「──以上が事のあらましです。
わたしたちはレイシフトに巻き込まれ、此処冬木へと転移してしまいました。
わたしはサーヴァントに、先輩はテガソードにそれぞれ助けられ
デミ・サーヴァントとマスター……それとゴジュウウルフとして行動中で、現在は霊脈へと向かっている途中です。
他に転移したマスター適性者は居ません、所長が此方に合流出来た唯一の人間です。
でも、希望が出来ました。所長がいらっしゃるなら他に転移が成功している適性者も……」
「……居ないわよ。それは此処までで把握しているわ。
認めたくないけど、どうしてわたしと其奴が冬木にレイシフトしたか分かったわ」
「って言うと……やっぱテガソードの力か?」
「違うわよ。そもそもアンタが手に入れた時ってレイシフト後みたいだし。
──消去法、いいえ共通事項ね。
わたしも貴女も其奴も、コフィンに入っていなかった。
生身のままのレイシフトは成功率こそ激減するけど、ゼロにはならない。
一方、コフィンにはブレイカーがあるの。
成功率が95%を切ると電源が落ちるのよ。
だから彼等はレイシフトそのものを行っていない。
此処に居るのはわたし達だけよ」
「成る程──流石です、所長」
と、霊脈へと移動しつつ所長に大体の事を伝えるマシュ。
所長の説明により大抵の疑問は解決し、現状も分かりやすく纏まった気がする。
つまり俺が居眠りして、ファーストミッションから外されてなければ爆破に巻き込まれ
レイシフトもされなかったって事らしい。天文学的な確率で俺はこの場に立っているのであろう。
……すると、ふと疑問に思った事があるので口にしてみる
「……ん?所長ってレイシフトしない予定だったのか?
ゼンカイザーだっけか、スーパー戦隊の力を使えるなら戦力になるだろうに」
一流であろう魔術師がバリバリの近距離戦までこなしてくるとすれば、敵対する相手からすれば恐ろしいであろう。現にアサシンを3人とはいえ撃破する事にも成功しているし。
言葉を口にすると、所長は露骨に顔を顰め
「悪い?司令官が最前線に出るワケないじゃない。
貴方たちはわたしの道具だって言ったでしょ」
やれやれ、と肩をこれみよがしに竦めれば
「──フン、まあ良いでしょう。状況は理解しました。
藤丸、緊急事態と言うことであなたとキリエライトの契約を認めます。
此処からはわたしの指示に従って貰います。
先ずはベースキャンプの作成ね。
そろそろ着いた頃合いでしょ?」
「はい、所長の丁度足元がレイポイントですね」
ピタリと所長が立ち止まれば、マシュがこくりと頷く
たぶん偶然だろうが、丁度足元って中々凄くないか?
「うぇ!?あ……そ、そうよ!
マシュ、貴方の盾を地面に置きなさい。宝具を触媒にして召喚サークルを設置するから」
絶対偶然だ、明らかに驚いていたのに腕を組んで計算通りですが?的な顔が出来るのはある意味尊敬出来る。
「……だ、そうです。宜しいでしょうか先輩」
俺より数段立場が上な人が置けと言ってるなら置くべきだと思うが─俺の許可要るか?まあ特段気にすることでもないし
「ああ、頼む」
と答えておこう。
「了解しました。それでは始めます」
マシュが地面に盾を突き刺す。
この間に敵襲を受けてもカウンターが出来るようにしっかりとテガソードを握り締めていた──が、その心配は不要らしい
蒼く輝く光が辺りへと満ち溢れる
「これは……カルデアにあった召喚式と同じ……」
マシュが驚いたように呟くと、聞き覚えのある男の通信が入ってくる
《シーキュー、シーキュー。
もしもーし!よし、通信が戻ったぞ!
2人ともご苦労様、空間固定に成功した。
これで通信も出来るようになったし、補給物資だって──》
「はぁ!?なんで貴方が仕切ってるのロマニ!?
