前世競走馬だけどウマ娘になってない【未完・現在作り直し中】 作:ゲッテルデメルング
「げほごほ。う゛~やらかしたぁ~……」
『本当に弛んでるわねユグ……馬だった頃の元気さはどうしたのよ』
「馬の身体に置いてきたよそんなの……ごほごほ」
風邪を引いた。
今年の冬はとても寒く、そんな中でアイとララのトレーニングに付き合っていたらこの有様だ。
馬だったころは引いたことのない風邪に喉をやられてあまり元気だともいえない。
「トレーニング計画は部屋に置いてあるし、LANEで共有してるはずだからそれに今日は従って」
『わかったわ、ユグはさっさと風邪を治しなさいよ!』
『ユグはんお大事になあ。アイのことは任せとき』
「頼んだぞララ……」
『え? なんでララが?』
『アイだけにしとくとオーバートレーニングかましそうやしなあ。ここはウチが監督役になるしかないわ。ビシバシ(ストップ)行くから覚悟しい!』
『ビシバシ行くのはアクセルだけでいいわよ!?』
とりあえずトレーニングについては共有ができたし、あとは僕が早急にこの風邪を治すだけだな。
学園のすぐ近くの病院へと歩みを進める。
「――あー!」
「げほごほ。さっさとお薬貰おう……」
「樹トレーナーさーん!」
「うおぉ」
「なあなあなあ! 久しぶりだなあトレーナー! 元気してたか!」
「ごめんちょっと元気ないぃ……」
「えっ!? そうなのか!!? ……?」
背骨に急にダメージが来たと思ったらブーに後ろから抱き着かれていた。
これが平時だったらある程度何とかできたけど今の状態だと無理だ。
風邪を移さないように離れてもらおうとちょっと身を捩っていると、ブーは奇妙なものを見る目で僕の顔――いや、僕がつけているマスクをじっと見ていた。
「なあなあ、これなんだ? 口にくっついているけど……メンコか?」
「マスクだよ。風邪を移さないようにしてるんだ」
「あーっ! これがマスクなのかあ! なるほどなー! 耳にひっかけているのか!! これがそうなんだな、初めて見たぞ!」
耳元で大きな声を出さないでほしい。
だが確かに言われてみれば、ウマ娘のマスクと言うものはあまり見かけない。
それはウマ娘自体が風邪をひくことがあまりないのもそうだが、そもそもウマ娘は構造上耳が頭上にあるためマスクをつけにくいということも挙げられる。
そのため、薬局では基本マスクと同じ繊維を用いた使い回すことの可能なスカーフやマフラーといった、首に回すことで口元を隠すタイプの商品が取り扱われているらしい。
「それと風邪なのか? 風邪ってなんだ? 病気なのか?? 屈腱炎よりもきついのか???」
「そこまでじゃないけど……喉が痛くってね。咳が出るんだ。ウマ娘的に考えると、呼吸が難しくなるからレースの出走回避を考えるぐらいには重たいかな」
「そんなになのか!? こわいな風邪!」
「そうなんだよ。そんな風邪を移したら困るからちょっと離れてくれないかな?」
「わかった! ブーは離れるぞ! ――ごめんな!!!」
「そんなに離れなくたっていいけど……」
「そうなのか! じゃあ、これぐらいだな!」
そう言ってブーは僕と一歩分離れた程度に並ぶ。
相変わらずの全力な行動力に思わず笑いそうになる。
風邪をひいていて調子も悪いのに、とたんに元気になりそうな感じだ。
「なあなあ、病院に行くんだろ? 大丈夫なのか? 本当に怖い病気じゃないのか風邪って??」
「大丈夫だよ」
「ふっとい注射とかされたりしないのか??? ブーはアレがすっごく嫌いなんだぞ!」
「そういうのもないよ。ただ診断を受けて、お薬をもらうだけだから」
「そうなのか!?」
病院をなんだと思っているのだろうか。
とはいえ、ウマ娘にとって病院はなじみの薄い場所なのかもしれない。
「なら、一緒に来てみるか?」
「いいのか?」
「付き添いとしてなら大丈夫だよ。知りたいんだろ、ヒトのこと?」
「――うん!!」
『善財ファーム乗馬体験イベント、開催受付中です!』
『予約されてたお客様はこちらで本人確認をいたしますねー!』
「――なあなあユグ、あのヒトたちはなんであんなに小さいんだ?」
「子供だからだよ。ブーは見たことがないかな? ここでも仔馬がいるはずだけど、あれのヒトのパターンだよ」
「そうか! そうなんだなー! ――なあなあ、あのヒトの子供の手に持っているやつはなんなんだ? ニンジンなのか?」
「あれは――」
「あれはブソウバショー! お兄ちゃんをモデルに作った社長のオモチャみたいよ」
「オモチャ!? ユグ、オモチャになっちゃったのか!?」
「あくまでモデルだからね。みどチーはちゃんと休んで。もうすぐ最初のレースでしょ?」
「はーい。――ブー先輩! あとで現役だったころのお兄ちゃんについて教えてくださいね!」
「うん、わかったぞ! それにしても、すごいなあ……ここはヒトが多くて、いろんなことを知れるぞ!」
――ヒトのことを知りたい。
それが、ブーの
ヒトはどうして2つの脚で歩けるのか。
ヒトはどうして身体がいろんな模様の服があるのか。
ヒトはどうして蹄が無いのか。
そんな根本的な部分――『どうしてヒトと
「……トレーナーさん……さっきの鼻に綿棒を入れるやつ、大丈夫だったか……?」
「正直、いつ受けても耐え難い……っ」
「……はい、普通の風邪ですね」
「そうですか、よかった」
