「ふぅ……不安でしたが、何とかなりました」
「案外、サクッと終わったな」
変身した俺はマシュと共に意気揚々と戦闘に臨んだ──のだが、骨だけあって普通に脆く
2人対多数だと言うのに特に苦戦する事なく終わってしまった。
マシュの盾が豪快に敵を薙ぎ倒し、俺のテガソードが爽快に敵を叩き切る。
さながら無双ゲームのようであった。
だが、一般人……変身前の俺であれば
やはりなす術なく殺されていたのは確かだろう。
この装甲、"ゴジュウウルフ"とテガソードは言っていたか?
その強さが良くわかると言う物だ
一先ず変身を解除すれば
マシュと目が合う
お互いに聞きたい事だらけだ。
「あ〜……先ず俺から良いか?質問はお互いだろうしよ」
「はい、お互いの状況把握が大切だとわたしも思いました」
こくりとマシュが頷いたのを確認すれば
先ずは……そうだな、俺達が蹴散らした敵について尋ねよう。
あれ、どう考えてもファンタジー的存在だったし。
「あの変な骸骨は何なんだ?」
「分かりません。この時代はおろか、わたしたちの時代にも存在しないものでした」
「あれが特異点の原因……のようなもの、と言っても差し支えはあるような……無いような……」
要するに正体不明のナニカらしい。あれが大量増殖した結果が今のこの場所……なのか?
どうにも違和感があるな……と考え込んでいれば
聞いた事のある、しかしてこの場に居ない人物の声が聞こえて来た
《ああ、やっと繋がった!
もしもし、此方カルデア管制室だ、聞こえるかい!?》
Dr.ロマン!
良かった、ロマンはどうやらこの場に飛ばされていなかったらしい
そして通信が繋がったと言う事は彼方は安全になったと言う事だ
一先ずホッと息を吐けば
「此方Aチームメンバー、マシュ・キリエライトです。
現在、特異点Fにシフト完了しました」
「同伴者は藤丸立香一名、心身共に問題ありません」
「レイシフト適応、マスター適応、共に良好。
藤丸立香を正式な調査員として登録して下さい。」
流石は精鋭であろうAチームの一員
分かりやすく、必要最低限の状況を丁寧に説明してくれている。
おかげで俺は立ってるだけで済んだ。
「……やっぱり藤丸君もレイシフトに巻き込まれたのか……
コフィン無しでよく意味消失に耐えてくれた、それは素直に嬉しい。
──それと、マシュ、君が無事なのも嬉しいけど……その格好はどう言うコトなんだい!?
ハレンチすぎる!ボクはそんな子に育てた覚えは無いぞ!?」
そう、それだ。
余りにも自然な様子から記憶違いかとも思っていたが、やはり格好が大きく変わっている。
眼鏡は恐らく壊れたのだろうが、服装が変わる理由が無い。
バリバリに戦闘をこなしてるのもAチームだからかと思ったが、やはり違和感はある。
ロマンの問いに対してマシュは
「これは……変身したのです、カルデアの制服では先輩を守れなかったので」
「……変身?変身って何を言ってるんだ、マシュ?
頭でも打ったのか?それともやっぱりさっきので……」
と、ロマンはマシュの答えに困惑しているが
此方の困惑は少なく、寧ろ納得した。
何せ俺自身が変身したのだ、マシュもテガソードとやらに導かれて変身したのだろうと思ったが……肝心のテガソードが無い。
金の奴も銀の奴も……と言うか指輪そのものが無い。
違う方法で変身したのか……?それともテガソードとはまた別枠?
内心首を傾げつつ
「Dr.ロマン、ちょっと黙って」
初めて見るマシュの強目の返答に少しだけ目を丸くする。
いやまあ、ロマンが150くらい悪いからフォローはしないのだが。
「わたしの状態をチェックして下さい
それで状況は理解していただけると思います」
ロマンが若干ショックを受けた反応をしつつも
マシュの言う通りに状態をチェック……しているのだと思う、何やら機械音が聞こえるし。
するとロマンは
「おぉ……おおおおぉおお!?」
と思ったより驚愕しているリアクションをあげた、マシュが実はサイボーグになってたかのリアクションである。
え、まさか俺の後輩サイボーグなの?と若干不安に思ったが
「身体能力、魔力回路、全てが向上している!
