前世競走馬だけどウマ娘になってない【未完・現在作り直し中】   作:ゲッテルデメルング

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エリューズニルの門が開く

 

 ララの担当をすることがほぼ確定してから、アイはとてつもないペースでのトレーニングをこなしていった。

 

「ユグ! 次のメニューは!?」

「もう体力無いでしょ。今日はもうおしまいだよ」

「いえ、まだあるわ。まだ今のトレーニングを9回はこなせるだけの体力が私には――」

「嘘つかないの」

 

 アイの体力については逐一僕がきちんと計測している。

 前世が馬だったからこそ、同様のトレーニングで用いる体力を把握しているし、体力の増加量も認識している。

 今の今まで負荷の強めなスピードトレーニングを行い続けた結果、アイの体力はもうカラカラだ。

 それでも頑張りたいと意気込んでくれるのはトレーナー冥利に尽きるけど、オーバートレーニングになることは避けなければならない。

 

「ララー」

「あいよー。ほなアイちゃーん、マッサージ行くでー」

「あっこらっ、離しなさいララっ、もっと、もっとトレーニングをっ」

「ウチから逃れられないぐらいヘロヘロやろにまったく……」

 

 ララが来てくれたのはありがたかったかもしれない。

 今までなら僕が非力なパワーでアイを引っ張らなければならなかったところを代わりにやってくれるようになるのだから。

 僕だと非力すぎて逃げてトレーニングを続行することが稀によくある(成功率90%)から。

 

 とはいえ、アイの調子は絶好調極まりないレベルだ。

 トレーニングを最大効率でこなしていくアイの様子なら、1週間後に迫ったDream Festでも勝利は確実と言える自信がある。

 

「アイ、きちんと休息を取ってくれれば、明日は今日の1.5倍のトレーニングを行うよ」

「今すぐマッサージに向かうわ!」

いやちょっろ……――ユグはん、アイの使い方よう判っとるなあ……褥を共にしたからやったり?」

「そんなことはないよ。アイがそういう()なのを知っているから。きっとララにもできると思うよ?」

「せやろかなぁ? 正直ユグはんみたいなお手並みはウチにはちょいと厳しいと思うで?」

 

 そうとは思わないけどなあ。

 

「ジブンじゃよう判らんて顔しとんなあ」

「ララならできると思ってるって感じの顔だったつもりだけど」

「その気持ちはほんま嬉しいんやけどな。ウチは、ユグみたいに誰かの気持ちに寄り添える甲斐性があるとは思えんからなあ」

「そんなことはないと思うけど」

「いやーユグには敵わんと思うわ。前世でもお世話になったしなあ」

「前世でも? そんなことしてたっけ?」

「無自覚なのがニクいわぁ~」

「?」

 

 ララはそう肩を竦めながら、トレーニングに戻っていった。

 僕にララよりも甲斐性があるなんて、そうは思えないけどなあ……人間視点で言ったら僕って控えめに言っても浮気しまくりだし。先輩方の話よりも年下の子とばかりホニャホニャだったし。割と知り合いも多かったし。

 そこに関して*1は人間を恨もうかと思わない点もあるけれど、まあ、生き物としての僕として見て、いい血筋を絶やさないためともわかっていたから別にいいんだけど。

 

 ……いや、知り合いと出会ってホニャホニャするのはだいぶメンタルに響いたけど。みんなレースに未練たっぷりめだったし。

 

 ふるさとの姐さんたちが一番優しかったなあ……あと妹も。

 いや、妹とはホニャホニャしてないけどね? 出会ったお牝馬たちの中なら誰が良かったかでランキングしていくと、そういう感じになりそうな気が――

 

「彼女が君が新しく担当するウマ娘なのかい?」

「うわぁ」

 

 いきなり背後からぬぅっと出て来るな!