レフは何処よレフは!さっさと出しなさい!戸棚に隠してるお菓子取り上げるわよ!!」
ロマンの声を遮り、所長が驚愕の声……悲鳴にも近いような声を上げる
《ちょ何で所長がそれを……じゃなくて、生きてたんですか!?
あの爆発の中で!?しかも無傷!?どんだけ硬いんですか!?》
「咄嗟に変身したのよ!!いいからレフはどこ!?
医療セクションのトップが何故その席に居るの!?」
《……変身?っと、コホン。
何故、と言われるとボクも困る。
自分でもこんな役目は向いていないと自覚しているし。
でも他に人材が居ないんですよオルガマリー。
現在、生き残ったカルデアの正規スタッフはボクを入れても四十人に満たない。
ボクが作戦指揮を任されてるのは、ボクより上の階級の生存者が居ない為です。
レフ教授はレイシフトの指揮を取っていた、あの爆発の中心に居た以上、生存は絶望的だ。》
レフは、死んだらしい。
俺にも親身に話しかけてくれた人だと言うのに……無念だ。
所長もショックを受けたらしく、顔を青くしつつも更に言い募る
「そんな……レフ、が?
いえ、それより待って、待ちなさい、待ってよね。
生き残ったのが四十人に満たない?
じゃあマスター適性者は?コフィンはどうなったのよ!?」
《Aチーム含む47人全員が危篤状態です。あの状況では魔術も行使出来なかったでしょうし……
そもそも医療器具さえ足りません、何名かは助けられたとしても全員は──》
「ふざけないで、直ぐに凍結保存に移行しなさい!
蘇生方法は後回し、死なせないのが最優先よ!!」
《──ッあぁ!そうか、コフィンにはその機能がありました!
大至急手配します!!》
ショックを受けているだろうに、キビキビと指示をする姿は流石所長に選ばれるだけある。
俺だったら先ず動揺してそれどころでは無くなるだろうに
マシュも驚きの表情を浮かべつつ
「──驚きました、凍結保存を本人の許諾なく行う事は違法行為です。
なのに即座に英断するとは、所長として責任を負うことより、人命を優先したのですね……」
と、言えば何言ってんじゃいと言わんばかりに所長が反論をする
「バカ言わないで!死んでさえいなければ幾らでも弁明出来るからに決まってるでしょ!最悪の場合テガソードもあるし……
そもそも、47人分の命なんて、わたしに背負える訳無いじゃない……!」
恐らく、本音なのだろう。
何となくだが眼前の所長は、所長と言う役職に、余りにも不向きに見えた。
「死なないでよ、頼むから──!
ああもう、こんな時にレフが居てくれたら──!!」
所長がストレスからか軽く頭を掻き毟れば
ドクターが通信によって現状を、と報告をする。
現在の最高地位は恐らく所長、なのだろう。
《──報告は以上です。
現在、カルデアはその機能の八割を失っています。
残されたスタッフでは出来る事に限りが有ります。
なので、此方の判断で人材は
レイシフトの修理、カルデアス、シバの現状維持に割いています。
外部との通信が回復次第、補給を要請してカルデア全体の立て直し……と言う所ですね。》
「結構よ、わたしが其方に居ても同じ方針を取っていたでしょう。
……はあ、ロマ二・アーキマン。納得こそ行かないけれど、わたしが戻るまでカルデアを任せます。
レイシフトの修理を最優先で行いなさい。
わたしたちは此方でこの街……特異点Fの調査を行います」
《うぇ!?しょ、所長怖くないんですか!?