これじゃ人間と言うよりも──」
「はい、サーヴァントそのものです」
サーヴァント?
知らない単語だ。いやチラッと聞いたような気もするが……内容までは理解出来ていない。
が、口を挟める雰囲気でも無いので分かってるような顔をしつつ腕を組んでおこう。
「経緯は覚えていませんが、わたしはサーヴァントと融合した事で一命を取り留めたようです」
恐らくだがテガソードはサーヴァントでは無いだろう、つまり完全なる別案件らしい。まあ指輪とテガソードが無い時点で予想はしていたが……
「今回、特異点Fの調査・解決のため、カルデアでは事前にサーヴァントが用意されていました」
「そのサーヴァントも先ほどの爆破でマスターを失い、消滅する運命にあった」
「ですがその直前、彼は私に契約を持ちかけて来ました」
「英霊としての能力と宝具を譲り渡す代わりに、この特異点の原因を排除して欲しいと」
要するに、俺の変身とはまた異なる形でマシュもパワーアップを果たしたらしい。
そもそも爆破前にあの能力を持っていたらこんな事態にはなっていなかっただろうし。
「英霊と人間の融合……デミ・サーヴァント。
カルデア六つ目の実験だ。
そうか、漸く成功したのか……
では、キミに英霊の意識があるのか?」
ロマンが深く、納得したように頷けば、マシュに力を渡したサーヴァントの意識について尋ねて来た
確かに、融合と言うには意識も二つあって然るべき……なのか?
意識が混ざり合うよりはまぁマシなのかもしれないが。
マシュは何処か悲しそうな表情を浮かべつつ
「……いえ、彼はわたしに戦闘能力を託して消滅しました。
最後まで真名を告げずに……
ですので、わたしは自分がどの英霊なのか。
自分が手にしたこの武器がどのような宝具なのか、現時点ではまるで分かりません」
自身の武器の扱い方さえ分からないとは……中々不便である
見たところ盾なのだろうが、何やらギミックが仕込まれてたりする……のだろうか?
「……そうなのか、だがまあ、不幸中の幸いだな。
召喚したサーヴァントが友好的とは限らないからね。
けど、マシュがサーヴァントになったのなら話は早い、なにしろ全面的に信用出来る」
「藤丸くん、其方に無事シフトできたのはキミだけのようだ」
薄々察していたが、やはり俺1人しかマスターは残ってないらしい。
残りの47人については……ダメだったのだろうか。
幾らでも代わりは居た筈なのに、気が付けば唯一無二のマスターと俺はなっていた。
「そして、済まない。
何も事情を説明しないままこんな事になってしまった。
分からない事だらけだと思うが、どうか安心して欲しい
キミには既に強力な武器がある、
マシュという、人類最強の兵器がね!」
「……人類最強というのは、どうかと。
たぶん言い過ぎです、後で責められるのはわたしです」
うーん、ロマンとマシュの温度差が激しい。
たぶん仲は良いのだろうが……
ロマンはいつも通り、緩く笑えば
「まあまあ。サーヴァントはそう言うものなんだって藤丸くんに理解して貰えれば良いんだ」
と言うと顔をキリッと引き締めて
「──ただし藤丸くん。サーヴァントは頼もしい味方であると同時に、弱点もある。
それは魔力の供給源となる人間…マスターが居なければ消えてしまう、と言う物だ。
現在データを解析中だが、これによるとマシュはキミの
つまり、キミがマシュの
キミが初めて契約した英霊が彼女、という事だね」
怒涛の情報量に思わず天を仰ぎそうになる
サーヴァントは恐らく……人間兵器的な奴、俺がマシュのマスターで、マシュはサーヴァントでは無くデミ・サーヴァントで、初めて契約したのがマシュだ。
それで〜……脳がこんがらがって来たぞう?
