身体が、酷く痛んだ。
それも当然だろう、自らはデミ・サーヴァントとは言え
相手は本物のサーヴァントなのだ。
歴戦の戦士とサーヴァントですらない人間
元より勝てる筈も無かった。
先輩を、逃がせただろうか。
大丈夫、所長も居るのだ。判断を間違える事は無い
わたしは先輩の盾になれた。
手を握ってくれた、その恩を返せた
チラリと先輩達が居た方へと視線を向けるが、もう其処には誰も居なかった
ああ、よかった──
先輩、どうか貴方だけでも生きて下さい
此方を攻撃したサーヴァントが目の前に立って、鎌を振りかぶる
さようなら
そう、思って目を閉じた時
狼の遠吠えが聞こえた
「──アオーン!!!」
マシュがもたれかかってた壁、その隣が砕け散り
中から赤き狼が姿を現す
いつの間に移動していたのだろうか──
しかしてサーヴァントの反応も早い
マシュへと振るわんとしていた鎌を、狼へと振ろうとして
「これでも、食らっときなさい!!」
床から、5色の虹が溢れ
サーヴァントの床を破壊し、弾き上げる
虹の発生源を見れば、所長……ゼンカイザーが、ギアトリンガーを握り締めていた
「これで、終わりだ!!」
その隙を見逃さず、ゴジュウウルフが凄まじいまでのラッシュをサーヴァントへと畳み掛ける
さながら格闘ゲームのように流暢で迫力に満ち溢れたソレ
【フィニッシュフィンガーウルフ!】
ありったけの連撃を放ち、そのままサーヴァントの心臓へと向けて必殺の一撃を喰らわせる
「そんな、嘘──」
サーヴァントは大きく吹き飛び、壁へと激突したかと思えば
信じられないと、驚愕に満ち溢れた表情で黄金の粒子へと還っていった。
「──っしゃあ!!
俺達の、勝ちだ!!!」
WINNER ゴジュウウルフ&ゼンカイザー&マシュ
藤丸が変身を解き、腕を高らかに上げる
所長も上へと戻って、変身を解けばぺたんと床に座り込んでしまう
マシュは、呆然と先輩を見ていた
サーヴァントに、人間が勝った。
凄い──と同時に、何処か納得してしまう
ああ、先輩ならきっと勝つんだろうという、納得が。
「サーヴァント反応、消失しました!
お疲れ様です、先輩、所長!」
「ほんっっと二度とやらないわこんな作戦……」
起き上がり、慌てて先輩の元へと駆け寄る
所長は緊張が切れたのか、深く息を吐いていた。
「……申し訳ありません、わたしが不甲斐ないばかりに……」
マシュは藤丸に申し訳なさそうに頭を下げる
元よりサーヴァントはデミ・サーヴァントである自分が何とかしなくてはならない相手。
それなのに普通の人間である二人にまで危険を及ぼしてしまって、情けないと思ってしまっていた。
しかし藤丸はマシュを見れば、笑顔を浮かべて話す
「なーに言ったんだ、マシュが居なけりゃ俺達はとっくに殺されてたよ。
俺を守ってくれてありがとな、マシュ!」
髑髏面のアサシンの不意打ちの時も然り、今回の戦闘でも然り
マシュが居なければ変身する暇さえなく殺されていただろうと藤丸は考える。
故に、ありったけの感謝を込めて告げておこう
俺の後輩は、本当に頼れるんだから
「……ッ、そんな事ありません、わたしの方こそ助けられてばかりで……」
マシュは顔を真っ赤にしつつ、ごにょごにょとはにかむように呟く
藤丸は笑い、そろそろ行かなきゃだな──と立ち上がって
「──嘘だろ」
目線の先には、2騎のサーヴァント。
黒い鎧に身を包んだ赤髪の戦士と、またもや髑髏面を身につけた暗殺者
先程の戦闘を経て此方は満身創痍
仮に戦闘に挑んでも、勝つ事は難しいだろう
「──やってやるよ!」
所長は言葉を失った様子で2騎のサーヴァントを見上げており、戦力にはならなそうである。
藤丸は半端自棄になった様子で藤丸が再びテガソードを構えるが、
マシュがそれを片手で制す
「先輩、所長と一緒に逃げて下さい
時間稼ぎなら、こなして見せます」
「馬鹿野郎!逃げるなら3人一緒にだ!」
マシュが覚悟を決めた様子で盾を構えれば、思わず藤丸は叱責をする
とは言え状況は依然絶望的
しかし藤丸に逃げるつもりは皆無
マシュは説得は不可能と見て、せめて所長だけでも逃そうかと盾を構え──
「アンサズ」
炎が、黒き戦士を燃やし尽くす
味方?新たな敵?
全員が動揺を示す。
その中で唯一、藤丸は見た
青き外套を羽織った、魔術師の姿を
黒き暗殺者の周りに無数の木が突如として生え、暗殺者を拘束する
暗殺者は抵抗を試みるが、木はびくともしない
「焼き尽くせ、木々の巨人。炎の檻となりて──」
巨大な木の巨人が、暗殺者を中へと取り込む
全員がその大魔術を見つめ──
巨人は、炎へと包まれる
「
凄まじいまでの炎により、暗殺者は呆気なく燃え尽きる
マシュが盾を構え、所長が背後へと回りつつテガソードを構え
藤丸がマシュの隣へと並んでテガソードを構える
青き外套を羽織った男は、3人の前へと足を進めれば溜め息を吐く
「ったく、色々面倒な事になってやがるな──
つーか助けて貰った相手にんな警戒するかね?
ま、緊張をほぐすついでに自己紹介でもさせて貰おうか。
俺の真名はクー・フーリン。
他の英霊とは違って話も通じる唯一のサーヴァントだ。
宜しく頼むぜ、何処かの時代の指輪の戦士サマ?」
へへ、と魔術師──クー・フーリンは雄々しく笑った。