「なあなあ、お医者さん! 聞きたいことがあります!」
「おや、どうぞ」
「普通の風邪ってどんなのなんだ? 普通ってどれぐらいなんだ?」
「そこまで大した事じゃないってぐらいですね。――処方箋はこれを薬局に」
「ありがとうございます」
「元気なウマ娘ですね。担当の子ですか?」
「いえ、そうではないですけど……友人、みたいな関係ですかね」
……ブーと僕とは、前世ではだいぶ親密な関係があったと言える。
社長が乗馬イベントを開催したときに招かれる乗馬用の馬の代表として、ふるさとのみんなからは顔を覚えられていた。
ふるさとに住まう乗馬用の馬たちもブーのことを快く迎え入れ、ブーは終始穏やかにイベントを受けることができたぐらいだ。
妹もブーのことを気に入って、最終的にはふるさとのみんなの顔なじみぐらいになっていた。
そんな間柄だから……放っておくことはできない。そんな感じに思うところがある。
「このお薬、大丈夫なものなのか?」
「お医者さんが勧めるんだから安心できるよ」
「それもそうだな! でも……味はどうなんだ?」
「……まあ、一気に飲み込めばいいだけだからね」
「苦いんだな……どうしてそんな苦い味のままなんだ?」
「お薬一つに味なんて追及する余裕は無いからじゃないかなあ。味なんて付けたら値段がさらに上がっちゃって買えなくなっちゃうかもしれないし」
「なるほどなー、世知辛いんだな。お薬って。……よし!」
――ブーは病院で僕の後ろを見て回って、ある程度何かヒトについて読み取れたのか大き目のノートを取り出して、そこにスラスラと書き綴っていく。
「それは何かな?」
「これはわたしの『ヒトノート』! ヒトについて感じたことをここに纏めてるんだ!」
「へえ……見てもいいものなのかな?」
「いいぞ! なにか間違っていたら教えてくれ!」
そう言われて渡されたピンク色のヒトノートをペラリペラリと捲っていく。
『ヒトはわたしにはぜんぜんわからないケガをすぐみつける! すごいおめめだ!』
『ヒトはわたしに似合う服をすぐにみつけるし、カワイイって言ってくれる! うれしい!』
「……ヒトのこと、たくさん調べてるみたいだね。知りたいんだ、ヒトのことをたくさん」
「うん! ブー、ヒトの少ない場所で育ってきたからここでたっくさんのヒトと触れ合って、ヒトのことをもっともーっと知っていきたいんだ!」
「そっか。……」
――変わらないなあ、本当に。
「えっ……?」
「どうかしたかな、ブー?」
「あ、ううん、大丈夫だぞ。――あーっ! ブー、この後併走の約束があったんだった! いけないいけない! ごめんなさい樹トレーナーさん!」
「今日は付き添ってくれてありがとう、おかげで楽しく診察を受けられたよ」
「それだったらよかったぞ! ――じゃあ今日はまたな!」
そう言って、ブーは大きな体で一気に病院を抜け出し走り去っていった。
一瞬だけ見せた困惑の表情が気になったけど……何か悩み事でもあるのだろうか。
もしそうだったら、次に会うときはそれを解決する手伝いもしてあげようかと、そんなことを考えながら買った薬の入った袋を片手に学園へと帰路を歩んでいった。
「…………やっぱり、樹トレーナーはわたしと……」
『――変わらないなあ、本当に』
「でも……いつ? どこで出会ったの?? どうしてわたし――覚えていないの???」
彼女の心の鍵穴を、少しだけ揺らして。
番外編 追加するなら どれにする? ※あくまで参考程度です
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18年皐月賞
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18年日本ダービー
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18年菊花賞
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19年天皇賞春
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19年宝塚記念
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20年京都記念
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20年ドバイシーマクラシック
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20年天皇賞秋
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20年ジャパンカップ
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21年ドバイシーマクラシック
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21年宝塚記念
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21年有馬記念
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その他