 それにビクゥと驚いた僕に、スピードシンボリは大笑いする。

 

「あははは! すまないね、そこまで驚かれるとは」

「はぁ……」

「話を戻そうか。彼女――ラッキーライラックが君が次に担当するウマ娘なんだね?」

「ええ」

「聞いた話だと、アーモンドアイ君のライバル的関係だそうだね。アーモンドアイ君がトリプルティアラを目指しているようにラッキーライラック君もトリプルティアラを狙っているのかい?」

「ああ……今まではそうだったそうですけど、考えを変えたみたいですよ」

「へえ?」

()()()()に挑むそうですよ?」

 

 ここに関しては僕もアイも驚いた。

 三冠路線――皐月賞、日本ダービー、菊花賞の3つのレース。

 前世では牡馬三冠と呼ばれていた3つのレース。それにララは挑むつもりなのだという。

 

 いったいどういうことなのだろうかと聞いてみると。

 

「『()()()()()()はしていないって知らしめるため』……らしいですよ?」

「なるほど……ステイヤーとしての素質が彼女にはあるのかい?」

「ないですよ?」

「なんとも軽々しく言うね」

「彼女も自覚していますし。ですので、距離延長トレーニングを組もうと考えていますね」

 

 それに、三冠路線は僕も挑んだ経験が強い。

 僕の技術を教えて活かすことも不可能ではないし、ララ自身も僕の知識を期待している節もある。

 具体的に言えば、長距離を走りきるスタミナのつけ方とか、スタミナの調整術とか。

 

「なるほど。彼女はそれを成し遂げる覚悟がある、と?」

「そうですね」

 

 そこに関しては心配していない。

 彼女が言う記憶を取り戻す前のララなら多少は危うかったかもしれないけど、今のララの心はやる気に満ち満ちている。

 アイに勝ちたい。その意欲を火種にララは今燃えている状態だ。

 まあ、そこそこに。一気に燃えてクラシック中かその前に灰になるのは避けたいし。

 

「なるほど、粒粒辛苦の覚悟は十分と。――善財トレーナー、私からトレーナーたちもといURAにも言い伝えておこうか。『君は複数の担当ウマ娘を持つに相応しい心を有している』とね」

「え、心? 技術ではなくて?」

「技術や知識は卓上で文献を紐解けば自ずと手に入れられるが、心まではその限りではない。――君はウマ娘を信じている。いや、それよりも深いのかもしれないな」

「……」

「善財トレーナーは彼女たちの勝利を確信している。その心こそ、トレーナーにふさわしいものなのだと、私は思っているよ」

 

 心。

 

 彼女たちを信じる心……確かに、まあ、アイとララの強さは知っているところはあるけど。

 もしそれが何も知らない他の馬もといウマ娘だったとして、僕は彼女を信じただろうか?

 

 ……僕ならそのウマ娘の望みを聞いて、勝利への最適な経路を考案して、共にその道を究めていくし、勝利も信じるとは思う。

 

「――と言うより、そういうものじゃないんですか? トレーナーっていうのは」

「……なるほど。無自覚、天性の素質だったというわけか。理事長も良いトレーナーを見つけたものだ」

「?」

「気づかなくてもいい。君はそのままでいればいいと思うよ」

 

 そう言って、スピードシンボリさんはこの場から離れていく。

 何やら満足げな表情だった。

 僕との会話が何かにつながるならそれは嬉しいこと――おっと、そうだ!

 

 一つ忘れていた。

 

「あのっ、スピードシンボリさん!」

「どうしたんだい、善財トレーナー」

「さっきスピードシンボリさんがURAに掛け合ってくれるって言ってましたけど、あれ、僕たちが自力で示します。なので大丈夫です」

「――へぇ? なるほど。……URAはDream Festをトゥウィンクル・シリーズ人気回復の要と見ている。そこを勝てるというのなら、関係職員の誰もが注目するだろうね」

「それは……!」

「期待しているよ、善財トレーナー」

「……はい!」

 

 そう言って帰るスピードシンボリさんの背中は、先ほどよりも割り増しで何かを期待しているかのような素振りを見せている気がした。

 

 ――アーモンドアイ、Dream Fest Stellaに出走決定。

*1
浮気しまくり的な状態にしてくれたことではない

番外編 追加するなら どれにする? ※あくまで参考程度です

  • 18年皐月賞
  • 18年日本ダービー
  • 18年菊花賞
  • 19年天皇賞春
  • 19年宝塚記念
  • 20年京都記念
  • 20年ドバイシーマクラシック
  • 20年天皇賞秋
  • 20年ジャパンカップ
  • 21年ドバイシーマクラシック
  • 21年宝塚記念
  • 21年有馬記念
  • その他
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