「すんません、何がなんやら……」
「うん、当惑するのも無理は無い。
キミはマスターとサーヴァントの説明さえしていなかったし。
良し、良い機会だ。
今のうちに全部説明しておくとしよう。
今回のミッションには二つの新たな試みがあって──」
「──ドクター、通信が乱れています。
通信途絶まであと10秒」
「むっ、予備電源に替えたばかりでシバの出力が安定していないのか。
……仕方ない、説明は後ほど」
と、漸く理解出来そうだと言うのに説明の機会はまた次にお預けらしい。
まあ取り敢えず当面はその知識を活かす時が来ない事を祈っておくしかなかった。
「二人とも、其処から2キロほど移動した場所に霊脈の強いポイントがある。
何とか其処まで辿り着いてくれ、そうすれば此方側からの通信も安定する。
良いかな、くれぐれも無茶な行動は控えるように。マスターがやられればサーヴァントも共倒れだ。此方も早く電力を──」
プツン、と其処で通信は途切れてしまった。
一先ず次の行動が決まると同時に
あ、と思わず声を出してしまう
「どうしましたか、先輩?」
「俺の事話し忘れたわ」
と、金色のテガソードをマシュへと見せる
マシュも頭から抜け落ちていたのか、あっ。と小さく声を漏らした。
「……その、それは何なんですか?
そしてあの姿は─もしや先輩もサーヴァントとの融合を……?」
「いや、俺の場合は──」
自身の身に起こった事を簡潔に話す
テガソード、スーパー戦隊、指輪の契約について。
「──申し訳ありません、先輩のおっしゃる単語についての知識はわたしにはありません……ですが、恐らく"スーパー戦隊"はサーヴァント級の力を持っていると推測します」
今の所マシュ以外のサーヴァントを知らないせいであまり詳しい事は言えないが、一応頷いておく。
マシュと肩を並べて戦えたし、テガソードも明らかに超常的存在ではあった。
まあ単純に考えて戦力は2倍な訳だし、気にする必要も今は無いだろう
「んじゃ行くか」
「はい、頼もしいです。先輩。
……実は物凄く怖かったので、助かります」
「……気にすんな」「フォウ!!」
「そうでした、フォウさんも居てくれたんです。
応援、有難う御座います」
マシュもやはり怖かったのか、と思い返事をするも
白い獣……フォウに阻まれてしまう。
生きてたのか、地味に姿を見なかったから心配ではあったが
見た所元気いっぱいで何よりである。どうやらマシュに着いてくれていたらしい。
「どうやらフォウさんは先輩と一緒に此方にレイシフトしてしまったようです」
にしても、意味消失?だが。コフェインに入ってないと不味そうな奴に晒されるらしいが、良く耐えれたもんだ。俺が耐えれたし案外大した事無いのか?
と、フォウを撫でつつ
マシュが何かに気付いたのか、しゅんと落ち込んで
「……ドクターにフォウさんの事も報告し忘れてしまいました……」
「まあ、後で纏めて伝えれば問題ねえだろ」
「フォウフォウ!!」
「フォウもドクターなんて雑に扱って良い、って言ってるしよ!」
ははは、と笑ってフォウを撫でまくる。
因みに何を言ったのか全然理解してない、何となくこう言ってるだろうなと言う超雑な翻訳であるが
特に抗議もしてこないしそう言う意味なんだろう。
「そうですね、フォウさんと先輩のお話についてはタイミングを見て報告しましょう」
「先ずはドクターの言った
と、言って早数分。
辺りは何処までも変わり映えしない真っ赤な炎で焼かれた町と、瓦礫。
生物の気配は皆無であった。
「先輩、もうじきドクターに指定されたポイントに到着します」
「──しかし、相変わらずの炎ですね。
資料にあったフユキとは全く違います。
資料では平均的な地方都市であり、2004年にこんな災害が起きた事はない筈ですが……」
「そして大気中の
これではまるで古代の地球のような──ッ先輩!!」
マシュが咄嗟に盾を構え、俺の背後へと飛び出す
ガキィン、と金属音が鳴り響く
俺は咄嗟に飛び退き、相手の方を見る
またしても、骸骨
しかし今度は面のみ。
身体は黒く、妙に長い腕を持った存在
俺に気づかずに命を奪おうとした姿はさながら
すかさずテガソードを構え、指輪をセット
マシュはアサシンと拮抗状態へとなりつつも、大きく弾き飛ばすことに成功
「マスター!戦闘を開始します!」
「分かった!
