」
「ジル」
ジルの誘いに割り込むように、ジャンヌは声を掛ける
「貴方は最初に私を甦らそうとしました、そうですね?」
「──無論」
何を今更、と言わんばかりにジルは頷く
その様子を見て─ジャンヌは言葉を紡ぐ
「でしたら貴方は……やはり、間違っている!
例え私を蘇らせたとしても!私は決して竜の魔女にならなかった!!
確かに私は裏切られ、嘲笑された!
無念の最期と言えるかもしれません。
けれど、祖国を恨む筈が……憎む筈がないのです!
この国には、貴方達が居たのだから!!」
目尻に涙さえ浮かぶ、必死の訴え
ジルはそのジャンヌの顔を……ただ見ていた
「ジル、私はこんな事を望みません……もう、辞めなさい…!」
かつて志を共にして戦った仲間。
だから、だからこそ──もう、辞めて欲しかった
しかしてジルはゆっくりと首を振り
「……貴女はお優しい。
故に、気付かないのです
貴女が憎まずとも……私が!憎んでいると言う事を!!」
悪魔が激しく震える、核となった二つのセンタイリングの闇がより溢れる
「全てを裏切ったこの国を滅ぼそうと思ったのだ!!」
変わらぬ結末
何度望んでも私は燃える聖女に手が届かず、誰も助けようとしなかった。
例え聖女が赦そうとも、私が赦さない
「神とて……王とて……国家とて……!!」
悪魔の姿が大きく歪む
全てを食らう絶対神の姿
或いは美しい物を嫌い、汚し尽くして闇の世界を広げる皇帝の姿。
ジルの目からは、血の涙が溢れていた
「滅ぼしてみせる……!殺してみせる……!」
それこそが聖杯に託した我が願望。
聖女にさえ阻まれる事を許さぬ願い
大気さえ揺るがす程の怒り、憎しみ
その激情に、マシュは盾を構えつつ藤丸へと尋ねる
「先輩、分かりませんわたし──
あんな怒り、あんな憎しみ 世界を滅ぼす程の感情……」
マシュの疑問に対して
藤丸はただ呟く
「──人間だから、だろうな」
恐らく─ジャンヌでは説得は不可能だ
"赦した者"と"赦さない者"では……視点が違いすぎる。
故に、和解ではなく──ただ言葉を伝えるべきなんだろう
「悪いなジャンヌ、俺が言う。
マスターだからな、お前1人に背負わせてらんねえよ」
何か言いかけたジャンヌを制し、藤丸はジルと向かい合う
「何のつもりですか少年?匹夫の分際で私とジャンヌの間に割って入るなど──
それとも子供らしく、私の行いを否定するつもりで?」
藤丸は金色のテガソードを握りつつ、ジルをただ見ていた
「俺はアンタのような、何が何でも叶えたい願いなんてねぇ。
理解してるだなんて言うつもりもない。
でもな、アンタが間違っているとは思えねえよ」
まさかの藤丸の言葉に、全員が驚愕を示す
ほう、と感心した様子でジルは手を差し伸べる
「ならばどうする?私を見過ごし──滅びを受け入れるか?」
藤丸はゴジュウウルフの指輪をテガソードへと嵌める
【クラップユアハンズ!】
「違う。
俺達はお前を止める。
俺はジャンヌのマスターだ。ジャンヌに代わって言ってやる
あんたの感情も、滅ぼそうとすることも──当然だ。
何も間違ってないんだとしても
アンタを見過ごすことだけは、間違いだって分かるからな!」
【ゴジュウウルフ!】
赤き装甲が、藤丸の身体を包む
「ならば死になさい──!」
ジルから2本の触手が迫るが
1本を藤丸が、もう1本をジャンヌが切り裂く
「有難う、藤丸……貴方がマスターで本当に良かった」
ジャンヌは旗を掲げ、高らかに宣言する
「
皆に助力を乞います、全宝具を以て私に道を拓いてほしい──!」
各々が頷き、武器を構える
フランスを滅ぼさんとする怪魔が動き出す
「貴方を止めます、魔元帥ジル・ド・レェ!」
「貴女を殺しましょう、救国の聖女ジャンヌ・ダルク!」
「嫌いよ、皆んな」
「知ってるとも」
「気付いてたわよね」
「そりゃね、流石に分かるさ」
「何故撃たれたの?」
「信じてたから?」
「裏切られてたら意味ないわね」
「僕はマリーを信じてるからね」
「──彼女が戻ってくるとでも?」
「違う、
「そう、やっぱり大嫌い」
遠くで海魔が動き出すのが見える
この場に居るのは2人だけ
マリー・アントワネット〔オルタ〕と百夜陸王のみである
2人は近くの瓦礫に腰掛けて、隣同士で海魔を見ていた
「アマデウス、連れて来なかったのね」
「嫌そうだったのと、2人きりになりたかったからね」
「……耳が良いから分かったの?」
「アイドルだからさ」
「偶像は嫌い」
「これは手厳しい」
戦場で、これから殺し合う筈だと言うのに─何故か酷く穏やかであった。
「──私は許せないわ、何もかもが」
「だから僕は君の前に立ち塞がるよ」
「辞めさせようとは思わないの?」
「想いの強さは、良く知ってる」
マリー・オルタの姿が学生服から変わる
絶望の黒き華、怒りと悲しみの凝集。
背は大きく伸び、王妃の姿へと。
マリー・オルタは立ち上がる
「死の舞踏を、ご覧に入れるわ」
陸王はゴジュウレオンの指輪をテガソードへと嵌めれば、軽やかに手を叩く
「Shall We Dance?
──僕と踊りましょう、王妃様」
【ゴジュウレオン!】
青き獅子の装甲が、陸王を包む
優雅に一礼をした陸王にマリー・オルタは笑って言う
「貴方のそう言う所、キライよ」
黒き百合の魔力弾とレオンバスター50の弾丸が衝突すれば
2人きりのダンスは幕を開けた