さて、一先ず散策を始めるべく意気揚々と一歩を踏み出そうとすれざ
「ストップ。藤丸、貴方は都市探索を始める前にわたしに言うべき事があるでしょう」
と、所長が腕を組んで此方を睨み付けて来た。
言うべき事?
テガソードもマシュの事も話したし……うん、無いな!
「無い」
「本気で物覚えが悪いようね!
思い出しなさい、管制室の事よ!!」
ヤバい、何やら地雷を踏んだらしい。
所長は既にテガソードを構えている。それって脅しの道具にして良いのか?
しかし、管制室の事と言われても印象が薄すぎて思い出せない
うーん、と考え込むと
「あ、あれですよ先輩。
管制室でレムレムしていた時の事です、きっと」
と、マシュが助け船を出してくれた。
そうそう、あの時はガッツリ居眠りをしてしまったんだ
しかし何故今その話題を?
思わず首を傾げてしまうと
「集中すれば思い出せます、ほら──」
……ああ、夢見心地に聞いていたが
何やらうんたらかんたら話してたようなそうでもないような──?
【ゼンカイジャー!!】
「あんたやっぱりまともに聞いていなかったのね!!
座りなさい、ほら正座!!
事態も使命も知らずに特異点に来るなんて酷い話よ!」
どうやらまるで聞いていなかったのがバレたらしく、速攻で変身すると銃口を此方へと突き付けつつ固そうな石床を指差す。
所長、その力を完璧に使いこなしてるな……と思いつつ
本気で撃たれはしないだろうが、怖いもんは怖い。
これも良い機会だと割り切るしか無いか、と溜め息を吐きつつ所長のすぐ前の石床まで歩いて正座しておく
何故かマシュまで隣に正座をすれば
所長は腕を組みつつ、カルデアの云々カンヌンを説明する
一応頷いておいたが、あんま理解してない。
マシュに後で分かりやすく教えて貰おう!ヨシ!!
うっ、所長がスーツ越しなのに凄まじい眼力を効かせているのが伝わる……
所長が変身を解き、渋々と言った様子で肩をすくめれば
「……まぁ良いです。
それよりもこの特異点の原因は恐らくですが分かりました」
「分かったのですか!?」
「この災害は明らかに人為的な物
ともなれば、聖杯戦争が原因だと見たわ」
「先輩ぃ?所長幾ら何でもマシュの真似」
「撃つわよ」
「ウッス」
「バカの所為で話が逸れたわね。
理由も説明しておくとそも聖杯戦争は7騎のサーヴァントを召喚し、互いに争う魔術儀式。
その目的はただ一つ、"あらゆる願いを叶える"と言う聖杯を手に入れる為
実はこの2004年の冬木には、聖杯戦争が行われたと言う記録があるの」
「なぁマシュ、サーヴァントって何?」
「分かりやすく纏めれば、魔術師によって召喚された偉人の一側面です」
「アンタ本当に何も知らないのね……まあ良いわ、大雑把だけどマシュの説明だって間違ってはいないし。
つか次話逸らしたら殴るわよ。
恐らく、この状況は聖杯によるもの。
つまり聖杯の所有者から取り上げれば──特異点Fは解決されると思うわ」
「お〜!」
立ち上がりつつぱちぱち、とマシュと2人で手を叩けば
所長は嬉しそうに胸を張る
取り敢えず具体的な目標が見えたのはありがたい。
聖杯の所有者をぶっ飛ばして奪えば良いってならまだ希望もあるし。
ガラン、と音が辺りへと響き渡る
「敵か!?」
「きゃあっ!?」
お互いテガソードを構えつつも、所長は咄嗟にか俺へとしがみついて来る。
…………強いて言うなら、腕が幸せである。
はぐれ者である俺には先ず味わえないであろう感触
──テガソード、有難う……
ドガァン!!