エンゲージ!」
【ゴジュウウルフ!!】
マシュとアサシンが打つかり合う間に素早くステップを刻み、再び赤き装甲へと身を包む
二人の拮抗状態に割り込むように咆哮をあげつつアサシンへと飛び掛かり、テガソードを振るう
まさかデミ・サーヴァントでは無く普通の人間が攻めてくるとは思っていなかったのか、アサシンは斬撃に怯む
その隙を着いてマシュが盾を横薙ぎに振えば、アサシンはそれをモロに食らって吹き飛ばされる──が、軽やかに数度バク転をし、体勢を立て直す
──先ほどの骸骨共とは文字通り格が違う。恐らくサーヴァントか?
「あぁもう何なのよ──ってマシュ!?」
ふと、自分達の背後から聞き覚えのある声がした
まさか、と思って振り返れば
「オルガマリー所長!?」
「所長!?」
姿を見なかった以上死んだと思っていた所長の無傷の姿に思わず驚きの声が漏れてしまう。
それが隙となってしまい、それを突いたアサシンによる長い腕の殴打がマシュを弾き飛ばす
大したダメージにこそなっていないが、距離を空けられた!
「所長!下がってろ!!」
「──その声、私の演説に遅刻した一般人!?」
咄嗟にアサシンの前に立ち塞がり、テガソードを振るう
アサシンも負けじと腕を振るい、再び金属音が鳴り響く
お互いの打撃と斬撃が打つかり合うがこちとら先程までただの一般人、力押しが効かない相手との相性は言うまでも無く最悪!!
何とか所長が逃げれるまでの時間を稼ごうとするも──
所長は、逃げるつもりは一切無かった。
「……色々聞きたい事はありますが、一先ず此奴を片付けないとなさそうね」
アサシンに吹き飛ばされ、所長の後方まで下がってしまうが
マシュがアサシンへと迫る事で何とかアサシンの追撃を阻止する事に成功していた
──そして、所長が手に構えるは銀のテガソード
……テガソード、指輪の契約、スーパー戦隊……
「まさかあんた」
「エンゲージ!!」
一つの指輪を取り出し、それを回転させればテガソードへと装填
【センタイリング!!】
軽快な音が辺りへと鳴り響く
クラップ、クラップ、ステップ、
俺とはまた異なる巧みなステップを刻み
最後にくるりと一回転、そして手を叩けば
【ゼンカイジャー!!】
銀の手から放たれるのは歯車
それは所長へと嵌り、その姿を戦士の物へと変えていく
【ゼーンカイザー!!】
中央に刻まれるは赤青黄桃緑の五色の虹。
赤きマントがはためき、真白なボディが火を反射して輝く
額に刻まれた数字は46……では無く、45。
「行くわよ!」
「……お、応!!」
手回しの鳥を模した拳銃らしきものを持つ所長の後に続くように
俺もまたアサシンの元へと駆け出す
3対1、戦法はマシュをタンクとして俺はヒットアンドアウェイ
そして所長の銃撃によるサポートがあれば、最早アサシンは削られて倒れるのみであった。
戦闘が終わり、一息吐いてお互いに変身を解除すれば
「──で?全部話して貰うわよ」
と、腕を組んだ所長に俺は睨まれていた。