「うむ、良い風を捕まえたな!かつてない攻め攻めな船旅であった!」
「僕がアイドルじゃなければ吐いてたね……ふふ……」
「三半規管が強化されていなければ即死でした」
島へと上陸したネロが意気揚々と降り立てば
青い顔をした陸王も後に続き、マシュもまたげんなりと顔をし
顔を真っ青にした藤丸を支えつつ島へと降り立つ。
「ふ、ふざけんな……なんだよあの桃……」
「ドンモモタロウの能力である!」
《知らん……何それ……こわ……》
「と、取り敢えず私は皆んなの介護してる……」
ネロは皇帝でありながら自ら船の舵を握り、ドンモモタロウへと変身すれば
何故か船は巨大な桃型のエネルギーに包まれ、どんぶらこどんぶらごと揺れながら移動を開始。
船なのに凄まじい揺れ方をしながらの移動だったので
そりゃもう大惨事であり、兵士達は見事にノックダウンをしてしまっていた。
比較的元気だった角乃が兵士達の介護の為に船へと残る事を伝え
ドンモモタロウの未知の能力に巡が一応メモを取れば
《自ら舵を取るくらいなら優れた操船技術を修めていると思ってたんだけど……読み違いみたいだ、バイタルの変化から凄まじさはよーく分かったよ。》
ある意味凄まじい腕なんだねえ、と呑気に茶をロマンが啜る様子を見れば
今度ぜってえにネロの船に乗せてやる、と藤丸は内心誓った。
《──っと、サーヴァント反応アリ。
敵か味方かは不明な以上、気を付けて!》
ダ・ヴィンチちゃんがそう声を掛ければ
若干青い顔をした藤丸と陸王も何とか立て直し、各々武器を構える。
《……いや、違うなコレ。
サーヴァントの反応とは些か……ユニバース戦士でも無さげだし……?》
と、ロマンの困惑の声が聞こえると同時
「ええ、そうよ。
普通のサーヴァントでは無いもの、私」
優雅と上品を備えた、声だけで数多の男を魅了するような音色とも呼ぶべき音が辺りへと響く。
陸王が興味深そうに笑えば……少女は微笑んで挨拶をする。
「ご機嫌よう、勇者のみなさま。
当代に於ける私のささやかな仮住まい、形ある島へ」
……ただの少女な訳がない、背に見えるのは神々しささえ感じる……或いはそのもののような光輪。
あらあら、と少女は微笑み続け
「どんなに立派な勇者の到来かと思っていたけれど……サーヴァントが混ざっているだなんて、驚きました。
しかも全員テガソードに先取りされてしまっているし……残念だわ、本当に」
藤丸達の手に嵌められたテガソードを見れば、残念そうに溜め息を吐く。
《数値で計測出来るほどの神性……彼女は間違いなく、女神だ!》
「ええ、そう。
私は女神──名は、ステンノ」
ロマンの驚愕の声にオリュンポスの神々より古い土着の神は緩やかに答える。
いやあ困った困った、例外は何事にもあるものだけど……とロマンが管制室で頭を抱えつつ
《いや、流石にサーヴァントである以上ダウンサイジングは免れない筈。
神が地上で権能を振るうことが無いように──ッ!?》
ぞわっ、と背中に氷を差し込まれたような感触に思わずロマンは飛び跳ねて周囲を見渡す。
巡とダ・ヴィンチちゃんが不思議そうにその様子を見ていたが
「私の目でも届かない地平に居る方、そして何も知らない貴方達へ教えてあげましょう。
強きものばかりが神ではなく、私や
本当かぁ……?と訝しげに藤丸はステンノを見ていたが
笑みを見て凄まじい寒気を感じたので慌てて目を逸らせば
「戦う事が求められていない女神というのも在るのです。
例えば──そう、貴女」
急に目線を向けられたマシュは慌てつつ
「わたし、ですか?」
と尋ねる。ステンノはこくりと頷けば
「そうよ──貴女だって、その力は屠るためではなく守る為のもの」
その言葉を聞いたマシュは何かを言い掛けるも
「……ふふ、素直な娘は好きよ。
マシュはその言葉にぞくっとし
藤丸がテガソードを構えつつマシュの前へと立つが
「──というか!余を放置するのも良い加減にせぬかー!!」
地味に空気と化していたネロが声を張り上げる。
注目が再び集まるのを感じたネロは満足そうに頷き
「話は大雑把だが理解した、其処の女神は敵では無いのだな?
古き女神ステンノよ、ならば我がローマへ来ると良い!
余こそ、ローマだ。
余は貴様を新たな神として受け入れよう。共に連合帝国を倒そうではないか!!」
《め、女神を貴様呼び……》
うわあ、と言った様子でロマンがネロを見るが
ステンノは至って和やかな様子で微笑めば
「まあ、とっても眩しいのね。アポロンと良い勝負。
でもごめんなさいね皇帝陛下。
私には妹のように、雄々しく戦う力は持ち合わせてないのです」
《えぇ〜?》
その魔力量で戦えないは冗談じゃ無いの?と言いたげな様子でロマンが声を出せば
「持ち合わせていないのです♡
あんまりにも無粋だと後ろから刺しましてよ?」
《すみませんそうですよね、どちらかと言うと獲物を刈り取る──》
これ以上の失言を重ねる前に、巡の手によってロマンは速やかに連行されていった。
ふふ、と少しは満足したようにステンノは笑い
「でも、そうね。
此処まで来てくれた勇者様だもの──ご褒美をあげなくちゃいけないわ」
ステンノが呟いた昔なら
「……貴方たちには、女神の祝福をあげましょう」
ステンノは海岸沿いを歩いていった先にある洞窟、その一番奥に"宝物"を用意したと言う。
「ほう、女神の祝福……それはまた」
ほほーう、と興味を惹かれた様子を見せるネロの背後で、藤丸達3人はこっそりと集まる。
「……怪しくね?」
「うーん……声色から判断すると嘘は吐いてないんだよね。けどあの女神様だからなあ……心からご褒美と思ってる可能性もある」
「ならば行くしか無さそうですね……」
陸王は自らの聴力を駆使してステンノの声色を聞いていたのだが
いかんせん女神と言うことも相まって、一応嘘は吐いて無さそう……かも?と何とも曖昧な結果に終わり
女神の祝福とやらを無視する訳には行かない以上、洞窟へと向かうことが決定したのであった。
神同士って事でステンノはテガソードの事を知ってます。