そんな爆心地みたいな現場──チキンのくせに!?》
「ほんっとう一言多いわね、後で貴方のデスクからお菓子は消えると思いなさい。
それと、教えてなかったしついでに伝えておくわ。
藤丸、来なさい」
「あ、はい」
そーいやまま伝えそびれる所だった。
ドクターのお菓子が無くなる事への悲鳴を聞きつつ
少しだけ慌てて所長の前へと並び立つ
《ん?どーしたんですか2人して並んで。魔法少女にでもなるんですか?》
ドクターが不思議そうに首を傾げ、冗談めかして言うが
ある種それに近いかもしれない……変身するんだし
「違うに決まってんでしょ……まあある種近いかもだけど」
《え?》
所長が指輪をテガソードに着けるのを見て、自身も慌てて指輪を着ける
どうやら直接見せるらしい……まあ百聞は一見にしかずとも言うし良いか。
【センタイリング!】
【グラップユアハンズ!!】
「「エンゲージ!」」
お互いに軽快なステップを刻む。
マシュは少し慣れたのか、ほほうと感心した様子で2人を見て
ロマンはぽかーんと口を開けていた
【ゼンカイジャー!】
【ゴジュウウルフ!!】
その場に、白き戦士と赤き狼が姿を現す
白き戦士…所長は腰に手を当てて
「わたしたちも変身出来るようになったのよ。
試したけどサーヴァントと同等か少し下まで身体能力は上がってると思うわ」
《な、な、なんじゃそりゃー!?!?》
今日一であろうドクターの驚きの声が鼓膜を揺さぶった。
直ぐに変身を解除し
数分掛けて、お互いの指輪の契約についてロマンへと説明を終えれば
《──うーん、スーパー戦隊にテガソードに指輪の契約……聞いた事が無い単語ばっかりだ、強いて言うならテガソードは所長考案の名前では無かった事しか分からない……
調べたい……けど現状じゃ厳しい、事が終わった時になりそうだ。》
「ええ、今は取り敢えず"強化アイテム"とだけ把握していて頂戴」
「この街には低級な怪物だけど分かっているし、この戦力なら先ず負けは無いわ。
事故というトラブルはあれど、与えられた状況で最善を全力全開で尽くすのがアニムスフィアの誇りです。
これより藤丸立香、マシュ・キリエライト両名を探索員として特異点Fの調査を開始します。
変身出来るとはいえ、現場のスタッフが未熟なのでミッションはこの異常事態の原因、その発見に留めます。
解析・排除はカルデア復興後、第二陣を送り込んでからの話になります。
キミもそれで良いわね?」
「俺等で排除した方が良くないすか?」
「良くないわよ。そもそも戦闘の素人でしょ貴方は」
うっ、正論だ……先程の戦闘だって所長の加勢が無ければ先ず負傷はしていただろうし、頷くしかあるまい。
《了解です、健闘を祈ります……所長。
これからは短時間ですが通信も可能ですよ、緊急事態になったら遠慮なく連絡を。》
「……SOSを送った所で、現状の戦力はわたし達3人だけでしょう」
《……返す言葉も無いですが、それでも何かしら力にはなれますよ。》
「そう、じゃあ通信を切ります。
其方は其方の仕事を熟すように」
プツン、と通信を所長が切れば
マシュが所長に対して
「──良いのですか?この場で救援を待つという手もありましたが……」
と尋ねる。
所長は首を振った後
「そう言う訳には行かないのよ……カルデアに戻った後、次のチーム選抜にどれだけ時間が掛かるか。
人材集めも資金繰りも一ヶ月じゃきかないわ。
その間、協会からどれだけの抗議があると思うの?
最悪の場合、今回の不始末の件としてカルデアは連中に取り上げられるでしょうね。
テガソードも先ず持ってかれるでしょうね。
そんな事になったら破滅よ、手ぶらでは絶対に帰れない。わたしには連中を黙らせる成果がどうしても必要なの。
……悪いけど、付き合って貰うわよ、マシュ、藤丸」
少しだけ自分達に申し訳なさそうな顔を見せると
直ぐにいつも通りの表情に戻れば
「とにかくこの街を探索しましょう、この狂った歴史の原因は必ず何処かにある筈なんだから……」