「カエサルが敗れたか」
筋骨隆々とした威厳を備えた男が、落ち着いた様子でその報告を聞く。
その報告をした宮廷魔術師──レフ・ライノールは顔を顰めていた。
「ああ、そのようだ。
聖杯への願いがあると言うから使ってやったものを……
まあさして問題は無いだろう、新しいサーヴァントは私が幾らでも召喚する」
忌々しげに男が手に嵌めている指輪、超力戦隊オーレンジャーのセンタイリングを見れば
再び吐き捨てるように言葉を続ける。
「問題と言うなら、この愚かなバーサーカーだな。
まあバーサーカーが愚かなのは当然なのだが。
此方の命令に逆らうとはな……血は水よりも濃いと?笑わせる」
レフが目線を向けた先に立っているのは……カリギュラ。
顔に一瞬だけ逆三角形のマークが浮かび上がりつつも、カリギュラは言葉を吐く
「余の、運命に……我が愛しき妹の子、ネロは……関わりがない」
その後もこの場に居ないネロに対して狂気と言葉を紡ぐバーサーカーに最早価値はないと目線を外せば
「令呪が無いのが口惜しい……が、貴様にはとっておきの術式を用意してある。悔やみながら己の姪を手に掛けろ、
──そして、この時代の全てを破壊し尽くすが良い」
まあ、バーサーカーに悔やむ知性は無いだろうがね?と嘲笑いつつレフは更に言葉を続ける
「いやいや、全くサーヴァントと言うのは不自由な物だ。
どんな英雄であれどもその根底は使い魔であり、自由さえ持ち合わせて無いのだから!!
なあ、どう思うよ君」
威厳を備えた男を嘲笑いつつレフが尋ねれば
「さて、どうだか」
と冷静に話す。
少しつまらなそうな顔をレフがするも
「まあ貴方もサーヴァント、答えられぬのも仕方ないか!
──故にこそ、私に従うしか無い。
ユニバース戦士だろうが関係ない、お前に運命なる物が存在し、或いは願いがあるとするならば──それが私だ」
杖で召喚陣を刻みつつ、レフは自らの牙を見せるように笑う
「この時代の完全な破壊!
皇帝ネロの死と、古代ローマ帝国の崩壊……人類史の死。
それこそ我らが王の賜れた、私の責務であるのだから──」
召喚陣が強く輝く
カルデアの物とは違う、彼方に至ってはまだ召喚のリソースさえ確保出来ていないが……私は自由自在に、好きなサーヴァントを呼び出す事が出来る。
我らはそのように作られたものであり、こと召喚術においてはこの世の終に立っていると自負さえ出来る。
此方へと跪くテルモピュライの英霊、レオニダスへとネロの抹殺を命じつつ
レフはまた笑うのであった。
其処は無数のビルが林立する大都市。
空には巨大な衛星が幾つも浮かんでおり、未来的な様子が伺える。
人理焼却から免れた……或いは最初から範囲外だった世界、ノーワンワールド。
結婚式場のようであり奥に巨大な"ナニカ"が鎮座する場所にて
ファイヤキャンドルはゴジュウウルフに対する敗北の怒りを燃やしており
ブーケは陸王の祭壇のアップグレードをしていた
そんな2人を見つつMr.シャイニングナイフ&Mrs.スイートケークは一息……正確には二息吐けば
「次は何方が出るかね?」
「無論、私が。ノーワン生成に丁度良い英霊も見つけています」
次に特異点に向かうのは誰か、と言う問いに対してブーケが即答する。
ちょっと待て、とリベンジに燃えるファイヤキャンドルが待ったを掛けようとしたが
「あのですね、貴方のキングキャンデラーを直してるのは誰か分かります?それとも変わってくれるんですか?そもそも私は陸王様の祭壇アップグレードに忙しいんですが」
「あ、いや……す、すまん」
凄まじい勢いで睨み付けてきたブーケに対し、元よりロボの修復も頼んでるだけあってファイヤキャンドルは申し訳なさそうに座ることしか出来なかった。
「では行って参ります」
粛々とした様子……ローマ版の陸王様グッズ無いかなぁ……だなんて内心思いつつも、ブーケは2丁の銃を片手にローマへと乗り込むのであった。
「ふむう……」
相変わらずの神輿で帰路へと向かうネロは、頭を悩ませていた。
頭を悩ませているのは道行く人々が口を揃えて言う古き神が蘇った、と言う内容。
《なんだろうねえ……神代のものかな。》
「曰く、地中海のある島に古き神が現れたと」
ロマンがそう呟けば、マシュが噂について口にする。
誰もが嘘を吐いてる様子もなく、ひどく具体的な噂話。
ガリアは地中海に面している以上そう言う噂も聞く事はあるが……それにしたって気になる。
とは言え仮に神霊だったとして……現代に現れるのは、少なくともカルデアのシステムでは到底無理な話である。
何しろ"神"なのだから。サーヴァントとして現界するのは不可能である。
例えマジレンジャーの魔法を駆使したって分が悪い。
明らかな上位存在っぽい"テガソード"が直接問題を解決しようとしないのはこれが原因でもあるのでは?とロマンは考えていたりする。
「──うむ、気になったからには、だ!
確かめに行くぞ、幸い此処は地中海に面しているしな!」
少しの間ぼうっとしていたネロは、ふと我に帰れば思い立ったが吉、と言わんばかりに号令を掛ける。
──ガリアへとスパルタクスと共に残ったブーディカが言っていた事だ。
ネロから薄らと魔力を感じる時がある、と。
角乃にも頼んではいるが、藤丸達にも見てほしいと頼まれた事を。
《確かに魔力反応はある。彼女がユニバース戦士と言うこともあるかもしれないが……》
何故ネロから魔力が感知されるのか……やはり情報が足りない、と言うのが現状である。
「ではどんぶらこと行こうでは無いか!」
「「……どんぶらこ?」」
「まさか……いやまさかだよね?」
「うん、そのまさか」
謎の言葉を発しつつ意気揚々と地中海へと向かうネロに
陸王は明らかに動揺を示し、角乃が全てを悟ったかのように肩を叩いた。