凄まじい爆音、俺は咄嗟に反応出来ない
慌てて音が鳴った方を見れば
ニコニコ笑顔でマシュが盾を構えていた
たぶん、盾を殴って音を出したのだろう
「ただの瓦礫が崩れる音です、早く進みましょうか」
たぶん変身しても敵わないだろう笑顔に、俺はもう黙って頷くしかなかった。
所長はしれっと離れてた。
ふと、思い出した事があったのでマシュに尋ねてみる
「そーいやあの髑髏みてえな奴、あれもサーヴァントなのか?」
「──確かに、あれにもサーヴァントの反応はありましたが……そう断定していいものなのか分かりません。
本来のサーヴァントと言うのはもっと──」
「あら、まだ居たんですね──生き残り」
艶めかしい、この場の誰の物でも無かった女の声が辺りに響く
本能が今すぐに変身しろ、と言う。──さもなければ、死ぬ!
「「エンゲージッ!!」」
所長も同じ事を察したらしく、即座に変身をする
そのタイミングで、ロマンからの通信が聞こえた
《3人とも!気を付けろ!
其処にサーヴァントが居るぞ!!》
【ゴジュウウルフ!】
【ゼンカイジャー!】
恐怖を吹き飛ばすべく、雄叫びを上げつつも跳躍
そのまま謎の女へと迫る。
大丈夫、骸骨面は倒せた。
3人も居る、そう易々とは──!!
「あら、貴方……サーヴァントではありませんね?」
紫色の髪が揺らめく、悠々と俺の斬撃を避ける。
先程の骸骨面と違ってえらく理性的だ。
「行きます!」
「ああもう、逃げられないでしょうね──!」
俺の左側からマシュによる盾の殴打
右側には所長の銃撃
そして俺は絶えず斬撃を放つ
しかし、女は完璧に対処してみせた。
槍、だろうか。いいや……命を刈り取るような刃
あれは、鎌だ。
マシュの殴打を右手で受け止め
鎌を回転させて斬撃と銃弾を防ぐ
まさしく英雄の技
「先輩!」
そのまま縦に振るわれる斬撃
狙いは──俺。
しかし、咄嗟にマシュが割り込む事でギャリギャリと嫌な音を立てつつも防御に成功する。
すかさず所長が銃撃をするが──凄まじい速度でのバク転により何なく回避し、お互いの距離が空く
「強い所じゃねぇぞ……アレがサーヴァントかよ」
「クラスは恐らく……ランサーね。
不運にも程があるわ……」
「──ッ、魔力向上確認!来ま」
────疾い。
音さえ置き去りにしたのか、と錯覚してしまうほどの速度。
マシュの盾を弾き
「しまっ──」
蹴り一閃、マシュを付近の壁へと叩き付ける
「マシュ!」
「バカ!」
俺は注意を咄嗟にマシュへと向けてしまい、それに気付いた所長がテガソードを構えて俺と女の間に入ろうとするが
純粋な拳による殴打、それだけで2人纏めて吹き飛ばされてしまう。
「がッ──」
テガソード二つを間に挟んで尚、凄まじいまでの衝撃が俺を襲う
「ッ、く……」
「弱いですね、サーヴァントとは思えないサーヴァントと、サーヴァント以下の人間ですか」
女は失望した顔をしつつも、マシュへと鎌を持って歩き出す
不味い、助けなきゃ──
咄嗟に動こうとした俺の肩を、所長が抑える。
「やめなさい!3人でもダメだったのに、1人で突っ込んで死ぬ気なの!?」
「マシュを信じなさい、私達は人間だけど──彼女は相手と同じサーヴァントよ!」
正論、なのだろう。
けど、何故だろう
彼奴とマシュが同じ、それだけは
「──違うだろ」
「──そりゃサーヴァントとデミ・サーヴァントって言う違いは──」
「そうじゃねえ!
細けえ事は後で良い、所長、頼みがある──!」