「デミ・サーヴァント風情がよくやるものだ、冬木で目にした時よりは力を付けたらしい」
かつてカルデアに居た時と同じように微笑みつつ、レフ・ライノールは杖を地面へと叩き付ける。
苛立ち、殺意、いずれも異なる。
「だが、所詮はサーヴァント……悲しいかな、聖杯の力に勝ることなど有り得ない」
あの時見逃した結果、こうして自分の前に藤丸達が立っていると言う煩わしさ、面倒くさいとでも言おうか。
レフはやれやれと肩をすくめつつも余裕を崩さずに自らが持っている黄金の杯を撫でる。
「彼奴が宮廷魔術師か、ならば──」
ネロがラフが持っている黄金の杯、即ち聖杯を見つつ剣を構える。
藤丸達も武器を構え──
《宮廷魔術師が王の危急をあえて見逃すとはね、すっかり裏切りが板に付いたんじゃないか、レフ教授?》
ロマンが口を開き、そのまま口撃を仕掛ける。
無論精神的ダメージなど期待してない。
少しでも集中力が削がれれば儲け物でさえあると考えつつも、言葉を続ける
《と言うよりそれが素だよね、活き活きとしてるのが良くわかるよ》
「──聖杯をよこしやがれ!」
藤丸がテガソードの切先を向けつつ、レフを睨み付ける。
しかしてレフは飄々と笑い
「ほう、いっぱしの口を聞くようになったね。
仲間が居るから無駄に自信でも着いたのかな?
聞けばフランスでは大活躍と聞くよ、おかげで私は大目玉さ!!」
レフは杖の切先を向ければ、雷を無数に放つ。
マシュが盾を構えて雷を防がんとするが、雷はまるで生きているように唸り──ネロが持っていたオーレンジャーのセンタイリングを弾き飛ばす。
「本来ならとっくに神殿に帰還していると言うのに……子供の使いさえ出来ないのかと追い返された!
結果、こんな時代で後始末だ」
宙に弾かれたセンタイリングを陸王と角乃が掴まんとするが、不自然な風によってセンタイリングはレフの手へと収まってしまう。
「聖杯を相応しい愚者に与え、その顛末を見物する愉しみも台無しだよ」
あれもこれもセンタイリングさえ無ければ……と、レフは手におさまったセンタイリングを握り潰そうとするが、センタイリングには傷一つ入らない。
それを見て忌々しそうに舌打ちをすれば
「人間如きに期待なんてしていなかったが、やはりそれすら下回ると怒りさえ通り越す。」
ロムルスは結局人類を滅ぼそうとは一切しなかった。
偉大なる神祖、それは愚者とは程遠い存在である故に。
しかして元より人間を見放している以上、怒りさえ湧いてこないと言った物だ
「──ただか凡百のサーヴァント、凡百の力を掻き集めた程度でこのレフ・ライノールを阻めるとでも?」
凄まじい圧力が藤丸達に襲い掛かる。
しかして誰もが一歩も引かずにレフを睨む。
そんな様子にレフは嘲笑い
「やはり思い違いをしているな貴様等は、貴様達では既にどうにもならない事に必死な足掻いている!
やはり貴様等は無意味かつ無能!!
哀れにも消え行く貴様達に──今、私が我等が王の寵愛を見せてやろう!」
レフの姿が変わる。
人間から異形へと。
肉は数十倍に膨れ上がり、裂け目のようなものが幾多も走った不気味な肉塊の柱に無数の赤黒い目が点在する。
は大きさがバラバラのレンガ状の肌に丸い魔眼、肌と魔眼の境目は鮫の肌のような形状をしていいた。
何よりも醜いとさえ言える形状。
これこそ悪魔。
「改めて自己紹介をしよう。
私は、レフ・ライノール・フラウロス!
七十二の魔神が一柱!魔神フラウロス……これが、王の寵愛そのもの!」
異形が、大きく吠えた。